細胞 - みる会図書館


検索対象: 遺伝子重複による進化
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1. 遺伝子重複による進化

第 3 章真核性生物の染色体 ろいろの酵素や , 細胞増殖に必要なタンパク質は , 体細胞タイプの如何にかか ある遺伝子群だけを利用するようになる . 確かに基本的な代謝経路に必須ない においては , 胚発生での体細胞分化過程で , 各細胞タイプは特殊化し , 核内の タンパク質分子が密集して , 文字通り張り裂けてしまうであろう . 真核性生物 同時に活発に転写され翻訳されるならば , その細胞は , 過剰生産された RNA は無数の構造遺伝子をいれる余地がある . 核内で , これらの遺伝子のすべてが・ ノム ( 半数体染色体の 1 組 ) はほぼ 3.5x10 ー 9mg の DNA を含んでいる . そこに 他方 , 真核性生物は典型的な多細胞生物である . 哺乳類のそれそれの種のゲ である . てそれそれが抑制されない限り , ほとんどすべての構造遺伝子が転写されるの DNA は裸の状態にあるといえる . したがって , 特別の遺伝的制御機構によっ ど常に発現されていることになる . 多分この理由から , 原核性生物の環状 体を表わしているので , 1 本の環状 DNA に含まれる遺伝子の多くは , ほとん 大腸菌のような原核性生物は単細胞生物である . ーっの細胞が一つの全生物 5. 転写の非特異的レプレッサーとしてのヒストン 写されない DNA の領域が存在するということが見出された . rRNA を含む前駆体分子の転写に活発にあずかっている遺伝子相互の間に , 転 Beatty ( 1969 ) によって分離され , 電子顕徴鏡での観察によって , 18S と 28S イモリ ( T ァぉ売 sce れ s ) の染色体の核小体オルガナイザーが Mi11er と のゲノム内で常染色体の異質染色質部分に集中しているということを示した・ Yasmineh と Yunis ( 1969 ) は最近 , 大半のサテライト DNA は , 実際マウス いるのかもしれない . に固有の異質染色質領域にも用いられている転写されない塩基順列を表わして ラスの DNA は , 真正染色質領域の中の構造遺伝子の間隙だけではなく , 完全 ト DNA) の多くのコビーによって占められているということを示した . このグ 10 % が一つの特別な塩基配列または少数の類似した特別の塩基配列 ( サテライ ハイプリッド法を用いて , Britten と Kohne ( 1968 ) は , 哺乳類のゲノムのほ ~ 芝

2. 遺伝子重複による進化

230 第 v 部脊椎動物ゲノムの進化 って支配されているということを示す観察がふえてきている . L 鎖と H 鎖と の抗体特異性を決定する可変領域の遺伝子が , 体細胞中で上に述べたような方 途で増幅を行なうということは恐らくありうるであろう . ーロンの入り組んだネットワークの確立は , 樹状突起と軸索終 大脳でのニ ーロン間の細胞表層の識別に依存しているのだろ 末とにおけるそれそれのニ う . 個体発生過程で , なぜ A ニ ーロンは B ニ ーロンとは結合するが , C ーロンとの結合を回避するのであろうか . このような選択性は , ン A と B との細胞表層タンパク質の間にたまたま存在していた相補的な親和 性のためであるという可能性が考えられる . そこで , ーロンのもとの細胞 は急速な増殖期の間に多様化していろいろのアミノ酸配列をもった細胞表層タ ーロンはクローン的に由来 ンパク質をつくり出すという点で , それそれのニ したものであると帰結し得る . したがって , 細胞表層タンパク質に関しては , ーロンはいろいろのクローンの集りである . ーっのニ ーロンの中でさえ , 樹状突起における細胞表層タンパク質は , 必ずその軸索終末の細胞表層タンパ ク質とは異なるアミノ酸配列をもっているに違いない . ーロン細胞の表層タンパク質のさまざまなアミノ酸配列を生成する機構 は , 形質細胞のそれそれのクローンがいろいろの抗体分子を生成する方法と同 じ原理にもとづいて働いているに違いない ( Cohn , 1969 ) . すべての脊椎動物だ けでなく , ーロンを備えている多くの無脊椎動物のゲノムは , の細胞表層タンパク質に関して , それそれ数に差異はあるにせよ , 始源型遺伝 子をもっていなければならない . しかし , それそれの始源型遺伝子の多くのコ ヒ。ーを体細胞分裂過程で産生することは , より最近の発明であろう . 進化途上 このような発明が起こった時期に依存して , この体細胞遺伝子増幅機構の有無 が , 脊椎動物と無脊椎動物とを区別し哺乳類を他の脊椎動物から区別し , さ らにヒトニザルやヒトを他の哺乳動物から区別することすらできるのだろう . ゲノムに含まれる始源型遺伝子は , 本能的な , 遺伝的にすでに仕組まれてい る行動反応に対して直接関係があると期待されるが , 他方 , 生物は始源型遺伝 子の体細胞増幅と変更によって学習能力を増してきているのだろう .

