8 徴生物学の一里塚 同じ頃 , ドイツでは染料工業が発達し , この工業と細菌学との間に密接な 関係が生まれ , 化学療法の発展と同様に現在日常行っている染色法が進歩し た . 化学療法の発達は , ェールリッヒからドマーク (Domagk) へと直線的 に飛躍し , サルファ剤の発見に至って頂点に達した . 生きた病原体を表現するために長い間使われてきた一般的用語は "Virus ( ウイルス ) " という言葉で , あらゆる病原体がこの言葉で表現されていた . 多くの感染症が細菌によって起こることが容易に証明されたが , なかなか証 明できないものもあった . ときには , 感染材料の体液を細菌が通らないよう な非常に孔の小さい瀉過器で過し , その瀉液を注射しただけでも宿主から 宿主へと病気を移すことができた . この病原体は過器を通過し , 新しい宿 主に病気を起こし , その動物からとった液を再び濵過したものも別の宿主に 感染を起こすことが示された . それが生きた病原体であることは明らかであ った . べイエリンク (Beijerinck) は , これを " 液性病原体 " ( あるいは非粒子 性 ) と呼んだ . 他の人は , " 過性ウイルス " と呼んだ . その後 , " ウイルス " という言葉はだんだんと過性ウイルスに限定されるようになり , 今では濵 過性という言葉は省かれてしまった . 現在では , ウイルスが粒子であること がわかり , スタンレイ (Stanley) が結晶化に成功して以来 , 他の生物とはま ったく異なることがわかったので , 多くの人は生物として認めることを拒否 している . 予想されていた考えが , のちに論争の余地のない事実の重みのも とにどのように捨てられねばならないかを知るためにも , べイエリンク ( 植 物ウイルス ) とレフラー ( 動物ウイルス ) の章は読む価値がある . ウイルスは 偏性寄生体であるため , ウイルス学の発展は細菌学よりもずっと遅れた . 現 在 , ウイルス学は急速に発展している . この大きな展開は , 細菌ウイルスの 発見を起源とした概念の発展によるものである . 細菌ウイルス , すなわちバ クテリオファージは , 20 世紀のはじめに発見された . 実用的な応用面はあま りなかったが , その理論的な意義は分子生物学と遺伝学の広い分野に影響を 及ぼした . ここに収録したデレル (d'Herelle) の論文は , 細菌ウイルスの最 初の発見を述べている . 微生物学において発展した最も重要な応用面の 1 つは , 病気に対する特異 的獲得免疫の性質を理解することであった . このような免疫がありうること は昔からわかっていたが , この知識を具体化したのはジェンナー (Jenner) で , 病気の徴生物説が確立されるずっと以前に , 天然痘予防のためのすばら
208 微生物学の一里塚 いように注意しながら深部をとった . 深部層の寒天によって健康植物を感染 させた . 感染は , 無菌の瀉液を用いたときとまったく同じ程度に起こった . ゆえに , 明らかにこの病原体は液体であり , もっと正確にいえば水溶性であ ると考えるべきである . 植物汁を用いた感染実験は , プラス ( Pravaz ) の皮下用針を用いて行っ た . 感染させるのに最適な部位は茎の最も若い部分で , あまり損傷させるこ となく , 操作しやすい . 感染が頂上の芽の中央葉柄に近いほど , 結果がより 早くみられる . ウイルスが植物の中をゆっくりと動くこと , そして細胞分裂 が行われている若い葉の部分だけが感染に感受性のあることがわかった . 成 長した葉と若い葉でも , 細胞分裂がすでにとまってしまったものにはウイ ルスに対してまったく感受性がなく , 中央葉柄部分に向かって運ぶことがで きるときでも発病しない . もし , 茎のふくれている内部節が感染すれば , 10 ~ 12 日後に頂上の中央葉柄から出た若い葉に病気の最初の徴候がみられる . しかし , 注意して頂上の中央葉柄にできるだけ近いところに感染させると , 3 ~ 4 日後にはすでに , まだ芽の中にある若い小さな葉に黄色い斑点とくる くる巻いてねじれた部分がみられる . 