い方も見受けられます。長い句に付く言い方は明治時代にも 「動もすれば俗になる。突拍子もねえことを言やあがる的にな る」三葉亭四迷『余が言文一致の由来』 ) のようなものがあっ たそうですので、ことさら目新しいものではないのですが、そ のものズバリと言えばいし ) ところをあいまいにしたり、人の一一 = ロ 葉を借りて表現したりしているという感じはぬぐえません。 「的」というのは元来は名詞に付いて形容動詞を作る接尾語 です。多くは漢語に付きますが、「メルヘン的」「マニュアル 的ーのように外来語の名詞を形容動詞に変える働きもします。 しかし和語に付くことはほとんどなく、逆引き辞典で調べても 「ぬえ的ーぐらいしか見つかりません。「お金的には不自由しな いは許容できないが「金銭的には不自由しない」なら許容で きると感じる人が多いと思いますが、この違いは和語か漢語か の違いによるものです。さらに、本来は名詞に付く語なのに、 最近では「マニアック的」「乙女チック的」など形容動詞に付 く例さえ見られるようになっています。 やや LO 使うのはどっち ? 「鍋に油を敷く」「鍋に油を引 く」、どっち ? これは、「布団を ~ 敷く・引くこ以上 に難問かもしれない。正解は「引 く」。意味は、引き延ばすようにし て表面に広く塗る意で、音が類似 するほかに、〈引き延ばす〉という 行為を伴うところが一一者の区別を さらに難しくしている。ネットを 始め、新聞・雑誌・小説にもしばし ば現れる。 なべ
頭語「ま」が、強調的に促音「つ、を伴うようになったもので さお す。また、「真っ赤」「真っ青」は、本来は「まあか」「まあお」 ( 歴史的仮名遣いでは「まあを」 ) で、「ま」が「あか、「あお、 という母音で始まる語の上に付くため、音が転じたものです ( 「まっさお」の場合、 co 音が添加 ) 。色彩語に関しては出てき ませんが、「真ん中ー「真ん丸ーのように Z 音や音で始まる語 の上に来る場合、撥音「んーが添加されることになり、「ま」 「まっー「まん」は一連の接頭語です。 この接頭語「真ーの類は、〈本当に〉とか〈完全に〉といっ た意味を加え、程度を強調するものですから、その接する語は ある程度限定されることになるでしよう。色彩語の場合、まず、 原色系の基本的な色彩に限定され、「肌色」「桃色」「灰色」な どに接するのはまず無理でしよう。外来語に「真ーを付けた 、いかにも不自然ですね。 「真っピンク」や「真っプル 1 」も では、「真っ茶」「真っ茶色」に近いものとして「黄色」の場 使うのはどっち ? 「訣別・決別・袂別」の中で、正し のはどれ ? 別れる意の「けつべつ」の本来の形 ー「訣別」。「訣」も「別」も別れる意。 「決別」は「訣」が表外字であること から生まれた代用表記 ( 但し、意味 けつべっ にずれがある ) 。「袂別」は、昭和初 期の文士たちが「訣別」の意を〈た もとを別っ〉と解して生まれた誤 用。「袂」の音が「べイ」であるとこ ろから、「ぺいべつ」のふりがなを 付けた本もあるが、これは誤りだ。 文士たちは「袂別」を「けつべつ」と 読ませていたのだから。 けつべっ い 39
