0 全社的に展開することもある「みんなのプロジェクト」 もうひとつ、テッセイには「みんなのプロジェクトーという取り組みかあります。 ます、 ートも社員も関係なく、 556 名で自由にチームをつくります。そこで、改 善したいテーマについて話し合い、決定した事項を会社に登録し、その後、半年間をか けて実際に行動しながら、議論を重ねていきます。 その結果はサ 1 ビスセンタ 1 内での発表会を経て、本社発表会で報告されます。そこ で報告されたアイデアがほかのセンターにも広めたほうがいい内容であれば、全社的に 展開されることになります。この発表会の有無が、「スモールミーティング , と「みんな のプロジェクト」の大きな違いです。 みんなのプロジェクトは、基本的に時間外活動とはなりますが、所長の許可を受けれ ば時間内でも行うことができます。そして特筆すべきは、前もってチームごとに活動資 金が支給されているため、決めたことがすぐに実行できるということです。 1 34
0 エンジェルリポートと表彰制度の本当の役割 エンジェルリポートと表彰制度は、スタッフのモチベーションを高めるためにありま す。見かけ上は実利的なモチベーション、金銭的なモチベ 1 ションですが、もっと重要 な役割もあります。それは「共有ーと「共感」を引き出すことです。 エンジェルリポート制度が始まったことで、スタッフたちは今まで以上に一緒に働く 仲間をよく観察するようになりました。仲間に関心を持ち、行動をよく見ていないと、 リポートをあげられないからです。スタッフのお尻を叩き続けて報告件数に口を出し、 無理にでもリポ 1 トをあげさせた目的は、スタッフ間でお互いをほめ合い、サポ 1 トし 合う習慣を身につけてもらうことにありました。意見を共有し、刺激し合うことで、会 社全体に認め合う文化を定着させるには、この制度が最適だと思ったからです。 実際、このエンジェルリポートができて以来、リポ 1 トを作成する側の主任たちの、 スタッフに対する意識は大幅に変わりました。活動を通じ、スタッフとの信頼関係が強 固になっていったのです。また見られる側、つまりスタッフたちも、自分たちの地味で 1 78
04 トップダウンとボトムアップ CHAPTER 下図をご覧ください。こちらの図を見ていくと、 総合カ・本社力をあげていくためには、まずは「ス タッフを大事にする会社の風土」が土台になって います。それか「スタッフ同士が認め合う力、と なり、その力がスタッフの「働く喜びや誇りに カ つながり、そこで初めて「会社へのアクテイプな社 カ 参画意識」が持てるようになります。 合 次に参画意識は「仕事への改善意識」へと変化総 し、自分たちの「ルールや行動指針」がつくられす た意味を理解し、「実践や行動に昇華されていを カ 場 くのです。 現造 創等 ここでいう「総合カ・本社力」は、前項で触れ のス たリ 1 ダーシップに置き換えることもできます 価 丿ーダーシップは現場力を高め、それが「安全」「質 新 の高いサービスー「おもてなし」「コンプライアン スーといった意識につながるのです。 実践行動 ルール・行動指針 仕事への改善カ 会社へのアクテイプな参画意識 働く喜ひ・楽しさ・誇り スタッフ、仲間を認め合うカ 人々を慈しみ、大事にしていく 企業風土・カンバニー・カルチャー 現場カ 生きがい、喜ひ、誇り 総合カ・本社カ
05 「認め合う」仲間、「見られる」カ CHÅPTER 0 お互いを認め合う 「エンジェルリポート」 目立たずとも、真面目に頑張っている人 たちを埋もれさせることは、会社にとって も大きな損失です。では、四人の「地道に コッコッ働くスタッフーに光を当てるには、 どうしたらいいのか。会社として、彼らを どう引き立てていくかか大きな課題でした。 そのことを考えているときに、私は一冊 のノートに出会いました。テッセイ東京サー ビスセンターの所長の机に積まれていたも ので、そこには主任たちが目にしたスタッ フの善行が記されていました。しかし、よ く見れば所長のハンコが押されているだけ 「認め合う文化」っくり 行動する文化 認め合う文化 行動は長期的に継続されて初めて目様達成可能 そのためにも行動し成果をお互いが認め合い、 助け合うことが不可欠 学習する文化 1 69
02 新しい価値観の創造 CHAPTER 「あんしん」 テッセイは新幹線輸送を担っており、安 全確保はもっとも重要な任務。安全に徹す るとともに、さわやかな身だしなみ、きび きびとした行動で安心と信頼を深めよう。 カ っ あ ん 「あったか」 し テッセイはご利用になるお客様との出会あ か いを大切にしたい。私どもとの出会いを「思 や わ い出ーという「お土産」としてお持ち帰り さ いただこう これを全スタッフに知ってもらうために ハンフレットを作成し、「思い出づくりキャ ンペ 1 ンーを展開しました。 0 駅や車内空間は、 お客様をお迎えし、 おもてなしするステージ そのステージが 不清潔では台なし 清潔でさわやかな 空間をつくりあげよう テッセイは新幹線輸送を 担っており、安全確保は もっとも重要な任務 安全に徹するとともに さわやかな身だしなみ、 きびきびとした行動で安心と 信頼を深めよう テッセイは、ご利用になる お客様との 出会いを大切にしたい 私どもとの出会いを 「思い出」というお土産として お持ち帰りいただこう
