だいいちじん と、思っている。 それというのも、千葉へ越して来た当時は出来れば東京へもどって行きたくなるほ ど、いやなことがたくさんあった。だが、あった数だけ正男は、千葉がすきなのだと思 正男が千葉に越して来たのは、小学校五年生の春のことだった。 しんちくぶんじようじゅうたく 正男の父が、東京の土地を売って、千葉のいなかの方に、新築の分譲住宅を買った てんきょ にゆうきょ ので一家全員が越して来たのである。正男たちが転居したのは、住宅分譲計画の入居 しゅうい ぞうせいちゅう けず 第一陣だった。入居したのは五十戸。周囲はまだ宅地の造成中の所もあって、削り出さ れた砂の山が、あちらこちらに盛り上げられていた。 正男が転入する予定だった小学校も、まだ建設中で、削り取られた真新しい砂地の上 に、灰色の姿をさらしていた。 「九月には新校舎が完成して、ここは廃校になるのだそうだよ。それまでのしんぼう と、母に連れて行かれた小学校は、田んぼのへたに建った古い建物だった。建物の中を こ とうじ はいこ、フ まあたら
転校生と土地っ子ら 正男は、江戸っ子であるが、育ちからすれば千葉っ子である。 「千葉と東京で、どっちがすきだ ? 」 と、ときどき、千葉っ子に聞かれる。 正男は、そういう時、たいてい 「もちろん、千葉さ ! 」 と、答える。 そうすると、千葉っ子が 「そうだろう。ーーー・千葉はいい所だからな。」 しようじき と、鼻をヒクヒクさせて喜ぶからだ。でも、正男は、正直なところ ( 千葉がいい所だからいいとは限らないや ) まさお
転校生と土地っ子ら : 兎のブラウン・ おらが商店街 : ある、少年の告白 ーエンガチョ、切ったー さとるは、探偵・ さよ子の友だち : 太一のふんばり・ ひょこは、死んだ : 死ぬなよ、な : △解説 > 作者と作品安藤操・ 表紙・さしえ藤井晨一 目次