お連絡 / ご連絡 冖質問〕メールのタイトルの欄に「お連絡」とあるメール か来ましたが「こ連絡 . が正しいのではないでしようか かなりしつかりし 冖答え〕「お」と「ごーの使い分けには、 た決まりがあります。漢語 ( 昔、中国から伝来して日本語となり、 字音で読む語。また、日本で作られた語のうち、字音で読む語 ) には 「ご」を冠し、和語 ( 漢語が渡来する前から日本にあった日本固有 の語。やまとことば。字訓で読む語 ) には「おーを冠するという ル 1 ルです。ただ、かなりしつかりはしていますが、ずいぶん ゆれのあることも事実です。『明鏡国語辞典』編集部でアンケ 1 トをしたものを見てみましよう ( 表を参照 ) 。 それによりますと、「記入」「安心」「家族ー「注文」「立派」 ち ? 「学問の ~ 修行・修業こでは、求道性 を強調した「修行」が本来的な書き 方であったが、近年学問における 求道性を排した「修業 ( しゅぎよ う ) 」も広く行われ、今「学問の修 行」と書くと、古風な趣が出る。「修 業 ( しゅうぎよう ) 」もよく使われ、 「学問の ~ 修業 ( しゅぎよう ) ・修業 ( しゅうぎよう ) こでは、前者は努 力に、後者は修得に重点をおいた 言い方となっている。↓前項 使うのはどっち ? 冖 0 「学問の宀修行・修業ごでは、どっ
次に、「個」ですが、これも、数えることができ助数詞が固 定していないものについて比較的広く使われます。「りんご」 「石」「消しゴム」などは「個」で数えます。これらは「卩で も数えられます。中国語では「人 , も「個 , で数えます。「個」 と「つ」は助数詞が固定していないものに広く使われるところ が共通していますが、「個」は形のあるもの、固形のものを数 えるのに使うのが本来の用法です。最近、何でも「個」で数え る傾向が強くなっているようですが、年齢を「個、で数えるの は本来的には正しいと言えないでしよう。 ・年齢を「個」で数えるのは正しい用法ではありません。コ一つ上」などと「つ」を使 うか、十以上の数には「歳」「年」などの助数詞を添えて使うのが適切です。 ( 北原保雄 ) ヲに〈自分〉をとる、他動詞の使役 化に問題があり、むしろ誤用とさ れよう ( 「乗せさせてください」と 同レベル ) 。②で十分ということで はあるまいか。 : 1 04
冖質問〕最近「耳ざわりのよい音楽。というような言い方を よく聞きますが、「耳ざわり」は、本来不快なことを表すので ( ・ないてしよ、つか 冖答え〕たしかに、「耳ざわりーは、本来漢字をあてると 「耳障りーで、聞いていて不快なさまを表すものです。「クーラ ーの騒音が耳障りだ」のように、「耳障りだ」となると、不快 なさまに限定されることになります。もともと、「さわる」と いう動詞は、現在でも「耳〔気・体・神経〕に障る」などの形 で使われているように ( やや古めかしい言い方になってきては いるようですが ) 、妨げ・障害となる意がもととなっています。 かん 「癪にさわる」や「癇にさわる」も、今ではあまり分析的には しやく 耳ざわりのよい音楽 ち ? 「合いの手を入れる」と「相づちを 打つ」とが混交 ( コンタミネーショ ン ) を起こして、「合いの手を打つ」 が生まれた。「合いの手」には掛け 声だけでなく、手拍子もあるから、 〈打っ〉と言いたくもなるが、やは り「合いの手を打つ」は誤りだろ う。正しくは、「「なるほど」と、合い の手を入れる」などと使う。 8 使うのはどっち ? 「合いの手を宀打っ・入れるご、どっ 1 51 ・
ら始めるとよいのではないでしようか 「分かる」は「分ける ( 他動詞 ) 」に対 し、本来的には自動詞。一般には 「僕は君の = 一三うことがよく分かる」 のように使う。が、まれに「豚の心 もちをわかるには、豚になって見 るより致し方ない ( 宮沢賢治 ) 」の ような = 三い方もする。「君がそのこ と一が・を ) 分かるようになったら」 では、「を」も好まれそうだ。 ・「 5 たときがある、は〈経験〉の表現にはなりません。〈経験〉は「 5 たことがある . で表します。 ( 鳥飼浩一 D 使うのはどっち ? ( 0 「彼は私の気持ち宀が・を ) わかって くれない」、どっち ?