多くの葉を感染させるにも , ごく少量のウイルスで十分である . 次に , 病 気の葉から得た材料で , 無限の新しい植物を感染させることができる . した がって , ウイルスが植物内で増殖することは明らかである . 上記のことか ら , この増殖は , 成長した植物細胞ではなく細胞分裂が起こっている組織中 で起こることは明らかである . このウイルスはタバコの外部でも存在できるが , 増殖はできない . 次の事 実からこのように結論した . ウイルスの無菌瀉液を健康なタバコの若い組織 からとった新鮮な汁と混ぜても , ウイルスが増殖しないことが実験的感染に よって証明された . むしろ , 植物汁の代わりに純水を用いたときと同様に ウイルスは希釈されただけである . 植物を感染させるために用いるウイルスの量は , モザイク病の症状を現す のに大きな影響があるので , 上の主張が正しいことを決定するのは困難でな い . 少量のウイルスを用いると上記の結果が得られ , 大量のウイルスを用い ると特徴的な形の非常に歪んだ葉が得られる . 歪んだ葉をつくるためには , 希釈したウイルスでは , 希釈していないものよりずっと大量に注射しなけれ ばならない . この方法で , いろいろな液の中でウイルスが増殖するかしない
第Ⅳ部ウイルス学刀 1 かいフィルターを通過する病原体が明らかに生きた植物内でのみ増殖できる こと , まったく安定したものに思えることを記載している . これらの観察を 説明しようとする試みにおいて , 彼は窮地に陥っていることに気がついた 彼の観察を説明するために役立つような , 細胞機能の生理学的 , 生化学的情 報がまだ入手でぎなかったのである . しかし , 彼がほとんどうまくいい当て ていることは興味深い . ウイルスが宿主植物の生きた原形質内にとり込まれ るようになるという彼の説は 1899 年のものであるが , ウイルスの増殖につ いての今日の考えにほとんど近いものの 1 つである . この仮説は , この問題 への彼のすばらしい洞察力を示している . べイエリンクの実験感染についての記載はかなりくわしいものであったの で , 容易に再現することができた . 瀉液中のウイルスの量を大ざっぱに定量 できることを示している . 試料中にどれぐらいの感染物質が存在しているか を知ることが必要であるので , これはウイルス学の研究にとって重要な考え 方である . のちに考えられたタバコモザイク病ウイルスの定量法はもっと 正確で , ついにウイルスの物理的 , 化学的研究が可能になり , スタンレイ ( Stanley ) が結晶化に成功した ( p. 215 参照 ). ( 訳 : 石関 )
209 第Ⅳ部ウイルス学 かをみることが容易にできる . 上記のように , 人工的な状態のもとではウイ ルスの増殖はみられなかったので , このウイルスが増殖する唯一の方法は , 分裂している植物の細胞内であると信ずる . ウイルスが宿主植物の生きた原形質と結合するときにだけ増殖できるとい うことは , その可溶性あるいは液状性に関係するのかもしれない . CO れ g ⅲ ″襯が顕徴鏡で直接みることができないほど小さいものだとしても , なぜ・ 宿主を離れると普通の細菌のように増殖できないのか理解しにくい . さら に , 顕徴鏡でみえない病原体が粒子であるならば , ゼラチン平板上に肉眼で みえるコロニーを生ずるであろうと思われる . モザイクウイルスのような可溶性 , 拡散性のウイルスは , ウイルスの増 によって培地が栄養源として用いられ , そのことにより化学的な性質が変わ るならば , ゼラチン培地か寒天培地が着色されたり , 屈折が変わったりする はずである . 私の手もとにある麦芽エキスゼラチンと植物せんじ汁に 10 % ゼラチンと 2 % 白糖を加えたものは , いずれも寄生性および腐生性の植物細 菌の増殖のためのすぐれた培地であるが , ウイルスを接種しても増殖はみら れなかった . また , 可溶性のものが増殖するということは想像しにくいこと であるが , 信じられないことではないと思う . 