0 「実行力は一流」を目指して 私が長らく勤めていた鉄道の世界では、安全に対して「一流の戦略をいい加減に実行 するよりも、二流、三流の戦略を確実に実行するほうが効果的である , という考え方が あります。テッセイは会社としては一流になれないかもしれない、でも、その代わりに 実行力では一流になろうと思いました。 そんな思いをど、つスタッフに伝えていくのか ? まずは「やってみよう」と声をかけ、責任を持たせて実行してもらう。そして少しで も成果が出たら、そのときは大いに賞賛するーーこれが大切です。そうすればほめられ た人は、「そうか、こういうことか」と実感し、直接的な感覚として理解して、また次の 行動に移れるのです。 CHAPTER 06 解説 02 の ス シ を 目 指 し て 210
CHAPTER 04 解説 01 ポ ト ム ア ツ プ の 実 現 0 「トッフダウン」と「ポトムアップ」はセットで必要 前章でも述べましたが、お客様へ最高の旅の思い出を提供し、お客様が望むおもてな しをするためには、明確な「トップダウン」の指示系統は必要不可欠です。 テッセイの本業である掃除は、オペレーションそのものです。チームリーダ 1 の命令 は絶対で、清掃に全力で取り組んでいるときは下の人が命令に反対することや、独自の 考えで行動することは一切許されません。終始一貫プレのない指示系統でなければ、 7 分という短い時間で新幹線をきれいにすることはできないのです。 しかし、このトップダウンだけでは不完全です。以前にも書いたように、上からの命 令に対しスタッフがそれをこなすことだけを考えているーーという状況では意味があり 1 24
04 トップダウンとボトムアップ CHAPTER 方で臨むべきではないでしようか。あたた かさを感じ、おもてなしをしてもらったス タッフは、お客様に本物の「おもてなし」 をしてくれるのです。 そして会社から「あなたのことをいつも 見つめていますーというあたたかさを受け 取ることで、この会社を変えたいという「会 社の本気」を伝えることができるのです。 働く人たちは、常務や部長といった「肩 書きーではなく、「人」についてきます。テッ セイのように、さまざまな人生経験を積ん だ人たちが働く職場では、口先だけではな く、きちんと行動し実践することが重要な のです。 「リーダー」に必要とされるカ 挑戦すべき どこに解決 すべき課題が あるかを知り うるカ 成果実現の 喜びをみんなと 共有するカ 解決する ための方策・ 戦略を立案 するカ みんなと共に 実践への努力を 惜しまないカ それを みんなに説明し 納得させるカ 145
02 新しい価値観の創造 CHAPTER 0 本社の仕事は「管理」から「理解」へ 当時のテッセイは、本社である経営陣が行動指針やル 1 ル・マニュアルを作成し、そ れに従ってスタッフを動かす「管理ーを徹底して行っていました。現場からすると「こ れを守れ , 「こんなことはするな」と命令されるばかりで、「現場のことを本社は何も知 らない と不満に思うことも多かったはすです。 一般企業であれば、 本社は「戦略」↓支社は「戦術」↓現場は「実践」 という機能分担が普通ですが、テッセイではそういった役割分担がまったくなく、本 社が現場の細部にまでロを出し、現場スタッフは本社に決められた施策を押しつけられ ていると感じていました。 確かにテッセイのように「 7 分間で車両を完璧に掃除する」といったオペレーション を核に動く仕事内容の場合、管理は不可欠です。しかし管理することが経営の主軸になっ てしまっては、現場のモチベ 1 ションは下がる一方になってしまいます。
01 セブン・ ニツツ・ミラクル CHAPTER 0 新幹線劇場の開幕 し、刀かで 1 レよ、つ、か ? ・ テッセイのスタッフは、これらの作 業をすべて 7 分間のうちに行います。 驚異のスピードと確かな技術、ほか の場所では決して見られない流れるよ うな美しい清掃風景 一流のパフォーマンスにも近いその 様子は、、 しっしか「新幹線劇場」とも 呼ばれるようになりました。ホームで 新幹線の出発準備を待っ間、清掃風景 を見てくださったお客様たちから、拍 手か湧くとい、つ事態も起こるよ、つに 0 テッセイの清掃 列車到着 車 発 ご降車終了 ご乗車開始 ′ 3 す資「を丁 お客様に 感謝を込めて きびきびとした行動・颯爽とした態度 車内はホテル客室との意識で作業 到着時の一礼 安全確認 お待たせしたことへの 謝罪の礼 ゴミ受け取り 「ありがとうございます」というお礼のひと言