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検索対象: 遺伝子重複による進化
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1. 遺伝子重複による進化

次 目 1. 種分化の必要条件としての隔離・ 2. 集団の大きさと成功の代償・ 3. 世代時間と進化の速度・ 第Ⅲ部遺伝子重複の意義 第 10 章重複による同一遺伝子座の生成・ 1. rRNA 遺伝子・ 2. tRNA 遺伝子・ 3. 同一遺伝子の重複コビーの存在による不利性・・ 第 11 章もと対立遺伝子であった二 つをゲノムの 別座に組み込むことによる永続的なへテロ 接合の有利性の獲得・ 第 12 章もとの対立遺伝子の分別調節と アイソザイム遺伝子への転換・ 第 13 章既存の遺伝子の冗長なコビーからの 新遺伝子の創生・・ トリフ。シンとキモトリプシンの場合・ 1. 2. 微小管のタンパク質と骨格筋のアクチン・ 3. ミオグロビンとへモグロビン・ 4. 免疫グロプリンの L 鎖と H 鎖・ 5. フレームシフト突然変異による新しい遺伝子の出現・ 第 14 章調節遺伝子とレセプター部位の重複・・ 1. 調節機構の階層・ 2. 遺伝子賦活化型の調節遺伝子の性質・ 3. 第 1 次調節遺伝子と構造遺伝子の調和した重複・・ 4. 重複した調節遺伝子の機能の多様化による形態変化・ 5. 構造遺伝子に隣接したレセプター部位の重複・ 第Ⅳ部遺伝子重複の機構 第 15 章遺伝子連関群の一部分の直列重複・ X111 0 1 っ乙 0 ) 0 ) 0 ) 0 ) 0 ・・ 105 ・・ 108 ・・ 115 ・・ 116 ・・ 120 ・・ 122 ・・ 124 ・・ 128 ・・ 131 ・・ 133 ・・ 135 ・・ 137 ・・ 137 ・・ 139 ・・ 141

2. 遺伝子重複による進化

第 15 章遺伝子連関群の一部分の直列重複 151 いる ( 第 6 章 ). へテロ接合体の減数分裂過程でのただ 1 回の不等交叉によって , との二つの対立遺伝子が , 同一の染色体に位置する非常に密接な連関関 係にある別個の遺伝子座となる . もしこのような重複遺伝子をもつものが集団 にひろがるならば , 集団の成員は滝のような有害なホモ接合体をまったく 生み出すことなしに , 永続的なへテロ接合の有利性を獲得することとなろう . しかし , この種の重複がアフリカ人の集団でまったくみられないという事実は , 住鎖遺伝子の量の増加を伴わずに鎮遺伝子の量を倍加させるということが , 滝との対立遺伝子を同一染色体に担うことによって得られる有利性を相殺 する以上の影響をもっことを示唆している・の 4 量体へモグロビン分子だけ・ しか合成されないようにするためには , 住鎖と鎖とがほぼ同一量つくられる ことが必要なのである . しかし , へモグロビン住鎖と滝鎖を支配する二つの 遺伝子座は連関していない . 滝鎖遺伝子の冗長な重複コビーからö鎖遺伝子を産生した直列重複は , 多分 ö鎖遺伝子があまり効率よく働かない遺伝子なので許容されたのである . HbA2 ( のおは成人のヘモグロビン全体の 1.5 ~ 4.0 % を占めるにすぎない . 鎖遺伝子が滝鎖遺伝子のように効率よく働く遺伝子であったならば , この種 の重複はおそらく許容されなかったことであろう . ö鎖のアミノ末端と同じ配 列をもっている雑種 Lepore 鎖はö鎖自身と同じくらい少量しかっくられない ので , 鎖遺伝子の最初の部分にあるレセフ。ターの塩基配列がこの構造遺伝子 座の生産性の低いことに関与しているのであろう . ハプトグロビン鎖のⅡ p2 対立遺伝子を生じた不等交叉は , HPIF と HPIS と の二つの鎖重複遺伝子が融合して一つのシストロンを生みだしたので , プトグロビン遺伝子との遺伝子の量的関係をそこなわない . 哺乳類のゲノ ムは , 免疫グロブリンⅡ鎖に対してほぼ 10 個の緊密に連関した遺伝子座 ( 第 7 章 ) と L 鎖のにとスとに対する二つの連関していない遺伝子座を , 第 2 番目 と第 3 番目の連関群の上にそれぞれもっている (Gilman-Sachs 矼 , 1969 ). クローン化された抗体産生形質細胞で一つの L 鎖遺伝子座とーっの H 鎖遺伝 子座だけが転写されるのを保証する遺伝的調節機構が , 予め進化していたため

