非常 - みる会図書館


検索対象: 微生物学の一里塚
192件見つかりました。

1. 微生物学の一里塚

第 V 部化学療法学 267 がしばしばある . このような場合 , 目的とする徴生物がペニシリンに感受 性でなく , しかも妨害している徴生物が感受性菌である場合には , ペニシリ ンを使用して妨害菌の発育を阻止し , 目的の細菌を正常に増殖させること が可能である . 人体の場合にみられるこのような例は , インフルエンザ菌 (Pfeiffer), ポルデ (Bordet) の百日咳菌 , およびその他の徴生物である . 呼 吸器管にはインフル = ンザ菌のほかに , 連鎖球菌 , 肺炎双球菌 , ブドウ球菌 およびグラム陰性球菌が共存していることが多い . これらは , あるグラム 陰性球菌を除けばすべてペニシリンに非常に敏感であるので , ペニシリンを 少し培地に加えるとこれらは完全に阻止されるが , 一方 , インフルエンザ菌 の増殖は阻止されない . ペ = シリンの一定量を平板をつくる前の溶解した培 地に混入してもよいが , 感染材料 , 喀痰 , 鼻粘液などを平板に通常の方法で 塗抹し , 次に平板の半分にペ = シリンの 2 ~ 6 滴 ( カ価による ) を広げるの が簡単であり , しかも非常に満足できる結果を得る方法である . この少量の 液体は寒天に浸み込み , 24 時間培養後には , ペ = シリンのない平板の半分 には細菌が正常に増殖するのに , ペニシリンを塗抹した半分にはインフルエ ンザ菌だけが増殖し , ある種のグラム陰性球菌 , まれに他の徴生物がみられ るにすぎない . この方法によって , これらのペ = シリンに非感受性の徴生物 の分離がきわめて容易にできるようになり , インフルエンザ菌が喀痰の塗抹 べニシリンで処理していない平板 標本の顕微鏡検査でみえなかった検体や , では検出できなかった検体からもインフルエンザ菌が検出されるようになっ た . もちろん , この方法を採用する場合には , インフル = ンザ菌の発育に最 も都合のよい培地 , たとえばチ , コレート寒天培地 ( 煮沸した血液寒天 ) を 使用しなければならない . ペ = シリンによ。て肺炎双球菌とブドウ球菌の増 殖が抑制されるために , 血液寒天上の喀痰の場合にみられるこれらの菌の共 生作用は失われる . 血液寒天のみを使用すると , インフルエンザ菌の集落が 非常に小さいために見落しやすい . 喀痰 , 鼻腔後部および咽頭綿棒採取液について行ったいくっかの観察から いえることは , ペニシリンの使用によって , いろいろな病気にかかっている 患者から , また外見上健康な人からインフルエンザ菌が分離されやすくなっ たように思われるということである .

2. 微生物学の一里塚

730 微生物学の一里塚 外傷性感染症の病因論の研究 コッホ : lnvestigatlons into the eti 0 logy 0 f traumatic infective diseases 78 砌・沢 0 訪 Koch, R0bert. 1880. ~ お〃 g 7 な切舫 0 g ツ 可 44 4 ー可 e の e 市お . Translated by 、 v. 宿【 son Cheyne ・ London, The New Sydenham Society ・ 現在用いている「外傷性感染症」という用語は , 外傷熱 , 化膿性感染症 , 腐敗性感染症 , 敗血症 , 膿血症といわれていた一群の病気を意味している . しかしその後 ( これらの病気は本質的に同じ性質のものであるという考えが 一般に認められるようになったため ) , 「膿血症性」あるいは「敗血症性疾患」 といわれるようになった . 人や下等動物の正常な血液や組織中には常に徴生物が存在していると主張 している人がかなり多い . このことから , これらの微生物は感染症の原因で はないが , 病気になるとこれらの徴生物が異常に増加すると考えられてい る . というのは , 動物の体液が病気によって変化すると , これらの微生物の 増殖に都合のよい状態になるからである . ・・しかし , もし正常血液中に 細菌が存在し , それと同じ細菌 , たとえば球菌が病気によって変化した器官 に存在するとすれば , 菌数が異常に多いとしてもその球菌が病気の原因であ るという証明をすることはたいへん困難なことであり , おそらく実際に証明 することはできない . 私自身の経験によれば , 血液中に細菌が存在するかどうかを調べるために は , のちに記載する染色法と適当な照明器具を用いない限り , 検査は非常に

