オクラトキシンの濃度が法的に規制されている。 アスペルギルス・ニガーミ g ミミ s ) やその変種であるアスペルギルス・アワモリ阯もミ、・ g ミミ ( ミきュ ) は、わが国では黒麹カビとして泡盛の醸造や有機酸、酵素類の発酵に利用されてい る、発酵工業ではきわめて重要な菌である。近年このアスペルギルス・ニガーとその近縁菌からオク ラトキシンの生産性が報告されている。系統的にはアスペルギルス・オクラセウスとアスペルギルス ・ニガーは近縁なためオクラトキシンの生産性が認められても不思議ではないが、黒麹として使用さ れている同じ種から食品衛生上重要なカビ毒の生産性が確認されたことは注目すべきであり、今後わ が国で使用されている黒麹菌の安全性について外国から指摘される前に研究をしなければならないで あろう。 偶然の選択ーーー痙攣性カビ毒フミトレモルジンの発見 今から二十数年前、私は旧陸軍の毒ガス学校の建物をそのまま利用した千葉大学腐敗研究所で千葉 県の農家の自家飯米を汚染するカビのカビ毒研究を行なっていた。建物は老朽化が激しく、ロの悪い 職員は名前のとおり建物も人間も腐っていると揶揄していた。当時はわが国にはどんなカビ毒生産菌 がいるかもはっきりせす、分離菌は集まりはしめていたが、。 とんなカビを研究するのかを考えている 状態であった。そんなおり、当時助教授だった山崎幹夫博士がカビ毒の生産性を検索するため、偶然
株は当時わが国では未報告のアスペルギルス・フミガッスの変種エリプティクス阯ミ g ミ、こ・ g ミ var e = き s 現在はアスペルギルス・ネオエリプティクス ) であったことがその後わかった。 このようにたまたま選んた株がフミトレモルジン、を生産し、偶然の間違いで分析方法が確立し て痙攣性カビ毒の研究が急速に進展した。その後フミトレモルジンはアスペルギルス・フミガッス の関連菌であるネオサルトリ ア属の菌に高い生産性があることが明らかにされた。後に多くのアスペ ルギルス、ペニシリウムからベルクロゲン、アフラトレウム、テレトレウム、ペニトレウム、。ハキシ リン 。ハリンなど多くの痙攣性カビ毒が発見されたが、生産菌の分布の広さや食品衛生学上の重 要性からフミトレモルジンはベルクロゲンとともに最も重要な痙攣性カビ毒として多くのカビ毒の教 科書に記述されている。 このように多くのカビからカビ毒生産性が報告されている。そのため、今日ではカビの生えた食品 は食べないようにと指導され、先進国では穀類や食品の製造、貯蔵にはカビによる汚染をどう防ぐか が食品衛生上重要な課題となっている。また、カビ毒の生産が報告されている同しカビは、抗生物質 をはじめ免疫抑制剤、高脂血症治療薬、虫歯予防剤などの医薬品や有機酸、糖質関連物質、核酸関連 物質、酵素などわれわれの生活になくてはならないものの製造に利用されている。これら「活性」の 強い猛獣たちと共存していくこととを、われわれはもう少し考えなければならないであろう。 229 人力ビ毒に会う
マウス、モルモッ ウズラなどの家禽類、ウシ、ブタ、ヒッジ、サル、ウサギ、ネコ、イヌ、ラット、 ハムスターなどの哺乳動物、ニジマスなどの魚類にも強い急性毒性を示した。ここで話が終われ ば単に強いカビ毒が発見されたことで終わるのであったが、その後の研究で多くの動物に強い発ガン 性が認められた。アフラトキシンの発ガン性は現在知られている天然物の中では最も強いものとされ ている。東南アジアの熱帯モンスーン地帯の穀類、食品からアフラトキシン生産性のアスペルギルス ・フラブスが普通に分離され、食品中からもアフラトキシンが検出されることから、この地域に多発 する肝臓ガンの原因の一つがアフラトキシン汚染ではないかと考えられている。また、アフラトキシ ンに汚染されている飼料を食べた乳牛からアフラトキシンが検出され、インドではアフラトキシン に汚染された食品を摂取した母親の母乳からアフラトキシンが検出され社会問題となった。現在ア フラトキシンは多くの国で食糧輸入に際し有機リン系殺虫剤などとともにモニタリングが行なわれて また、日本人としてさらに重要なことには、アフラトキシンの生産性が報告されたアスペルギルス ・フラブス、アスペルギルス ハラジティクスはわが国で古くより日本酒、醤油、味噌などの醸造に 麹として用いられてきたアスペルギルス・オリゼ ( e ミミ s 00 ) いミ ) やアスペルギルス・ソーエ 阯もミ g ミ s ミぎ ) と分類学的にきわめて近縁なカビであったことである。そのため、欧米では一 時、日本酒、醤油、味噌の醸造に用いられる麹菌や製品の安全性に疑問が投げかけられた。わが国で も国や大手醤油メーカーの研究所で麹菌のアフラトキシン生産性、麹菌とアスペルギルス・フラブス、 2
