核小体 - みる会図書館


検索対象: 遺伝子重複による進化
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1. 遺伝子重複による進化

第 2 章 A-T, G-c の相補的塩基対合に基づく核酸の複製 21 四つの異なる RNA 種が , リポゾームとして組織化されている構造の部分と して存在している . 脊椎動物では , 四つの RNA の大きさは 5S , 5.8S , 18S , 28 S である . 5 S rRNA はほぼ 120 の塩基から構成されており , tRNA とのあ る種の類似性をそなえており , フ。ソイドウラシルやチミンのような普通みられ ない塩基を含んでおり , さらに相補的なヌクレオチドの長い配列がある . : 5 S rRNA は , おそらく , tRNA 分子がとっているような立体配位をとってい るであろう (Forget & Weisman, 1967 ). 18 S と 28 SrRNA は長すぎて , 全体 の塩基配列の解析はやっとその緒についたところである . 5.8SrRNA は , ま た以上の 3 種ほど解明されていないので , 以下の議論ではこの種には触れな ある時期には , rRNA ( 18S と 28SrRNA. 5SrRNA は必ずしも含まれな い ) を支配する遺伝子が染色体の核小体オルガナイザーに位置しているという ことに疑問がもたれていた . 多くの植物や動物種の有糸分裂の中期に , 核小体 ・オルガナイザーは強く凝縮した染色体狭窄域として , はっきりと観察される . この狭窄域は DNA に特異的な Fe ⅲ gen 染色法でほとんど染まらない . このた め , SAT 域 ( チモ核酸 ( DNA ) が存在しない , & 膨 Acid0 T んわ加れ履 c のという 名が与えられている . 上述の疑問に決着をつけた決定的な事実は , アフリカッ メガェル ( Xe れ叩朝 ) の欠失突然変異によってもたらされた . このカエル の 2 倍体染色体数は 36 で , 通常 1 対の染色体に核小体オルガナイザーがある . したがって , 野生型のカエルは二つの核小体をもっている . 核小体オルガナイ ・ザーを欠失したへテロ接合個体 (heterozygote, 異型接合体 ) の 2 倍体核は 1 個 の核小体しかもっておらず , ホモ接合 (homozygous' 同型接合 ) の変異個体は核 小体を一つももっていない ( Elsdale 矼 , 1968 ). 胚発生過程で致死的になるホ モ接合の変異体は , rRNA の売加合成をまったくできないだけでなく , 変 異型ホモ接合個体から抽出した DNA は , 野生型 rRNA と , 、イフ・リッド分子を 形成することができない (Wallace & Birnstiel' 1966 ). DNA 溶液を加熱すると , 安定な 2 重らせんを形成している二つの相補的な 鎖が解離する . その溶液をゆっくりと冷却すると , 二つの相補的な鎖は互いに

2. 遺伝子重複による進化

98 第Ⅲ部遺伝子重複の意義 もっているというのが最新の推定である ( Brow れ & Dawin , 1968 ). 第 4 のク ラスの rRNA, すなわち 5.8SrRNA は , まだよく解明されていない・ 上述の四つのクラスの rRNA のほかに , リポゾームはタンパク質をも含ん でいる . リポゾームが絶え間なく形成されるためには , 細胞が rRNA と同じ リポゾームタンパク質を多量に合成しなければならないことは疑問の余地 がない . 自然淘汰が , リポゾームタンパク質のそれそれの構造遺伝子の直列重 複による増幅をやはり好ましいものとして選び出したかどうか , を明らかにす ることは非常に興味のあることである . 哺乳類の細胞の細胞質にあるリポゾー ムはほぼ 60 種のタンパク質でできており , それらの分子量は 8000 から 58000 の範囲にあることが示されている ( Ⅱ oward 矼 , 1975 ). 両棲類と棘皮類における卵形成過程で , 18S と 28SrRNA 遺伝子の増幅が さらに起こっているようである . すでに触れたように , ツメガェルの核小体オ ルガナイザーを欠失したホモ接合個体は , 18S と 28SrRNA を完全に合成で きない . けれども , へテロ接合の親の交配から生まれたこのような欠失型のホ モ接合個体は , 遊泳性のオタマジャクシの段階まで発生しうる (Elsdaleetal" 1958 ). へテロ接合の母親によって卵細胞質中に貯えられた rRNA は , この進 んだ発生段階まで , ホモ接合個体の成長を支えるのに十分な量である . 450 の rRNAN 伝子コビーをもつ核小体オルガナイザーだけで , このような莫大な量 の 18 S と 28 S rRNA を , 卵形成過程でつくりえないことは明らかであろう . 第 1 減数分裂前期の多糸期に達している卵母細胞が大きくなりはじめると , 染 色体の核小体オルガナイザー域は染色体から離れたコビーを核液中に分散させ , この結果 , 卵母細胞の核は , 最終的に , 染色体から離れた核小体オルガナイザ ーの 1000 以上ものコビーをもつようになり , 増幅されたコビーは核小体に編 制されると考えられている . 個々の核小体オルガナイザーは 18 S と 28 S rRNA 遺伝子対の 450 もの直列重複コピーをすでにもっているので , 成長中の 卵母細胞が利用しうる二つのクラスの rRNA 遺伝子数は 450X1000 という驚 嘆すべき数になる . 18S と 28SrRNA とはきわめて対照的に , 5SRNA5ü伝 子は , 卵形成過程で増幅されて , 染色体外に分散されるようなことはないよう

