1973年のピンボール

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貶明治通りをまっすぐ、と彼は言った。タクシーが走り出してから彼は煙草を取り出して火を点 け、僕にも一本勧めた。彼はグレーのスーツに斜めの線が三本入ったプルーのネクタイを締めて いた。シャソもプル ネクタイよりは幾分薄いプルーだ。業はグレーのセーターにプルー ジーン、そしてすすけたデザー ・プーツだった。まるで教授室に呼ばれた出来の悪い学生のよ うな気がした。 タクシーが早稲田通りを横切るあたりで、運転手がもっと先ですか、と訊ねた。目白通りに、 と講師は言った。タクシーはしばらく先を目白通りに入った。 「かなり遠くですか ? 」と僕は訊ねてみた。 「かなり遠くです。」と彼は言って、一一本目の煙草を探った。僕は窓の外を過ぎて行く商店街の 風景をしばらく目で追った。 「捜すのには苦労しました。と彼は言った。 「始めはマニアのリストを片端から当ってみたんです。一一十人ばかり、東京だけじゃなく全国を 当ってみました。でも収穫はゼロです。我々が知っていた以上の事実は誰も知りませんでした。 次に中古の機械を扱っている業者に当りました。たいした数じゃありません。ただね、取引した 機械のリストを調べさせるのに苦労しましたよ、厖大な数ですからね。」 僕は肯いて、彼が煙草に火を点けるのを眺めた。

「しかし時期がわかっていたのは助かりました。一九七一年一一月ごろ、というわけですからね。 調べてもらいましたよ。ギルバ ・ & ・サンズ、スペースシップ、シリアル・ナンバ 029 、ありましたわ。一九七一年一一月三日、廃棄処分。」 「廃棄処分 ? 」 「スクラップです。『ゴールド 生したり、港に沈めたりする。」 「しかしあなたは : 「まあ街いて下さい。私はあきらめて業者に礼を言って家に引き上げた。しかしね、心の底に何 かか弓つかかっていた。勘のようなものです。違う、そうじゃないってね。私は翌日もう一度業 者のところに行ってみた。そしてその屑鉄のスクラップ屋まで行った。そしてスクラップ作業を 一三十分ばかり眺めてから事務所に入り名刺を出した。大学の講師という名刺は実体を知らない人 に対しては少しばかり効果があるんです。」 の彼はこの前に会った時よりほんの少しだけ早口になっていた。何故だかはわからなかったがそ れが僕を幾らか居心地悪くさせていた。 「そしてこう言ったんです。ちょっとした本を書いている。ついてはスクラップ作業について知 りたいってね。 143 ・フィンがー』にあったようなやつですよ。四角く押し潰して再

144 彼は協力してくれました。でも一九七一年一一月のピンポール台については何も知らなかった。 当然です。一一年半も前のことだし、いちいち調べてるわけでもないですからね。ひっかき集めて ガシャンと、これでおしまいです。私はもうひとっ訊ねてみた。もしね、そこにある何か例えば 洗たく機なりバイクの車体なりを私が欲しいとして、しかるべき金を払えば譲ってもらえます かってね。 しいですよ、と彼は言いました。他にそういった例はあるのですか、と私は訊ねまし 秋の夕暮はすぐに終り、闇が道路を被い始めた。車は郊外にさしかかろうとしていた。 「もしくわしいことが知りたいなら、一一階の管理担当者に訊ねて下さいということでした。私は もちろん一一階に上って彼に訊ねてみました。一九七一年ごろにピンポールの台を引き取った人は ないかってね。ある、と彼は言いました。どんな人物かと私が訊ねると、彼は電話番号を教えて くれました。ピンポール台が入るたびに電話をかけるように頼まれてるらしいんです。幾らかっ かまされてね。それで私は彼にその人は何台くらいのピンポール台を引き取ったのかと訊ねてみ ました。さあね、と彼は言いました、眺めるだけ眺めて引き取ることもあれば引き取らないこと もある。わからないな、てね。でもおおよそでいいからと私が訊ねると教えてくれましたよ。五 十台は下らないってね。」 「五十台。」と僕は叫んだ。