3. 遺伝子重複による進化

第 10 章重複による同一遣伝子座の生成 101 つもっているからである . このようにして , 比較的短期間に , 三つの重複した 伝子のうち二つが。廃物 DNA " の状態になってしまって , 最終的に , ゲノム にただーっの機能のある遺伝子が残る . したがって , 核小体オルガナイザーに 幾百もの直列配列した重複コビーをもっていることは , 表面上考えられるほど 理想的な状態ではない . というのは , 重複している遺伝子は , 突然変異によっ て , ゆっくりとではあるが , 確実に無用な遺伝子になるであろうからである . . 理想的な状態は , 配偶体が 18S と 28SrRNA のそれぞれに一つの遺伝子をも っているだけで , 受精後にこの遺伝子の直列配列の重複が起こる場合であろう . この方途では , ある個体に含まれている rRNA 遺伝子の多重コビーのすべて . が , 欠陥型かあるいは正常型かのどちらかになる . 自然淘汰は欠陥型のリポゾ ーム遺伝子を受け継いだ個体を不適合なものとして除去してしまう . リポゾー この理想的な方途をもちいている生物がまったく知 ム遺伝子を統御するのに , られていないことは驚くべきことであろう . Callan ( 1967 ) は , 生物が遺伝子の重複コヒ。ーをゲノムに保持することによる 危険から逃れる非常に巧妙な機構を提唱した . 直列重複遺伝子に階層構造があ って , 一端にある一つの遺伝子が主遺伝子であって , 残りは従遺伝子であると いう , 主・従説 (master-slavetheory) を彼は仮定している . 毎細胞分裂前に DNA が倍化するとき , 従遺伝子でなくて , 主遺伝子だけが DNA 複製の鋳型 として働く . 主遺伝子一従遺伝子系の正味の効果は , リポゾーム遺伝子を一つ だけもっている配偶子と同じである . 個体に含まれるリポゾーム遺伝子がすべ て欠陥型か正常型かのどちらかになるからである . もし , 主遣伝子に禁制突然 変異が起こると , 次世代の細胞の従遺伝子のすべてが同じ欠陥を受け継ぐこと になる . 無尾類とサンショウウォ類は 450 もの直列配列した rRNA 遺伝子をゲノム にもっているにもかかわらず , この遺伝子の塩基配列を厳密に保存することが できているのは , この主遺伝子一従遺伝子系によっているのであろうか . 生物が同じ遺伝子の重複コピーを保持しているために蒙るもうーっの難事は , 直列重複コヒ。ーで構成されている染色体域で起こる欠失や重複の繰返しである .

