人 - みる会図書館


検索対象: 創造力なき日本 : アートの現場で蘇る「覚悟」と「継続」
192件見つかりました。

1. 創造力なき日本 : アートの現場で蘇る「覚悟」と「継続」

いる。「歌ってみたーには、単にカラオケに乗せて歌っているだけの人もいれば、伴奏 も自分でやってる人やオリジナルソングをつくっている人もいます。それこそ自給自足 ですよね。そういう中でどうすれば再生回数が上がるかといったことを真剣に考えてい るんですから、そこは叩き上げのアーティストに近いんです。そうやって道のないとこ ろで新しい仕組みを一から築いていくという意味では村上さんにも近いんじゃないかな って。そういうところまでを考えれば、ニコ動のアマチュアの人たちをプロの人たちと 較べて軽んじるのは違う気がします。彼らは既存の商業的仕組みがないところで「もの 生づくり . をしている人たちなんですよ。 陸村上ジェイソンさんって人が、チェーンソーでアートを作っていたりするのなんかも おもしろいですよね ( 映画『日の金曜日』のジイソンにして彫刻を行なう人気シ 隆 上 村 リーズ ) 。やっていることはさまざまでも、たしかにセルフプロデュース能力が問われ てくるのはわかります。 談 対 特 199

2. 創造力なき日本 : アートの現場で蘇る「覚悟」と「継続」

第四章「正論の時代」における極論的人の育て方 そうならないようにするためにも、業界は新しい人たちを受け人れる土壌を広げ、新 しい人たちが出てきやすくするチャンスやヒントを提供していく必要があるのです。 145

3. 創造力なき日本 : アートの現場で蘇る「覚悟」と「継続」

・目指す位置と、それぞれに求められること アート業界に対してはいろいろなイメージがあるかもしれませんが、精神的なもろさ がある人、打たれ弱い人は、入ってくるべきではない世界といえます。 この世界を目指す人は、どちらかというと、人との交流が苦手で、すぐに閉じこもっ てしまいがちなタイプが多いものです。それでは入口の段階ですぐに挫折してしまうこ とになるだけです。 カイカイキキだけがその入口が狭くて厳しいのではないのかと勘繰る人もいるかもし れませんが、そうではありません。仮に、二十歳そこそこで大きな賞をとって脚光を浴 A 」い , っ一」 A 」 . には びたとしても、そこから先、ただ好きなように絵を描いていればいし 絶対になりません。 画商、エージェント、キュレーター、アドバイザーといった海千山千の人間たちとや り取りしながらやっていかなければならないのがこの世界です。そうした人たちとのや り取りを避けていたのでは、アマチュア画家で終わるだけです。 はたち ざせつ 152

4. 創造力なき日本 : アートの現場で蘇る「覚悟」と「継続」

辞めているのが現実です。 では、どんな人には残ってほしいと考え、どんな人なら辞めていってもかまわないと 考えているのかフ 残ってほしいのは才能のある人間なのか、覚悟のある人間なのかフ 方 て この本を読んでくれている人であれば、そんな疑問を持たれることもあるかもしれま 育 の せん。ただ、実際のところ、その部分でのこだわりはほとんどないのは確かです。なぜ 人 論かといえば、そういうことに関しては「縁がすべて」という感覚になっているからです。 極 残ってくれる人とは縁があり、去っていく人とは縁がない。それだけなのです。 お ・分担作業のキャスティングとルール のカイカイキキは " アートの複合企業 ~ となっているので、さまざまなかたちで分担作 正 業が行なわれています。 四制作に携わっているスタッフに関しては無作為に役割を分担していると思われるかも 第 しれませんが、そうではありません。ぼくとしては、研修期間などのうちに適性を見分 127

5. 創造力なき日本 : アートの現場で蘇る「覚悟」と「継続」

だからこそ、こうしたぬるま湯の特殊環境で育っことが普通とみなされ、「理不尽な ということが正論になる逆転現象が起きているわけです。 目に遭うのはおかしい アート業界のようなクリエイテイプな現場においては、その正論がジャマになります。 その人の才能がどれだけ豊かであったとしても、正論の中で生き、「正論の中でもの てづくり」をしようとするならば、深部の才能までは発揮されなくなってしまうからです。 の この世界においてはむしろ、どれだけの理不尽な目に遭い、それを抱え持てるかが問 人 論われてきます。 極 そうしたものを十字架として背負い、それを作品に反映させていくのが " 特殊職業 ~ おである芸術家の仕事です。 カイカイキキに人ってきた人たちは、いきなり社会のヒエラルキーの最下層にいる人 時 の間なのだと説教されて、場末の中小企業的社員教育を突きつけられることを理不尽に感 正 じるかもしれません。ぼくからすればそれは、理不尽でもなんでもないレベルのことで すが、特殊環境で育ってきた人たちは、まずその段階から経験しておく必要があります。 第 芸術家志向の若い人たちは、アート業界では、社会との関係性などは考える必要もな 123

