一応バストイレはついているが、マンションと 呼べるものではない。 これは、もう一人の女、八重子にもいえる。八 重子は真沙江とは対照的で、色は自く、眼は切れ 長て日本的な容貎の女だ。八重子も銀座の高級ク パートは信濃町にあ ラブに勤めているが、ア る。四谷の家賃は三万、信濃町は三万五千円。七、 俺は今、二人の女を持っている。二人共、銀座八万から十万のマンションに住めないのは、収入 の一流クラブに勤めており、俺が他の女と同棲しの半分を俺が取り上げるからである。 ているなど、思ってもいない。 真沙江の収入は、月収で二十五万から三十万、 真沙江は二十四歳ミ肌は薄い小麦色で、面長八重子は三十万から三十五万、といったところだ。 で眼窩が窪み、鼻梁が高くエキゾチックな顔をし真沙江が勤めているは、口座指名だから、指 ている。身長は一六〇糎だから、現代の女として名料はそんなに入らない。 は、そんなに高い方ではない。それでも、一流ク真沙江の一日の固定給は一万円だから、二十五 ラブの四十人ばかりのホステスの中では五指万から三十万という月収はまずまずだろう。ただ に入るだろう。普通、のホステスなら港区内真沙江が客と浮気して貰った小遣いはヘソくって のマンションに住んでいる。つまり、青山、赤いるらしい そんなに浮気はしていないが、月に二回ないし 坂、六本木、麻布、高輪といったところだ。 ところが、真沙江のア。ハ 1 トは、四谷と新宿の三回は、小遣い稼ぎに浮気しているのは間違いな 間である。それも新宿寄りだった。 錆びた鎖
目次 錆びた鎖 乾いた湖底 蒼ざめた名札 とけない霜 蜜蜂の踊り 夜の水藻 夜の防波堤 四五 一名 一亳