3. 微生物学の一里塚

% 4 徴生物学の一里塚 たが , そのとき彼の指には感染物質 * が付着していた . 感染物質で汚染され た手で搾乳をすると病気がウシに移り , そのウシからさらに別の乳しぼりの 女に移り , ついには牧場中に広がってほとんどのウシや従業員が感染するこ とになる . この病気には牛痘という名がつけられている . この病気にかかる と , ウシの乳首には不規則な膿胞が生じる . これらの膿胞は , 適当な時期に治療を行わない限り , 悪化して非常に 厄介な侵蝕性潰瘍になることが多い . 動物は元気がなくなり , ミルクの分泌 がたいへん少なくなる . 搾乳者の手の他の部分や , ときには手首にも炎症性 の斑点が現れはじめる . このようにして , 病気はウマからウシの乳首へ , ウシから人へと広がって 種々の病的材料がこの系に入り込むと , 同様の影響を及ぼすことがある . しかし , 牛痘ウイルスが起こす非常に奇異な現象は , このようにして感染し た人はその後一生痘瘡にかかる心配がないということである . 痘瘡の浸出物 にさらされたこともなく皮膚に刺されたこともないのに , 痘瘡にかからなく なるのである . このような異常な事実を証明するために , 読者に一 , 三の症例を示したい . 症例 1. ジョゼフ・メレット . 現在はパークレーの伯爵の庭師であるが , 1770 年には農場主の使用人としてその近くに住み , ときどき , 搾乳を手伝っ ていた . あるとき , メレットがよく世話をしていた農場のウマが数頭ひずめ の病気にかかりはじめた . まもなくウシが牛痘にかかり , 彼の手にもいくつ かの腫れものができた . 続いて両方の腋窩が腫れてかたくなった . 数日間は 非常に気分が悪くて , ふだんの仕事ができなかった . ウシに病気が現れる前 には , 農場に新しいウシを入れなかったし , 使用人の中に牛痘にかかってい る人もいなかった . 1795 年 4 月には , この農場で一般種痘 * * が行われた . メレットは家族とと * この論文はたいへん昔のものであるが , ジェンナーは非常に近代的な用語でこの・ 病気を分析している . * * このような昔にも , 痘瘡にかかった人の痂皮を用いて種痘が行われていた . 用い た接種量が正しいときは , 接種を受けた人は軽い感染を受けて回復し , 終生免疫カ : できる . しかし接種が成功しないことも多い . まったく感染せずに免疫ができな い場合や , あるいは感染が重すぎて , 重い障害を受けたり死んでしまう場合があ こうしたことから , ジェンナーの時代には種痘は論争の的となっていた . った .

4. 微生物学の一里塚

第 M 部一般徴生物学 組織切片と乾燥標本中の分裂菌の 鑑別染色法 グラム : 297 The differential staining of Schizomycetes 111 tlSSue sectlons and in dri ed prep arations 78 ・ C ん・な 772 G な Gram, C. 1884. Ueber die isolirte Färbung der Schizomyceten in Schnitt-und Tro ckenpräparaten ・ 0 なわ der e 市じ衂 VOI. 2 , pages 185 ー 189. 〔この研究のために設備の使用を許し , 便宜をはかってくださったベルリン 市民病院長リース (Riess) 博士に感謝する〕 コッホ (Koch) とエールリッヒ (Ehrlich) の結核菌の鑑別染色法は , 対 照効果によって細菌が非常にはっきりと目立つので , 対比染色をすることで 明確な標本をつくることができる . たとえ他の分裂菌を鑑別染色するために類似の方法があっても , この方法 を顕徴鏡学者が日常利用することができれば非常に便利なことである . ベルリン市民病院の検査部のフリードレンダー (Friedländer) 博士との共 同実験で試みたことは , 肺炎で死んだ患者の肺組織中および実験動物の体内 にある球菌を証明することであった . フリードレンダーが肺炎球菌に関する 彼の論文中にすでに簡単に述べているように , 私は実験によって肺炎球菌を 鑑別染色するための方法を発見した . 私の方法によると , 核その他の組織成 分は染色されず , 球菌だけが強く染色される . 肺炎患者の標本では , 普通多 量の浸出液が存在するので菌をみつけることはできないが , この方法によれ

