日ホ代文學 戸川殘花の遺族と樋口一葉 研究餘滴 田切秀雄 北村透谷の位置・ 報 蓬莢曲の上演 : : 勝本淸一郎 父殘花のこと・ 行男 「文學界」同人と築地居留地 : ・笹淵友一 月 題字・谷崎潤一郎 子 ) をはじめとして數多いが、わたしは蘆屋に近い夙川に住む長男 の未亡人戸川とくさんを訪ねた。七十歳の彼女は元氣で、晩年の殘 花のことをいろいろと話してくれた。先年沒した長男は、父花を 愛すること深かった實業家で、父の書いたものを明治二〇年のはじ 小田切秀雄 めから晩年にまでわたって實によく保存し整理しており、それがそ わたしは戸川殘花のことが以前から氣にかかっていた。本卷で見のまま殘っているのを見せてもらうことができた。殘花が沒したと うひかむり られるように、かれは明治二〇年代の後半だけ文學上の活動をし、きに『櫻』 ( サク一フ愛護を目的とした「櫻の會」の機關誌 ) ・『初冠』 以後よその領域に移ってしまったひとであるが、かれのことを一度 ( 俳句結社「竹馬克社」の雜誌 ) ・『帆柱』 ( 徘句結社「帆柱社」の雜誌 ) の 調査してみたいと思うようになっていたのは、かれが透谷沒後の三誌がそれぞれに『戸川殘花小傅』をのせ、また追悼文、追悼句會 『文學界』にくりかえし透谷追悼の詩を發表していることを知って記などをのせているのを見ることもできた。傅記的事實について からである。その追悼詩じたいはとりたてていうほどのものではなは、先年、昭和女子大の『學苑』誌上にのった殘花研究の小文を讀 いが、『文學界』同人のうちで、島崎藤村以外のひとと透谷との個んだ以外には、增田五良の一一著等の『文學界』研究書中で論及され 人的關係はそれほど深いとはいえず ( 文學思想上はそうでないが。ただているていどにしか知っていなかったので、この三誌の『小傳』等 し、馬場孤蝶などは透谷にたいしてずいぶん批判的だったようだ。孤蝶『明は有益であった。 治文壇回顧』參照 ) 、透谷沒後は『文學界』の傾向そのものが透谷か戸川とくさんに敎えられて、殘花の長女たっさんがいまなお生き らそれてゆく。こういうなかで、殘花はしきりに透谷をおしんでいておられることを知った。わたしはその長壽をよろこび、やがて名 るのである。わたしは、透谷についてはどんなことでも興味がある古屋郊外の鳴海町に訪ねていった。たっさんは勝海舟の孫に嫁し、 から、こういう殘花の存在が何を意味するかを知りたいと思っていいまは息子の家に靜かな老年の日を送っているが、この三月一〇日 た。かれの作品をとりあげた『「弔歌桂川」を評して情死に及ぶ』で八六歳になるという。彼女は、いまなおあざやかな少女時代の記 という透谷の評論も、讀みごたえのある文章の一つであった。 憶の數々を語ってくれた。その一つ。″北村透谷さんや内田不知庵 殘花の遺族は、かれが子者だったために早大の戸川行男氏 ( 末さんは、いつも雪駄を鳴らしながらやってきて、玄關の式臺のとこ 戸川殘花の遺族と樋口一葉 ーー研究餘滴ーー 1 9 6 5 ・ 4 講談瓧 東京都文京區 音羽町 3 の 19
北村透谷集目次 卷頭寫眞 我牢獄・ 星夜 : 宿魂鏡・ 時勢に感あり・ 泣かん乎笑はん乎・ 「マンフレッド」及び 「フォースト」 厭世詩家と女性・ 粹を論じて「伽羅枕」に及ぶ : 「伽羅枕」及び「新葉末集」 ロヨ , ーヒ 「平和」發行之辭 漫一一「一則 松島に於て芭蕉翁を讀む・ 「油地獄」を讀む・ 最後の勝利者は誰ぞ・ トルストイ伯 . 一種の攘夷思想 「歌念佛」を讀みて・ 德川時代の平民的理想・ 三日幻境・ 各人心宮内の祕宮・ 心機妙變を論ず : 處女の純潔を論ず・ 他界に對する觀念 鬼心非鬼心・ 「罪と罰」・ 富嶽の詩神を思ふ・ 人生に相渉るとは何の謂ぞ・ : 三七 : 七 0 : 八 0