土の中のカビ毒生産菌 土壌の中には多くのカビが生息している。これらのカビの多くは乾燥した環境では生育できないた め乾燥した穀類などには生えることはできない。しかし、土壌中のアスペルギルスやペニシリウムの 中には乾燥した穀類に生えることのできる種が数多くいる。この土壌中に生息しているカビが収穫後 に穀類を汚染しカビ毒を生産する。この中には発ガン性カビ毒アフラトキシンの生産性が知られてい けいれん るアスペルギルス・フラブス阯もミ g ミミミ s ) 、痙攣性カビ毒フミトレモルジンやベルクロゲン を生産するアスペルギルス・フミガッス阯 e ミミ s ミミ ~ 、 s ) やネオサルトリア属 ( ~ ききき、・ ) 、発ガン性カビ毒ステリグマトシスチン生産性のエメリセラ属 ( E ミ e 、 7 ・ c ミアスペルギルスのテ レオモルフ属 ) 、オクラトキシン生産性のアスペルギルス・ = ガー阯 e ミミ e こなどの食品 カ 人 衛生上重要なカビが含まれる。 カビはいっ穀類を汚染するのであろうか。先進国の機械化された農業では穀類はコイ ( インなどで衄 リウム・シトリヌム ( Pe ミ ~ ミきミ ci 洋 il ミき ) 、ペニシリウム・シトリオニグラム ( p ミ iic ミミ 7 ・ 0 ミミ ) 、ペニシリウム・イスランジクム ( Pe ミ・ c ミきミぶミミ ) などの黄変米菌がこれに当た る。これらカビ毒を生産するカビは食糧や飼料を輸入にたよっているわが国では食品衛生上、特に重 要である。
関係が研究された。その結果、アスペルギルス・フラブスとアスペルギルス・オリゼ、アスペルギル ハラジティクスとアスペルギルス・ソーエは同じ種かきわめて近縁の種であることが明らかと ハラジティクス なった。現在ではこれらの種の関係はアスペルギルス・フラブスとアスペルギルス・ は野生株であるのに対し、アスペルギルス・オリゼとアスペルギルス・ソーエは私たちの祖先が野生 株から木の灰を用いてプロテアーゼ、アミラーゼの活性を指標として選抜を繰り返し育種してきたカ ビであるとされている。 また、わが国ではわすかであるが麹菌としてアスペルギルス・タマリ阯 s をミ、ミき斗 ) を用 いている。以前このカビのアフラトキシン生産性は報告されていたが分析方法等に問題があり生産性 は疑問視されていた。しかし、近年アフラトキシンり生産輌告された。また、鰹節のカビ付け工 程に用いるカビの仲間からもアフラトキシンの生産性が報告されており、わが国の麹菌や食品工業に 用いているカビのアフラトキシン生産性も再度検討が必要となろう。現在、わが国では穀類をはじめ ナツツなど各種輸入食品のアフラトキシン汚染検査は日常業務として行なわれており、高汚染の食品 がわれわれのロに直接入ることはほとんどないと一言えよう。このように菌類から動物に対しきわめて 強い急性毒性と発ガン性を示すアフラトキシンが発見されたことは、世界中の科学者の興味を引くこ ととなり、その後のカビ毒研究の始まりとなった。 276
