幾何光学 - みる会図書館


検索対象: 光工学入門
47件見つかりました。

1. 光工学入門

序 文 人を含めほとんどすべての動物は , 光によって明るさを感じたり物の存在を知った り , さらにその色や動きを判別し識別している . この見るという動作ないし感覚は , 動物の五感のなかで最も情報量の多い感覚であろう . このような物理的な情報だけで はなく , ときとして光は , 柔らかさや暖かさ , 重苦しさなど心理的要素をも人に与え る . そのため , 人々は有史以来光に大きな関心をよせ , 銀河に , そして星の光にロマ ンと不思議さを感じるとともに , その実用性の高さに注目し , 研究を行ってきた . そ の結果 , 光学は物理学のなかで最も早く進歩を遂げ , 古代ギリシャにおいてすら幾何 光学の基本は形成されている . その後 , 電磁気学の発展に伴い光の本質が見直され , 光学はその一環として波動光 学の側面が大きく発展し , 学問としてのみならず実用的科学技術のはしりとして多く 1 つの発光素過程継続時 の応用が生み出された . しかし本文 8 章にみられるように , 間の短さや波長の短さのため , 波動としての特徴である位相すなわち干渉性の十分な 活用ができない恨みがあった . しかし量子力学の発展に伴う光の本性の見直しやレー ザーの発明によって , 光は波動としての特性を十分に示すようになり , 量子光学とし ての扱いを受ける一面をもっとともに , 量子工レクトロニクス技術として , さらに工 ネルギー密度の大きさをも利用した応用にも用いられるようになり , 科学技術として 広大な利用分野をもつに至っている . さらに現在もその活用分野はますます広がりつ つある . このような背景を考えるとともに , 中学や高校で光学の授業が十分に行われ ていない実情をも考えて , 本書の発刊を思いたった . したがって , できるだけ平易で 親しみやすく , しかも本質を失うことのない記述を心がけてある . 量子工レクトロニクスなどの応用を考えるにあたっても , 波動としての性質を利用 することが多く , 波動を理解することがたいせつであることに鑑み , 本書の構成には その点に重点をおき , 波動の進行・偏光・回折・干渉の説明に多くの頁をあてた . ま た , 光学における数学的扱いのややこしさによる本質の理解不足を避けるため , 複雑 な計算は付録にまわした . また本書に続く発展が容易にできるようにとの観点から , 受光器・エネルギー・レーザー発光の初歩も若干取り人れた . また長さは , 大学での 講義における半期 15 週で完結しうるように設定した . 本書が光学を習い始める方々 のお役に立っことを切望する .

