そとじまいちろ、つ は実に優雅に構えているーー薬局長の外嶋一郎もさ すがに、大きな鼻の頭に大粒の汗を光らせながら調 剤室の中を走り回っていた。 あいはらみ その外嶋の遠い親戚で事務アシスタントの相原美 緒も、次々に手渡される処方箋を横目に見ながら、 にら 肩を怒らせて真剣にパソコンと睨み合っていた。そ して外嶋から矢継ぎ早に繰り出される、 七月後半の薬局は忙しい 「武田さんの先月分の領収書を打ちだして」 子供たちが夏休みに入り、家族揃って海やプール 「次の患者さんは、今日から薬が一種類増えてる。 に出かける頃になると、一気に子供の病気が増え新しい薬剤情報を」 る。プール熱やら、手足ロ病やら、ヘルバンギーナ「この薬はシート変更になってるから、画面も注意 あせも やら、汗疹やら : 。それに加えて大人たちは、寝して」 不足と疲労からくる夏風邪やら、クーラー病やら、 などという注文の連続技にも、 疲労性腰痛やら・ : 「はいつ」「分っかりましたっー「了解っ」 もちろんここ、「ホワイト薬局」も例外ではなか と、てきばき対応していく。 たなはたなな すそひるがえ った。棚旗奈々は白衣の裾を翻しながら、軽く見・美緒は入局して二年目。入ってきたばかりの時ロ しょ 積もっても普段の五割り増しになっているだろう処は、まだふわふわとして何を考えているのか見当もプ ほうせん 方箋の対応に追われていた。となれば当然ーー普段 つかない二十歳だったけれど、最近は違う。奈々の 《プロローグ》 てあしくち
プロローグ ANTICIPATION TRANSFORMATION CALCULATION GENERA 匚 ZATION UNQUESTIONED エピローグ 目次 278 180 123 69 51 20 9