4. 遺伝子重複による進化

152 第Ⅳ部遺伝子重複の機構 に , 自然淘汰は L 鎖と H 鎖との遺伝子の重複の度合の甚だしい不一致を許し てきたのである . 直列重複に関する第 3 番目の , そして多分非常に重大な欠点は , その遺伝子 : 活性を制御する調節遺伝子を重複せずに , 構造遺伝子だけを重複させる傾向が . あるということである . 調節遺伝子産物は拡散性であり , そのため調節遺伝子 座は必ずしもその調節する構造遺伝子座に密に連関している必要はないし , 実 際に連関していない ( 第 14 章 ) . 直列重複が一つの調節遺伝子座の支配下にとどまる限り , 重複したものが異 なった機能を獲得する望みはあまりない . 個体発生過程で機能的に多様化した 重複遺伝子が分別的に使用されるということは , 重複した構造遺伝子のそれぞ れが , 個々の調節遺伝子の重複を伴う場合にのみ生じうる可能性である . この ときにのみ , 構造遺伝子のレセフ。ター部位とその調節遺伝子とは独立の 1 単位 として相伴って進化することができる . 後に述べるように , 肺魚やサンショウウオの場合 , そのゲノム量の莫大な増 加は , 部域的重複によってのみ達成されたと考えられる . 南米産肺魚のゲノム 量は哺乳類のゲノム量の 35 倍もあり (Ohno & Atkin, 1966 ) , アンヒュ (amphiuma, サンショウウオの一種 ) のゲノム量も 28 倍に達している ( MirskY &Ris, 1951 ) . しかし , ゲノム量に比例して非常に多くの機能的に多様化した 重複遺伝子をもっているという何らの証拠もない .Com ⅲ gs & Berger, 1969 ) . 肺魚とサンショウウォ類は , 遺伝子重複を達成させる手段として直列的重複 たけに依存するということの悲劇的結末を明らかに示している . 直列重複した 遺伝子が単一の調節遺伝子座の支配下にとどまる限り , 繰返し直列重複を行 なって , たとえどんなに多くの構造遺伝子のコビーを獲得しようとも , 核小体 オルガナイザーにある 18 S と 28 S の rRNA 遺伝子の多くのコピーが行なって いるのと同様 , 重複されたコビーはただ単に同一の遺伝子産物をより多く生産 するのに役立っているにすぎない ( 第 10 章 ). そのゲノム量が非常に増大する につれて , その細胞の大きさもまた非常に増大した . そこには , それぞれの遺 伝子産物をより多く産生するための明白な必要性があった . 肺魚やサンショウ

5. 遺伝子重複による進化

第 14 章調節遺伝子とレセプター部位の重複 3. 第 1 次調節遺伝子と構造遺伝子の調和した重複 137 前章で提示した事実は , 多種多様なへモグロビン鎖の構造遺伝子座が一連の 遺伝子重複によって共通の祖先型遺伝子から進化したことを示唆している . の一連の構造遺伝子の重複は , 調和したー系列の調節遺伝子重複を伴ったと思 われる . ヒトの発生過程で鎖遺伝子は胚の血球形成の開始とともに活性化さ れ , 個体の一生を通じて転写され続ける . しかし , 鎖と重合する相手は変わ る . まず最初にと鎖が出現し , 胚のヘモグロビンはのと 2 とど 4 の二つのタイプで 存在する . 間もなくと鎖の産生が止まって , 7 鎖の産生が出生時まで続く . 胎 児へモグロビンは主にの 72 で , 74 がいくらか存在する . 最後に , 滝鎖とö鎖 が出現する . 成体へモグロビンの主要構成体はの滝 2 で , のあは全体のほぼ 3 % にすぎない . 重複した遺伝子の分別制御は , 重複した調節遺伝子の機能的な多様化を意味 している . 住鎖遺伝子 , と鎖遺伝子 , 7 鎖遺伝子は , それそれ別個の調節遺伝 子に対応した異なるレセフ。ターをもっていると考えられる . 他方滝鎖とö鎖の 遺伝子はまだ同じ調節遺伝子の制御下にあるに相違なく , したがって , この二 つの鎖の遺伝子はほぼ同じレセプターをまだもっていると考えられる . 4. 重複した調節遺伝子の機能の多様化による形態変化 進化における大きな形態変化もまた冗長性のある既存構造の転換によっても たらされる . 早期の脊椎動物に起こった最初の大きな解剖学的形態の改善は顎 の発達であった . 3 億年以前の最も早期のものとして知られている脊椎動物は , 無顎ü(Agna- tha ) に属する顎骨のない魚で , 甲皮類 ( Ostrac 。 derm ) と総称されているものであ った . 現在のメクラウナギやャツメウナギはこの類の極度に変化したタイフ。を 代表している . 魚に似たこれらの生物は消化管につながっている単なる孔にす ぎない口をもっていて , 10 対以上もの鰓裂が消化管につながって外へ開いて いた . このような口は真空掃除器のような働きしかできなかったと考えられる が , 河や湖 , 時には河口付近などの底の泥を吸い込むには適したものであった・