2. 光工学入門

1 . 3 幾何光学と波動光学の比較 5 なるのであろうか . ラジオ波とマイクロ波との差が波長 ( 場所的繰り返しの長さ : 図 1 . 3 ( b ) ) であることはよく知られている . したがって , 光とラジオ波などとの違い も波長が異なるのであろうと推定される . さらに , 太陽の光が虹をつくったり , プリ ズムでさまざまな色に分けられることもよく知られている . これらの事実から , 可視 光は電磁波の一種であり , いろいろな波長の波からなりたっていると結論される . 精 密な実験により , 可視光は波長約 700nm から約 400nm の間の電磁波であり , その 範囲より長波長側や短波長側にも , われわれの目には感じない成分の光があることが 知られている . 可視光より長い波長の光は赤外光 , 遠赤外光 , 一方短い波長の光は紫 外光 , 真空紫外光などとよばれている . 短波長側はさらに波長の短い X 線 , / ( ガン マ ) 線へとつながっている . 各名称を分ける境界波長は定義されておらず , 習慣的な ものである . 電磁波の名称とその振動数 ( = 光速 / 波長 ) , 真空中の波長 , 波数 , ェ ネルギーを図 1.4 に示す . 以上のように , 光を波 ( 波動 ) として扱う分野を波動光学 という . 1 . 3 幾何光学と波動光学の比較 幾何光学と波動光学について述べたが , 光学的現象を観測するとき , どのような場 合に幾何光学で説明できるのか , どのような場合に波動光学的扱いが必要なのであろ うか . 詳しいことは次章以下で明らかになるので , こでは正確さを多少犠牲にして 簡単に述べることにする . 再び池の水面の波を考えよう . 図 1 . 2 で波の回り込みの程度をみると , 岩の前面 ( 波の来る側 ) の水面には , 波長の長い " うねり波”や波長の短い、、さざ波 " などい ろいろな波長の波が混じっているのに対して , 岩のすぐうしろ側の水面では " うねり 波 " しか見えない . 海中の岩に打ち寄せる波を見ると , この現象がより明らかに見ら れる . このことは障害物の大きさに比べて波長が長ければ , 波特有の回り込み現象 ( 回折現象 ) の効果は大きいことを示している . また幾何光学においては , 点として 取り扱う光源は 0 次元であり大きさはなく , 光線は 1 次元であり太さはないとしてい る . しかし , 実在の光の源 ( 光源 ) には必ず大きさが伴うし , 光の道筋には必ず太さ がある . すなわち , われわれが扱う光の道筋は光線ではなく光束である . このような かんげき 光束を , 狭い間隙 ( スリット ) や小穴 ( ピンホール ) を通して波長と同程度までに細 くし , 光線にしようとしても , 回折効果が顕著に表れ細い光の線とはならない *. れらのことから , 光の現象を近似的に幾何光学的に取り扱えるのは , 波長に比べて障 * 実際には回折効果は同じなのだが , 光束が太いと端の効果しか見えないのに対し , 細いと全体の効 果が見える .

3. 光工学入門

6 1 章はじめに 害物が大きい場合や光束が太いときといえる . 幾何光学は波動光学の近似であると述べたが , 両者の間には本質的な差もある . そ れは強度 ( 振幅の 2 乗 ) に関してである . 幾何光学はおもに光の道筋を扱うだけなの で , 特別な場合を除いて , 光の強度や発光過程そのものについては問題にしない . 波 動光学では , 光は電場・磁場の振幅の変化を扱うのだから , 光の強度も問題にできる であろうことは推定できる . 事実 , 光の強度を問題にするときには波動光学で扱う ( 1.4 節参照 ). したがって , 反射・屈折現象をその強度を問題にして定量的に扱うに は , 2.1 節で述べるマクスウェル (Maxwell) の方程式の電場 ( お ) , 磁場 ( 〃 ) の 境界面に平行な成分が連続であるとの条件を課して , その解を求めることになる . さ らに , 光の強度を測定するには , 一般に光のエネルギーをなんらかのほかの物理量に 変換する必要がある . したがって , 光はなんらかの物体へ吸収される必要がある . そ の吸収量を温度や電流 , 電圧 , ひずみなどほかの物理量として検出測定する . 物体か らの発光の場合 , 発光も通常は物体内の光以外のエネルギーが光のエネルギーに変化 して放出されるのだから , エネルギーの質の変化 ( 変換 ) が必要である *. したがっ てそれらを論ずるには , 光と物質との相互作用を直接取り扱う , いわゆる光物性ない しは分光学的考察もあわせて必要になる . 6 章以降で扱う光の検出においては , この ような取り扱いをすると同時に , 次節で述べる量子論的扱いも若干取り人れる . 1 . 4 量子光学 近年 , レーザー光が発明されて以来 , 光学の新しい一面がみえてきて , 種々の光学 的現象は若干異なった扱いがされるようになった . ときとして , その扱いは量子光 学 , あるいは光エレクトロニクスなどとよばれる . 通常光学 ( 幾何光学および波動光 こでは簡単にふれ 学 ) と量子光学 ( レーザー光学 ) との差は 8 章で説明するので , るだけにしよう . レーザー光の特徴をひと言でいえば , (a) 単色性がよく ( 振動数が一定 ) , (b) 干渉性にすぐれ ( 一連の波が時間的・場所的に長く続いている ) , (c) 強度 , いいか えれば波長あたりのエネルギー密度が大きい , ということである . これらはすべて同 じことを現象別にいい表しているともいえる . それは , 8 章で扱うレーザー光の発生 こでは , 普通光とレーザー光の可干渉性の 法や発生原理をみればすぐ理解できる . 差について簡単に説明するにとどめる . 波動の特徴として , 強度があまり大きくな が含まれる . * 波長変換過程においても , 非線形効果を利用する方法を除き , 一般にはエネルギーの質の変換過程 く , 現象が線形で扱える範囲では、、重ね合わせの原理 " がなりたっ . すなわち , 2 っ