分子の分裂過程が増殖に導く と仮定するのは賢明であるとは思えない . また , これを説明するために仮定 しなければならない分子がそれを養うという考えは , 実際には自然に反さな いとしても , 私には不明瞭に思える . 病原体は , 増殖するために細胞の生きた原形質内に入り込まねばならな い . そして増殖は , 細胞の増殖とともにいわば受動的に行われるというのが 部分的な説明である . しかし , 生きた原形質内へのウイルスの組み込みは , たとえ事実として示されても , 理解のできる過程とはどうしても考えられな いので , この見解は 1 つのなぞを残す . タ / くコの生育している土がウイルスに感染すると , ある期間ののちに頂 . 上の芽に病気が現れる . その出現までの時間は植物の大ぎさによる . 若い 植物では 2 週間で最初の症状がみられたが , 大きく古いものでは 4 ~ 6 週 . 間後に , 末端の中央葉柄から出た新しい葉に最初の症状が現れた . ゆえ に , 根と茎はかなり離れたところまでウイルスを運ぶことがでぎるに違いな 20cm かそれ以上の高さのときにのみ根から植物を感染させることがでぎ
刀 8 徴生物学の一里塚 に , いろいろな蛋白の結品化に用いられていた方法である . ここで新しいこ とは , とられた結晶がタ / くコの葉に対して毒性を示し , 極端に希釈してもな お典型的なモザイク病を起こすことができるということである . 多くの植物性ウイルスは , それに感受性のある宿主内で増殖すると活性の あるウイルスを非常にたくさん産生する . このように収量がよいので , ウイ ルス粒子を非常に多く含む植物の汁をとることができる . そのことが , ウイ ルスの結晶化を容易にしたといえる . 最初の成功がタノくコモザイクウイルス であった理由がここにある . この例でもまた , 正しい実験システムを選ぶこ との重要さが示されている . 動物性ウイルスは , 結晶化するのが非常にむず かしいことがわかった . 後の研究で , スタンレイその他の研究者は , 結晶としたタバコモザイクウ イルスが蛋白以外の物質も含んでいることを示した . すなわち , 若干のリポ 核酸が発見されている . しかし , 高純度のタノくコモザイクウイルス中には , これらの 2 つの物質 , すなわち蛋白と核酸しか発見されていないことは重要 なことである . 多くの動物性ウイルスはもっと複雑にみえるが , タ / くコモザ イクウイルス以外の多くのウイルスも上記の 2 物質しか含んでいない . 今ま で研究されている細菌性ウイルスは , 蛋白とデオキシリポ核酸で構成されて いることがわかっている ( 訳者注 : 蛋白とリポ核酸から成る細菌性ウイルスもそ の後発見された ). スタンレイの研究により , 生命そのものの根源を証明するまったく新し い研究分野が開かれた . ( 訳 : 石関 )
刀 4 徴生物学の一里塚 症例中 , 1 例は尿から , もう 1 例は便から , パラチフス A 菌を溶解するよう な過性徴生物を分離した . もっとも , この微生物の溶解能は常に志賀菌の 場合より著しく劣っていた . なお , パラチフス A 菌を溶解させる特性は , 連 続して培養を続けると低下した . 以上を要約すると , 赤痢の回復期患者の一部において赤痢菌が消滅するの と並行して , 赤痢菌に拮抗作用を有する目にみえない微生物が出現する . の徴生物は実際は免疫性をもつ菌にほかならず , 真のパクテリオファージで ある . この微生物の寄生性はきわめて特異的で , 特定の種に限定されている が , 種々の菌に対してもしだいに活性を獲得するようになる . したがって , 赤痢菌においては , 感染患者に直接由来する免疫のほかに , 拮抗性徴生物に 由来する免疫も存在すると思われる . この現象は , 赤痢に限らず一般的にも 意義深いものであると考えられる . なぜならば , パラチフスの 2 症例でも , それほど強くはなかったが同様な現象を観察することができたからである . ノくクテリオファージまたは細菌ウイルスは , 1905 年トウォルト (Twort) に よって発見された . しかし彼の研究は明確なものではなかったし , また , そ の後引き続いて研究は行われなかった . それで私は , ここにデレルの研究を とりあげた . この論文は , この興味深い徴生物について広範な科学的研究が 行われる端緒となったものである . 