04 トップダウンとボトムアップ CHAPTER 役割をきっちりと果たしてくれ、優秀な主任が多く誕生しました。しかも、インストラ クターたちのもとで学んだ新たな主任は、テッセイの思いをきちんと理解し、実践して くれたのです。 テッセイの変革の一つひとつは、彼ら主任が中心となって実現していったので、現在 のテッセイをつくりあげたのは、しつかりと教育をしてくれたインストラクターの力と もい、んるでしよ、つ 0 会社か任命したリーターを、会社自身が信用する そうした変化のなかで、次第にスタッフは自分たちの思いを積極的に伝えるようにな りました。その思いに応えるためにも、私は本社主導から現場主導に変えたいと思うよ うになったのです。 そこで考えたのが、前述のチームごとに活動資金を渡す仕組みでした。せつかくスタッ フたちからいい改善提案が出ても、本社に企画のおうかがいを立て、予算の相談をして : となると、実際に資金を手に入れるまでに、かなりの手間と時間がかかってしまい ます。しかし、資金があらかじめ現場の所長に渡されていれば、スタッフからの提案を 137
ないか、実現に向けて一緒に考えよう」と答えるようにしています。それにより、当事 者だけでなく、スタッフ全体にも前向きな雰囲気が生まれるのです。 本人が考えを詰めて行動してみた結果、もし困難とわかれば、会社として代替案を提 示すればいいのです。その姿勢こそが、スタッフのポテンシャルを引き出せるかどうか の分かれ道であり、会社の発展をも左右します。 0 「とんでもない話」を口にできる環境 役職や地位さえあれば、みんながいうことを聞くと思うのは、大きな間違いです。 丿ーダーや経営者に大切なのは、スタッフから「この人なら話を聞いてくれる」と思っ てもらえるよ、つになることです。会社をよい方向に導くよ、つなアイデアや改革とい、つも のは、多くの人から反対されるような「とんでもない話」から生まれます。せつかくスタッ フかいいアイデアを思いついても、それを報告してくれなければ意味がありません。 私は、スタッフにどんどん「とんでもない話」を持ってきてほしいと伝えています。 これこそが会社の提案力や とんでもない話でも、スタッフが気軽にロにできる環境 実行力の向上に直結すると信じています。 1 28
04 トップダウンとボトムアップ CHAPTER 0 現場の声を否定しない スタッフが活き活きと働き、成果を出すーーそんな環境づくりのために、特に意識し ているのは、スタッフの提言や提案に対して、「 ZO といわないー「現場の声を否定しない とい、つことで亠 9 。 こ、つい、つと、「とんでもないことをいい出すスタッフかいるのでは : もいますが、テッセイではそれは無用です。 なぜなら、明確なトップダウンが確立されているからです。 会社として「『さわやか、あんしん、あったか』なサービスを目指す」という意志を明 確に打ち出し、トップダウンで軸となる指針を共有している以上、その軸を大きく逸脱 した「とんでもないこと , をいい出すスタッフはいないと考えています。そのため、会 社の考え方をスタッフに理解してもらう努力は欠かしません。 とはいえ : : : 現実では稀に「とんでもないことーをいい出すスタッフがいないわけで はありません。では、そんなときにどうしたらいいでしよう ? テッセイでは、決して頭から否定せず、「なるほど面白い。できるかどうかは約東でき と心配する人
C 0 L U M N 五ロ と = = 語せ ノ スタッフのいいところを見つけ出してほめる「エン ジェルリポート」。よりよいリポートにしていくために 必要なのは、スタッフたちのほめるカ・認める力です。 そこでテッセイは、「ノリ語集 ~ 工ンジェルワールド」 というものをつくりました。「ノリ語」とはノリがよく なる言葉、つまり人を活かせる言葉のこと。ノリ語集 とは、ノリ語を 50 音順に並べた語録集です。 例えば、「『ありがとう』感謝されれば、ノリはよくな る」「『頑張っているね』努力を認められれば、ノリはよ くなる」「『さすがだね』ほめられれば、ノリはよくな る」「『頼りにしているよ』存在を重視されれば、ノリは よくなる」「『なんでもできるね』力量を評価されれば、 ノリはよくなる」などなど。ノリ語集には、スタッフの やる気を引き出す魔法の言葉が詰まっています。 ちなみに、このノリ語集が好評だったため、「ノリませ ん語集 ~ デビルノート」という「ノリが悪くなる言葉」 を集めた、ユニークな冊子も生まれました。