4. 光工学入門

次 目 序 文 1 章 はじめに 1 . 1 光を光線として取り扱う幾何光学 1 . 2 光を波として取り扱う波動光学 1 . 3 幾何光学と波動光学の比較 1 . 4 量子光学 2 章 光の伝わり方 2 . 1 透明で均質な物質の中での光の伝わり方 2.1.1 光の速さ・ 2 . 1 . 2 光の波の形を数式で表示・ 2.1.3 光のエネルギーの流れ ( ポインティングべクトル ) 2.1.4 2 つの光の合成 ( 円偏光 , 楕円偏光 ) 2.1.5 位相速度と群速度・ 2 . 2 光を吸収する物質の中での光の伝わり方・ 2 . 3 方向によって性質の異なる物質の中での光の伝わり方・ 3 章 光の波の重ね合わせ ( 干渉 ) 3 . 1 光の波の長さ ( 可干渉性 ) 3 . 2 波自身が次の波の源 ( ホイへンスの小波の原理 ) 3 . 3 重ね合わせの原理・ ・・ 111 1 亠ワ」 LO ハ 0 、 1 ワ 3 LC t.C -9 、、 1 -0- 1 1 ・亠 1 ・亠 1 ・亠 1- 亠っ乙ワ 3 っ 0 付 録 0 -8 9 ~ っ 0 つけ

5. 光工学入門

1 章 はじめに 光に関する参考書をみると , 幾何光学 , 波動光学 , 量子光学に大別されているよう である . 本書では , このうち波動光学を主体とした記述をしているが , 全体像の理解 に役立てるため , まずそれらの間の関係を概観する . 1 . 1 光を光線として取り扱う幾何光学 宇宙飛行士の語るところによれば , 宇宙は暗黒で , そのなかに地球が青白く浮かん でいるという . 宇宙には光を遮るものが何もないのだから , 太陽からの光が満ち満ち ているはずである . それなのに暗黒なのはなぜだろう . それは光が見え , 明るく感じ るためには , 光が目に到達する必要があることによる . したがって , 宇宙が暗黒なの は光を遮るものがなく , 光が直進していて目に入らないためであると考えられる . す なわち , 光が目に見え , 明るさを感じるためには , 光が物体にあたって散乱された り , その進行方向が変えられて , 目に到達する必要がある . たとえば , 戸のすきまか ら光が入ってくるところに線香を立てれば , 光の道筋が見える . それは , 光が煙の粒 子によって散乱され , 目に入ってくるからである . そのとき見える光の道筋は直線で ある . これらのことからわかるように , 光にとって一様な媒質中では光は直進する . 一様な媒質とは , 光が進む速さが一定の空間または物質である *. 図 1.1 のように , 4 方向に広がりをもつ光束が , 4 方向に速さの分布をもつ空間を ェ方向に進むと , その進行方向は曲がってくることは明らかである . 日常生活でも , しんきろう 光の道筋が曲がることは観測される . たとえば , 富山湾魚津の浜で見られる蜃気楼 や , 夏の日ざしの強い日にアスファルトの道路上に見られる逃げ水の現象がある . 蜃 気楼とは , 海上にあるはずのない都市が見えるという幻想的な現象であり , 逃げ水と は , 道路上に水たまりが見え , それに近づくにつれ , 水たまりが逃げていく現象であ る . これらは光が直進するとしたら説明できない . 空気は温度によってその密度が変 わる . もし空間の一部分が暖められれば , 空間に密度分布ができる . 光の速さが密度 * 2.1 節で述べるように , 屈折率が一定の空間 .