5. 微生物学の一里塚

第Ⅵ部一般徴生物学 307 いる . 植物は正常な状態の時に結節中のバクテロイドの蛋白を利用している ことがわかり , この可能性はしだいに確実なものとなってきた . 結節中の蛋白の蓄積とその利用は , 種々のマメ科植物によって異なるよう である . 根瘤を形成して , のちにその蛋白を利用する 1 年生草本植物では , 最も重要である . ・・しかし , 樹木では結節は普通遅くか一定しない時期 に形成され , 完全になくなってしまっていることも多い B. radicicola のような化学反応の起こり方の弱い菌が , アンモニウム塩を 硝酸塩に酸化したり , 遊離の窒素を原形質蛋白に変えたりすることは , 演繹 的に考えれば不可能のように思われるが , その結論は実験によって証明しな ければならない . る . ・・しかし , その結果は今のところまったく否定的であ 窒素源として硫酸アンモニウムあるいはアスパラギンを含み , 硝酸塩の入 っていない液体培地と寒天培地を用いて硝酸塩の形成を調べた . B. radicicola は・・ この培地で 25 ℃でよく増殖したが , 培養後は硝酸も 硝酸塩も検出されなかった . このため , この菌は他の著者のいう硝化 細菌とは別の種であると結論しなければならない . さらに , ゼラチン培地中 で気泡が生じなかったので , アンモニウム塩やアスパラギンに作用した結果 , 有意量の亜酸化窒素も窒素も形成しなかったものと考える . また , 遊離窒素ガスの固定を証明することもできなかった . 寒天自身の窒 素以外に窒素化合物をまったく含んでいない寒天培地で培養して , キエルダ ール法で窒素含量を測定したが , 14 日後にも窒素の増加は認められなかっ た . この菌の寒天培地上での増殖はかなりよいが , 窒素化合物を消費しつく したときに停止する . 培地にアスパラギンを加えると非常に増殖がよいが , 結合窒素の増加はみられなかった . 数カ月後にやっと検出されるほどの非常に遅い窒素固定だけが起こるとい う可能性はある . ・・さもなければ , フランク (Frank) がいったように 窒素固定は , 何らかの点で緑色植物内での細菌の増殖と関係しているのかも しれない . この菌の栄養要求は非常に簡単で , 糖を必要とする以外は植物と同様であ るので , マメ科植物との共生関係はなおさら意外に思われる . また , 栄養要 求の簡単な B 住 c 卍 ( P 。襯 0 〃 ) 川 to お“のような多くの菌は非共 生菌である .

