微生物 - みる会図書館


検索対象: カビと酵母 : 生活の中の微生物
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1. カビと酵母 : 生活の中の微生物

自然界には、高等動物・植物とともに微生物が生活している。この生態系の一員として人類も生き てきた。昔の人々は微生物そのものをまったく知らなかったが、食品の保存や加工のために、まった く反対の二つの方法を取ってきた。今日の科学、技術からみると、一つは微生物の生育を阻害したり、 殺したりする方法であり、もう一つは、微生物の生育を促進することによって、優れた性質を有する 食品を作り出す方法である。 食品に対する徴生物の作用はしばしば発酵もしくは腐敗と呼ばれる。人類にとって有用な作用が発 酵であり、有害な作用が腐敗である。パストウールは発酵も腐敗も徴生物の無酸素呼吸、つまりエネ ルギー代謝にほかならないことを明らかにして微生物学と生化学の基礎を築いた。微生物が食品に作 用した結果、変化した食品を発酵産物として認識するか、腐敗産物とみるかは風土や民族の嗜好性に よって異なる場合が多い。つまり、徴生物と食品の関係は文化の影響を受けやすい性格のものである。 発酵の技術は、長年にわたる試行錯誤を経て、民族や地域の風土条件に適応して発達し、特有の食べ 酵母とカビの発酵の新しい側面 栃倉辰六郎

2. カビと酵母 : 生活の中の微生物

はその民族の固有の文化である。国際化が叫ばれる当今こそ、この文化を大切にし、この味わい深い 発酵食品を大切にしたいものである。 加藤氏は書く、「市販の漬け物の多くが調味漬けとなり、ほとんどの漬け物工場では徴生物の働き を押さえるために四苦八苦している。そのため、微生物を悪者あっかいにしている感さえある。ある 漬け物研究の権威者が、『漬け物には発酵は必要ない』というのも一面では正しいかもしれない。し かし、家庭で作った適度に発酵した白菜漬けの味は忘れられない。あれは微生物が作り出す味である。 ビール、酒、醤油、味噌と同様に本来、漬け物も発酵食品であるはずだ。確かに、食塩の使用量が以 前の半分以下となった現在、微生物の制御はむずかしいかもしれない。しかし、惣菜化した漬け物ば かりになってしまっては、長い間に培われた発酵食品としての漬け物文化を失うことになる」。まっ たく同感である。 人類は単独では生存できない。多くの生物とともに共存することにより人類の生存が可能になる。 その意味から、最近の清潔症候群 ( サニタリ : ゾンドローム ) ともいえる風潮は心配である。人は徴 生物を食べることも必要なのである。もし、人が微生物から隔離されて生存することが可能であれば、 話は別である。無菌マウスを無菌の環境で飼育すれば、通常のマウスより長生きできることが知られ ている。同時に通常の環境に移せば、微生物の感染により速やかに死減することも知られている。無 菌人間が無菌環境で生活できれば、長寿を保つであろう。しかし、地球上の物質循環の一翼を担う徴 生物が存在しない環境が仮にありえたとしても、そのような地球には人類が生存できる環境は存在し

3. カビと酵母 : 生活の中の微生物

人類は微生物の存在を知る以前から、微生物の機能を酒類をはじめとする各種発酵食品の製造に用 いてきた。さらに、微生物学の進歩にともない徴生物による新しい生産物の検索が行なわれ、抗生物 質をはじめ、各種アミノ酸、核酸調味料などが工業的に生産されている。酵母は微生物の中で、最も 早くから人類に用いられてきたもので、そのアルコール発酵の機能は広く世界の酒の醸造に利用され てきた。酵母という呼び名は正確な分類学上の言葉ではなく、通常の生育状態が主として単細胞であ る菌類の総称である。したがって、その系統も子嚢菌のものもあれば、それ以外の菌類に由来するも のもある。 典型的な酵母であるサッカロミセス・セレヴィシア工 ( S ミ c きミ es ce 、、 e ミ isi ミ ) は子嚢胞子を つくる子嚢菌由来の酵母であるが、ロドトルラ属 ( R ぎ 7 斗 ) は少し毛色の変わった酵母である。 ロドトルラ属の特徴は、胞子を形成せず、赤色ないしオレンジ色のコロニーを形成し、糖の発酵性が ないことである。自然界から糖を加えた培地で酵母の分離を試みると、必ずといってもよいほど頻繁 世界に先駆けるロドトルラ属酵母の研究 駒形和男

4. カビと酵母 : 生活の中の微生物

I S B N 4 ー 8 9 6 9 4 ー 4 0 9 ー 7 C 1 0 4 5 \ 2 8 0 0 E 定価 : 本体 2800 円十税 ⅡⅢⅧ II カビと酵母 生活の中の微生物 ・小崎道雄 編著 椿啓介 好評既刊 酒づくりの民族誌 山本紀夫・吉田集而編著 2400 円 世界各地の醸造酒と文化を紹介 おいしい花 吉田よし子著 1800 円 花の野菜・薬・酒。世界の花食文化 コーヒー博物誌 伊藤博著 2524 円 珈琲の魅力と歴史のすべてを語る 料理百珍集 原田信男校注・解説 2400 円 燗熟する江戸期の究極レシピ集が 蘇る 地球上のいたるところに存在し、 人間とも深いつながりをもつ微生 物。酒・チーズ・漬け物といった 食品はもとより、ペニシリンなど の重要な医薬品をもたらし、とき には、病気の原因ともなる。 その実体は、どのように研究され てきたのか。なにが、どこまでわ かっているのか。 生態・分類・細胞・生理・生化学・ 応用、各分野の専門家が研究秘話 をまじえて語る、不思議にあふれ た微生物の世界。 9 78 4 8 96 944099 ⅡⅢⅢⅢ馴川 II 1 9 2 1 0 4 5 0 2 800 4 生活の中・小崎道雄 カ編著 の微生物・椿・啓介 八坂書房 八坂書房・

