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検索対象: 遺伝子重複による進化
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1. 遺伝子重複による進化

第 20 章両棲類から鳥類と哺乳類への進化 かるように , 二つのグループのゲノム量は , それそれが異なる進化系統に属し ているという事実を反映している . 肺魚の祖先種で起こったのと同じ事態が有尾類でも起こったと考えられる . これら二つのグループにおいては , 直列重複だけでもたらされたゲノムの漸進 的な増加が逆戻りできない値を越した結果 , ゲノムは膨大な遺伝的冗長さを保 持したまま凍結したに相違ない . 有尾類は比較的少ない染色体数 , すなわち 22 という低い値から高くて 38 という染色体をもっという特徴を保有している . しかし , 個々の染色体は非常に大きい (Frankhauser & Humphrey, 1959 ; Don- nelly & Sparrow, 1963 ; Kezer 観 . , 1965 ). 表 5 に示されている 6 種の有尾類 のうち , 最小のゲノムでも有胎盤哺乳類のゲノムの 7 倍であり , 最大のものは 哺乳類のものの 27 倍にも達している (AIIfrey 矼 , 1955 ; Joseph Gall, 私信 ) . アカエライモリ ( “ ? ・忸“ 0 “ s ) は , ゲノム量だけでなく , 2 倍体染色体 数でも , 南米産の肺魚が面 s e れ pa 面紐にかなり似ている . 一方は両棲類 , 他方は魚類のこの 2 種は同じ染色体数をもっているが , この両棲類のゲノム量 は 2780 % であり , この魚類のそれは 3540 % である ( 表 3 と表 5 ). 同じ属 ( ョーロッパイモリⅲげぉ ) に分類される 2 種のイモリは似た染色 体組をもっている . すなわち , トサカイモリ ( T. c s s ) では 2 範 = 24 で , ドリイモリ ( T. の記 esce 烱 ) では 2 範 = 22 である . しかし , 後者のゲノムは前者 のゲノム量のほぼ 2 倍である ( 表 5 ) . 有尾類と肺魚類の双方で , ゲノム量の大 規模な増大はほとんど直列重複によってもたらされたということに疑いの余地 はまったくない . 両棲類の空椎類系統は明らかに脊椎動物進化上の袋小路に入 り込んだ側枝である . 有尾類とは極めて対照的に , 無尾類は全体として妥当な大きさのゲノムを保 持している . 表 5 に列挙されているゲノムのうち , 最小のものは有胎盤哺乳窺 のゲノム量の 40 % であるが , 異腔亜目 ( A Ⅱ omocoela ) に属するヒキガェルの一 種 & んん s は , ヒトや他の有胎盤哺乳類ゲノム量のわずか 20 % のゲ / ムを もっていることが明らかにされている ( KIausRothfeIs , 私信 ) . 20 % という値はあらゆる脊椎動物ゲノム量の最小値を表わし , この大きさ 209