3. 遺伝子重複による進化

第 10 章重複による同一遺伝子座の生成 103 の染色分体間ででも起こりうるであろう . キイロショウジョウバ = では , このような不等交叉は絶えず起こっている . 双方の親からかなり欠失した核小 体オルガナイザーを受け継いだ個体は , 著しい成長遅延を示すので , 最後には 識別されうるようになる ( Ritossa 矼 , 1966 ② ). この変化を蒙った , 、ェは 6 。励記変異体として知られている (Stern, 1927 ). 欠失型核小体オルガナイザー 間で不等交叉がさらに起こると , 時たま正常な核小体オルガナイザーが再生す るので , 60 記変異体の系統から正常な , 、工が往々にして出現する . 不等交叉 の相互交換的組換えの結果っくりだされるのは , rRNA 遺伝子の正常な重複度 より多いコピーをもつ , 異常に大きい核小体オルガナイザーである . しかし , 可能性として予想されることに反して , このような大きな核小体オルガナイ ザーを受け継いだハエは超 , 、ェにはならない . さらに , ショウジョウバエには , 一般的な成長遅延をもたらすもうーっのグ ラスの突然変異がある . e と呼ばれているものであって , ホモ接合で致 死になる優性変異である . を皿 te は表現型としては均一なクラスをなしてい るが , ゲノムに広く分散した 50 もの遺伝子座のどれに変異が起こっても , e の形質が表われる . AtW00d (Ritossa . , 1966 ( 1 ) に引用 ) は , 個々の、 忸 e も特定の tRNA の平均 13 の重複コピーからなるクラスターで起こっ た不等交叉による欠失であろうと仮定している . このような不等交叉の有害な結果は , 同じ遺伝子の直列重複している染色体 分節が担わねばならない定めなのである . しかし , 配偶子が遺伝子を一つだけ・ もっていて受精後に遺伝子重複が起こる系と , 主遺伝子一従遺伝子系という , これら二つの理想的な系を生物が採用していないので , みたところ有害な欠失 は , 長い目でみると , あるいは有益なものかもしれない . すなわち , 欠失の結 果 , 核小体オルガナイザーは , 突然変異の蓄積で機能のなくなった退化した重 複遺伝子を整理することができる . その後に , 部分的に欠失した核小体オルが ナイザー間の不等交叉によって , 今度は大部分正常なコビーからなるもとと可 じ重複度をもつものが回復されうるわけである . 哺乳類は核小体オルガナイザーをいくつかの染色体上にもっているので , 非

