目 ・ : 高田瑞 明治の文藝評論 : ・ 大正期の文壇風聞記など谷澤永一 報淡交 昭和前期の文藝評論 : : : 長谷川 : 田光一 戰後の文藝批評 京羽 東音 月 題字・谷崎潤一郞 における自然主義の全盛期に相當した。漱石は自然派には屬さなか った。だから漱石は、自然派にとって一つの目の上の瘤であった。 瘤はもう一つあった。他ならぬ鸛外である。近代日本における文學 高田瑞穗評論活動に、最初にして最大の基盤を置いたものが、鸛外と逍遙と の間に續けられたいわゆる「沒理想論爭」であったことは周知の通 明治時代の歴史的意義は、今日、ある實感をともなって回想されりである。これは二十年代最大の論戦であった。その外が一度文 つつある。なぜなら、維新の改革から四十餘年に及ぶ目まぐるしい壇から遠ざかり、再度文壇に異常な創造力をもって復歸したのは、 近代化の展開が、その目まぐるしさを倍增して、第二次大戰の終結明治四十二年の『スパル』創刊とともにであったが、それを外に から二十餘年にわたる今日までに、もう一度繰り返されているから可能にした有力な一契機は、急騰する漱石の文名の與えた刺激に他 である。 ならなかった。 「日本國中何所を見渡したって、輝いてる斷面は一寸四方も無いぢ「學間の自由研究と藝術の自由とを妨げる國は榮える筈がない。」 ゃないか。悉く暗黑だ。」 ( 「文藝の主義」 ) 漱石が「それから」の主人公のロを通してこう訴えたのは、明治鸛外がこう記したのは、明治四十四年のことであった。 四十二年のことであった。明治日本の、日露戦後に到逹した近代國この『現代文藝評論集』に收録された明治の文藝評論は、高田半 家體制の一應の整備に對する、これはまことに痛烈な批判であっ峯の「當世書生氣質の批評」から小宮豐隆の「『それから』を讀む」 た。そしてこのことばは、戦後の日本が到逹した文化國家ないし平までである。試みに、漱石を一つの覗き眼鏡として、それらを通覽 和國家の外裝を破碎するに足る今日的生命を保有している。だからしてみることとする。そのためには、時の流れをあべこべにするの こそ、明治の批判精祁に漱石という存在が強い影響力を持ち得たのが便宜である。 であった。しかし、そういう漱石の文壇登場は、明治三十八年、 小宮豐隆が、漱石に最も近く位置した門下の一人であったことは、 「猫」を「ホトトギス」に連載し始めて後のことである。したがっ改めて言うまでもない。三篇の自然主義論をここに採られた安倍能 て、漱石の影響力は、四十年代にその浸透を始めた。ちょうど文壇成も、漱石門に屬し、朝日文藝欄にしばしば評論を掲げた。その自 明治の文藝評論 泉
現代文藝評論集目次 卷頭寫眞 高田半峯 當世書生氣質の批評 : 金子筑水 所謂社會小説・ : 文藝の將來 : 後藤宙外 政治小説を論ず・ : 眞面目なれ : 登張竹風 美的生活論とニイチヱ・ 解嘲・ 馬骨人言を難ず : 馬骨先生に答ふ : 姉崎嘲風 高山樗牛に答ふるの書 : 高山君に贈る・ 再び樗牛に與ふる書・ 大塚保治 ロマンチックを論じて我邦文藝の 現況に及ぶ・ 片山孤村 神經質の文學 : : 四 0
齋藤野の人 泉鏡花とロマンチク : ・ 魚住折蘆 眞を求めたる結果 : 自然主義は窮せしゃ : 自己主張の思想としての自然主義 : : : 一三三 安倍能成 自己の問題として見たる自然主義的 思想 : 自然主義に於ける浪漫的傾向 : 自然主義に於ける主觀の位置 : 宮豐隆 「それから」を讀む 中村吉右衞門論・ 赤木桁平 「遊 ~ 湯文學」の撲滅 所謂「自然主義前派」に就て : 本間久雄 民衆藝術の意義及び價値・ 民衆藝術の問題 : 人生派の批評と藝術派の批評 : 和辻哲郞 ある思想家の手紙 : 偶像崇拜の心理・ 中澤臨 現代文明を評し、當來の新文明をトす一九三 ・ : 一六四
生命の傳統 : 加藤一夫 民衆は何處に在りや : 民衆藝術の主張 : 厨川白村 小泉先生・ 竹内仁 阿部次郎氏の人格主義を難ず : 谷川徹三 文學・形式問答・ 世界文學と日本文學 : 小宮山明敏 無産派藝術家諸團體分裂の意義 : ・ : : : = き ・ : 一三四 杉山平助 商品としての文學 : 不安の思想とその超克 : シェストフ的不安について・ 小松淸 行動主義理論・ 長谷川如是閑 傳統文化と現代文化・ 日本文化と自然・ 山室靜 現在に於ける文學の立場 : 生命感の歪み : ・一一七 0 ・ : 実四 ・ : = 五三
童話 三枝博音 日本の文學への眼 : 人間としての森鴎外 : 矢崎彈 自我の發展における日本的性格 : ・ : : : 三 = 瀬沼茂樹 近代文學における自我の問題・ 淺見淵 「細雪」の世界・ 藝術主義の頽廢について : 十返肇 「文壇」崩壞論 : ・三四一 批評家の空轉 : 本多顯彰 トルストイと私・ 江藤淳 明治の一知識人 : 佐伯彰一 傳記と分析の間 作品解説・作家人門 年譜・ 參考文獻・ ・瀬沼茂樹三究 ・四一七 : ・三七九 ・ : 三四三
日本現代文學全集 107 現代文藝評論集 整郞夫謙吉 光健 藤 村野本 編井 伊龜中平山 昭和 44 年 7 月 10 日印刷 昭和 44 年 7 月 19 日發行 定價 80 圓 0 KÖDANSHA 1969 峯水 ~ 外 1 風 1 風 半筑一宙竹嘲 だ田こ子藤勧張崎 高金ご後と登姉 者 著 印刷 大日本印刷株式會社 發行者野間省 寫眞製 株式會社興陽社 版印刷 印刷者北島織衞 製本 大製株式會社 製函 株式會社岡山紙器所 背皮 小林榮商事株式會社 發行所株式會社講談社 表紙クロス 日本クロス工業株式會瓧 ロ繪用紙 日本加工製紙株式會社 東京都文京區音羽 2 ー 12 ー 21 本文用紙 本州製紙株式會社 電話東京 ( 942 ) 1111 ( 大代表 ) 函貼用紙 安倍川工業株式會社 郵便番號 112 見返し用紙 三菱製紙株式會社 振替東京 3930 扉用紙 神崎製紙株式會社 落丁本・亂丁本はお取りかえいたします。