6. 光工学入門

2 1 章 はじめに 心屈折率 広屈折率 波面 3 ) 工 3 工 2 工ー 媒質中の速度 t 秒後の各光線の位置 図 1.1 屈折率の異なる媒質中での光の進み方 によって変わるならば , 光は温度分布に従って曲進し , その道筋が曲がる . アスファ ルトが強い日ざしで暖められ , 空気の温度が上昇し , 地表近くの空気の密度が小さく なると , 光の速さが速くなる . この状態では光の道筋が曲がり , 部分的に空が見え , あたかも水たまりがあるかのように目に見える . 蜃気楼も同様の現象である . 2 章で 習うように , 光の速さは光の存在する空間を占める媒質の屈折率で定まっている . 屈 折率〃は , 真空中の光の速さらと媒質中の光の速さびの比で定義されている . 光が ある点からある点へ進むとき , 屈折率を光の経路 s に沿って積分したものが , 経 路 s の微小な変化に対して極小値となるような道筋をたどる . 数学的に書けば , 道筋 は nds=min. ( 極小値 ) で定まる . これはフェルマー (Fermat) の原理として知 られており , 力学での最小仕事の原理と本質的には同じである . 光が屈折率の異な る 2 つの媒質の界面に到達すると , 界面でその進行方向が変わるであろうことは容易 に推測される . この現象は反射 , もしくは屈折とよばれ , 詳しくは次節の波動光学で 扱われる . 屈折の大略は幾何光学で扱われ , その経路はスネル (snell) の法則とい う規則に従って決まる . いままで述べてきたことからわかるように , 光の進む道筋を おもに扱う分野を幾何光学という . 1.2 光を波として取り扱う波動光学 光が進むなら , 光とは何がどんな形で進んでいくものなのだろうか . いま , 光から しばし離れ , 水面に起こした波を考えてみよう . 池に小石を落とし波をつくると , 波 は同心円状に広がる波紋を形づくって広がってゆく . その行くてに小岩などの障害物 があると , 図 1.2 にみられるように , そこで波の一部は反射されるが , 小岩のすぐう

7. 光工学入門

1 . 4 量子光学 7 の波が同時刻に同じ場所に来ると , その場所の波の振幅は 2 つの波の振幅を位相を考 慮してたし算したものになるという規則が成立する ( 3 章参照 ). もし , 2 つの波が同 じ振動数でかっ連続して続いているならば , それぞれの波の位相も当然連続して変化 するから , 2 つの波の相対的位相差は一定である . したがって , 合成された波は一定 の初期位相をもった連続した波となる . この現象を干渉という * 1 レーザー光は , 8 章で述べるように , ある光に同期させた形で誘発させた光なの で , 単色性 ( 波長の一定性 ) がよい . また , レーザー光は時間的にも空間的にも長い 一連の波で , かっ位相は連続しているので , 干渉できる時間が長く続き , かっ干渉で きる場所も広い . 波動光学で , レンズによる結像作用や光コンピューティング作用に フーリエ変換・たたみこみによる空間周波数フィルタリング技術をよく用いるが , の方法はレーザー光を扱うときにより有効である . このような解析手段による光学を フーリエ光学とよぶこともある . 一方 , 普通光はランダムに起こる個々の発光の集合なので , 単色性が悪く若干波長 の異なった多くの光を含んでいる . すなわち , 普通光の場合 , 単色光といっても有限 の波長幅をもっている . したがって , ひと続きの波の継続時間が短く , 通常それは約 3 x 10 ー 9 s であり , 一連の光波の長さとしては約 1 m である . そのため , 一定の干渉 効果の継続時間は約 3X10 ー 9s と短く , 通常の観測方法では異なった光源から来る 2 つの波の干渉効果は観測できない . 通常 , 普通光の干渉を観測するには , 3 章で述べ るように , 1 つの波を 2 つに分け * 2 , それらの 2 つの光を干渉させる方法をとらなけ ればならない . すなわち , 1 つの波を分割すれば , もとの波の位相が変わっても , 分 割された 2 つの波の相対位相差は一定なので , 干渉効果としては一定のものが得ら れ , 観測可能となる . 最後に , この本ではほとんど扱わないが , 通常光学 ( 幾何光学および波動光学 ) と 量子光学 ( レーザー光学 ) との相関についてひと言ふれておく . 扱う物質や空間が小 さくなり , 極微の世界に入ってくると , 物質や現象は量子として扱うべきであること はよく知られている . 光も例外ではなく , 粒子性と波動性を有する光子 (photon) として取り扱われる . この光子は質量をもたない . 光が光子として扱われるとき , 振 動数レの光波はエネルギール , 運動量ルな = ん / スの粒子 ( 光子 ) である . んはプランク (Planck) 定数とよばれる作用量子量で , ん = 6.63X10 ー 27 [ erg ・ s ] であ る . 光をこのように扱うと , 振動数レの光波の強度とは , ルのエネルギーの光子が単 料振動数が等しくなくとも干渉は起こる . 振動数が近い場合に干渉により、、うなり " を生じる . この 場合 , 振動数の大きい波が振動数の小さい波で変調された波となる . * 2 波面分割と振幅分割がある .

