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図 1 世界最初のカビの図 ( フック、 1665 ) ( アインスワース「菌学史」 1976 より ) カビといい酵母という生物
がなんらかのシグナルを発信し、それを〃細胞が受け取って形態変化とともに発信細胞に対し接近行 動を起こしたことになる。またシグナルよセロファン膜透過性であることがわかる ( 図 3 、 4 2 細胞間の相互干渉 生活史に見られる性的細胞融合 ( 性接合 ) を細胞行動のレベルで観察し、解析を行なった。すなわ カ℃カ ッ胞ンⅱ イ細ナ ン O ラ の胞 胞下胞細 と右 細胞 4 細 は 4 図上ル図左 〃 9 異担子菌酵母との出会い
合成着色料を使ったタクアンを見慣れた眼には、窒素充填法に より貯蔵したタクアンの黄色はこよなく美しく見えた ( 図 7 ) 。 また、味も優れており、在来法と比較した優劣は明確であった。 また、漬け液の表面が産膜酵母で覆われ、デバリオミセスの他に ビキア属や赤色酵母などの雑菌が繁殖している従来法 ( 図 1 ) と は異なり、窒素充填法による漬け物工場は清潔であった ( 図 サッカロミセス・セルヴァジの分類と同定 サッカロミセス・セルヴァジは伝統的な酵母の分類法である形 態および生理・生化学的性状に基づき同定したが、この手法で同 一種となる種はしばしば複数の種よりなることが近年の化学分類 学的研究から明らかになっている。窒素ガス充填法によるタクア ン製造法において、この酵母種の果たす役割が重要であることが 明らかになるにつれ、同定が本当に正しいかどうか心配になっ た。また、製造工程の管理のことを考えると簡便・迅速な同定法 図 6 窒素ガス充境法によるタクアン漬 けの製造 ( 加藤司郎氏提供 ) 89 タクアンと塩と酵母
pH 6.0 ー 6.5 ーエタノーノレ 2.0 % 遠元糖 \ 3.0 ー 4.0 % ・ \ エタノール 0 % ⅸ ' 炭酸ガスデバリオミセス・ ′、ンゼニ 塩 漬 12 月。 . 始 1 月 サッカロミセス・ セルヴァジ エタノール 2. NaCl 5 ー 6 % 遭元糖寺 0 炭酸カ・スの 増減 pH 4.3 遠元糖寺 0 pH 3.4 6 月 7 月 炭酸ガス 0 アンモニア 漬液表面 0 0 00 のの・ 漬液 図 5 タクアン貯蔵中の化学成分の変化と微生物の消長の模式図 ( 加藤司郎 氏、 1994 年「漬け物の低温利用 ( 根菜類について ) 」「日本食品低温保蔵学会 誌」 Vol. 21 , No. 1 より改変 ) ハチルス・プ田 ( トミ、 ob ミミ brevis) やラクト・ ランタルム ( トミ、 0 c ミ、ミミミ ) などの 有害乳酸菌の過剰増殖を招き酸敗した。 これに対し窒素ガス充填法では、サッカロミ セス・セルヴァジが二月ごろから菌数が増加し はしめて優勢種となり、六月に他の有害酵母に 置き換えられるまで優勢種として維持される ( 図 4 ) 。この結果、は四・三、エタノール濃 度二 % の状態が維持され産膜酵母や有害乳酸菌 の生育が抑制される ( 図 5 ) 。 これら一連の研究に目鼻がついたころ、駒形 先生をお誘いし、県内大手のタクアン漬け工場 に加藤氏に案内していただいた。伝統的な発酵 食品の技術革新のモデルとなるので、当時、国 際協力事業団のバイオテクノロジー研修プロ ジェクトに参加し、研究室に滞在していた、タ イとインドネシアの研修生も連れていった。
ち、鳳および〃細胞を高濃度で混合し、顕微鏡下で接合プロセスを追跡した。図 5 ではペア細胞に番畑 号を付し、経時的に撮影してある。ペアのうち、一方 ( 〃細胞、やや長めの細胞 ) が接合管を形成伸 長させ、他方 ( 細胞、やや球に近い細胞 ) はある時間を置いたのち、接合管を形成、伸長させる。 接合管は互いに先端を認識し合い、融合する。核は一方の細胞から他方の細胞に移動 ( 〃細胞から 細胞へとは限らない ) する。融合細胞内では、核融合をすることなく一倍体二核 ( へテロキャリオ ン ) として、菌糸を形成する。二つの核は、前後して菌糸内へ順次移行する。 3 シグナルの検証 または〃細胞の培養上清 ( 液体培養の遠心上清 ) を含む培地に、鳳または〃細胞を固定化した寒 天フィルムを投入し、培養する。これを経時的に追跡すると、細胞の培養上清が 4 細胞に接合管形 成を誘導し、細胞分裂を抑制した ( 図 6 ) 。