6. 微生物学の一里塚

第Ⅲ部免疫学 1 まず太くなって淡黄色になり , 輪郭がぎざぎざになる . 次に , 数カ所が種々 の大きさに膨れ , 球状あるいは不規則な形のポールのようになり , 黄褐色と なる . その間 , まだ丸い形のままの残りの胞子は , より淡い黄色にみえる . なおその後 , 胞子全体が黄褐色 , 暗褐色 , ないしほとんど黒色の大小さまざ まの不規則な顆粒になる . この粒子とはじめの壊れやすい胞子との関係は , 飽子の連続的な変化の全過程を観察してはじめて理解できる . その間 , 血球 は細かい顆粒をもった淡色の巨細胞となり , なおアメーパ運動で動くことが できる . 時々ミジンコの体のある場所に , これらの巨細胞の塊が存在する が , 巨細胞は中の顆粒がとくに特徴的である . 胞子の中で起こる変化は , 血球の作用の結果であると考えられる . この考 えは次の観察に基づいている . 長時間の間 , 胞子の半分が腸壁に , 残りの半 分が血球にとり込まれていた場合 , 血球にとり込まれた胞子だけが退行性変 化を起こして明確に分解するが , 一方 , 腸壁に残っているほうは完全に正常 な外観を保っている . このような例が非常に多かったので , 普遍性は疑いの ないところである . 上記のことから , 体腔に達した胞子は血球によって攻撃され , そしておそ らくある種の分泌物によって殺され , 破壊されることは明らかである . いい かえれば , 血球は感染物質から生体を守る役割を果たしている . これは常に 起こるとは限らない . 大量の胞子が体腔に達したり , 何かほかの理由で 1 つ あるいは多くの胞子が血球の作用を受けないで残った場合は , 病気が発生 する . ーーに記載した過程は , 細菌に対する食細胞の戦いよりもはるかに観察し やすいので , この観察についてもう 2 , 3 の意見を述べたい . 確実な結果を 得るためには , 1 つの微生物を何時間も観察しなければならない . そうすれ ば , 血球が実際に胞子をとり込むのを観察することがでぎる . この過程は , ときには非常に早く起こるが , ときには非常に遅い . 1 つの血球がとり込む ことのできる胞子の数は不定である . ・・・普通は , 1 個の血球に 2 個の胞 子しかとり込まれていないが , ときには 3 ~ 4 個 , あるいはそれ以上がとり 込まれていることもある . 血球が寄生体である胞子を摂取したのちも , なお動く能力は残っている . 時々 , 胞子をとり込んだ血球が小さい巨細胞を形成して , 普通よりも多くの 寄生体をとり込んでいることがある .

7. 微生物学の一里塚

第Ⅱ部病気の微生物説 7 引 困難である . これらの方法を使わない限り , 真の球菌とライス (Reiss) が記 載した特徴的な小体とを鑑別することはほとんどの場合不可能である . すな わち , 細菌が存在するか否かを確認しようとするときに , 血液中の顆粒成分 を球菌とみなしたり , あるいは球菌が存在しているのに白血球の分解物であ るとみなしたりすることがあるだろうと想像できる . しかしながら , 私は細 菌を見逃さないように , あるいは同じ大きさの顆粒と混同しないような工夫 をして , 多くの正常血液と正常組織を調べた . しかし , 微生物を発見した例 は 1 例もなかった . そして , 人でも下等動物でも健康な体内には , 血液にも 組織にも細菌は存在しないという結論に達した . 一方 , 細菌が外傷性感染症の原因であるという仮説に対する次の反論も , 十分根拠のあるものと思われる . 細菌が外傷性感染症の原因であるという仮 説を証明するためには , これらの病気のすべてに例外なく細菌が存在するこ とを証明し , さらにその数と分布により症状について完全な説明ができなけ ればならない . なぜなら , もしある型の感染症のいくつかの症例では細菌が 見出され , 一方 , 他の症例では存在しないのが特徴であるとすれば , 細菌が 不規則に出現するのは , 偶然の機会によるとみなされなければならないから である . いいかえると , 何か他の因子の存在を仮定する必要がある . 細菌が関与しているという事実を納得させることのできない第 3 の反対理 由は , いろいろな外傷性感染症にみられる細菌と , 外傷とは関係のない感染 症にみられる細菌が形態学的に非常によく似ているという点である . また , 互いに区別できないような球菌が多くの症例でみつかる . たとえば , 丹毒 , 産褥熱 , 新生児の臍炎 , 病院壊疽 , 腸炎 , 心内膜炎 ( 急性関節リウマチ を伴うものと伴わないもの ) , 原発性感染性骨膜炎 , 猩紅熱 , 牛疫 , 胸膜肺 炎などをあげることができる . しかし , これらの病気がすべて同じ病原体に よって起こるということはありえない . したがって , その球菌が常に同じも のなのか , 列挙した病気に偶然の合併現象として単に混在していただけなの か , あるいはその球菌が一一非常に小さいという点でよく似ているし , 実際 明らかに同じであるけれども一一やはり性質が異なり , その結果としてこれ ら種々の病気を起こすのかどうか考えてみなければならない . 今までにわかった事実から考察すると , 外傷性感染症から徴生物がよく検 出されること , さらに実験により感染症が寄生体によって起こる可能性が考 えられる . しかし , その完全な証明はまだ得られていない . 感染症と思われ