2. 遺伝子重複による進化

第 19 章遺伝子重複に関する大自然の偉大な試み 197 ては , コンデンサーで細胞をおしつぶす装置のついた Deeley 型積算顕微密度 分光計 (Deeley, 1955 ) を用いて , それぞれの種の細胞核内の Feulgen 反応で染 められた色の強さが , ヒトの細胞核の Feulgen 反応で染められた色の強さと比 較された . したがってゲノム量の生のデータは , ヒトのゲノム量の百分率とし て表わされている . ヒトおよび他の有胎盤哺乳類の半数体 DNA 量はおよそ 3.5x10 ー 9mg であるので , それそれの百分率から換算した半数体 DNA 量をも 表 3 に示してある . Hinegardner(1968) も螢光測定法を用いて , いろいろの真 骨魚類のゲノムの大きさについて , かなり広範囲な研究をしている . 多くの種 が Hinegardner と私たち自身によって調べられたが , どの種についても得られ た値はほぼ同じであった . 表 3 に示されている値のうち , 星印の入ったものは Hinegardner によるものである . 表 3 から , 多様な目に属する真骨魚で , 類縁性のほとんどない種が , 脊椎動 物でみられる最小ゲノムをもっていることがわかる . スメルト , ニゴイ , ソー ドティル , カレイ , シタビラメ , タッノオトシゴ , フグなどのゲノムは , 有胎 盤哺乳類のゲノム量の 17 % にすぎないナメクジウオのゲノムよりもやや大き いか , ほぼ同じである . しかし , それぞれの近縁種は非常に大きなゲノム量を もっているようである . たとえば , スメルトもギンザケも同じサケ亜目 (Sal- ・ monoidea ) に属しているが , 前者が最小量のゲノムをもつのに対し , 後者は有 胎盤哺乳類とほぼ同じ大きさのゲノムをもっている . このような違いは同じ属 ニゴイの一種召 s レ佖 20 範佖が最小の大きさのゲ 内ですら見出されている . ノムをもつが , 召い s ? ・ 6 おは表 4 に示すように有胎盤哺乳類の 50% のゲ / ムをもっている . 最小量のゲノムをもっということは , いわゆる。原始的 " ということを意味 しない . 全頭類 , 軟質類あるいは全骨類などのより古い型の魚類のいずれも , ゲノム量はこれほど小さくない . メクラウナギもャツメウナギも , 脊椎動物進 化の中で最も古い無顎状態を代表する例であるが , 共にかなり大きなゲノムを もっている . 表 3 に示されたすべての種のうちで , 総鰭類の系統の数少ない現 . 存種のうちの一つである肺魚は , そのゲノム量が有胎盤哺乳類の 35 倍も大ぎ

3. 遺伝子重複による進化

1 % 第 V 部介椎動物ゲノムの進化 端動原体染色体をもっている (Minouchi, 1936 ; Taylor, 1967 ). ゲノム量が極 端に小さいということは現存のホヤ類の普遍的な特性であるので , そのオタマ ジャクシ型幼生が脊椎動物の原型を提供したはずのほぼ 4 億年前のホヤ類様生 物も , やはり同様に少ないゲノムをもっていたと仮定してほぼ間違いないと思 . われる . 現存のナメクジウオの研究をすることによって , 幼形進化によって出現した 最初の脊索動物のゲノムはどのようなものであったかという問いに対する答え をある程度もっことができよう . 頭索亜門のナメクジウオもまた非常に微小の 染色体をもっことで注目されてきた . 日本産のナメクジウォい忸履砌ー ℃んのでは 2 倍体の染色体数は 32 である (Nogusa, 1960 ). ナメクジウオの一種 ス忸履 0 ェお加 eol 観について測定してみると , そのゲノム量は有胎盤哺乳、 類のゲノム量のわずか 17 % であった . すなわち , 半数体の染色体セットは , およそ 0.60X10 ー 9mg の DNA を含んでいる (Atkin & Oh Ⅱ 0 , 1967 ). 後に示すように , 魚類やすべての脊椎動物でみられる最小のゲノム量は , ナ 言い換えれば第 メクジウオのゲノム量とほぼ同じか , わずかに多い程度である . 魚の多種多様な種がもっている最小ゲノム量は , ナメクジウオのゲノム量とそ れほど変わらないということである . このことを根拠として , オルドビス紀も しくはシルル紀のいずれかの時期に起こったホヤ類型生物からナメクジウォ型 生物への幼形進化は , ゲノム量の 2 ~ 3 倍の増加 , すなわち有胎盤哺乳類ゲノ この増加 ム量のおよそ 6 % から 17 % への増加を伴ったと敢えて推察したい . がまったく直列重複だけで達成されたのか , それとも直列重複に 4 倍体性を組 み合わせて達成されたのかということは今のところ解決することはできない . 2. 魚類てみられるゲノム量の極端な多様性 17 の異なる目に属し , 6 種の亜綱を代表する魚類の代表的な種のゲノム量が 表 3 に示されている . すでに議論された原始的な脊索動物のゲノム量も示され ている . 私たちの一連の研究 (Ohno & Atkin, 1966 ; Atkin & Ohno, 1967 ; Ohno ・ 観 . , 1967 ; Muramoto 観 . , 1968 ; Ohno et 観 . , 1969 ; Wolf et 観 . , 1969 ) にお、