日本語は難しい なので、辞書を引きました。 「なので」って接続詞 ? なので そこまでして「みたい」を使いたいのか、若者よ。 みたいな 「可能性がある」って、 本来よい意味の時に使う言葉では ? 台風が上陸する可能性があります 野放しにしていいのか ? 最近気になる「 ~ のはう」 コーヒーのほうをお持ち【ま【た 6 「私って朝弱いじゃないですかあ ~ 」 : んなこと知るか ! と憤る 私って : ・ゃないですか つん 戦中戦後の日本人も気になっていた ? 意外と微妙、「ない」と「です」の組み合わせ 理由は特にないです 4 こういうご時世ですから、 一文字程度の間違いは、やむおえないと 諦めざるおえません ? やむおえない 「真っ白」「真っ黒」「真っ青」「真っ赤」までは 辞書に載ってるけど : 真っ茶
〔質問〕若い人が使う「つていうか」が気になります。間違 った使い方なのでしようか 冖答え〕まずは気になる「つていうか」の使い方を見てみま 1 レよっ 0 A<< 子来るんだろうか。 う 1 ん。っていうかちょっとこれ見て ? 変だよ、こ << は子が来るかどうかを気にしています。しかしは手元 の雑誌に夢中です。こんな「つていうかーの使い方は確かに気 になりますね。 本来「つていうか」は、「 >< っていうかっていうかーのよ ってしうカ 使うのはどっち ? 「一升瓶を宀空ける・開けるごでは、 意味が違う。ほんと ? 「空」はからにする意で、「部屋〔杯・ ウイスキー〕を空ける」のように使 ひら う。「開」は開くの意で、「窓〔店・か ぎ・錠・ふた〕を開ける」のように使 う。「一升瓶を開ける」は栓を抜く 意、「一升瓶を空ける」は中に入っ た酒を飲み干す意。
冖質問〕「本当のところ彼は何も知らなさそうだーのように、 「知らなさそうだ」という言い方をよく耳にしますが、間違い ではないでしようか 冖答え〕形容詞の「ない ( 無い ) ーの場合は、「自信がなさそ うだ」のように「なさそうだ」の形になりますね。これに対し て、助動詞「ない」 ( 動詞、動詞型活用の助動詞の未然形に付く 「ない」 ) の場合は、本来の形は「知らなそうだ」のように「 : なそうだ」となるところです。『明鏡国語辞典』では次のよう に説明しています。 助動詞「ない」が様態の助動詞「・ : そうだ」に接続すると きは、「知らなそうだ」「すまなそうだ」のように、語幹相 知らなさそうだ 使うのはどっち ? 「愛想ずかし」「心ずくし」「腕ずく」 「黒ずくめ」のうち、仮名遣いが正 しいのはどれ ? 「現代仮名遣い」で、「愛想ーずかし」 「心ーずくし」は、一一語に分解できる として、「づ」が正しく、「ず」は誤り とされる。「腕ずく」「黒ずくめ」の 場合は、一一語に分解できないとし て、「ず」が本則、「づ」が許容となっ ている。
ワ」 使うのはどっち ? 猫に餌をあげる 「山宀に・を〉登った」、意味は同じ ? 「山を登る」は誤用 ? 冖質問〕「猫に餌をあげやのような「あげる」は正しい使 「 5 に」は到着点を表すので、「山に い方なのでしようか 登った」は頂上に着いたのである。 さんろく 「山を登る」の「を」は、山の山麓か 冖答え〕「猫に餌をあげる」とか「花に水をあげるーとかい ら頂上に至る移動の地点を表すも う言い方は、ずいぶん年輩の方でも普通に使っているのが現状ので、この文全体で、山を上方に移 のようです。 動する姿が目に浮かぶ。誤用では ない。「ハーケンを使って岩山を登 もちろん本来「あげる」は「やる」の謙譲語で、やるという る」「単独行で冬山を登る」「はしご 行為を及ばす相手を尊敬して用いる敬語でした。ですから、 のぼ を上って屋根に上がる」のように 「先生にあげる」「お友達にあげる」などは正しい使い方ですが、 言うと、その正しさがはっきりす 「猫」や「花」などに対して「あげる」というのは誤った使い る。 方だとされてきました。 ただ、敬語に限らず、言葉というものは、人がいろいろに使