0 クやってみようの声から生まれた習慣 今やすっかり定着した、新幹線が入線するときにスタッフが一列に並んで新幹線に向 かって深々とお辞儀をして迎えること。降車するお客様一人ひとりに「お疲れ様でしたー と声をかけ、清掃が終わったあともホームで乗車待ちをするお客様に「お待たせいたし ましたー と一礼すること。決められた制服のほかに、夏はアロハシャツや浴衣、月 はクリスマスなどお客様に季節を感じていただけるようなコスチュームを着ること これらすべては、スタッフの声から生まれた習慣です。 マンガのなかで描かれていたように、 かっては「勉強をしないと、あんなふうになる のよーと指をさされたり、失業して仕方なく応募してきた人が多かった仕事です。しかし、 そうした後ろ向きの思いを、「私はこんな仕事をしているーとスタッフが堂々と語れるよ うな、誇りと生きがいを持てる仕事に転換することで、テッセイは現場のスタッフがよ りよいサービスのアイデアを提案していくという、強い組織力も手に入れたのです。
04 トップダウンとボトムアップ CHAPTER に支えられて実現しました。おみくじを引いた 幅広い世代のお客様から、「なごみましたー「嬉 しくなった」と喜びの声をいただきました。 また、震災直後、上野駅のトイレは泥汚れが ひどい時期がありました。ほかのお客様から見ご れば、「こんなに汚して」と文句のひとつもいし たくなるところでしよ、つ。しかし、スタッフか らは「被災地に行かれたお客様は、足もとの悪 いところで大変な思いをしているに違いない という意見か出ました。 そこで、靴磨きができるコーナーを設置して、 靴磨きの道具を置いてお客様に使っていただく ことにしました。こ、ついった気遣いや心配りも また、実際に現場で働く清掃スタッフだからこ そ生まれてきたものだといえます。 東北地方を元気つけるため、 みんなて応援しよう トイレの床が 泥て汚れている お客様が泥道を 歩き困っているに違いない ・第物 トイレに「バンダおみくじ」 おみくじで元気になってもらおう 「がんばるぞ ! 日本」 工ンプレム作成・着用 従業員が 靴磨きセットを設置 133
24Y お客様によりよい思い出を つくってもらうためにね 「さわやか、あんしん、あったか」 というキーワードを掲げていて それをまとめたのが さっき読んだ スマイル・テッセイよ 「掃除の仕事以外はしなくてもいい」 といわれた当初と違い 今では東日本から 「サービス・おもてなしという面では テッセイがグループの 1 周も 2 周も 先を行っている」といわれている 完璧な仕事と熱意 安心安全な現場 お客様に対する真摯な気持ち それが感動と よい思い出につながると わたしたちは信じているわ 自分たちで考え変えていく それがわたしたちの自信に つながるの
気持ちが備わっています。近江商人に語り継がれる「三方よし ( 売り手よし、買い手よし、 世間よし ) 」の考え方も、現代の企業の社会的責任 ( 0 ) やーの関係につ ながるとして現代によみがえりつつあります。日本の伝統、風土、歴史に育まれた日本の 文化を、欧米人たちも非常に注目して見ています。われわれはもっと自分たちのアイデン ティティ、オリジナリティを大事にすべきなのではないでしよ、つか 本書では、私がテッセイで行ってきた小さな試みの数々を紹介しています。時にはため らいながら、時には周囲に反対されながら、変化を起こすための小さなクスイッチをカ を込めて押してきました。「私たちは製造業だから、ちょっと違う」「会社が大きいから無 理だ [ などと決して思わないでください。その一つひとつは、取るに足らないちつばけな ものですが、改革や変革はそんな小さなことから確実に起きていくものです。 それらのスイッチが、あなたの周囲の小さな変化につながることを祈って : 矢部輝夫
彦一 緊張してきた : なんか 怖そうな顔 : 清水希さんですね A.JABNV かけてくたさい 清水さんは入社して 1 年と 2 カ月ですね 正社員になりたいと 思ったのはなぜですか ? あの : ・ 何話せば いいんだっけ なんていうカ : ど : ・どうしよう あ・ : えと : し し
04 トップダウンとボトムアップ CHAPTER ません。現場のモチベーションは上がらす、 「いわれたことをやっていればいい」という スタッフが増えるだけです。 だからこそ、明確で完璧なトップダウン とセットで必要になるものがあります。そ れ れが「ポトムアップ , です。 す 出 き スタッフ一人ひとりが、よりよい仕事の引 を ために自分が何をすべきかを考え、自ら動プ ア 意見を出し合い、ひとつずつ実行して ム いくーーそうしたポトムアップかなければ、 上からの指示はただの一方通行となります。 トップダウンは、「現場からの声」や「スタッ フの働く誇りなどのポトムアップが加わっ てこそ、初めて会社内で成立するのだと私 は考えています。 トップタウンのみ ホトムアップ 従業員は「管理」の対象 俺たちは偉い ! もっと ! もっと ! 私たち見られているんたよ ! お客様にも喜んでいたたいた ! 会社は私たちのことを認めてくれている ! ↓ あなたたちは現場の改善点を 一番知っている ! どんどん教えて ! 一緒にやってみよう ! かっこうなんか関係ない ! 一流の実行力を持とう ! 決めたことを守っていろ ! 上意下達の組織 いわれたことだけやればいい・・ 物いえば唇寒し・・・ 泣く子と地頭には・・・ あ ~ あ、また明日は会社なのか・・・ 125