6. 遺伝子重複による進化

108 第 12 章 もとの対立遺伝子の分別調節と ァイソザイム遺伝子への転換 一群の機能的に互いに関連した遺伝子のうち単一座だけの不均衡な遺伝子重 複は , その座の二つのもとの対立遺伝子が同一ゲノムに組み込まれたのちすぐ に分別遺伝調節機構が発達した場合に可能になる . この遺伝調節機構は , 対立 遺伝子であった片方だけを個体のあるタイプの細胞で転写されうるようにする ので , ある単一座に起こった不調和な重複にもかかわらず , 機能的に関連した すべての遺伝子間に , もとの 1 対 1 対応の量的関係が効果的に回復する . 生物が同じ酵素の重複した遺伝子をそれそれ区別し , 個体発生過程で分別利 用できるようになるや , 生物がこのタイプの遣伝子重複から利益を導きだす道 が究極的に開かれる . この分別的な遺伝子の利用によって , 重複した遺伝子は 異なる自然淘汰の圧力にさらされることになる . 二つの重複した遺伝子は違っ た種類の突然変異を蓄積し , 多様化し , 最終的に酵素は同じ基質に作用し , 同 じ補酵素をもちいながらも , 相互に著しく異なった反応速度的特性を獲得する ようになる . このような方途で , アイソザイムといわれているものの遺伝子群 が生まれてきたと考えられる . 大部分の脊椎動物は , 乳酸脱水素酵素 ( LDH ) の A'B サフ・ユニットに対して , 別座にある少なくとも二つの遺伝子をそなえている . この異なるサブュニット は同一分子種とも , 異なる分子種とも会合しうる . したがって , 二つの異種サ ニットの重合によって , 五つの 4 量体アイソザイムが形成される . すなわ ブュ ち , A4, A3B, A2B2, AB3, B4 である (Markert, 1964 ). 二つの別な遺伝子座の産物 がそれそれ制限をうけない親和性を維持しているという事実は , 二つが共通の

7. 遺伝子重複による進化

第 15 章遺伝子連関群の一部分の直列重複 149 徴として確立された . たとえば , すべての哺乳類は , いろいろな種類の免疫グ ロフ・リンⅡ鎖を支配する密接に連関した重複遺伝子の同一セットを備えてい この事実は , すでにいろいろな場合に述べられてきた . すべての哺 ーるらしい . - 乳類の共通の先祖がすでにこれら重複遺伝子の完全なセットをもっていたとい うことは全く明白なことである . 先祖型 H 鎖遺伝子の繰返し起こった直列重 複は , 哺乳類の爬虫類型祖先種あるいは両棲類型祖先種において , すでに生じ ていたに違いない . ジ = ラ紀の終り , すなわち 1 億 3000 万年前に生存してい た汎獣類は , すでに完全な 1 揃いのセットをもっていたに違いない . もうーっの直列重複はもっと新しい時代に生じた . たとえば , ヒトのヘモグ ・ロビン滝鎖とö鎖とは 141 個のアミノ酸座位のうち 10 個だけが異なっており (lngram & Stretton, 1962 ) , 哺乳類のなかではオランウータンのような , ヒト に非常に近い類縁のものだけがö鎖遺伝子をもっている (Hi11 矼 , 1963 ). は 鎖遺伝子の重複と , それにつづくその重複遺伝子の多様化による鎖遺伝子の 生成が , ヒトニザル上科のなかで生じた . この種の重複が起こってからはまだ 2500 万年と経っていない . ある種の直列重複はさらにもっと新しい時代に生じた . 直列的に重複した TIp1F と Hp1S シストロンの間での融合による , 、プトグロビン住鎖の Hp2 シスト ロンの生成は , ヒトにおいて生じたのであって , ヒトニザルは Hp2 シストロン をもっていない . この不等交叉はここ 100 万年以内に生じたに違いない . ヒト においてさえⅡ p2 はまだⅡ p1F と Hp1S とに対する対立遺伝子の一つであるに すぎない . 直列的に重複したコビーの融合による新しい更に長いシストロンの生成は , 同一の染色体内の不等交換か , あるいは減数分裂中の相同染色体間の不等交叉 かのいずれかによってしか達成されない . 、プトグロビン住鎖の Hp2 だけで なく , 最初の免疫グロブリンⅡ鎖の遺伝子も , 第 8 章で議論したように融合 によって生じたので , このような遺伝子の融合が脊椎動物の進化に非常に貢献 したということには疑いの余地がない . この章で述べた直列遺伝子重複の三つ の機構のうちの少なくとも二つを利用しなければ , 魚類からヒトへの進化は不