4. 遺伝子重複による進化

第 10 章重複による同一遺伝子座の生成 から抽出した全 RNA 量の 85 % が rRNA である . 97 ゲノムが 4 種の rRNA のそれそれにたったーっの DNA シストロンしかもっ ていないとするなら , 個々の体細胞は個体発生を支えるのに十分な rRNA を 合成できないことがきわめて明白であろう . すでに第 2 章で述べた DNA- RNA ハイブリッド分子形成法をもちいて , Ritossa と Spiegelman ( 1965 ) は , キイロショウジョウバエ ( s 叩厖厄忸 e れ 0 s こ ) の個々の核小体オルガナイ ザーは 18S と 28SrRNA の遺伝子対の 100 コビーが直列型に重複しているも のであることを明らかにした . この遺伝子対は単一の 2 シストロン性 RNA に 転写され , その後 18 S と 28 S rRNA に開裂される . ショウジョウバエでは , 核小体オルガナイザーは X と Y 染色体に座をもっている . アフリカツメガ工ル ( 工加川給 laevis) では , 核小体オルガナイザーは 1 対 0 相同常染色体に担われている . この脊椎動物の核小体オルガナイザーは , 最小 に見積って , 18 S と 28 S rRNA の遺伝子の直列型に重複している 450 のコ ヒ。ーをもっていることが示唆されている (Brown & Dawid, 1968 ). しかし , X 召加ァ laevis のゲノムの大きさ ( 半数体 DNA 量 ) が s 叩厖 I 佖忸 e 厄加 s 切・ のゲノムの大きさの 30 倍から 40 倍であることを考慮すると , ゲノムの大きさ に比べて , D s 叩履厄は 2 つのクラスの rRNA 遺伝子を多くもっているこ とになる . れ叩のゲノムの大きさは哺乳類のものより少し小さいだけであ る . しかし , 哺乳類では , 核小体オルガナイザーは一つではなく , 多数の染色 体対に担われている傾向がみられる . たとえばヒトの 46 の染色体のうち , 五 つの異なった末端動原体染色体対が核小体オルガナイザーを担っている ( 第 3 章図 3 ). 変温動物から恒温動物への進化は , rRNA 遺伝子の重複度の増加を伴 ったのだろうか . 恐らく , 物質代謝速度が早くなるのに伴い , 細胞内でより多 数のリポゾームが必要となったであろう . rRNA の第 3 のクラス ( 5 S) の遺伝子は , ショウジョウバエでも , ツメガェ ルでも , 染色体の核小体オルガナイザー域に含まれていないことが明らかにな っている . しかし , ゲノムに 5SDNA の非常に大きい冗長性があるようであ る . ツメガェルのゲノムは 5 S rRNA 遺伝子の 20000 もの重複したコビーを

5. 遺伝子重複による進化

18 第Ⅲ部遺伝子重複の意義 は約 170 コヒ。ーあると結論されている ( Clarkso Ⅱ観 . , 1973 ). 2 種のメチオニ ン tRNA が細胞中にほぼ等量存在しているので , tRNA 濃度が遺伝子の重複 度のみに依存するのかどうかという問題は未解決である . 3. 同一遺伝子の重複コピーの存在による不利性 表面上 , 生物が莫大な量の特定の遺伝子産物を保持する必要が生じると , の要求はいつも同じ遺伝子の多くのコヒ。ーをゲノムにとりこむことによって容 易に充足されうるだろうと考えられる . しかし , 多くのコヒ。ーをとりこむこと は必然的に不利性を伴うというのが自然淘汰と遺伝機構の本性なのである . 両棲類無尾目のアフリカツメガェルから単離した rRNA は , メキシコ産ナ ンショウウォ ( 加 lo ″召 c 佖襯も襯 ) やアカエライモリ ( も s 忸佖ん s ) な - どのサンショウウォ類から抽出した核小体オルガナイザー DNA と非常によく ハイブリッド分子を形成するが , この事実は , 自然淘汰が 18S と 28SrRNA. の遺伝子対の塩基配列を厳密に保存したことを明らかにしている ( Br 。 w Ⅱ & Dawid, 1968 ). 無尾類とサンショウウォ類は 2 億 8000 万年もの間 ( 石炭紀初 期に最初の両棲類が地球上に出現した以後 ) , 別々の進化の道程を経てきた . もし , この遺伝子の多くの座位での塩基配列が寛容なものであったなら , 約 3 億年もの時間経過は , 無尾類とサンショウウォ類の核小体オルガナイザーの間 , に塩基配列の著しい差異を生みだしたであろう . この考えによると , 無尾類の rRNA はサンショウウォ類の核小体オルガナイザー DNA とハイプリッド分子 - を効率よくつくらないことになる . 自然淘汰の働きは , ゲノムが個々の遺伝子の一つのコビーしかもっていない ・場合 , 禁制突然変異を除去し , DNA シストロンの塩基配列を効率よく統御し うるのである . 端的に , ゲノムが同じ遺伝子のコヒ。ーを三つもっていると仮定 しよう . 三つのコヒ。ーのうち一つが禁制突然変異によって機能を失っても , れは寛容なものだろう . 欠損型のホモ接合個体はまだ四つの機能のある遺伝子 を備えているからである . 第 2 のコビーを働きのないものにする禁制突然変興 もまた寛容なものである . 2 重欠損型のホモ接合個体さえも健全な遺伝子を二