161 ー 180 サトウキビ酒 12 細胞周期とシグナル応答 残雪上の菌類 55 産膜酵母 31 ー 33 , 81 シェリーの醸造法 34-36 シェリーフロール 38 シェリー酵母 40 , 42 , 161 シグナル受容体 156 シロキクラゲ 74 105 シクロクロロチン 212 射出胞子 子嚢世代 シトリニン 211 シゾ・ナッ G C 含量 155 セ / レフースボ . ′レレイティング タクアン漬けの酵母 82 一 85 タイ国黄変米 211 [ タ行 ] ソトロン 40 114 シストフイロノくシテイウム・インフ 76 207 シトレオビリジン 212 カロミセス属 18 , 19 , 74 ニアッム 115 , 117 イ 真性火落ち菌 199 水生カビ群 45 水生不完全菌群 45 スチールワインのアセトアルデヒド ~ 農 度 40 ステリグマシスチン 209 , 222 スペルモフトラ 77 スポロポロミセス属 75 生活史から眺めたカビと酵母 72 性接合した細胞における核の行動 タクアン貯蔵中の化学成分の変化 88 タクアン漬け製造工程の徴生物の消長 86 ー 89 タブイ 24 一 29 多相分類学 120 トルコスペルマム属の胞子 49 トリコデルマ 208 土壌由来性貯蔵カビ 208 トキシカリウム黄変米 212 凍結レプリカ法 134 電子顕徴鏡 131 テレオモルフ 73 , 207 デバリオミセス属 83 , 87 , 91 低塩タクアン製造法 80-82 ディープ・エッチング法 137 DNA 類縁性 107 土の中のカビ毒生産菌 209-211 漬け物の製造に関与する徴生物 82 貯蔵カビ 208 チモモナス属 22 チウの酵母 14 チウ 11 ー 19 タンニンの抗菌性 23 担子菌系酵母 75 , 103 タフリナ属 73 , 75 , 118 158 ー 159 性フェロモン 147 ー 157 生物試料の固定 132 ー 139 生物の化学分類 104 性分化細胞における核の行動 性分化細胞の行動 157 性分化のシグナル 153-154 赤色酵母 87 , 97 接合型変換機構 162 接合管の行動 157 158 トルラ属 98 , 103 , 115 トノレロプシス・ホノレミ 92 トレメラ属 77 [ ナ行 ] 軟ゲル麹の考案 230 ア索 引
プロティンーキナーゼおよびプロティンーフォスファターゼの活性化 ( 細胞質応答 ) カルシウム・カルモデ = リン複合体の濃度上昇でプロティンーキナーゼが自己修飾 ( リン酸化 ) を 受けて活性化される。この間にプロティンーフォスファターゼも活性化され、 cAMP- 依存性プロテ インーキナーゼ ()< キナーゼ ) が抑制される。細胞は 1 ーアレストされる。 5 核膜、核質および遺伝子の応答 性分化フ = ロモンに対する細胞深層の応答はいまだなにもわかっていない。したがって、性分化に 関するカスケードの全貌はわかっている部分が少ない。 異担子菌酵母 ( ロドスポリデイウム ) の行動 栄養増殖細胞はフ = ロモンに応答して合成 ( 核分裂・細胞分裂 ) を抑制し、生殖細胞に性分 化する。この過程において細胞や細胞核は、どのように行動するのだろうか ? また、異担子菌酵母出 ( 一倍体期 ) は細胞分裂において特異な核行動をとるといわれるが、それはどんな行動なのか ? 阿と 部さんが丹精を込めて実験を行なった。一連の研究で、彼女は農芸化学会から奨励賞を受けた。 子 性分化細胞 ( 接合管 ) の行動 担 異 トナー細胞なし ) 、細胞あたり一—四本 〃細胞をロドトルシンを含む培地に懸濁すると ( 性。 ( の接合管形成が見られる。数はシグナル濃度と関係があるらしい。接合管の形成位置は細胞の端部お
く、自然界より分離されたサッカロミセス・オヴィフォルミス、サッカロミセス・ノルべンシス、お よびサッカロミセス・ディアスタティカスの三株がほ・ほ時期を同じくして私たちの前に現われたこと が研究を可能にした ( これら異種とされる酵母が、相互に、またサッカロミセス・セレヴィシア工と 支障なく交雑できることから、現在ではその分類が改められている ) 。しかもそのうちの二株はスペ イン原産である。これはしかし偶然ではなかった。そのころサントリ ー社ではさまざまな実用酵母株 についての綿密な試験が繰り返されていた。したがって、このような知見が得られたのはサントリー 社の研究員とサンタマリア博士の寄与が大きい それでは当初の興味であった高次倍数体の成因と育種の問題は如何であろうか。私たちの実験では、る / 当一倍体株より体細胞組み換えにより / と住 / 型の二倍体細胞を分離し、これより一倍体の換 または型株と同じく、ホモタリズムの機構による接合型変換と細胞間の接合を経て / / / 性 型の四倍体株を得ることができる。 