8. 遺伝子重複による進化

第 15 章遺伝子連関群の一部分の直列重複 145 れている . 他方 , ウサギでは , Aa1,Aa2,Aa3 として知られている対立遺伝子 は , Ⅱ鎖のアミノ末端に近い可変部域内の不変座位に影響を及ぼすアミノ酸の 置換を表わしているらしい (Oudin, 1966 ). 遺伝学的には Aa1 , Aa2, Aa3 は単 一遺伝子座の対立遺伝子のように行動するが , これらの対立遺伝子は特定のク ラスの H 鎖でみられるのでなくて , むしろすべてのクラスのⅡ鎖においてみ られる . たとえば Aa1/Aa2 へテロ接合体のウサギで , 対立遺伝子マーカー 1 と 2 とは IgG クラスのⅡ鎖だけでなく , IgA クラスのⅡ鎖やさらに IgM のな 型Ⅱ鎖によってすら担われている ( Todd , 1963 ). この事情は , ウマのヘモグロ ビン鎖でみられる事情と一見同一である . というのは , 10 個程度の密接に 連関したⅡ鎖遺伝子座がウサギの同じ染色体上にあり , 同一または類似のア ミノ酸の置換を共にもっていると考えられるからである . 一見 , 同一染色体の 娘染色分体の間の不等交換が , ウサギ H 鎖遺伝子の直列重複に関与した唯一 のものであったように思える . しかし , Ⅱ鎖遺伝子が一団として集まることは , 地球上での最初の哺乳類の出現以前にすでに生じていたということを示唆する 証拠があるので , ウサギ H 鎖に関する前述の考えは支持できないものである ( 第 8 章 ) . 免疫グロブリンⅡ鎖を支配するシストロンに関して , 上述したことから総 合される全体像は , それそれの完全なⅡ鎖は単一のシストロンではなくて , 個体発生の間に , 溶原化のような過程によって一つに融合された二つの独立な シストロンによって合成が支配されているということである . 10 個程度の密 接に連関した遺伝子座のそれそれは , Ⅱ鎖の定常部域すなわちカルポキシル末 端を含む部分の合成を支配し , ヒトやマウスは定常部域の対立遺伝子の多形性 を保有しているようである . Ⅱ鎖の可変部域すなわちアミノ末端を含む部分は 別の一群の別々の遺伝子座が合成を支配しており , ウサギはこれらの可変部域 の遺伝子座のうちの一つに対立遺伝子の多形性を保有している . ーっの可変部 域の遺伝子は 10 個程度のいろいろな種類の定常部域の遺伝子のどれとも融合 しうるので , 可変部域遺伝子座の対立遺伝子マーカーである Aa1 , Aa2,Aa3 は , どのクラスのⅡ鎖にも見出されることになる . 各Ⅱ鎖のクラス特異性は