8. 光工学入門

109 7.4 光ファイノヾー 光ファイバー中を進む光の解析には , 幾何光学的解析法とスラブのところで行った ような波動光学的解析法がある . 光線の経路や分散効果だけを求めるには , 前者で十 分であるが , 特に SM 型で問題になる波長選別 ( カットオフ波長 ) や伝送時の損失 を求めるには , 後者の扱いが必要になる . 光ファイバーの詳細な波動解析法では , ス ラブ線路で示した ( 7.1) 式を円筒座標で表現して , 境界条件を用いて解くのが一般 こでは経路のみを考えることにし , 若干簡単な方法で扱う . それには , 的だが , 1 . 1 節で示したフェルマーの原理 , を微分方程式で示したオイラー・ラグランジュ (Euler-Lagrange) の式 d 〃・ d r ds こで , / は点 PI から P2 までに進むのに要する時間で , s は光線に を解けばよい . 沿った長さ , r は光線の位置べクトル , 〃は屈折率 , co, c はそれぞれ真空中 , 媒質 中の光速である . ( 7.21) 式の第 1 項は屈折率の場所的変化を , 第 2 項はそれによる光 の経路の変化を表している . 光ファイバーが円筒形であるとして , 上式の一般解は , ( 7.20 ) ( 7.21) ( 7 . 22 ) 2 ( 7.23 ) E2 が /dp こで , p, 広 ~ は円筒座標を表す . また E と / は , dz 2d 日 ds , dz で定義される量で , 入射点 , p=po, 2 = 0 での屈折率を〃 0 とすれば , ェ 0M0 ーた 0 E = 〃 0 なる定数である . ただし , ム , 財 0 , は , である . ( 7.24 ) ( 7.25 )

