SFマガジン 1985年6月号

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すかさずュリが消火力プセルを炎の中に投げこみ、ついでに天井 の熱センサーをレイガンでぶち抜いた。鎮火したあとに消火剤をか ぶるのは、美容によくないもんね。 火が消え、煙が薄れたあとには、リングを支えていた四本の鉄柱 阿鼻叫喚のるつぼに到着した。 だけが黒焦げになって残るのみ。 リングサイドでは、 レスラーに客が近づくもへったくれもない。 客とレスラーと用心棒が、い っしよくたになって転げまわってい ナイトクラ・フ全体が静まり返った。 る。客は用心棒を殴り、用心棒はレスラーとやり合う。レスラーは しんとしすぎて、かえって耳が痛いくらい 誰でもいい。手当たり次第に蹴散らす。さすがにサ ミー・リーは相レスラーも客も用心棒も、動きを止めて茫然とあたしたちを見つ 手を選んでいるようだが、額から吹きだす血で視界を失っているらめている。あたしたちが、あまり美しいので目をそらすことができ しく、結果は手当たり次第と大差はない。ゴーレムに至っては、本ないのだ。 というのが冗談だってことは、すぐに明らかになっ」 当に手当たり次第だから、まるで荒れ狂うハリケ 1 ンである。人もた。 調度も食器もおかまいなく空中に舞い散らす。 最初に我に返ったのは、用心棒の一人だった。 「きさま、なんてえマネを ! 」 とりあえず、あたしはこの騒ぎを鎮めることにした。ランディス を捜すのは、それからだ。生きてるといいけど、この有様じゃ、ど大声でわめいて、あたしに詰め寄ってきた。あたしはヒートガン うだかわかんない。 で応対した。用心棒は泣き声をあげて、どっかに失せた。 「ふざけたねえちゃんだ : : : 」 あたしはヒートガンの狙いをリングにつけた。そう。やるのはシ ック療法だ。いうまでもなく、ショックは大きいほど効果があ太い声が、あたしのすぐ横で響いた。恐竜の咆哮が言葉になった る。 ら、今みたいに聞こえるのだろうか。ざらついた、石と石とをこす マットの中央に照準を定め、熱線のゲージも最大にして、あたしり合わせるような、耳に障る声だった。 はトリガーを引き絞った。 テー・フルやら椅子やらの残骸を押しのけて、恐竜の声の主 , ー・・・ザ 次の瞬間 ・ゴーレムが、あたしの前にやってきた。 マットが爆発的に燃えあがった。大音響が耳を聾し、目もくらむ「ふざけてんのは、そっちじゃない」あたしはゴーレムに言い返し こ 0 炎が火球となって天井に届かんばかりに丸く広がった。 やったあたしが、びびったくらいだから、ホントそれはすごかっ 「フロレスはリングの上でやるもんよ ! 」 「なにい 零コンマ数秒で、リングが灰になった。 ゴーレムの顔がどす黒くなった。怒りで形相が歪み、それはもう こ 0