4. 遺伝子重複による進化

第 20 章両棲類から鳥類と哺乳類への進化 217 のゲノムに似ているという点で特に興味あるものである . カメ類の染色体数は 50 台から 60 台に分布している傾向があり , そのうち 20 余りが微小染色体であ ると考えられる (Becak 矼 , 1964 ) . 図 28 に示されているアナホリガメ ( Go- ァんな社 s 佖 ss たら 2 = 52 ) の有糸分裂中期像はまた , 図 26 に示されているチョ ウザメの一種の像と著しい類似性のある特徴をもっている . しかし , アナホリ ガメのゲノムはかなり大きく , 哺乳類の 89 % である . まったく違う科に属す る他のカメは , 哺乳類ゲノムの 80% の大きさのゲノムを保有している (Atkins 観 . , 1965 ) . 双弓類系統から由来した種と無弓類から由来した種についての上述の知見に 基づいて , 古生代の石炭紀後期の獣歯類から由来した単弓類系統のゲノム量は , アリゲーターやワニやカメのゲノム量とほぼ同じまま維持されてきたと私たち は推論している . この特定ゲノムが初期爬虫類によって選ばれ , 変更を被らずに安定な状態で 存続していたのはどのような理由によるのだろうか . このゲノムもまた , 4 倍 体化によって倍化したゲノムであるという理由から , 将来の進化に大きな可能 性をもちうるものであったというのが私の見解である . ゲノム量として最小の ものをもっ 2 倍体種が , 魚類あるいは両棲類の段階で 4 倍体化して , 終局的に 鳥類の出現へと導いたクラスのゲ / ムが作り出された . 一方 , 直列重複を繰り 返してゲノム量が 40 ~ 50 % の値にまで既に増大していた 2 倍体種で 4 倍体化 が起こって , 哺乳類の出現へと終局的に導いたクラスのゲノムが生み出された . 魚類または単弓類系統に属した両棲類型爬虫類の祖先で起こったことが , かな り最近になって , サケ科の 4 倍体種の魚で起こったと考えられる . ともかく , 自然の偉大な実験によってもたらされた多様なクラスのゲノムの うち , 2 種類だけが爬虫類段階まで残存してきたことは明らかである . 鳥類は 爬虫類型の祖先から ZZ / ZW 系の性決定機構を受け継いだと考えられるが , 哺 乳類では XX / XY 系が働いている . 性決定機構に関しても , 爬虫類の進化過 程で二つの分岐が起こったと考えられる .

5. 遺伝子重複による進化

214 第 v 部脊椎動物ゲノムの進化 ビは 10 対の微小染色体をもち , カナリアは約 30 対の徴小染色体をもってい る . これ以外にも , まだ共通の特徴がある . すべての鳥類で働いている ZZ / ・ ZW 型の雌異型配偶子性 (Yamashina, 1951 ) は , クサリへビ科 (Viperidae) , マ ムシ科 (Crotalidae), コブラ科 ( Elapidae ) の毒ヘビ類でも広く用いられている (Becak 屋 . , 1962 ; Kobel, 1962 ; Becak . , 1964 ) . さらに , 毒ヘビと鳥の Z ・ 染色体の絶対的な大きさはほば同じであり , Z 染色体はゲノムの約 10 % を占 めている . この二つのグルーフ。の W 染色体は , 特殊化した , 小さな要素であ る (Ohno, 1967 ) . 鳥類のゲノムが , 祖竜類に似た爬虫類型祖先の時代から , 大 きく変わらなかったということは , ほとんど間違いないであろう . 最初の爬虫類の時代以後 , 爬虫類の進化に分岐が起こって , 二つの系統が生 じたに相違ない . 双弓類系統に属した石炭紀の爬虫類の幾種かのものは , ゲ / ム量 ( 有胎盤哺乳類の約 50 % ) と徴小染色体の存在とが特徴であるようなゲ / ムをもっていた . この系統での性決定機構は恐らく雌異型配偶子性 ( ZZ / ZW ・ 系 ) 型のものであったろう . この系統のゲノムは変更を被らずに存続してきた . 有鱗目に属する爬虫類と鳥類のメン / く一はこの系統に由来するものである . 遺 伝子重複による自然の偉大な実験の結果 , 種々の度合の遺伝的冗長さを備えた 多様なゲノムが魚類と両棲類の段階で生じたに相違ない . 多様なゲノムのうち ,. この特定ゲ / ムが祖先型爬虫類によって選択された理由はどのようなものであ っただろうか . このタイフ。のゲノムは , 何回もの直列重複を繰り返すことによってではな 0 4 倍体化によって , ゲノム量が増大したものであるので , ほかのタイフ。のゲノ ムのどれよりも , 大きな可能性を秘めたゲノムであったと私は理解している . ゲノム量として最小のものをもっ 2 倍体種が 4 倍体になると , ゲノムの大きさ はほぼ 50 % のレベルに増大する ( 前章の表 4 参照 ) . したがって , 4 倍体種 ( コ イと金魚 ) に起こったことは , 双弓類の系統に属するある種の爬虫類が由来し てきた , 魚類または両棲類の祖先種にも起こったであろう . トカゲとヘビのゲ・ ノム (60% から 67 % の値 ) は鳥類のゲノム ( 44 % から 59 % ) より少しばかり大 - きい . ヘビやトカゲのゲノムに含まれている余分の遺伝的冗長さは , 4 倍体化