〃細胞の上清は細胞に何ら影響を与えなかった ( 接合 管形成の誘導なし、細胞分裂の抑制なし ) 。図 5 の細胞間相互干渉では、鳳細胞も接合管を形成する ことが観察されている。細胞の上清を含む培地に〃細胞を接種、培養し、得られる培養上清 ( 〃細 胞培養上清 ) は、細胞に接合管形成を誘導する。接合管を形成した細胞は、細胞分裂不能 合成抑制 ) 、接合可能であるので、性分化細胞と呼ぶことにした。したがって、シグナルは、性フェ ロモンのカテゴリーに入り、菌株の名称 ( ロドスポリデイウム・トルロイデス ) からロドトルシン ( 細胞がつくる ) およびロドトルシン ( 〃細胞がつくる ) と呼ぶことにした。以上を要約すると、 鳳細胞 ( 栄養細胞 ) は構成的に、〃細胞は性分化後に ( 誘導的に ) 性フェロモンを分泌する ( 図 7 ) 。
海生の各種抱子 図 5
る。そのころには菌類の観察はまた行なわれていない。菌類の中で肉眼的に認識されるものとしてキ ノコが木版刷りになったのは一四九一年で、かわいいキノコが描かれている。そこから百数十年ほど ト・フックによる有名なミ の後、最初に微小菌類、いわゆるカビが描かれたのは一六六五年、ロ。、 クログラフィアに描かれた図で、そこにはケカビの胞子嚢と。ハラのサビ病菌であるフラグミデイウム ( P き斗ミ三の冬胞子が美しく描かれてある。驚くことは、そこには図のスケールまで示されて いることである ( 図 1 ) 。また顕徴鏡の発見で知られているレーウエンフックがイギリス王立協会に 宛てた書簡 ( 一六七三年 ) には、カビ ( おそらくはケカビ ) の観察記録が載っている。このあたりが、 カビを最初に見た記録らしい。ところが同時に素晴らしい観察が載っている。それはレーウエンフッ クが彼の手製の顕微鏡で酵母を観察しているのである。それによると、発酵の終わったビールをグラ スに注いだところ懸濁した液の中に無数の微小な次のようなものが見えたとある。すなわち、いくっ かは球形、他のものが形不規則、二つ、三つあるいは四つ連なっている。他にも六つ連なっていたり、 完全なイーストの球体である : つまり、彼が単一な、また出芽増殖により酵母細胞集団を最初に = = 豐ロしたということになろ、つ。 というのは、両者の間に このカビと酵母の両方の最初の観察をます記憶にとどめていただきたい。 は観察方法に基本的な差があるのである。カビの場合には、植物の葉とか樹の表面とかの自然基質の 上に生えている姿を、まず肉眼的にとらえて詳細に観察するところから始まる。植物の観察態度から 導入された見方であろう。当初のこの態度がやがて徴生物学の発展にともなった純粋培養技術へと進
公園の池から採った一枚のカエデの落ち葉をシャーレに入れ水を注いで沈ませ、三日ほど経って水面 を顕微鏡下で見回しているとイカリ形の胞子がわっと浮かんでいたのである ( 図 1 ) 。 このようにして、図 1 に示したような水生不完全菌類の分類学的な研究を一応まとめて発表 ( 1957 ) 、 同菌群に興味を持っ研究者たちも現われたころ、不完全菌全体の分類体系をそれらの分生子形成様式 から見直す、という私本来の研究が忙しくなったので、対象はしばらく水から離れたが、なぜこのよ うな形の胞子を持っているのだろう、どうして水面下でしか胞子を作らないのか、どうやって分散す るのだろう、有性時代はどんな形になるのだろう、などといった疑問は常に頭から離れない。 日本各 地における野外の陸生菌類採集のときも、折りに触れては水環境にも首を突っ込んでは分離培養して みていた。陸生と水生の中間的な生態群とでもいうべき、独特な形態の胞子で分散する半水生不完全 菌 ( 図 2 ) にも探索を進めてみたり、形の持つ意味や生き方をいつも考えていた。野外から採集した カビを純粋に分離している過程で、どうも彼らの野外における動態に思いを馳せざるをえないのであ る。それそれの環境の示す意味、栄養の採り方や種の分散のしかたなどの点である。同定、分類から 生態へと思いを馳せたわけである。 朝霧という美しい景色も一つの水環境にちがいない、と気がついたのは一九六九年の夏である。私 は科学者の目で自然を直視する態度も大切であるが、また、霧のような模糊としたヴ = ールを通して 物事を見ることにもな。せか魅力を感じている。そのころ、滞在していたアメリカ、コーネル大学での
図 2 半水生不完全菌のさまざまな胞子 4 水環境が好きなカビを探る