7.2 道路地図テータベースの利用事例 7.2.3 RACS ( 路車間情報システム ) 749 RACS (Road AutomobiIe Communication System) は , 路上に設置された情 報伝送用の情報ビーコン , および双方向通信が可能な個別通信路上局と , 車載 ータとの間で , 車輛の経路誘導や情報通信を行うシステムである . コンヒ。 1984 年から ( 財 ) 道路新産業開発機構に設置された路車間情報システム研究会 において , 建設省上木研究所 , 日本道路公団など建設省道路関連機関 , および 自動車 , 電機メーカーの共同研究がすすめられている . 1989 年 9 月に実施され た第 3 回路上公開実験においては , 交通情報の収集 , 路線トラックの運行管 理 , 天気予報 , 観光 , 航空券予約などの双方向通信によるサービス , 経路案 内 , 伝票の FAX 伝送などの多彩な機能が実現されている . また , AMTICS と統合した VICS としては , 1991 年 8 月には東京・大阪・名 古屋の幹線道路の交差点付近約 100 ヶ所に通信設備が設置され , 改良を重ねな がら全国整備が進められている . ・システムの基本構成と機能 路車間情報システムの概念図を図 7.11 に示す . システムセンターに集められ た交通情報や観光情報などを有線で路上ビーコンまで伝送し , 無線で車輛に伝 送する . ビーコンと車輛間の通信は , 領域をビーコン地点の半径 60m に設定し ているが , 2.6 GHz の準マイクロ波による 512kb/s の高速通信で行われるた め , FAX, 文字 , 音声 , 画像などの大容量双方向通信や高精度の車輛位置検出 や進行方向の把握を可能にしている . 7.2.4 将来展望と課題 1990 年から 1991 年にかけて主な自動車メーカーは , その最高級車にナビゲー ションシステムを搭載しその機能としても簡易経路誘導をもつものまで発表さ れている . さらに下位機種への展開 , 完全経路誘導などの機能充実が進められ ている . また AMTICS, RACS は VICS として統合され一部試験連用も開始さ れ , 早期拡大が計画されている . この実現のためには情報処理センターの建
2 地図の表示法 地図の目的によって , 表示対象の重点は変わるし , 対象地域の特性を , 地図 を見る者に理解させることを考える必要もある . また , 総描は図化する対象地 域のなかで片寄りがあってはならないし . 表現に個人差があってはならない . 調 強 強調手法には , 拡大 , シンポル化 , 転位がある . 拡大とは , 縮尺どおりに表示すると図上で認識できなくなってしまうものに ついて , 幅を太くしたり , 大きく引き伸ばして表示することであり , 総描と深 い関係がある . たとえば , 1 / 50000 地形図で幅 10m の道路を正確な縮尺で描く と , 幅 0.2 mm になる . しかし , これでは目立たないので , 1 mm 程度に拡張 し , 拡大表示する . この場合 , いろは坂のような , 曲がりくねった部分は表現 できなくなり総描 ( 単純化 ) を行うことになる . 同様のことは海岸線 , 河川 , 境界線などでも起こる . 強調表示のなかで重要なものにシンポル化がある . 縮尺どおりに表示すると 無視されるようなものはシンポル化し , その存在を利用者に伝達することが行 われる . したがって , シンポルはそれが何を示すか , 地図利用者が予備知識な しに直観的に連想できるようにデザインされねばならない . また , たとえば凸 のように , すでに一般的になっている記号を別の用途に利用することはすべき でない 2.2.4 転位 転位とは , 強調表示の結果重なってしまうものの位置をずらすことである . たとえば , 道路を拡大表示すると , 沿道の建物は道路の外側にずらして表示せ ざるをえない . しかし , 転位を勝手にすると位置精度にばらっきがでてしまう ので , 地図の目的をふまえ , 重要なものは転位をできるだけさけるべきであ る . 地形図などでは , 一般に以下のような重要度ランクを採用している . ( 1 ) 鉄道 ( 2 ) 水路
