日本教養全集〈5〉 (1974年)自殺について 虚無と絶望 生と死とについて 現代の不安と苦悩

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的虚無と絶望 目次 あらゆる発想は明晰であるということについて 平和投票 即席演説 ニヒリズムとデカダンス ニヒリズムの変容 絶望・頽廃・自殺 目的は手段を浄化しうるか 転換期における人間理性 暗殺の美学 暴力考 あとがき

な殊勝な望みもひそかにないではない。だが、あらゆる生 きているひとの前へ出ると必らず死んでしまったふりを早 速する私のこの仕業は、他の愚かしい理由をも持っている。 ほんとうのところをぶちまければ、それはただの被害妄想 に由来するのだ。 私は被害妄想症で、その症状が成長とともに累積した結 果、ついに、現実というものは巨大な圧倒しがたい熊みた いなものだと確信してしまい、相手がどんなにそっと足音 もたてずに近づいてきてこちらの肩を揺すぶりたてても、 一言半句も声をたててはならぬとこの頬もまだ薔薇色の年 私は死んだふりをしている。 どうしてこんなことになったのだろう。この浅黒い顔を代から堅く決めこんでしまった。もしこちらの声をどうし 徹夜につぐ徹夜をつづけて蒼ざめさせ、ひょろひょろと背てもたてねばならぬときがあったら、死んでる、死んでる の高い幽霊のような恰好をしてひとの前に現われ、ぼんやとひたすら呪文のようにとなえつづけて、この世で手ひど りと幾時間も黙りこくったまま坐りつづけているような仕い生体解剖をうけたり価値判断の断頭台にのぼされたりす 事を無理にしなくても、やがては真黒な一塊の土くれとなるような難を避け、あの世へまでこれとまったく同じ姿勢 ってどのくらいの時間でも、まったく死んだふりをして横を持ちつづけてゆきたいものだと思ってきた。『死霊』と たわっておれるではないか。それだのに、いまから死んだいう訳も解らぬ作品を書いて出来るだけ正面衝突を避けっ 望ふりをして、希望も絶望も己れにかかわり知らぬといったづけている私の姿勢を裏返しにしてみれば、自分の息を自 と枯木の肌のような顔付をしているのは、或いは、まったく分の耳で聞くことさえびくっと腰を浮かすほどの症状にま 虚死にはててしまってからも一種形容しがたい奇妙な具合でで至った被害妄想の末期現象が確かに隠れている。病状こ こに至れば、私はもうすっかり死んだようになって死んだ なお生きているというふりでもしてみせる術をなんとか会 得しようと心がけているためなのだろうか。確かに、そんふりをしている。こうなれば、私はもはや私とびたりと重 あらゆる発想は明晰である ということについて ェイデイプスよ、エイデイプスよ。何故にか かるこ」にか ~ 、、も」 , かか十・ , ら - 、つのか 2 ・ , も はや吾は立ち去るべき時なのだ。 ソフォクレス