9. 遺伝子重複による進化

第 21 章ヒトはどこから由来したのか 225 から創出させた直列重複は , 比較的最近になって , ウシの祖先種の中で生じた と考えられる . へモグロビン鎖遺伝子座を含む直列重複は , ヒトのö鎖遺伝子座を生みだ した . ヒトの滝とöとの差異は , 10 個のアミノ酸の置換の差であるにすぎな このことは , この特定の重複がヒトの直接の祖先種で起こったことを示唆 している . 事実 , ヒトニザルだけがö鎖遺伝子をもっているらしい ( Ⅱ i Ⅱ矼 , 1963 ) . 祖先型の哺乳類は , 機能的な多様化を高い度合で遂げていない , 重複遺伝子 の多くのセットを保持して進化をはじめたと思われる . したがって , 有胎盤喩 乳類は , ある重複遺伝子セットのそれそれの重複遺伝子を , 特殊化する機会を 備えていたわけである . 既存の重複遺伝子のたえまない特殊化は , 安定化した ゲノムの枠組みの中で有胎盤哺乳類が享受した , すさまじい適応放散に非常に 貢献したというのが私の考えである . 1852 年頃に Schr 。代は , ウサギのある個体は目の瞳孔を拡げるアルカロイド であるアトロビンの投薬に反応しないことを発見していた . その後 , この抵抗 性は , アトロピンエステラーゼ酵素の存否に依存し , ウサギがこの酵素をつく るかっくらないかは遺伝的に定まっているということが明らかになった (Sawin & G1ick, 1943 ) . 有胎盤哺乳類は , ェステラーゼ活性をもつ酵素の合成 を支配する多くの遺伝子座をもっている . 遺伝子座に冗長なコビーがあるので , 哺乳類は必要が生じたとき , ーっの遺伝子座を変化して特定のエステラーゼ遺 伝子を生成しうるのである . C1yde Stormont( 私信 ) は , 特定のエステラーゼ遺 伝子座の五つの対立遺伝子のうち , ーっだけがアトロビンエステラーゼの合成 を支配する能力を獲得したということをウサギで示した . 同様に , 有胎盤哺乳 類の数種のエステラーゼ遺伝子のうちのいずれでも , 変化して , アトロビンエ ステラーゼとかコカインエステラーゼのような高い基質特異性をもつェステラ ーゼの合成を支配する , 特殊化した遺伝子座となることができる .

10. 遺伝子重複による進化

第Ⅲ部遺伝子重複の意義 のであろうか . 遺伝子重複が起こった後に , 特定の遺伝的制御機構の発達が続 いて起こったときにはじめて , 重複遺伝子はアイソザイム遺伝子となった . 遺 . 伝子の重複が起こり , その重複コヒ。ーの一つに最初の禁制突然変異が生成する という事象が続くと , どのようなことが起こるだろうか . ゲノムは依然として 特定の機能を果たす遺伝子座を一つもっているので , 突然変異した重複遺伝子 の一つがっくる無用のポリペプチド鎖は生物にとってまったく無害である . 事 実 , 突然変異した重複コヒ。ーは今や冗長な遺伝子座となったのである . 自然淘 汰は , 冗長な座を無視し , その上 , 遺伝子内組換えにも助長されて , 自由に禁 制突然変異を次から次へと蓄積していくようになる . その結果として , このよ うに禁制突然変異を蓄積した冗長な遺伝子によってつくられるポリペフ。チド鎖 は , もとの遺伝子がもっていた機能とまったく異なる機能を遂に獲得すること になるであろう . このような方途で , 以前には存在しなかった機能をもつ新し い遺伝子が次から次へと進化途上で出現してきたに違いない . 古い遺伝子の冗 長な重複コヒ。ーからの新遺伝子の創生は , 遺伝子重複が進化途上で演じた最も 重要な役割である . 116 トリフ。シンとキモトリプシンの場合 食物として腸管に入ったタンパク質の消化は , 二つの重要なタンパク質分解 酵素であるトリプシンとキモトリプシンによって行なわれる . これらの酵素は , 膵臓でつくられ , 管を通って腸管に分泌される . 活性トリプシンと活性キモト リプシンはそれらを生産した膵臓細胞を内部から分解して殺してしまうであろ うから , トリフ。シンとキモトリプシンの二つの遺伝子は , 実際には , トリプシ ノーゲンとキモトリプシノーゲンといわれる少し長い不活性のポリペフ。チド鏡 の合成を支配しているのである . トリプシンとキモトリフ。シンとの重要な違いは , これらの酵素がタンパク質 のペプチド結合を切断する座位の特異性にある . トリプシンは , リジンやアル ギニンのような塩基性アミノ酸のカルポキシル末端側でポリペプチド結合を切 り , 他方キモトリフ。シンは , フェニルアラニンやチロシンのような芳香族アミ . 1.