3. 遺伝子重複による進化

5 フ。リン一ビリミジン塩基間に固有の 相補性に基づく生命の創生 第亜章 生殖細胞系列の永続性 多細胞生物は死を免れえないものである . それ故に , 2 歳のマウスは正に年 老いたネズミである . 最高の医学的管理をほどこしても , マウスが 5 年も生存 すると期待することはできない . ヒトの場合は , 老化にともなうゆるやかな退 化は 30 歳ぐらいで始まるようであり , 100 歳のヒトは 2 歳のマウスと同じく らい稀である . しかし厳密な意味では , からだを構成する体細胞のみが死すべ き運命にあるのである . Hayflick と。 orhead ( 1961 ) は , ヒトの胎児から取りだした繊維芽細胞の寿 命が有限であることを示した・繊維芽細胞は 50 回分裂したが , それ以上は分 : 裂しなかった . 老人から取りだした繊維芽細胞は , さけがたい老衰がはじまる ーまでに , 数回しか分裂でぎない .

4. 遺伝子重複による進化

第 17 章遺伝子重複を達成するその他の機構 もたなくとも , 個体はなんの影響もうけない . 173 過剰染色体というものは , その効果が宿主に対してたとえ有害であるとして も , 集団の中に常に存在しつづけているという意味において , Ostergren(1945) は過剰染色体の役割を寄生生物の染色体になそらえた . はたして過剰染色体は , 事実上 , 寄生生物のゲノムの一部分であろうか . もとの細胞から除外された細 胞内寄生生物の一つ以上の染色体が , 宿主細胞の有糸分裂紡錘糸に自ら付着し てしまったものかもしれない . もしこのようなことが過剰染色体の起源である ならば , これらの非正統的な染色体の宿主ゲノムへの偶発的な組込みは , 次節 に述べるウイルス溶原化と類似の現象である . しかし , 脊椎動物で過剰染色体 をもっている種が見出されていないので , このような遺伝子重複の機構は脊 動物の進化には寄与しなかったと考えられる・ 3. 溶原化・一一一ウイルスゲノムの組込み / くクテリオファージとして知られてい 宿主として細菌を用いるウイルスは , る . 普通 , , くクテリオファージは細菌に侵入してその中で急速に増殖し , 遂に は宿主を溶菌して殺してしまう . しかし特定の条件の下では , ファージと細菌 とは共生状態を確立する . ファージの DNA は細菌ゲノムに插入され , 両方の・ ゲノムは細菌の指数増殖期を通じてずっと同調して複製する . , くクテリオファージがネズミチフス菌に溶原化すると新しい抗原決定基が出 現し , しばしば , すでに存在している抗原決定基の反応性を弱めたりする . のような溶原変換の研究は , 宿主の細胞膜上の種々の抗原決定基の生合成に影 響を及ぼしたりそれを変更させたりすることのできる , ファージゲノムに含ま れる遺伝情報の種類を記述する上に , 価値あるものであったことが証明されて いる (Robbins & Uchida, 1962 ). SV40 (simian papova-virus (0) のような DNA 腫瘍ウイルスは , 二つの異な た方法で哺乳類の体細胞に影響する . これらのウイルスは許容細胞内で増殖 し , 最終的に細胞を殺す . しかしウイルスが非許容細胞に侵入すると , 宿主と 共生状態を確立する . その結果 , 宿主細胞はしばしば腫瘍細胞と形質転換さ