明治文學管見 : 復讐・戰爭・自殺・ 頑執妄排の弊・ 人生の意義 : 賤事業辨・ 内部生命論 熱意・ 國民と思想・ 主のっとめ・ 桂川 ( 吊歌 ) を評して情死に及ぶ・ 由円丸〔 . 哀詞序・ 思想の聖殿・ 兆民居士安くにかある : 萬物の聲と詩人 : 漫罵・ 一タ觀 劇詩の前途如何 : : 全 : 究 慈善事業の進歩を望む・ エマルソン・ 楚囚之詩 蓬莱曲 み又ずのうた・ 一點星・ 孤飛蝶 ゆきだふれ : ・ 平家蟹 髑髏舞・ 古藤に遠寄す : 彈琴と嬰兒 : ほたる : 蝶のゆくへ・ 眠れる蝶・ 雙蝶のわかれ・ 露のいのち
富士山遊びの記億 石坂ミナ宛書簡一八八七年八月十八日・一三三 ( ( 北村門太郎の ) 一生中 最も慘憺たる一週間・ 父快 ~ 臧宛書簡一八八七年八月下旬 : 石坂ミナ宛書簡一八八七年九月三日 : 石坂ミナ宛書簡一八八七年九月四日 : 悲苦の世紀 石坂ミナ宛書簡草稿一八八七年十一一月十四日・ : 一一三三 ・一三四 石坂ミナ宛書簡一八八八年一月廿一日・ 石坂昌孝宛書簡一八八八年三月廿三日・ 北村ミナ宛書簡草稿一八九三年八月下旬 : ・・ : = 三七 北村ミナ宛書簡一八九三年八月下旬 : 作品解説 : : 中村光夫三六六 北村谷入門 : 小田切秀雄三七一 參考文獻 : : 一一一六文學界派目次 卷頭寫眞 ・ : = = 〈星野天知 阿佛尼・ 狂僭、恚道軒・ 嫖蕩兒を愍みて柳里恭を喚ぶ : 淸少納言のほこり 文覺上人の戀想 熊に喰はれた男・ 北村君の奇矯・ 戸川殘花 桂川 ( 情死を弔ふ歌 ) ・ 北村透谷君をいたみて 明智光秀 靜御前
深草の元政・ 牡丹花老人 : 月かげ : 平田禿木 吉田好・ おも影 : 薄命記 純美文界 : 氣運已むべからず : 廿七年を送る 草堂書影・ 地獄の卷の一節・ 戸川秋骨 變調論 活動論 以太利盛時の文學・ 自然私觀・ 近來の文海に於ける暗潮・ 南歐詩影・ 塵窓餘談・ 馬場孤蝶 酒匂川 想界漫渉・ 片羽のをしどり : : ・三 00 地下へ・ 社會的文學に就て 善き人なりし大杉君・ ・ : 三 0 四 作品解説 : 文學界派入門 文學界派年譜 文學界派參考文獻 : ・ : 三 0 七 : 中村光夫三六六 小田切秀雄一一一大 ・三兊 ・ : 三毛 ・ : 三四四 ・ : 三吾一 ・四一三
日本現代文學全集 9 北村透谷集 附 文學界派 編集 昭和 40 年 4 月 10 日印刷 昭和 40 年 4 月 19 日發行 定價 500 圓 ◎ KÖDANSHA 1 % 5 整郞夫謙吉 藤 井村野本 伊龜中平山 きた むら とう 北 村 谷 者 著 發行者 野 間 省 印刷者 北 島 織 衞 發行所株式會社講談社 東京都文京區音羽町 3 ~ 19 電話東京 ( 942 ) 11 】 1 ( 大代表 ) 振替東京 3 9 3 0 こく 印 刷 大日本印刷株式會社 寫 眞 製 株式會社興陽就 版 印 刷 製 本 和田製本工業株式會瓧 株式會社岡山紙器所 製 株式會社第一紙藝社 背 革 厚川株式會瓧 表紙クロス 日本クロス工業株式會瓧 ロ繪用紙 日本加工製紙株式會瓧 本文用紙 本州製紙株式會社 函貼用紙 安倍川工業株式會社 見返し用紙 三菱製紙株式曾社 扉用紙 神崎製紙株式會社 落丁本・亂丁本はお取り替えいたします。