5. カビと酵母 : 生活の中の微生物

I S B N 4 ー 8 9 6 9 4 ー 4 0 9 ー 7 C 1 0 4 5 \ 2 8 0 0 E 定価 : 本体 2800 円十税 ⅡⅢⅧ II カビと酵母 生活の中の微生物 ・小崎道雄 編著 椿啓介 好評既刊 酒づくりの民族誌 山本紀夫・吉田集而編著 2400 円 世界各地の醸造酒と文化を紹介 おいしい花 吉田よし子著 1800 円 花の野菜・薬・酒。世界の花食文化 コーヒー博物誌 伊藤博著 2524 円 珈琲の魅力と歴史のすべてを語る 料理百珍集 原田信男校注・解説 2400 円 燗熟する江戸期の究極レシピ集が 蘇る 地球上のいたるところに存在し、 人間とも深いつながりをもつ微生 物。酒・チーズ・漬け物といった 食品はもとより、ペニシリンなど の重要な医薬品をもたらし、とき には、病気の原因ともなる。 その実体は、どのように研究され てきたのか。なにが、どこまでわ かっているのか。 生態・分類・細胞・生理・生化学・ 応用、各分野の専門家が研究秘話 をまじえて語る、不思議にあふれ た微生物の世界。 9 78 4 8 96 944099 ⅡⅢⅢⅢ馴川 II 1 9 2 1 0 4 5 0 2 800 4 生活の中・小崎道雄 カ編著 の微生物・椿・啓介 八坂書房 八坂書房・

6. カビと酵母 : 生活の中の微生物

微生物学 の発想法庫 不思議にあふれた微生物の世界 執筆者一覧 ( 50 音順 ) 大嶋泰治 ( 関西大学教授 ) 小崎道雄 ( 昭和女子大学教授 ) 後藤昭ニ ( 山梨大学名誉教授 ) 駒形和男 ( 東京農業大学教授 ) 田中健治 ( 名古屋大学名誉教授 ) 椿啓介 ( 筑波大学名誉教授 ) 栃倉辰六郎 ( 神戸女子大学教授 ) 中瀬崇 ( 理化学研究所 ) 堀江義ー ( 千葉県中央博物館 ) 福井作造 ( 福山大学教授 ) 宮治誠 ( 千葉大学教授 ) カビの意味・酵母の文化を探る 定価 : [ 本体 000 円 ] 十税 八坂書房

7. カビと酵母 : 生活の中の微生物

ロドトルラ属と類縁酵母の化学分類 生物の化学分類は植物の精油や色素の構造から植物の相互関係を研究する手段として発展し、微生 物の分野では古くはイギリスのレイストリックによる糸状菌の色素の研究が挙けられよう。しかし、 最近の生化学、分子生物学、微生物遺伝学の発展は生物の遺伝を司る物質的基礎は ( デオキシ リポ核酸 ) にあることを明らかにした。さらに、 QZ<< 、、タン。 ( ク質のような情報高分子に 含まれる情報、あるいは生命の維持に必須の化合物の情報から微生物の分類、同定、系統の研究をす る分野が勃興し、これを微生物の化学分類学 (chemosystematics) という。われわれは、冒頭に述 べたような理由から、ロドトルラ属を化学分類学の立場から研究することとした。次に、酵母の化学 分類で用いられているおもな性状を簡単に述べる。 酵母のの塩基組成 微生物の類縁を知るうえで、の塩基配列を調べるのが一番よい方法であるが、多数の菌株に ついて調べることは容易ではない。しかし、 z の塩基組成、すなわち、 z のアデニン (< ) 、 であることが明らかになった。坂野博士は、この研究の最初にロドトルラ・グルティニスの IFO 0559 と IFO 0880 をなぜ選んだのかわからないと述べているが、これが研究のおもしろいところで あり、研究にも運があるといえよう。 ばっこう

8. カビと酵母 : 生活の中の微生物

カビと酵母 一生活の中の微生物ー 9

9. カビと酵母 : 生活の中の微生物

カビと酵母 生活の中の微生物 小崎道雄編著 椿啓介 ' 八坂書房

10. カビと酵母 : 生活の中の微生物

究 研 の 母 属 ロドトルラ属の研究の流れ 赤色酵母の存在は古くから知られており、一八五二年にフ = ルセニウスがクリプトコッカス・グル る ティ = ス ( C こ coccus ミミ il ) と記載したのが最初である。その後、しばらくの間この一群の酵駆 母の分類学的研究はなされていない。 これは、微生物学が応用、広くいえば醸造と医療を基礎としてに 界 世 発展してきたため、赤色酵母のような酵母が研究者の興味を引かなかったと思われる。 一九一五年から一九一七年にわたり当時の満州 ( 現在の中国の東北 ) の南満州鉄道株式会社 ( 満鉄 に分離される。しかし、現在までこれといった応用があるわけではない。 いわば「雑酵母」である。 しかし、この酵母は研究の歴史から、また近代微生物分類学の対象として、われわれが研究する価 値があるものと考えている。その理由は次のとおりである。 ( 1 ) この酵母は、歴史的にわが国の研究者により研究されてきたので、われわれがこの研究を受け 継ぎ、次の世代に伝えねばならない。 ( 2 ) 近代微生物分類学の手法を取り入れることにより、この酵母の生活環が明らかになり、将来他 の菌類の生活環の研究に役立っことが考えられる。 ( 3 ) 微生物分類学が、単なる種の配列・整理だけでなく、「物質のレベル」で菌類の有性時代が推 定できるようになる。