8. 微生物学の一里塚

772 微生物学の一里塚 があると期待することはできないであろう . 5 ~ 6 カ月目に移植した菌がか なりの毒性を示したり , 同じ源からの菌でも 3 ~ 4 カ月後には完全に弱毒化 されているものもある . この異常は , 本当に起こっているのではなく , みせ かけにすぎないことをあとで説明しよう . ときには , 強い毒性菌が非常に短 期間に急に死んでしまうことがあり , 継代しても増殖しないので驚くことが ある . あまり長く放置すると菌が死んでしまうことは当然である . この変化の過程で , 菌に何が起こるのであろう . 毒性がそれほど明らかに 変わる間に , 形態も変わるのであろうか . 私は菌の形態と毒力の間に関係が ないとはいわないが , そのような関係はありえないか , あるいはほとんどな く , 仮にあるとしても , 菌は非常に小さいので顕徴鏡でみても気がつかない であろう . 毒性の異なる菌も外観はすべて同じである . ときにわずかの変化 が生じるとすれば , 事故によるものであろう . そして , もう一度観察すると この変化はなくなっているか , あるいは逆の変化が現れているかもしれない . 毒力の異なるいくっかの菌を新しく培養し , すべての菌を同じ間隔で継代 培養し続けると , 各菌の毒性はもとの毒性と同じ活性を維持することができ る . たとえば , 10 回の接種のうち 1 回だけ死を起こすように弱毒化した菌 は , 移植の間隔が長すぎなければ , 継代培養してもこの強さを維持してい る . また同じ移植間隔で弱毒菌は死んでしまうのに , 毒性の高い菌は菌の弱 毒化は起こるが , 必ずしも死ぬとは限らないことも興味深い 次に , 毒性が減少する原因は何であるかという重大な問題について考えな ければならない . この菌は好気性菌で , 空気のないところでは増殖できないので , 空気と接 触させておく必要がある . したがって , 弱毒化の原因は空気との接触に関係 があるのではないかとまず考えるのは当然である . 小さい徴生物が酸素の存 在のもとに培地中で増殖する間に恒久的な変化を受けて , しかも酸素の影響 をとり去ったあともなおその性質が残っていることがありうるだろうか . の現象に介入する何か他の原因 , 化学物質か液体のようなものが , 空気中に 存在していないかどうか考えることもできる . 変化の原因が空気中の酸素であるという最初の仮説を証明するための実験 は容易である . 酸素のないところでこの現象が起こるかどうかを調べればよ この目的のために , 次の実験を行った . われわれが保存しているなかで最