い 0 たんこの四倍体が、特におよび如型株で得られると、その変 成熟分裂分離株中には、 / と / 型の接合能を持っ二倍体株が得られ、以後はそれらを用いた交造 配により、四倍体また三倍体育種を容易に行なうことができる。この方法によれば、接合型遺伝子座の は / と〈テロとなるが、その他の染色体遺伝子を完全にホモに持っさまざまな倍数性株の造成も伝 可能で、酵母の性格に及・ほす倍数性の効果についての研究に役立つ。こうした実験を通して高次倍数 母 体の有用性は単に大型細胞であることによるのではなく、遺伝情報の多様性にあることを示唆する結 果を得た。しかし、醸造酵母や。 ( ン酵母においては、具体的にどのような遺伝情報の多様性が有用な
よびその近傍で、伸長方向はほ・ほ真っ直ぐで、曲がらない ( 二〇ミクロン以上になる ) 。一方、細胞田 を寒天フィルムに固定し、シグナル濃度勾配の場におくと、接合管はシグナル濃度の高い方に向かっ て伸長する。 「性」は種の保存と進化を許容するための仕組みとして必須である。酵母など、運動性を持たない 生物では、フ = ロモンをシグナルとして分泌し、性的。 ( トナーの確認と誘引のための行動として、 接合管を伸長させて、性的相手と融合する。つまり、接合管の伸長は性のための細胞行動といえる。 性分化細胞における核の行動 フェロモンで化学的に ( 性。ハ トナー細胞なしで ) 性分化させた細胞では、合成が抑制され ており、核は分裂することなく母細胞部分から接合管部分に移り、接合管の伸長とともに先端に向け てさらに移動していく。 接合管が二本以上の場合は、その一つに核の侵入が起こり、他は核なしで管 伸長が進む。隔壁やクランプ・コネクション ( クランプ ) はできない ( 図 6 ) 。 性接合した細胞 ( 二核細胞 ) における核の行動 性的パ トナー細胞間の接合は、接合管先端間の融合ではじまり、核が一方の細胞から他方の細胞 に移る ( 細胞質の交換も起こる ) 。次いで、二つの核が、新しく生じた菌糸部分に順次移り、前後に 並ぶ。核融合することはない。数時間 ( 正確な時間は不明 ) の後、合成抑制を解除、二つの核 はクランプ ( 菌糸にできるポケット構造 ) を利用して分裂し、菌糸内で配列修正を行ないつつ細胞分 裂、細胞伸長を遂げる ( 二核菌糸の生長 ) ( 図 8 ) 。約二四時間後、菌糸の先端近くに大きいポケット
タクアン漬けの製造工程の微生物の消長 —一二月に収穫した大根を塩押しし、洗浄後、コンクリ ート槽で荒漬けし、本漬けの後、調味 液に漬けてから袋詰めして殺菌、製品とするのが伝統的なタクアン漬け製造法である。この方法は開 放した貯蔵槽を用いる ( 図 1 ) 。加藤氏の開発した窒素ガス充填法ではコンクリ ート槽に気密性の袋 を内張りし、内側および外側をポリエチレンの袋で覆い、大根を漬け込んた後に、押板と重石をして から気密性の袋でシールし、内部の空気を窒素ガスで置換するものであり ( 図 6 ) 、酸素濃度は二 % 前後に保持される。この方法では一一 —一二月に漬け込んだ場合、八 % の食塩では七月以降も貯蔵可 能であったが、六—七 % の食塩では五—六月にかけて乳酸菌が生育して酸敗することがある。加藤氏 は生産現場での実証実験を繰り返し、実用に耐える技術を確立した。さらに安定した方法として確立 するために、この方法による貯蔵性改善の機構を明らかにしたいと考え、関与する微生物である酵母 と乳酸菌の動態と漬け液成分との関係を検討した。 小規模の実験装置を作成し、経時的に酵母、乳酸菌を定量的に分離し、また、漬け液成分とガス相 を分析した。酵母は生菌数を計算した平板培地から、コロニーの性状を観察し、その量比を反映する ように一試料当たり一二株前後を釣り菌し、一二六株を得た。グルコースなど五種類の糖の資化性、 硝酸態窒素の資化性、アルコール発酵能、、 ビタミン要求性、三〇℃、三七℃、および四二℃での生育、 コロニーの性状および細胞の形態に基づき、群別し、四九株について詳細な同定実験を行なった。ま