6. 創造力なき日本 : アートの現場で蘇る「覚悟」と「継続」

・ニートは日本の不良債権か財産か ? 村上川上さんは「日本のニートは隠れた資産だともいえるので、ビジネスとしても海 といった発言もされてますよね。 外に対して競争力を持つような文化に育てていきたいー 川上ニコ動のユーザーにはやはりニートの人も結構多いんです。ューザーの中での割 合はそれほどではないにしても、ニートでネットをやっている人がニコ動のユーザーで ある割合は多い。 そ , つい , つ人たちは、ものをつくったりコメントをしたりとい一つことに アクテイプなんですね。僕自身、ニコ動は最低なサービスなんじゃないかという悩みを かぎ ずっと持ってたんですが ( 笑 ) 、実はそうではないかもしれないという鍵がそこにある 気もしてきたんです。ニコ動にはまっている人たちは、ニコ動がなければ別のもので遊 ぶはずなので、その人たちがニートである責任を感じることはないというのが、まずあ りますよね。そして今は、そういう人たちがつくって発信しているものが世界中から注 目されていて、世界中に日本のサプカルチャーファンを増やしているという動きがある わけです。つまり、日本の ( 国内総生産 ) には貢献していない人たちも、ニコ動 を使った文化活動によって日本の文化を宣伝してくれていることになるわけですね。宣 184

7. 創造力なき日本 : アートの現場で蘇る「覚悟」と「継続」

・若きクリエイターの「正論」と「今後」 村上新しい人たちのそうした創作をどうやって経済活動に結びつけていくのかという ことについては、僕たちもずっとトライしています。自給自足でやってる人たちには限 界があるかもしれませんが、僕らにしても資本の側でもなんでもないわけです。若い人 たち、あるいは川上さんがおっしやるような正論好きな人たちは「資本は嫌いだー「金 は汚い「自分たちの活動は自由なんだ」といったことを口にしがちですよね。また、 クリエイターの世界では、三十代半ばくらいでやめていく人も多くて、そういう人たち は「自分の家族を守るために」というように、また別の正論を口にします。ものづくり を続けていく中で、そうした感覚でいることには疑問が持たれますよね。 はや 川上今の世の中で正論が流行っているのは「よくわからないから」だと思うんです。 解決方法がないときにこそ正論が流行るんじゃないですかね。政治にしても明確な指標 を打ち出せないでいるから、みんなが正論を口にする。ビジネスの世界でも似たことは しえます。インターネットサービスでは、以前は第二のグーグルを目指すというように ぶち上げていたところも多かったのに、最近はむしろ ( 非営利組織 ) との境界の 200

8. 創造力なき日本 : アートの現場で蘇る「覚悟」と「継続」

そういうことで終わらせたくないからこそ、カイカイキキを三百年続かせていき、そ こから歴史に残る作品を生み出したいと考えているわけです。 北大路魯山人は「星岡茶寮」という会員制高級料亭を主宰していました。魯山人が世 を去ったあとには、当時の星岡茶寮を振り返るような本も出版されています。魯山人は 方も て揉めごとの多かった人なので、星岡茶寮にいた人たちとは憎しみ合っていた部分もあっ 人たのかもしれません。それでも結局は、そうした本が出るなどして、何かが残ります。 論それが芸術というものなのです。 カイカイキキでも「五百羅漢図。の制作に参加したスタッフは、それなりの役割を担 お っていた人間だけでも四十人ほどが辞めています。その人たちの多くはぼくのことを憎 代んで辞めていったのだと思います。しかし、ぼくが死んだあとには「あのときはどうだ 時 のったか ? 」というインタビューを受けることもあるかもしれないわけです。 正 そういうときに、その人たちが何と答えてくれても構いません。ただ、そういう可能 章 性までをふまえたうえで " 芸術作品をつくるというのはどういうことか ~ を伝えておき 四 第 たい部分はあります。心に残る傷にまでなるか否かも芸術の一部だと盲信しているので 143

9. 創造力なき日本 : アートの現場で蘇る「覚悟」と「継続」

三、戦略性をもって、とにかく描き続けること という三か条にも凝縮できます。 これは変化球としての提言などではありません。これまでこの業界で生きてきて、人 てを育ててきた経験からも、こうしたことこそが何より問われる部分になってくると断言 2 できるのです。 論最近、ライフネット生命保険副社長である岩瀬大輔という人が書いた『入社 1 年目の 極 教科書』 ( ダイヤモンド社 ) というビジネス書のベストセラーを読ませてもらいました。 お その本は、これから社会に出ていく人たちゃ転職する人たちに向けた″仕事をするうえ 時 での人門書です。 のそこでは「仕事における 3 つの原則ーが「一、頼まれたことは、必ずやりきる」「二、 と、まとめられていまし 正点で構わないから早く出せ、「三、つまらない仕事はない 第 この三要素にすべて賛同するかは別にしても " 仕事の極意 ~ というものはこれくらい いわせだいすけ 141

10. 創造力なき日本 : アートの現場で蘇る「覚悟」と「継続」

はじめ ( 花させることに集中していたと思います。 しかしぼくは絵がうまくないため、それでも生きていける現代美術という世界に活路 を見出しました。そこにはやはり、ぼくと同じように「絵が好きだけど、画力がない 「それでもこの世界で生きていきたいからどうしよう」と悩んでいる人たちが大勢いま す。そういう人たちに対してぼくは「だったらこうすればいいんだよ」ということを伝 えて、それとともに「それには覚悟が必要だよ」ということを伝えたいわけです。 かってのぼくと似たような立場にいる人たちの可能性を閉ざさないようにしたいだけ、 同病、相憐れむという感じです。ぼく自身、批評家やおたくたちに罵詈雑言を浴びせら れながらやってきているので、救われない人たちの気持ちがよくわかるということもそ の理由になっているのかもしれません。 現代美術の世界というのは、絵のうまいエリートだけが目指すものではなく、セカン こドオプションのエリアとも言えましよう。そのことをしつかりと認識している人たちに 対しては、先を行っている者として、道しるべを示してあげたいのです。