6. 遺伝子重複による進化

174 第Ⅳ部遺伝子重複の機構 れる . 形質転換された腫瘍細胞は , もはや感染性ウイルスを産出しないが , 新 しく生ずる抗原すなわち T 抗原がずっと存在しつづけるという特徴をもつよ うになる . T 抗原はウイルスゲノム内のシストロンによって決定されているよ うなので , 形質転換された腫瘍細胞においては , ウイルスゲノムの宿主ゲノム への組込みが考えられる . 事実 Westpha1 と Dulbecco ( 1968 ) は , DNA-DNA ハイフ・リッド分子形成法を利用して , 形質転換された腫瘍細胞のゲノムが SV40DNA の複数のコビーをもっていることを示した . はたして , 脊椎動物のゲノムの特定の遺伝子の起源は , ある宿主ゲノムに永 久に組み込まれるようになった過去の感染性ウイルスにまでさかのぼりうるの であろうか . 哺乳類では , ウシの B 血液型遺伝子 ( Stormo Ⅱ t , 1965 ) のような血 液型の遺伝子のあるものや , マウス H2 遺伝子座のような組織適合性遺伝子の あるものは , 非常に複雑な構造をもっており , それぞれ非常に長い染色体部分 を占めている . Bai1ey と Kohn ( 1965 ) は , マウスの組織適合性遺伝子座で観察 される突然変異類似の事象 , あるいは組換え現象類似の事象はウイルス溶原化 によって説明されることを示唆した . 彼らは , 二つの同系繁殖系統間の雑種第 1 代のマウスでみられる突然変異類似の事象の多くが , これまでに存在しなか った組織適合性抗原の獲得を意味するものであることを発見した . この理由な らびに別の理由に基づいて彼らは , 組織適合性遺伝子座の領域に組み込まれた ウイルスゲノムによって新しい抗原が支配されるという意味合いで , 観察され た事態は , 溶原化したネズミチフス菌で見出される事態と類似のものであると いうことを提唱した . 4. ウイルスによる形質導入 溶原菌に存在していたファージゲノムが共生状態を破って自由になり , 再び 感染性をもつようになるとき , 隣り合っていた宿主ゲノムの一部分を一緒に運 一部の組込みをも伴うことになる . これが形質導入の過程である . るときには , 新しい宿主ゲノムへのファージゲノムの組込みは , 前の宿主のゲ び出すことがある . このようなファージが別の細菌と新しい共生状態を確立す ノムの