5. 遺伝子重複による進化

126 第Ⅲ部遺伝子重複の意義 えて 105 アミノ酸残基の長さである . L 鎖のアミノ基末端側の半分の領域が 40 個の変化しうる座位をもち , 各座位が 3 種のアミノ酸中の一つを選ぶことが できるならば , この領域は産生される多くの異なった特異性をもつ抗体の種類 を説明しうるのに十分な 34 。もの可変部域での配列を生ずるであろう . L 鎖ま たは H 鎖のカルポキシル末端に近い残りの領域は変化しうる座位をもたず , この領域は定常部域と定義されている . 抗体産生の仕事は , 形質細胞として知られている特別なタイプの血液細胞に 割り当てられている . これらの形質細胞は , 形質転換されたリンパ球であって , リンパ球の発生的な起源は胸腺や鳥類ののような他の器官にまで たどることができる (Glick 矼 , 1956 ; Miller' 1961 ). それそれの形質芽細胞 とその子孫細胞は , ただーっのきまった L 鎖のアミノ酸配列とⅡ鎖のアミノ 酸配列だけをつくるよう拘東されている . いい換えれば , ある形質細胞クロー ンでつくられるすべての抗体分子は互いに同一である . だから , 二つの別々の 形質細胞クローンは同一の抗体を決して産生しない . 可変部域のアミノ酸配列 は , おそらくすでに述べた約 40 の座位に影響を及ぼす特別の機構によってつ くり出されるのだろう . この特別な機構は本書の最後の章で議論される . から だに侵入する特別な抗原は , その侵入してきた抗原を認識する特別な L 鎖と Ⅱ鎖とを産生する能力をたまたま獲得していたリンパ球に対して刺激として働 く . このようなリンパ球は形質芽細胞に転換することによって , 刺激に応答す こうして , 増殖し抗体産生を行なう形質細胞のクローンが形成さ るのである . れる . これが抗体応答のクローン選択説である (Burnet' 1958 ). ヒト , マウス , ウサギ , それに多分多くの他の哺乳類は , ん型 L 鎖とえ型 L 鎖との合成を支配する少なくとも二つの別座にある遺伝子をもっている . 両鎖 はおよそ 210 ~ 220 アミノ酸残基の長さである . 哺乳類のん鎖はカルポキシル 末端にシスティンをもち , ス鎖はシスティンにつづいてカルポキシル端側にさ らにもうーっのアミノ酸 ( ヒトの場合はセリン ) をもっている・完全なアミ / 酸 の配列順序がヒトおよびマウスの純系のミエローマ ( 骨髄腫瘍 ) で産生される数 種のん鎖とス鎖について決定された (Hilschmann & Craig' 1965 ; Milstein' 1966 :

