目次 : ・佐藤正彰 6 文人唐木・ しなののくにびと : ・ : 久保田正文報 ・ : 佐々木基一 花田淸輝との旅 : ・ : 杉浦明平 古い記憶から 加藤さんへの期待 : : 吉田秀和月 題字・谷崎潤一郎 いわけでもなく、やらうと思へば人並以上に立派にやってのけるこ とができるにちがひないが、ただやらうと、決して思はないだけの ことだ。才がないのではなく、趣味がないのである。さういふ自分 の才を開發發揮することを好まず、むしろ意志的にこれを窒息させ 佐藤正彰 ることを望んでゐる風だ。志は、自分の心を勞したいことは、おの われわれが職を奉じてゐる學校では、一一年ごとに學部長の改選がづから別にある。彼は自分に世間に出る道を閉ざして、世間お出る ある。ここ數年來、そのつど唐木敎授の出馬が懇望されないことは道を指定する。一言で云ふと「風雅」の道である。 ない。あらゆる點でーー人格といひ、見識といひ、人望といひ、手ここに風雅と云ふが、風流、風狂、さび : : : 無用者、數寄者、文 腕さへも含めて、われわれの間でこれほど適任の人はないことは、人 : : : その他擧げきれないほどさまざまの名で呼ばれる世界、あら けれども彼は頑として承知しなゆるニ = アンスを含むこの曖昧な、定義至難な概念を現はす語を用 衆目の一致するところなのだ。 い。俺はおよそ長と名のつくものは一生涯したくない。戦爭中の隣ひても、本集の讀者には憚らないでよいだらう。この日本の文學 組長さへことわった。八百長、鼻下長、增長 : : : 長にろくなものは史、藝術史ばかりでなく、精訷史、文化史上の最も重要な觀念の一 ・ : と云ふのである。っこそ、唐木さんの永年來根氣よく追求し、究明して、前人米發の ない。『無用者』の筆者が學部長になれるか・ はては職を賭してもとまで云ひ出すので、結局いつも願ひ下げにな創見を示してゐる題目なことは、御覽の通りなのだから。そして今 ってゐる。この分では今後ともこれは遂に實現しまい。 は風雅といふことの意味ではなく、この題目が唐木さんにとって意 一時半年ほど、彼は學部長が病氣のとき、部長代理を勤めさせら味するところを、一言したいのであるから。 れたことがあった。そこで彼はこの方面で才がないどころか、有能それといふのも、ここでこんな逸話を持ち出したのは、風雅の問 でさへあることを、發揮はしないまでも、少なくとも察しさせるに題は何も唐木敎授にとって單なる机上の研究題目ではなく、その生 十分であった。その他われわれはしばしば、彼がいはば「世俗事」活そのものと密着した、いはば彼の人生問題としてあることを云ひ ・ . に關しても、「唐變木」から遠く、その明敏に感服する機會があったかったからに他ならない。これは世に生きる上に必要な、内心の た。つまり彼は俗世間で名を顯はすに必要な才がないわけでも乏し要求から發した自發的問題なので、この伊達な題目も彼にとっては 文人唐木 1 9 6 6 ・ 6 講談社 東京都文京區 音羽町 3 の 19 1
唐木順三日井吉見 花田淸輝寺田透集目次 加藤周一 卷頭寫眞 唐木順三集 無用者の系譜 蒹好・ 世阿彌 梅宮覺書・ 北村透谷・ 鴎外と漱石・ 人間と自然への共感・ 日井吉見集 芭蕉覺え書・ 短歌への訣別 島崎藤村 「新しき村」と「共生農園」 : 志賀直哉・ 川端康威 : 太宰治・ エジプトにて : 戰歿者追悼式の表情
花田淸輝集 鏡のなかの言葉・ 變形譚 : 罪と罰・ ドン・ファン叩 笑い猫・ 「慷慨談」の流行・ 現代史の時代區分・ 群猿圖・ 刺靑談義・ : ・一六五 : 三 0 三 : 三 0 〈 ・ : 一三四 寺田透集 歳月・ 時間と社會 バルザックとスタンダール・ 藝術家と藝人 : 『近代繪畫』讀後・ アトリエ訪問・ 『和泉式部日記』序・
加藤周一集 親鸞・ 森鴎外・ 中立主義の一一十年 現代日本語と社會 讀書の想い出・ 仲基後語・ 作品解説 唐木順三 臼井吉見 花田淸輝入門 : 寺田透 加藤周一 年譜・ : 參考文獻 : : ・篠田一士三夫 : 瀬沼茂樹三七一 ・三会
日本現代文學全集 104 唐木順三・日井吉見 花田淸輝・寺田透集 加藤周一 編集 整郎夫謙吉 井村野本 伊龜中平山 昭和 41 年 6 月 10 日印刷 昭和 41 年 6 月 19 日發行 定價 500 圓 ◎ KODANSHA 1966 から きじゅんぞう 唐木順 うすい よしみ 日井吉見 はなだきよてる 著者花田淸輝 だ てら とおる 寺田透 かとうしゅういち 加藤周 發行者野間省 印刷者北島織衞 發行所株式會社講談社 東京都文京區音羽町 3 ~ 19 電話東京 ( 94 の 1111 ( 大代表 ) 振替東京 3 9 3 0 社堂所社井瓧社社社就社 會 器藝會會會會會會 式式 式陽進紙紙 株株式式式式 株 山一業紙株株株株 刷興大岡第石工製紙業紙紙 スエ工 社社社瓧瓧ロ製製製 本會會會會會ク加 日式式式式式本本州倍菱崎 大株株株株株日日本安三紳 刷製刷本函皮ス紙紙紙紙紙 ロ 用用用用 眞印 し用 紙繪文貼返 印寫版製製背表ロ本函毖扉 落丁本・亂丁本はお取りかえいたします。