7. 遺伝子重複による進化

195 第 19 章 被嚢類様生物から魚類への進化における 遺伝子重複に関する大自然の偉大な試み 1. 脊椎動物の祖先てあった被嚢類様生物のゲノム量 ほぼ 5 億年前 , カンプリア紀に生存していた種々の無脊椎動物のうち , 被嚢 類 ( ホヤ ) 様生物を経過して最初の脊椎動物を生み出したのは , 単純な着生性の 生物であった . では , これらの未拘束型の生物のゲノムはどのようなものであ ったろうか . 、私は , ゲノムもまた , やっと必須の数の構造遺伝子を含み , 遺伝 , 的冗長さが最小であるような未拘東の状態にあったに相違ないとあえて推量し . たい . このような状態から出発することによってのみ , ひきつづきつくり出さ れる遺伝子重複を利用して , 後生動物の進化の新しい章を書きはじめることが 可能となったのである . 現存の原始的な脊索動物のうち , 太平洋岸に棲むホヤ ( ュウレイボヤ , C 物翹 ) は , 被嚢類亜門 (Tunicata) に属し , 自由に遊泳するオタマジャク シ型幼生を生みだす . 私たちの測定によると , ュウレイボヤのゲノム量は有胎 盤哺乳類のゲノム量のわずか 6 % にすぎない . すなわち , 染色体の半数体セッ トはおよそ立 21X10 ー 9mg の DNA を含んでいる (Atkin & Ohno, 1967 ). イナ ゴのような数種の無脊椎動物は , 哺乳類のゲノム量に相当する位のゲノムをも っているわけだから , このホヤのゲノム量はまことに小さなものである . Boveri(1890) の時代以来 , 現存の原始的な脊索動物は , 幅 1 々以下の細長く , 小さい , 小数の染色体をもっているという特徴が知られていた . ュウレイボヤ ( 2 れ = 28 ) の 2 倍体染色体組は小さい末端動原体染色体を 14 対もっているが , 別の目に属するホヤ ( シロポヤ , & がのは 16 対の同じように小さい末

8. 遺伝子重複による進化

第 20 章両棲類から鳥類と哺乳類への進化 の後に繰り返し起こった直列重複によるものであろうと考えられる . 3. 爬虫類の単弓類系統 215 哺乳類を生みだした単弓類の進化系統は , 爬虫類に属する現存種を残してい ないが , 爬虫類の進化過程で二つの分岐が実際に起こり , 単弓類系統のメン六 ーに間違いなく含まれたと思われる爬虫類の幾種かはごく早い時期から哺乳窺 のゲノムとほぼ同じ大きさのゲノムをもっという特徴を備えていただろうと考 えられる . このことは , ウミガメやアリゲーターの研究から明らかにされてい る . ワニ目のアリゲーターとワニは双弓類系統に属しており , この系統から鳥 が生まれ , 有鱗目のメン , く一もこの系統に含まれるのであるが , このワ = 類の ゲノムはヘビやトカゲや鳥類のゲノムとまったく異なっている . アリゲーター とワ = の 2 倍体染色体組は微小染色体を含んでおらず , この点で爬虫類との類 似性がほとんどなく , むしろ哺乳類に似ている . 2 倍体の染色体数は , 南アメ リカ産のメガネカイマン ( C 忸 0 範 sclerops) の 42 という高い値から , ナイルワ = ( 0C0 面 I ぉ ? 覦 0 s ) と他の 2 種での 32 という低い値までの範囲に分布し ている ( Cohe Ⅱ & Clark , 1967 ). まったく偶然の一致だが , メガネカイマンの 2 倍体染色体組はラット s 加” c ) の 2 倍体組とほぼ同じである ( 図 28 ). さらに , メガネカイマンのゲノムは有胎盤哺乳類のゲノムに近い大きさ であって , 82 % という値が観察されている . 双弓類に属する爬虫類は , ゲ / ムの特性からみて , 2 種類存在していたことが極めてはっきりしている . ーっ の種類はヘビとトカゲと鳥類を生みだした . もうーっはアリゲーターとワニを 生みだした . ジ = ラ紀の恐竜類はすべて双弓類系統に属するものであったが , この類でもゲノムは恐らく二つに区別しうるクラスに分岐していたと思われる - ーっはヘビやトカゲあるいは鳥類に似たゲノムをもつものであり , もうーっは アリゲーターやワニあるいは有胎盤哺乳類に類似したものである . カメ目に属する動物は無弓類系統から由来した . この類は染色体組に , トカ ゲやビや鳥類と同じように , 微小染色体を含んでいるが , ゲノム量は哺乳類