7.1 道路地図データベース 735 背景データとしては , 水涯線や鉄道 , 目標となる駅などの施設などがあり , 特にディスプレイに表示する際の現在位置の判断を容易にするための情報とし て用いられる . 文字情報は道路や鉄道 , 施設名称の表示や位置検索を行うために準備したも のである . データの基本構成を図 7.1 に , ( 財 ) 日本ディジタル道路地図協会が整 備中の全国ディジタル道路地図データベースの分類項目を表 7.1 に例示する . 制御用データ 1 道路データ 背景データ 文字データ △△△ 道路データ 1 道路データれ 背景データれ 背景データ 1 文字データれ 文字データ 1 ( 注 ) 道路データ 1 ~ れは道路種別 ( 国道 , 県道など ) , 幅員 , 伏走 , 交差など , 背景データ 1 ~ れはポリゴン , 色 , バターンなどの種別を , 文字データ 1 ~ れは傾き , 色などの種別を各々区分している . 図 7.1 データの基本構成 7.1 . 2 道路ネットワークデータ 道路データは地形図上に二条線で表現されている記号道路の中心付近の位置 座標を計測して数値化する . 一般的には図 7 : 2 に示すように交差点や屈曲点 区間の起点・終点などを示すノードとそれらによって構成される道路リンクで 主な属性としては以下のものがある . ものとリンク属性として付与するものとがある . 道路にはその利用目的に応じ属性が付与される . ノード属性として付与する ( 1 ) 道路属性 定義することができる . ①道路区分 ( 高速道路・国道・県道・有料道路・一般道路など )
表 7.1 道路地図データベースの分類項目 ータ ータ ータ ータ ータ 736 ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ 7 道路地図データベースの利用事例 う ) 類 管理 基本道路 全道路 背景 データ 幅員 タ ⑨基本道路全道路 リンクデータ ⑧全道路 ノードデータ ⑦全道路 位置データ @ビーコン ⑤各種属性データ 内属性データ ④基本道路リンク リンクデータ ③基本道路 ノードデータ ②基本道路 ①管理データ 形状データ ⑩施設等 位置デ ⑩施設等 位置デ ⑩鉄道 位置デ ⑩行政界 ⑩水系デ 対応デ 位置データ ⑩地名等表示 主 座標データ 要デ タ内容 属性デ タ ノード位置 リンク形状 リンク内 属性位置 ノード位置 位置 ビーコン 表示位置 地名等 施設等形状 施設等位置 鉄道位置 行政界位置 水系位置 リンク形状 2 次メッシュファイル共通管理 交差点、ノード種別、接続リン ク状況 道路種別、路線番号、管理者、 重用状況、行政区、リンク長、 共用状況、道路構造、交通状況 リンク内属性名称 ( 橋、トンネルなど ) リンク内属性種別、リンク内属 性延長、表示参考レベル 基本道路の属性に関するデータ を必要に応じて収容 ノード種別、接続リンク状況 道路種別、管理者、行政区 リンク長、道路構造、交通状況 基本道路リンクデータと全道路 リンクデータの対応情報を収容 行政界種別 水系種別 鉄道種別 施設種別 系名等 ) 、 考、レーくノレ 表示名称、正式名称 ( 地名、水 表示名称、正式名称、行政区、 地名等種別、表示参 交通規則 リンク間距離・方位 標高 トンネル区間 交差・非交差
88 5 行政への利用事例 土木行政をこのような意味で支援するシステムを総称して「土木行政支援シ ステム」と称する . 5.1 . 1 地図データベース利用のシステム 土木行政を支援する本格的な地理情報システムを実用化した例はまだ数少な ここでは現状の開発動向を踏まえ , いくっかの試みを紹介する . ( 1 ) 道路台帳管理システム 道路法第 28 条で整備が義務づけられている道路台帳の管理を支援するため のシステムである . 道路台帳とは , 道路管理者の保有財産である道路と , 関連 施設 ( 橋梁 , トンネル , 鉄道交差 , 立体横断施設 , その他 ) について延長 , 面 積 , 数量等の基礎データを記載した道路台帳調書と , これらの施設の位置把握 を正確に行うための , 道路台帳付図 ( 道路現況平面図 ) からなる . 道路台帳管理システムでは , 道路台帳調書および道路現況平面図を相互に関 連性を持たせつつデータベース化する . そして , 各種のデータを即時に検索す ることができるリアルタイムシステムと , 調書をはじめとし , 建設省 , 自治省 等へ報告する集計表等を出力するためのバッチ処理システムからなる . システムの主な機能は , 以下の通りである . ( i ) データ入力 , 補正機能 道路台帳は毎年補正することが義務づけられている . 補正箇所は , 道路の認 定・変更・廃止等の法手続きが発生し道路区域が変化した箇所および , 施設等 が変化した場所であり , 調査・測量を行い , 新たに道路現況平面図を作成す る . これを人力用の原稿図とし , 調書用の文字数値データと地図図形データを 更新する . 文字数値データはキーパンチして更新用データを作成しデータベー スを一括更新する . 地図データは , 対話型の図形処理装置を利用し地図データ べースを更新する . その後 , 文字数値データと図形データの関連性をチェック 日常業務における道路台帳の利用例としては , 住民等から建物や車庫の建設 ( ⅱ ) 問合せ応答機能 し , 補正作業を終わる .