6. 遺伝子重複による進化

30 第 I 部塩基間の固有の相補性に基づく生命の創生 わらず , すべての細胞が必要とするものである . しかし , 生活機能に必要なこ れらの遺伝子は , 脊椎動物のゲノムのほんのわずかの部分しか占めていない . 構造遺伝子の大半は , それを造っている細胞にとって必要ではないが , 個体全 体にとって必要であるような生産物を特別に産生しているのである . たとえば , インシュリンや , その他のペフ。チドホルモンや , へモグロビンや , 免疫グロフ・ リンはその例である . 自己に不必要な生産物を造っている , これらの遺伝子に 関しては , 体細胞タイプの間に , はっきりした分業がある . インシ = リンホル モンの前駆体に対する遺伝子は , 膵臓の Langerhans 氏島細胞においてのみ働 いており , へモグロビンペプチド鎖に対する遺伝子は , 骨髄の造血細胞におい てのみ働いている . からだの中のすべての体細胞タイプの間では , 形質細胞の みが免疫グロプリンの生産者である . まったく明らかなことではあるが , 多細胞生物の場合 , ほとんどの遺伝子を 抑制された状態に保っておくことがより望ましいのである . 特別の遺伝制御機 構によって , それそれ抑制が解除されない限り , 後生動物ゲノムの構造遺伝子 は眠ったままであるに違いない . 賦活化型制御機構は , 真核性生物が , DNA と結合して転写活性を阻害する 無差別のレプレッサー分子をそなえている場合にのみ , 機能することができる . このようにして , レプレッサー分子が特異的に除去されるまでは , すべてのシ ストロンは眠ったままである . 事実 , 真核性生物の染色体においては , DNA はヒストンと呼ばれる一群の塩基性タンパク質と緊密に結合しているのである . Stedman と Stedman(1950) は , ヒストンが遺伝子活性のレプレッサーとして働 くと考えた . Huang と Bonner ( 1962 ) , AIIfrey ら ( 1963 ) は , その後 , ヒストン と結合している DNA シストロンは転写活性を現わすことが出来ないというこ とを示した . ヒストンは 110 または 220 のアミノ酸残基から成る , かなり小さい分子であ る . 多くの脊椎動物は 5 種または 6 種のヒストンを産生しているようである . これらは , ーっの非常にリジンに富むヒストン (fl) と , 2 種のややリジンに富 むヒストン (f2a2 と f2b) と , 2 種のアルギニンに富むヒストン (f2al と (3) とで

7. 遺伝子重複による進化

6 第 I 部塩基間の固有の相補性に基づく生命の創生 からだの体細胞は , ある意味では , からだ全体のために無報酬で機能を遂行・ するように強いられている奴隷である . たとえば , へモグロビンの産生は , か・ らだを維持するために必須であるが , へモグロビン分子をつくっている骨髄の 赤芽細胞にとっては , へモグロビン産生は非常な重荷である . このような奴隷 制度は , 個々の体細胞が有限の寿命を与えられている場合にのみ , 機能するも のである . そうでなければ , 割り当てられた無報酬の機能を遂行することをや めた突然変異体が出現して , 依然として従順な仲間の奴隷達をしのぐ直接の淘 汰有利性を享受することになるだろう . もし正常な体細胞が不死性を備えてい るならば , 新生細胞の繁殖による負担は , 種の存続を危機におとすほどの度合 に近づくだろう . 新生細胞は , 不死になろうとする試みに成功した手におえな い突然変異体の例である (Cohn, 1968 ) . 厚対に . 今 - 目 - 地球ーヒ快す . て . の生物の生殖細 , 胞と同様 , ーー - ・私たちの生殖衂を は数年 - も . 生ミ - な第春タ 2 生殖細月包は潜在的に不死なのである . 時間スケールをさかのぼっていくと , 各世代ごとに , 先祖の数が倍化してい ることがわかる . 私たち一人一人が生まれるには , 両親だけがいればよいが , 祖父母は 4 人 , 曾祖父母は 8 人生存していたことになる . 世代ほど前に生 きていた 50 万 ( 21 っというめまいのするほどの数の人々が , 今日生存する 1 個 人の形成に , それぞれの生殖細胞を捧げてぎたらとにな - る・しかし , 種々の征 服民族の勇士をのそいて , 15 世紀以降 , 私たちの先祖は同じ場所にとどまっ て生活する傾向をもっていた . 15 世紀のあらゆる交配可能な単位が 50 万の大 きさに近かったということは疑わしいことである . だから , 私たち一人一人は ,. ある程度近親交配の産物であるということがわかる . 進化においては , むしろ 隔離によって強いられる強い近親交配が種分化の必要条件であった . ヒトは , 本質的には , 最後の大氷河期に出現した更新世期の動物である . し たがって , 200 万年ほど前に , 私たちの生殖細胞は , オーストラロピテクスに 似た類人猿型の霊長類の中に疑いなく含まれていた . 6000 万年ほど前にはじ まった始新世の間 , キツネザル類型の生物が霊長目を代表する唯一つの種であ った . ほぼ 2 億 5000 万年前に , 杯竜類型の祖先種から生じたある爬虫類が ,