9. 微生物学の一里塚

720 徴生物学の一里塚 ルシウム ) を混和して硬いパテ状にする . 酸は希釈されて少量しか含まれて いないので , 皮膚を痛めることはなく , 広範囲に適用することがでぎるし , 白堊が消毒剤を保持する働きもする . 少しでも浸出液の分泌が続く限り , 泥 膏は毎日交換する . この処置を行っている間 , 悪化を防ぐために石炭酸と油 の混合液に浸した布を皮膚面にずっと載せておき , 泥膏を交換するときも一 緒にもち上げないように注意する . この布は上記の泥膏と接触しているので いつも無菌状態であり , 泥膏交換時のような短時間に落下してくる徴生物を 殺す . 泥膏は 1 / 4 インチぐらいの厚さが望ましい . 薄い木綿布 2 枚の間に塗 布すると長いシート状になり , 必要なときにただちに四肢の周りに巻くこと ができ , また泥膏が皮膚面に載せてある布に付着しない . 浸出液がまったく 出なくなったら , 泥膏の適用を中止するが , 最初の布は痂皮が生じて完全に 治癒したと思われるときまで付着したままにしておく . 現在 , 直接衝撃によ って左脚の 2 本の骨を骨折した重症複雑骨折の男子が入院している . 血液の 混じった分泌物が出ている間この泥膏を使用したが , 膿はまったくなく , 泥 膏の使用を中止してから 2 週間後の現在は , あたかも単純骨折であったかの ような処置を行っている . この間 , 布はその下に集まって濃くなった血塊と 付着していて完全に乾燥しているが , 単純骨折と考えて副木をとり除く時期 までそのままにしておく予定である . そうすれば , おそらく完全な瘢痕治癒 をかなり期待することができるであろう . 消毒剤治療を適用した次のグループは , 膿瘍の症例である . この場合も結 果は非常に良好で , 上に述べた病理学的原理とよく一致している . 膿は化膿 性の膜・・・・・・・・・から生じるが , 先天的な性質によるのではない . 膿は何か異常 な刺激を受けたときに限って生じる . 普通の膿瘍では , 急性のときも慢性の ときも開放する前は内部にたまっている膿によって刺激されて化膿が続く . 普通の方法で切開してもこの刺激はとり除けるが , その内容物に空気が接触 すると腐敗のための潜在的刺激が作用しはじめ , 膿は以前よりも大量に出て くる . しかし消毒の原理に従って排膿を行えば , それまでの刺激の影響から 開放された化膿性膜は新しい刺激を受けることなく , 化膿はとまり , わずかな透明な血清が出るだけで , 開口してもしなくても速やかに収縮して 融合する . 同時に , 膿の蓄積によって生じた全身症状はなくなり , 以前は大 きい膿瘍を治療する際に非常に恐れられていた刺激性発熱や消耗熱の危険も 生じない .

10. 微生物学の一里塚

第Ⅱ部病気の徴生物説 媒介物によって感染するコンタジオン 99 媒介物によって伝播するコンタジオンの病原体が , 上に述べたのと同じ過 程と同じ原理によって生ずるのかどうかは , 現在ただちに明らかにすること はできない・なぜなら , 媒介物中に存在する病原体は性質が異なるようであ るし , はじめに感染した生体から媒介物に付着して潜在状態になったとき , 非常に長い期間そこで変化することなくとどまることがあるようだからであ る . とくに , 結核やベストの患者が触れた物がよい例である . 私は , これら の物に病原体が 2 ~ 3 年間もついたままであった例をしばしば観察したこと がある . これに反し , 腐敗した物体から飛び出す粒子が , それほど長く生存 する力を保っているとは考えられない・それにもかかわらず , このことに関 して , 媒介物中に存在している病原体は接触だけによって感染する病原体と 同じものではないと考えるべきだとする人はいない・なぜなら , このように 保存されたのちに生体から飛び出す粒子が , 最初に感染した生体から飛び出 したときに行ったのとまったく同じ作用を引き起こすことができるからであ る . ・・・結合物が強くて長もちするのは 2 つの性質があるためである . 1 つは鉄や石などがもっているのと同じかたさで , これによって非常に小さな 目にみえない粒子が何年もの間存続できるのに違いない . もう 1 つはある種 の粘性であり , また混合が十分念入りに行われるためである・それゆえ , コ ンタジオンの病原体はかたくないものであっても , 粘性で精巧につくられた ものであるらしい・精巧な結合という表現で , 非常に小さい粒子が互いによ く混ぜ合わされているということを表したい . ・・この種の結合物は密に 詰め込まれた蒸気によってつくられる . そこでは蒸気は分散することはでき ないが , 激しく振盪されるので非常に細かく綿密に混合される . これに粘性 が加えられると , 結果として生ずる結合物は強く , 媒介物中で長く生存する のに適するようになる・その証拠として , 媒介物を通じて感染するすべての 病原体は , 例外なく粘性でねばねばしており , この性質をもっているときに 限って媒介物に付着できるのである・ 離れた場所でのコンタジオン さらに , 驚くべき , しかも説明困難なことは , 直接接触あるいは媒介物を 介してだけで起こるのではなく , 離れたところでもコンタジオンが起こるこ