りと切り裂く長い爪。漆黒のからだは深い艷を帯び、火と燃える双 凄絶な表情になった。 あたしはヒートガンを下に向け、 トリガーから指をはずした。こ眸は嵐の激しさをその奥に秘めている。いかな化物、魑魅魍魎とい んな怪物、いくら足を灼いたってひるみやしない。かといって殺しえども、立ち向かうには、それなりの覚悟がいる。 。と、なれば、相手ができるのはただ一 ちゃうわけにもいかなし 黒い破壊者、クアール。 人。いや一頭か : ムギが低く構え、静かに歩を進めた。ゴーレムの真正面である。 「やめろっ ! 」 距離は約三メートル。眠光が炯々と燦き、全身からは敵意が噴き出 している。まさに殺気の塊だ。ゴーレムにしてみれば、抜き身の剣 あたしとゴーレムの間に飛びこんできた。 あたた。あたしは頭を抱えた。あんたじゃない。ジェフってば、 を喉もとに突きつけられている気分だろう。血の気を失い、身じろ だめだよ。 ぎひとつできないでいる。 ばきつ。 「ランディスはどこ ? 生きてるの ? 」 鈍い音がした。ゴ 1 レムが軽く腕を上から下に振りおろしたの ュリがあたしの横にきて凝然と立ち尽くしている客たちをひとわ たり眺め、凜とした声で言った。レイガンはまだ右手に携えたまま カ吹っとび、ジェフ ジェフがひっくり一﨤った。テンガロンハット : だ。ホルスターに戻していない。 のからだがフロアに叩きつけられた。 「お、俺のことかな ? 」 あたしのすぐ左脇に、テー・フルやら椅子やらの残骸がうず高く山 あたしは倒れたジェフに駆け寄った。アスラヴィルのシェリフは になった一角があった。その山の中から返事があった。、」 。ハンサム台無しだよ。 白目を向いて失神している。まずいよ 山が盛りあがり、崩れた。 「やったわね ! 」 上着をずたずたに引き裂かれ、顔のあちこちに青あざをこしらえ たランディスが、うっそりとあらわれた。どうやら一一、三発、殴ら あたしはゴーレムを睨みつけた。 「だから、どうなんだ ? 」 れたところで、この残骸の中に逃げこんだらしい。常連だけに、修 ゴーレムは胸を張る。近くで見ると、本当にでかい。象だって「羅場には慣れているみたいこ こいつに較べたら、もう少し控えめだ。 「あんたがランディス ? 」 あたしは訊いた。 黒い影が宙に躍った。 ひらりと舞い降りて、あたしの斜め前に音もなく立った。 「十一鉱のランディスです」 怪物レスラーが、うっとたじろいだ。 とまどいの表情を浮かべ、ランディスはぼそばそと答えた。 フロア全体にざわめきが広がった。一時の緊張がほぐれ、客の間 揺れ動く触手。剥きだしになった鋭い牙。合金ですらすつば 29

に好奇心がめばえだしたのだ。 わしの部屋でいかがだろう ? ここなら、レスラーも不粋な用心棒 もいない」 あたしは少し声を大きくした。 「けっこうね」あたしは言った。 「あたしたちはのケイとユリ」歯切れよく言った。 「あなたに伺いたいことがあって、ここに来たわ」 「ランディスも連れてくわよ」 一瞬、ざわめきが失せた。いあわせたすべての人間が息を呑む気「もちろん、かまわない」 テレストフアネスは右手を軽く振った。 配が伝わってきた。あのザ・ゴーレムですら頬をひきつらせ、目を 「それから救急車を一台呼んで」ュリがつけ加えた。 丸くした。 「ダーテイベア・ : : こ 「シェリフが殴られてのびてるわ」 ロカが、つぶやいた。一 「すぐに手配する」 それがきっかけになった。一 大きくうなずき、太ったオーナーは濃い三角形の眉毛をはねあげ またフロアが甲高い喧噪に包まれた。 そのときだった。 スクリーンが・フラックアウトした。 「お静かに、みなさん : : : 」 「失礼の段、平にお詫びします」 穏やかだが、有無を言わせない重々しい声が、クラ・フ ( ウス全体マネージャーがやってきた。 に響き渡った。 「ーーどうぞ、こちらへ。オーナーの部屋に御案内いたします」 たちまち喧噪が消えた。 うやうやしく頭を下げた。 あたしは振り返った。 巨大な二面のスクリーンだ。あのスクリーンの映像が、いつの間 にか変わっている。 スクリーンには、男の顔が映っていた。年齢は五十代といったと細身でひょろっと背の高いマネージャーに案内されて、あたしと ころか。でつぶりと太っており、顎が三重になっている。目は小さュリ、それにランディスはクラ・フ ( ウスの奥へと進んだ。ランディ くて丸く、まるで小さな褐色の木の実のようだ。髪は銀髪で薄い スはきよろきよろと周囲を見回して、態度が落ち着かない。鉱山の 「わしは、オーナーのテレストフアネス」スクリーンの男は言っ 仕事を終えてから、そのまま〈サル・ハトーレ〉に来たのだろう。暗 こ。 緑色の作業着を身につけている。身長は並で、別に太っているわけ 「のお嬢さん方には失礼をした。なにしろそこは殺気立つでもないが、技師などというイメージからはほど遠い。ただの風采 たプロレス会場。穏やかに話し合うにはちと不向きだ。つづきは、 のあがらないおじさんである。 こ 0