8. 遺伝子重複による進化

第 14 章調節遺伝子とレセプター部位の重複 1. 調節機構の階層 133 言うまでもないが , 調節機構には階層がある . まず第 1 に , 1 次転写制御は , 特定の体細胞タイプ中で , ある遺伝子座の転写のスイッチが入れられるか切ら れるかを決定する . 個体発生における体細胞分化は , 第 1 次的には , このタイ プの制御のもとにある . この点で , 発生過程での決定はたいてい非可逆的であ ると考えられる . というのは , いったん根幹細胞のあるグループが肝細胞にな るように方向づけられると , その子孫系列の細胞は永遠に肝細胞であるからで 特定の体細胞タイフ。できまった遣伝子に一度スイッチが入ると , 生物は , そ の状態を維持し , 構成的な様式でその遺伝子産物をつくりつづけるか , あるい は第 2 次の抑制性制御のもとで , インデ = ーサーが存在するときだけ遺伝子産 物ができるようにするか , そのどちらかを選択することになる . チロシンアミ ノトランスフェラーゼの遺伝子は , 哺乳類の肝臓でスイッチを入れられること は確かである . しかし , この酵素は副腎ステロイドホルモンが存在するときだ け合成される (Tomkins 矼 , 1966 ) . すでにスイッチが入っている遺伝子座の 転写と翻訳は , レプレッサーがインデ = ーサーによって取り除かれるまで , 阻 ・害されている . 脊椎動物における第 2 次階層の抑制性制御は , 第 1 次の制御と 違って , 大腸菌厄 c オペロン系の作動様式と類似している . どちらの系におい ても , 調節タンパク質は別個の遺伝子座でその生成が支配されており , このタ ンパク質は , 二つの異なる結合部位をもっているという点で , 2 頭の怪物にた とえてよいであろう . 一方では核酸の特定塩基配列を識別し , 他方ではインデ ーサー分子を識別する . c オペロン系の場合 , 調節タンパク質は分子量が 約 16 万の大きな酸性タンパク質で , c オペロンのオペレーター部位を構成し ている DNA 分節の塩基配列を識別する . この結合によって , 転写が効率よく 阻害され , したがって lac オペロンの三つの酵素遺伝子がポリシストロン性 •mRNA にコビーされないようになる . しかし , IPTG ( イソフ。ロヒ。ルチオガラ クトシド ) のようなラクトースの代謝類似物質であるインデューサーがこの調 . 節タンパク質と結合すると , アロステリックな配位が変化して , もはやオペレ