6. 遺伝子重複による進化

26 第 I 部塩基間の固有の相補性に基づく生命の創生 う術語は , ほとんど末端に位置する動原体をもつ染色体をよぶのに用いられて いる . それそれの染色体は , ただーっの動原体または動原体の 1 機能単位をもって いる . ーっの染色体が間隔をあけて存在する二つの動原体をもつ場合 ( 2 動原 体染色体 ) には , 後期に 1 本の染色分体が紡錘体の両極へ 1 対 1 の確率で引っ 張られることとなる . このことは架橋形成をひきおこし , したがって染色体切 断をひきおこすこととなる . いうまでもないが , 自然淘汰は , 2 動原体染色体 が長く存在するのを許さない . すべての動原体は , 別々の染色体に存在してい たとしても , 相同体であるに違いない . なぜなら , 1 本の染色体の動原体が切 り離されて他の染色体に付着したときでも , 新しい位置で十分に同じ機能を果 たしうるからである . 私たちは , どのような DNA の塩基順列が動原体として の DNA 鎖の分節を定めているかについては , 何の考えも持ち合わせていない。 . 2. 核小体オルガナイサー 図 3 をみると , 21 ~ 22 群の 2 対り小さい末端動原体常染色体の短腕同様 , 13 ~ 15 群の 3. 対の末端動原体常染色体の短腕が , 第 2 次狭窄によってしるし づけられていることが注目されるに違いない . 第 2 次狭窄は , 普通 ( そうでな いときもあるが ) 核小体オルガナイザーを示しているものである (Heitz, 1933 ; Kaufmann, 1934 ; Deering, 1934 ) . ヒトの場合 , 末端動原体常染色体上のすべ ての第 2 次狭窄は核小体 ( 仁 ) オルガナイザーを示すようである (Ferguson- Smith & Handmaker, 1961 ; Ohno 観 . , 1961 ). 核小体オルガナイザーが 18S と 28S の rRNA の遺伝子をになっているという事実はすでに述べてきた . し たがって , ヒトの五つの異なった常染色体がもっている第 2 次狭窄部分は互い に相同でなければならないことになる . 3. 異質染色質領域 である . しかし , 、分裂前期の問でも , 染色体の特定の領域は先行する凝縮 -

7. 遺伝子重複による進化

第 I 部塩基間の固有の相補性に基づく生命の創生 24 には核と細胞質との間の明確な区別が存在しない . このような生物 . 性生 -.. 非常に対照的なことに , 真核性生物は典型的オ 2 倍体生物、、あり , その多く は多細胞生物 ( 後生動物 ) である . 二つの配偶子 ( 半数体細胞 ) が融合して , 生物 個体の発生がはじまる . ゲノム ( 半数体 ) では , 遺伝物質は染色体とよばれる 一定数の明確な構造体に分配されている . 染色体は , 細胞分裂期をのそいて核 膜の境界内にとどまっている . このように細胞内の核と細胞質との間には , 明 54 図 3 正常なヒト雄の 2 倍体セットの 46 本の染色体 . 最上段左 : 第 1 番目から第 3 番目の 群に属する 3 対の最大の中部動原体常染色体 . 最上段右 : 第 4 番目と第 5 番目の群に属す る 2 対の次末端動原体常染色体 . 第 2 段 : 第 6 番目から第 12 番目の群に属する 7 対の中 部動原体常染色体 . 第 3 段左 : 第 13 番目から第 15 番目の群に属する 6 本の末端動原体常 染色体 . これらの染色体はその短腕部に核小体オルガナイザーをもっているが , この写真 では , 実際には , 核小体オルガナイザーは第 14 番目の対でみられるだけである . 第 3 段右 : 第 16 番目から第 18 番目に属する中部動原体常染色体と次末端動原体常染色体 . 最下段 左 : 第 19 番目と第 20 番目の群に属する 4 本の中部動原体常染色体 . 最下段中間 : 第 21 番目と第 22 番目の群 . 2 対の末端動原体常染色体は , 核小体オルガナイザーをその短腕部 にもっているが , その第 2 次狭窄は実際には第 21 番目の対でみられるだけである . 最下 段右 : 大きい中部動原体 X 染色体と小さい末端動原体 Y 米色体 .