9. 遺伝子重複による進化

第 19 章遺伝子重複に関する大自然の偉大な試み 203 大きなゲノムをもっているという傾向が表 3 で明らかである (Hinegardner' 1968 ). カイレ目のカレイ , ョウジウォ目のタッノオトシゴ , フグ目のフグな どは非常に特殊化した現存の魚類である . これらのゲ / ムは一様に最小値に近 く , ナメクジウオのゲノムとほぼ同じか , やや多い程度である . これと対照的 に , 全頭類 , 軟質類 , 全骨類の魚類はもちろんのこと無顎類などは , かなり大 きなゲノムをもっている . デポン紀の頃にすでにはじまった遺伝子重複の広範囲にわたる実験の結果 , 太古の魚類の種々の系統が , 恐らく 40—100% の値にわたるかなり大きなゲ / ムを獲得しただろうと考えられる . 直列重複だけに依存してゲノム量を増加さ せた魚類に関する限り , それにひきつづく現代化と向上的特殊化は遺伝的冗長 さの漸次的低下を伴ったのである . ーっのシストロンが直列的に配列した多重 コピーをもっこと自体はその生物体に大きな利益を与えるとは考えられないこ とから , 上に述べたことは予期されることである . 次々と現代化してゆくに伴 って遺伝的元長さが低下していく傾向は , レンリソウ属 ( ん切 s ) に属する被 子植物のある種でも注目されてきた . レンリソウ属の 18 種のすべては , 14 本 の中部動原体染色体からなるほとんど同一の 2 倍体染色体組をもつが , より古 い種のゲノムはより現代化した種のゲノムに比べ DNA を 2 倍量もっている (Rees & Hazarika, 1969 ). 肺魚は進化上の変りものであるということには , ほとんど疑いがない . ー特殊な系統の祖先種もまた直列重複だけで , そのゲノム量を増加させたという のが私の見解である、しかし , この場合 , その増加はひき返すことのできない 点までふみこんでしまった . それらのゲノム量がそのしきいを越えて増加する につれて , その細胞の大きさは異常な程度にまで増加しなければならなかっ、た . このような事態は , それそれの遺伝子産物を大量に生産せねばならない . という はっきりとした必要をつくり出した . それそれのシストロンの直列的に重複し たコビーは , この必要をみたすために用いられねばならなくなり , 過度の遺伝 的冗長さを除去することが不可能になった . このよーうな系を確立することによ って ; - この生物は将来にわたって進化する機会を実質的に犠牲にしたのである・

10. 遺伝子重複による進化

221- 第 21 章 ヒトはどこから由来したのか 1. ゲノム量の均一性と重複遺伝子座の数 哺乳類でゲノム量が一定しているということは , すべての哺乳類が本質的に は同一のゲノムを備えており , ーっの種のゲノムに含まれる大抵の遺伝子座は 他の種のゲノムにも含まれているということを意味している . たとえば , 今日 まで調べられたすべての有胎盤哺乳類は , そのゲノム中に乳酸脱水素酵素 ( LD Ⅱ ) サフ・ユニットに対する三つの別個の遺伝子座をもっている . A および B サフ・ユニットは , いろいろな組織でつくられるが ( arkert , 1964 ) , C サプ ニットは性的に成熟した精巣でのみつくられる (Goldberg, 1962 ) . 哺乳類で みられるこのような状況は , 真骨類の魚でみられる状況ときわめて対照的であ る . 最小のゲノム量をもついくっかの真骨類の魚は LDH に対してただーっの 遺伝子座しかもたないが ( Markert &Fau1hauber, 1965 ) , マスやサケのような 4 倍体真骨類は , LDH サフ・ユニットに対して , 8 個程度の別座の遺伝子をもって いる (Massaro & Markert, 1968 ). 同様に , すべての有胎盤哺乳類には , NADP 依存イソクエン酸脱水素酵素はもちろんのこと , 細胞上清型とミトコンドリア 型の各々の NAD 依存リンゴ酸脱水素酵素に対してそれそれ 1 個の遺伝子座を もっという特徴があるようである . 他方 , 真骨類の魚では , 4 倍体種は , それ ぞれの酵素の細胞上清型について , 二つの別個の遺伝子座をもっている (Bailey 観 . , 1969 ; Quiroz-Gutierrez & Ohno, 1970 ; Wolf . , 1970 ). ヒト のヘモグロビン鎖のアミノ酸配列は , ヒトのヘモグロビン鎖の配列 ( 84 個 の違い ) よりも , より似ているが , マウス住鎖 ( 17 個の違い ) やウマ鎖 ( 18 個の違い ) の配列に この事実は , 共通の祖先型へモグロビン遺伝子から鎖と扈