: 中野重治 9 註以前 : 村野四郎 萩原さんと私 : 阿呆リズム : 龜井勝一郎報 : 結城昌治 / を朔太郎と私 : 萩原葉子 父の女性運・ 月 題字・谷崎潤一郞 ないが、萩原朔太郎は誰を醫者としていたか、職業としての醫家に どう對していたかをしらべてみることはできることだろうかとも思 ある日たちは日比谷の山水樓で飯を食っていた。食後の雜談に 中野重治 萩原朔太郞が性欲減退の話をして、下島さんにむかって對策療法を たずねた。 萩原さんの死後だいぶして、室生さんがこう言ったことがある。 といっても、正確には言葉をおぼえていない。要するに、醫者のこ - 「駄目、駄目。あんなもの使ったらひどいことになりますぞ : : : 」 といって、下島醫師は、ほとんど嚴然として萩原さんのロに出した とである。 「急性肺炎、あんな調子ので死ぬことがあるかい。あんなものは、ある藥を否定した。何かカタカナ名の藥で、その時の模様では、そ この頃はちゃんと手當て出來るのだ。萩原の奴は、かかりつけのいれを萩原さんが持っているわけでもなく、どこかでそんなことを小 耳にはさんできたものらしかったが、傍できいていても素人臭くき い醫者というものをこさえていなかったんだ。あいつは : : : 」 こえた。しかし子供の花火遊 それは、萩原朔太郎のだらしなさに腹立てているようでもあり、 そんなことでにわかに死んでしまったことを足ずりして恨んでいるびのような危かしさも感じら ようでもあった。確かに萩原朔太郎には日常的にだらしないようなれた。 ところがあった。ちょっとした人生の必要瑣事、それは全くの瑣事「牛がいい。牛を食うのがい にはちがいないが、それをほったらかしてしまえば、そしてそれがいです。」と下島さんは萩原 續いて行ってしまえば、人生そのものが壞されかねぬ場合さえあるさんにすすめていたが、萩原 そんな瑣事を、きちんと事務的に處理して行くことのできないあるさんが、性に無關係にも、牛 性格の弱さ、ある種の面倒臭がり、それが、醫者の家に生れたことをばりばり食ったとは私には とも結びついて、かえって病氣にたいする態度でミスをしたという思えない。下島さんの「牛」 ことはあったろうかと思う。室生説ににわかに賛成することもでき説を聞きながら、痩せてひょ 註以前 マンドリンクラブ時代右朔太郞 1 9 6 5 ・ 8 講談社 東京都文京區 音羽町 3 の 19 1
萩原朔太郎集目次 月に吠える・ 靑猫・ 蝶を夢む : 「靑猫」以後 ( 『萩原朔太郎詩集』より ) ・ 定本靑猫 純情小曲集・ 島・ 丑月文詩 ( 『宿命』より ) : ・ 卷頭寫眞 筆蹟 : 四九 猫町 戀愛名歌集 : 鄕愁の詩人與謝蕪村・ 新しき欲情抄・ 第一放射線 : 第二放射線 : 第三放射線 : 第四放射線・ 第五放射線・ 虚妄の正義抄 結婚と女性・ :
瓧會と文明 : ・ 意志と忍從もしくは自由と宿命 : 藝術に就いて : 孤獨と瓧交・ : 著述と天才 : ・ 思想と爭鬪 : 絶望の逃走抄・ 女性・結婚・戀愛など : 意志・宿命・自殺・復讐・ SEX など : ・一ズ一 歴史・瓧會・文明など : ・ 詩・文學・藝術・天才・著述など・ : 港にて抄 : 詩と文學 : 1 三ロ 土寸へ冊 1 一ごロ 風俗壞亂の詩とは何ぞ・ : 靑猫スタイルの用意に就いて : 『氷島』の詩語について : 詩におけるロ語使用の不滿感・ 詩とは何ぞや・ : 詩と音樂との關係・ 詩と散文精 : 世界からの感情 : ・ 個人と社會 : ・ ノノ
隨想 僕の孤獨癖について・ : ゴム長靴 : ・ 酒に就いて : ・ 詩壇に出た頃・ : 平安朝文學と佛蘭西映畫 : ・ 歴史敎育への一抗議・ 日本への回歸 : ・ 日本文化の特殊性・ : 能の上演禁止について : ・ ェッセイについて・ アフォリズムについて : 書簡 北原白秋宛 : 室生犀星宛 音樂について : 我が故鄕を語る : 自著の裝幀について・ 作品解説 : 萩原朔太郎入門 : 年譜 : 參考文獻・ : : 伊藤整 : ・元五 ・伊藤信占・ : 四 8 : ・四記 ・四一四
日本現代文學全集 60 萩原朔太郎集 編集 昭和 40 年 8 月 10 日印刷 昭和 40 年 8 月 19 日發行 定價 500 圓 ◎ KODANSHA 1965 整郞夫謙吉 伊龜中平山 はき・わらさくたろう 者 萩原朔太郎 著 行 發 者 野間省 印 者 北島織衞 刷 所 株式會社講談社 行 發 東京都文京區音羽町 3 ~ 19 電話東京 ( 942 ) 1111 ( 大代表 ) 振替東京 3 9 3 0 大日本印刷株式會社 印 刷 寫 眞 製 株式會社興陽社 版 印 刷 製 本 株式會社大進堂 株式會粃岡山紙器所 株式會瓧第一紙藝就 革 株式會社石 背 日本クロス工業株式會社 表紙クロス 日本加工製紙株式會社 ロ繪用紙 本文用紙 木州製紙株式會瓧 安倍川工業株式會社 函貼用紙 三菱製紙株式會社 見返し用紙 紙 紳崎製紙株式會社 扉用 落丁本・亂丁本はお取りかえいたします