9. 光工学入門

7 章 マイクロ光学素子 近来 , 5.4 節で述べた光ファイバー ( 叩 tical fiber) を用いての光伝送 , 光通信や 光メモリーなど光エレクトロニクス技術 , さらには , 情報処理 , 光演算などが盛んに なってきた . それにつれて , 通常のサイズの光学素子でなく , 小さな光学素子や変 調 , 分岐 , 増幅などの要求が高まり , マイクロ光学素子に大きな進歩をみせつつあ る . この章では , そのなかでとくに重要と思われる若干の例を示す . 7.1 マイクロレンズ 通常のレンズでは中心部から周辺部へ厚さを連続的に変え , 中心 ( 光軸 ) 付近を通 る光と周辺部を通る光の光学距離を変化させて光を集光させたり , 散光させたりす る . すなわち , 光が屈折率の高い部分を通過するのに時間がかかることを利用してい る . このような形にガラスなどを加工する代わりに , 物質自身に屈折率〃の分布を っくれば , 媒質中の光速 c = co / 〃を利用して光の集光・散光 , さらには方向を変え ることができる . すなわち , 光が屈折率の高い方向に曲がる性質を利用して , 集光・ 散光作用をする屈折率分布型のレンズを作ることができる . その代表的例であるロッドレンズや平板レンズを , 図 7.1 ( a ) , ( b ) に示す . た とえば , (a) のように屈折率が光軸 ( 中心軸 ) から距離の 2 乗に比例して減少する ような円筒ロッドを作れば , その変化に応じた焦点距離をもったロッドレンズを作る ことができる . また , 強力レーザー光を通すと , 物質の屈折率が光の強度によって変 化するという非線形現象がある . したがって , 光束中に光強度の分布をつくっておい てやれば , 光をそれ自身で集光したり発散させることも可能である . この自己収れ ん・自己発散は , 極超短パルスレーザー発振などに用いられる . また , 図 7.1 ( b ) に 示すように , ロッドレンズが平板の中に多数形成された 2 次元アレイに配置すれば , 多数のレンズを配置したことと同じになるから , 1 つの光源 ( 物体 ) から多くの像を つくることもできる . 半径方向の屈折率分布を適当に変化させたり , さらに軸方向の 屈折率分布も変化させたりすれば , 結像の収差をなくすこともできる .

10. 光工学入門

付録 ( 7 .29 ) ( 7 .26 ) ( 7.27 ) ( 7.28 ) 真空中を ~ の方向に伝搬する光を考える . まず ( 7.1) 式の上側の式を 2 章中のマ V Ⅱ . 1 ( 7 . 2 ) 式の導入 波路を組み合わせることにより , 3 次元マイクロ光機器が実現される . 路 , 光通信に必要なすべての素子をつくることができる . したがって , これらと光導 以上述べたように , 外力による結晶の光学的性質の変化を利用すれば , 光集積回 ソレーターなどをつくることができる . フォイクト (Voigt) 効果という . この偏光面の回転と偏光子を併用すれば , 光アイ 光の伝搬方向と磁場方向が平衡の場合をファラデー (Faraday) 効果 , 垂直な場合を ると , 常磁性体を透過する光の偏光面が回転する . これは光磁気効果の一種であり , わせ用いれば , 光の強度変調などにも利用できる . さらに , 常磁性体に磁場を印加す 束の分岐と光走査などが可能である . 当然のことながら , この効果と偏光子を組み合 ス効果はない . 光の伝搬方向および偏光方向と , 電場の印加方向を適当に選べば , 光 るものをカー (Kerr) 効果という . 結晶に反転対象性が存在するものではポッケル 場に比例するものをポッケルス (pockels) 効果 , 2 次すなわち電場の 2 乗に比例す が 2.3 節で述べた光学的異方性をもつ ( 光学的異方体になる ) ことをいう . 効果が電 光電気効果とは , 光学結晶に電場を印加すると , 結晶の屈折率異方性が生じ , 結晶 113 クスウェルの式 ( 2.4 ) で , 電流 / = 0 とした式 , DD に代入し電場のェ , 〃 , ~ 成分を求めると , öHz / の Eo ゞェ = Du D 〃ェ / の Eo ら・ = / の Eo / ゞ ~ = DIIz 0 E öllz = 旒 0 〃ェー ー旒 0 DfIz となる . また , ( 7. I) 式の下側の式を 2 章のマクスウェルの式 ( 2.3 ) に代入し , 磁 場のェ , 2 成分を求めると , DEz öEx DEy Dx öEy DEz DEz = OE ェー öEx DEz ( 7.30 ) ( 7.31) ( 7.32 )