8. 遺伝子重複による進化

102 第Ⅲ部遺伝子重複の意義 遺伝組換えは二つの相同染色体間の正確な遺伝子間の対合によって起こるので , 減数分裂過程で普通に起こる相同染色体間の交叉は , 原則として , 問題を生じ ない・しかし , 遺伝子重複のある染色体域では , 相同な対合はきわめて不正確 になる . たとえば , ーっの染色体の核小体オルガナイザー域の先端にある 1 番 目の rRNA5ü伝子が , 相同染色体の核小体オルガナイザー域の中央部にある 250 番目の rRNA 遺伝子と対合することもあろう . このような位置のずれた 対合の結果として。不等交叉 " が起こる . 両方の染色体が rRNA の 450 のコビ ーからなる核小体オルガナイザーをもっている場合 , 図 9 に示されているよう ーっの染色体は 200 コビーしか受けとらない ( 欠失 ) し , もう一方の染色体 は 700 コヒ。ーをもつ ( 重複の繰返し ) ようになる . もし相同な対合がほぼ同一塩 基配列をもっ DNA 間に存在する親和性に正確に基づいているなら , このよう な位置のずれた対合から起こる不等交叉は , 体細胞において同じ染色体の二つ 減数分裂後生じる四つの配偶子のうち二つの配偶子が影響される . の R をもつ ). 交叉は対合した相同染色体の四つの染色分体のうち二つの間で起こるので , ち一つの染色分体はさらに遺伝子重複が起こった核小体オルガナイザーを受け継ぐ ( 五つ つは欠失型の核小体オルガナイザー ( ーっの R しかもたない ) を受け継ぐ . 右 : 二つのう マが形成される . 左と右 : 第 2 減数分裂後の 2 つの娘細胞 . 左 : 二つの染色分体のうち一 な対合から , 左側の染色体の第 3 遺伝子と右側の相同染色体の第 1 遺伝子との間にキアズ 示してある . 中央 : 第 1 減数分裂前期 . 重複部位での相同対合がずれて起こる . このよう の遺伝子対が直列配列型に重複した三つのコヒ。ーをもっ核小体オルガナイザーについて例 図 9 遺伝子重複をしている部位での不等交叉の結果を示す模式図 . 18 s と 28 s rRNA

9. 遺伝子重複による進化

第 10 章重複による同一遣伝子座の生成 101 つもっているからである . このようにして , 比較的短期間に , 三つの重複した 伝子のうち二つが。廃物 DNA " の状態になってしまって , 最終的に , ゲノム にただーっの機能のある遺伝子が残る . したがって , 核小体オルガナイザーに 幾百もの直列配列した重複コビーをもっていることは , 表面上考えられるほど 理想的な状態ではない . というのは , 重複している遺伝子は , 突然変異によっ て , ゆっくりとではあるが , 確実に無用な遺伝子になるであろうからである . . 理想的な状態は , 配偶体が 18S と 28SrRNA のそれぞれに一つの遺伝子をも っているだけで , 受精後にこの遺伝子の直列配列の重複が起こる場合であろう . この方途では , ある個体に含まれている rRNA 遺伝子の多重コビーのすべて . が , 欠陥型かあるいは正常型かのどちらかになる . 自然淘汰は欠陥型のリポゾ ーム遺伝子を受け継いだ個体を不適合なものとして除去してしまう . リポゾー この理想的な方途をもちいている生物がまったく知 ム遺伝子を統御するのに , られていないことは驚くべきことであろう . Callan ( 1967 ) は , 生物が遺伝子の重複コヒ。ーをゲノムに保持することによる 危険から逃れる非常に巧妙な機構を提唱した . 直列重複遺伝子に階層構造があ って , 一端にある一つの遺伝子が主遺伝子であって , 残りは従遺伝子であると いう , 主・従説 (master-slavetheory) を彼は仮定している . 毎細胞分裂前に DNA が倍化するとき , 従遺伝子でなくて , 主遺伝子だけが DNA 複製の鋳型 として働く . 主遺伝子一従遺伝子系の正味の効果は , リポゾーム遺伝子を一つ だけもっている配偶子と同じである . 個体に含まれるリポゾーム遺伝子がすべ て欠陥型か正常型かのどちらかになるからである . もし , 主遣伝子に禁制突然 変異が起こると , 次世代の細胞の従遺伝子のすべてが同じ欠陥を受け継ぐこと になる . 無尾類とサンショウウォ類は 450 もの直列配列した rRNA 遺伝子をゲノム にもっているにもかかわらず , この遺伝子の塩基配列を厳密に保存することが できているのは , この主遺伝子一従遺伝子系によっているのであろうか . 生物が同じ遺伝子の重複コピーを保持しているために蒙るもうーっの難事は , 直列重複コヒ。ーで構成されている染色体域で起こる欠失や重複の繰返しである .