現在までに研究されたほとんどの細菌は , 細菌性ウイルスの宿主であるこ とがわかっている . デレルが疑問をもったように この現象は広くゆきわた っている . しかし , 細菌ウイルスが細菌感染の治療または免疫性付与に有用 であろうと考えた彼の希望は , かなわなかった . デレルは , われわれが現在 用いている " 免疫 ' ' という言葉の意味をほとんど理解していなかった . なぜ ならば , 細菌ウイルスを注射しても細菌に対する抗体生成の誘発は期待でき ない . 細菌ウイルスは , 現在でも研究室において興味のある課題である . 細 菌ウイルスはウイルス再生の研究モデルとして利用され , 分子遺伝学に大き な影響を与えた . また , しばしば分離される病原菌である黄色ブドウ球菌の 型別法として臨床細菌学の分野でも利用されている . しかし , 細菌ウイルス を治療剤として利用しようとする試みは成功していない . ( 訳 : 石関 )
168 微生物学の一里塚 痘瘡は古代から知られている病気である . その症状は特徴的なので , 人か ら人に伝染するのが容易にわかり , 伝染性であると決定することがでぎた . 今日では , その原因は大型の濵過性ウイルスであることがわかっているが , ウイルスという言葉はジェンナーが用いた意味とは異なっている . 種痘は , それ以前も極東で何世紀も実施されてきた . そして , トルコ駐在 の英国大使夫人 , メアリー・モンターギュ ( Mary Montagu ) がトルコから英 国へ導入した . この方法は最初は非常に反対されたが , ついに英国でも行わ れるようになった . しかし , 合併症が起こることが多く , 種痘には常に危険 が伴った . 今日では , 牛痘ウイルスは痘瘡ウイルスの変異株で人に対する毒性を失っ たものとみなされている . 牛痘ウイルスは , ウイルス中和抗体を産生させる 能力を保っている . そのため牛痘の接種が行われている . それは予防接種 (vaccination, vacca= 雌牛 ) といわれ , のちにこの言葉はすべての人工免疫 に用いられるようになった . ジェンナーの観察力はまったく鋭い . 彼は多くの症例をたくさん集めるこ とができ , それらから論理的な説を立てた . 彼がその理論をただちに実験に 移し , その正しさを証明できたことは幸運であった . ジェンナーが最初の症 例を The Transactions of the Royal society に発表しようと試みたことは 興味深い . その研究が拒否されたとき , 彼は 23 症例を集めて本を出版した . 最初に本を出版したとき , ジェンナーは多くの抵抗に出会ったが , 種痘法は 簡単で安全度が高いことから , ついに一般的な医学的予防法として認められ るようになった . ( 訳 : 藤野・竹田・清水 )
刀 0 徴生物学の一里塚 る . 根に修があることが必要なのか , 完全な根の表面からウイルスがとり込 まれるのかは不明である . 病原体は , 感染がはじまったのちに形成される葉 しか攻撃できないので , 感染している葉よりも下にある健康な葉の数によっ て , 自然に生育している植物が根からウイルスを吸収して感染した時期をだ いたい知ることができる . ウイルスは乾燥することができ , 乾燥しても毒性は変化しない . ゆえに 土の中で越冬することができるが , 多くの細菌や酵母のように部分的には破 壊されると思われる . 毒性のある植物汁をアルコールで沈澱させ , 40 。 