9. 遺伝子重複による進化

第 16 章倍数性一一ゲノム全体の重複 157 段階で成しとげられたに相違ないと推測できる . 直列重複と倍数性とを交互に 採りいれることによって , 魚類あるいは両棲類型の哺乳類の祖先種は ,. すでに 適当な度合の遺伝的冗長性を備えた , 特徴的なゲノムの大きさに達していたと 思われる . 引き続いて起こった , 哺乳類と最後にヒトの出現で頂点に達する , 進 化の大きな飛躍は , 重複をさらに繰り返してもたらされたものではなく , むし ろすでに保持している遺伝的冗長性を使い分けて成しとげられたと考えられる - 2. 同質倍数性 有糸分裂終期の完了とともに生成した二つの娘細胞が融合して , ーっの細胞 になると , 4 倍体細胞が 2 倍体生物の体内にできる . 4 倍体細胞は有糸分裂が・ 起こらずに 2 回の連続した DNA 複製によっても生成するであろう . 生殖腺中 の精原細胞と卵原細胞の有糸分裂による増殖過程で , 多くの 4 倍体生殖細胞が・ 正常個体ででも産出されている . 減数分裂が完了すると , このような 4 倍体生 殖細胞は 2 倍体配偶子を生みだすであろう . 4 倍体接合子すなわち 4 倍体個体 が , 二つの 2 倍体配偶子の合体によって形成される . ヒトや他の哺乳類では , 4 倍体接合子が通常有意な頻度で生じているが , 4 倍性は致死であると考えら れている . Carr ( 1967 ) は自然流産したヒトの 227 胎児について研究し , そのう ち 2 個体が 4AXXXX および 4AXXYY という構成の 4 倍体であったことを 見出した . 3 倍体個体が生存可能で , かっ稔性をもっ種では , 4 倍体接合子は . 3 倍体と 2 倍体との交配の結果としても生まれるであろう . すでに述べたよう に , 3 倍体の雌は 3 倍性の卵を生む傾向をもっているが , このような卵は , す べてが雌である単為生殖性 3 倍体のもとになる . Fankhauser と Humphrey ・ ( 1959 ) はメキシコ産サンショウウォ ( A 襯切 s 襯佖佖範 ) の 3 倍体個体を人 為的につくりだした . 3 倍体はどちらの性のものでも非常に弱い稔性しかもた ないし , 雄は雌以上に不稔性が高い . したがって , 3 倍体個体間の交配は容易 には成功しない . しかし , 2 倍体の雄と交配すると , 3 倍体の雌は多くの 4 倍・ 体を生んだ . もし両方の性の 4 倍体が稔性をもっているなら , 両性生殖性の 4 倍体品種 , さらにその結果として , 新しい 4 倍体種が新生するであろう . この

10. 遺伝子重複による進化

98 第Ⅲ部遺伝子重複の意義 もっているというのが最新の推定である ( Brow れ & Dawin , 1968 ). 第 4 のク ラスの rRNA, すなわち 5.8SrRNA は , まだよく解明されていない・ 上述の四つのクラスの rRNA のほかに , リポゾームはタンパク質をも含ん でいる . リポゾームが絶え間なく形成されるためには , 細胞が rRNA と同じ リポゾームタンパク質を多量に合成しなければならないことは疑問の余地 がない . 自然淘汰が , リポゾームタンパク質のそれそれの構造遺伝子の直列重 複による増幅をやはり好ましいものとして選び出したかどうか , を明らかにす ることは非常に興味のあることである . 哺乳類の細胞の細胞質にあるリポゾー ムはほぼ 60 種のタンパク質でできており , それらの分子量は 8000 から 58000 の範囲にあることが示されている ( Ⅱ oward 矼 , 1975 ). 両棲類と棘皮類における卵形成過程で , 18S と 28SrRNA 遺伝子の増幅が さらに起こっているようである . すでに触れたように , ツメガェルの核小体オ ルガナイザーを欠失したホモ接合個体は , 18S と 28SrRNA を完全に合成で きない . けれども , へテロ接合の親の交配から生まれたこのような欠失型のホ モ接合個体は , 遊泳性のオタマジャクシの段階まで発生しうる (Elsdaleetal" 1958 ). へテロ接合の母親によって卵細胞質中に貯えられた rRNA は , この進 んだ発生段階まで , ホモ接合個体の成長を支えるのに十分な量である . 450 の rRNAN 伝子コビーをもつ核小体オルガナイザーだけで , このような莫大な量 の 18 S と 28 S rRNA を , 卵形成過程でつくりえないことは明らかであろう . 第 1 減数分裂前期の多糸期に達している卵母細胞が大きくなりはじめると , 染 色体の核小体オルガナイザー域は染色体から離れたコビーを核液中に分散させ , この結果 , 卵母細胞の核は , 最終的に , 染色体から離れた核小体オルガナイザ ーの 1000 以上ものコビーをもつようになり , 増幅されたコビーは核小体に編 制されると考えられている . 個々の核小体オルガナイザーは 18 S と 28 S rRNA 遺伝子対の 450 もの直列重複コピーをすでにもっているので , 成長中の 卵母細胞が利用しうる二つのクラスの rRNA 遺伝子数は 450X1000 という驚 嘆すべき数になる . 18S と 28SrRNA とはきわめて対照的に , 5SRNA5ü伝 子は , 卵形成過程で増幅されて , 染色体外に分散されるようなことはないよう