10. 遺伝子重複による進化

1 第Ⅲ部遺伝子重複の意義 相同染色体の分節間で核小体オルガナイザーの均一性を保っというもうーっの 問題がでてくる . これらすべての核小体オルガナイザー域が遺伝物質の相互交 換的組換えに関与しないなら , あるものは 18S と 28SrRNA の生産に貢献し ない退化した , 役に立たない , コヒ。ーの集まりになってしまうであろう . ヒトの 2 倍体核の 46 染色体のうち , 核小体オルガナイザーは 3 対の中間の 大きさの末端動原体染色体 ( 13 , 14 , 15 番目の対 ) と 2 対の最小の末端動原体染 色体 ( 21 , 22 番目の対 ) に位置している ( 第 3 章図 3 ). ヒトの体細胞では , これ らの末端動原体染色体は , 往々にして , 核小体オルガナイザー部位で互いに非 常に密な会合をしている (Ferguson-Smith & Handmaker, 1961 ; Ohno 観 . , 1961 ). これは , 非相同染色体に担われている相同性を維持するのに , 哺乳類 がもちいている方途であると考えられる . 文献 Brown, D. D. , Dawid, I. B. : Specific gene amplification ⅲ oöcytes. science 160 , 272 ー 280 ( 1968 ) . CaIIan, Ⅱ . G. : The organization of genetic units ⅲ chromosomes. J. Ce11 Sci. 2 , 1 ー 7 ( 1967 ). Clarkson, S. G. , Birnstie1, M. L. , Serra, V. : Reiterated transfer RNA genes of Xenopus な . J. M01. BioI. 79 , 391 ー 410 ( 1973 ). EIsda1e, T. R. , F ischberg, M. , Smith, S. : A mutation that reduces nucleolar number in X 叩 s 厄 e のな . ExptI. Ce11 Res. 14 , 642 ー 643 ( 1958 ). Ferguson-Smith, M. A. , Handmaker, S. D. : Observations on the satellited human chromo- somes. Lancet 1961 1, 638 ー 640. Haldane, 工 B. S. : The causes e 加ん 0 ル New York : Harper and Bros. 1932. . Howard, G. A. , Traugh, J. A. , Crosser, A. , Traut, R. R. : RibosomaI proteins from rab- bit reticulocytes : Number and molecular weight of proteins from ribosomal subunits. 工 M01. Bi01. 93 , 391 ー 404 ( 1975 ). Ohno, S. , Truj i110 , J. M. , KapIan, W. D. , Kinosita, R. : Nuc1eoIus-organizers ⅲ the causa- tion of chromosomal anomalies ⅲ man. Lancet 1961 Ⅱ , 123 ー 125. Ritossa, F. M. , Spiegelman, S. : Localization of DNA complementary to ribosomal RNA ⅲ the nucleolus organizer region of の們 0S0 んを厄 e 厄 ? tog 佖 ste ア . Proc. NatI. Acad. Sci. US 53 , 737 ー 745 ( 1965 ). , Atwood, K. C. , Spiegelman, S. : ( 1 ) On the redundancy of DNA complementary to