C で乾燥しても , 毒性は 残っている . また , 乾燥した葉にも毒性は残っているので , 2 年前の乾燥標本でもまだ 感染実験に適している . ゆえに , 収穫の間に葉の斑点の死んだ組織が破れて 乾燥し , ほこりとなりやすいが , これが病気を広げることは明らかであ る . 予期されるように , 湿った状態では , 沸騰水 , および 90 ℃の水によって もウイルスは不活化される . 不活化が起こる最低温度は調べなかったが , 70 ~ 80 ℃の間であると思われる . タバコモザイク病と同じ過程で , Co 厩鰓ⅲ川月ⅲ d リ川によって起こる一群 の植物病が存在する可能性がある . 1894 年に , アメリカでスミス (Erwin Smith) が peach yellow と peach rosette という名で発表したももの木の病 気は , 彼の記載によれば , これに属することは疑いない . しかし , 彼が記載 しているように , 芽つぎまたはつぎ木によってだけ病気が移るのかどうか , またありそうなことであるが , 死んだ組織の汁によって移るのかどうかはま だ確実ではない . タバコモザイク病ウイルスが瀉過性であることは , 1892 年にイワノフスキ イ (lvanowsky) が発見したが , べイエリンクはそのことを知らなかった . リンクは誤まっていたが , その他の観察は非常に価値がある . 彼は , 最も細 タバコモザイク病ウイルスが拡散性であるということに関しては , べイエ の論文をとりあげた . イエリンクは , イワノフスキイよりもさらに研究を進めたので , こでは彼
第Ⅳ部ウイルス学 205 中に病原体が存在すると確定できるであろう . この研究を続けるために , 委 員会は資材と経費の認可を求めた . この研究は , 純粋な科学的価値のほか , 非常に実用的な可能性を与えるものと思われる . 委員会のさらにくわし い研究によって , この液の作用が実際にそのような小さい微生物によるこ とが確認されたことから , 今日までまだ発見されていない痘瘡 , 牛痘 , 猩紅 熱 , 麻疹 , 発疹チフス , 牛疫など , 他の多くの感染症の病原体にもこれが最 小の微生物群に属するかもしれないという考えが提起されよう . もし , 細菌 を含まない牛痘のリンパ液をつくることができれば , 種痘の副作用に対する 世論も弱まるであろう . 感染材料の無菌瀉液は , 上記の各種疾患の本質についての重要な新しい結 論を得るために , 最適の材料を与えるものと確信する . さらに , 今までに述べたすべての推論から , できるだけ早く多くの動物を 用いて瀉液の作用の研究を続けることを強く要望する . この論文は , 現在瀉過性ウイルスと呼ばれている病原体の出現を最初に証 明したものである . この論文のデータは , 明解で理解しやすい . 著者らはあ らゆる可能性を考えた . そして , ロ蹄病が細菌過器を通過し , 顕微鏡でみ えない非常に小さい寄生体によって起こることは疑う余地がなくなった . そ の寄生体は普通の培地では増殖しないが , この点については強調されていな い . 現在ではすべての瀉過性ウイルスは偏性寄生性で , 生きた宿主なしでは 培養できないことがわかっている . 著者らは , その発見の重要性によく気づいていた . また , 痘瘡 , 牛痘 , 牛 疫 , 麻疹など , 他の感染症も過性ウイルスによって起こるという彼らの推 理は正しかったと考察している . しかし , 彼らが顕徴鏡でみえない微生物に よって起こる可能性のある病気としてあげたうち , 猩紅熱は連鎖球菌による もので , 発疹チフスはリケッチアによるものである . 著者らがこのような明白な結果を得ることができたのは , 彼らが研究して いた病気がロ蹄病であったからだということを再び指摘しておきたい . それ は家畜の病気であるので , 感染実験を容易に行うことができた . 症状は非常 に特徴的で , 皮膚に生じた病巣にウイルスが存在している . このために他の 物質があまり混じらない検体をとることができた . これらの特徴によって ,
第Ⅳ部 ウイルス学