7 . 道路地図データベースの利用事例 7 . 1 道路地図データベース ネットワークを中心に , 背景情報として行政界 , 水涯線 , 鉄道などの地形情報 小中縮尺 ( 1 / 25 000 ~ 1 / 200 000 ) の地形図や地勢図を基図として , 道路情報 データが必要となる . 実現するためには 1 / 10000 ~ 1 / 25000 レベルの精度の高い道路ネットワーク ノード間を結ぶリンクとして表現される場合が多い . 自車位置の高精度検出を 道路ネットワークデータは , 交差点や屈曲点を示すノード ( 点情報 ) と , タ , ③文字データと , これらを管理する管理データとに分けることができる . 道路地図データベースは , 大別して①道路ネットワークテータ , ②背景デー 7.1 . 1 道路地図データベースの概要 などをはじめとした幅広い利用も考えられている . レーション データベースはマーケティングや , 道路など施設管理 , 交通シミュ を中心に利用されている . ここでは , この利用事例を中心に紹介するが , この ステムや , 車輛位置をリアルタイムに表示するカーロケーションシステムなど で現在地と目的地を設定し , ドライバーを案内誘導するカーナビゲーションシ 道路地図データベースは , 自動車の位置を管理するために有効である . そこ ぶことにする . も合わせて数値化した地図データベースをここでは道路地図データベースと呼
94 5 行政への利用事例 となっている . 当面は道路申請許可 , 道路工事調整業務 , 占用料徴収 , 事故処 理 , 関連諸統計の作成などを想定している . ( 財 ) 道路管理センターは , 道路管理者の委託を受けて , 地図および道路に関 からなる端末装置 , 静電フ。ロッタ , 通信制御装置からなる . ノ、 として , グラフィックディスフ。レイ , ードコビー装置およびディジタイザ等 道路管理システムに利用される機器は , 大型コンビュータを中心に周辺機器 として今後の動向が注目される . が , 大量のデータを遠隔地へ迅速に伝送しなければならず , 革新的なアイデア クのシステムを構成する点があげられる . 情報の一元管理のメリットは大きい 者 , 事業者の手元には端末機を設置して , 垂直分散的なオンラインネットワー 徴として , 道路管理システムの本体は , 道路管理センターに設置し , 道路管理 地図は , 道路管理者が保有する 1 / 500 の道路現況平面図を利用する . 第二の特 用物件の位置および関連情報は , 体系的にデータベース化されねばならない . れる . 公益占用物件の位置把握をコンヒ。 = ータで行おうとすれば , 地図と , 占 道路管理システムの特徴としては , 第一に地図データベースの利用があげら を行う . 工事終了時には占用物件に関わるデータの人力 , 史新を行う . の既設物件等を参考にしながら工事計画をたて , 占用許可申請用のデータ登録 公益事業者は , グラフィックディスプレイに表示された道路および他の企業 に占用物件に関する各種統計処理 , 占用料の計算等が行える . は , 自動製図装置 ( 静電プロッタ等 ) で出図することができる . また , 定期的 で , 物件の正式登録 ( 許可番号の付与 ) を行う . 画面に表示される地図図形等 レイの画面に表示して , 占用申請時の審査の参考にする . 占用許可をした時点 道路管理者は , センターで管理されている物件情報をグラフィックディスプ 路管理者 , 公益事業者に提供する . 取ることになる . これらのデータをセンターの大型コンヒ。ュータで管理し , 道 入力更新も行うが , 原則として , ディジタル化されたデータを事業者から受け するデータの入力を行う . また , 公益事業者からの委託があれば , 占用物件の
90 5 行政への利用事例 これらの情報に対する問合せがあれば , 路線調書 , 実延長面積調書などの様 式で , プリントアウトする . また , 道路台帳の中には , 橋梁 , トンネル , 鉄道 交差 , 立体横断施設等の台帳も含まれており , 合わせて検索・出力することが できる . (v) 集計 , 統計編集機能 道路管理者は , 毎年建設省や自治省に対し , 以下の報告をする義務がある . ・道路施設現況調査 ( 建設省 ) ・地方交付税算定基礎数値 ( 自治省 ) ・自動車取得税算定基礎数値 ( 自治省 ) その他 , 部局内の統計資料作成や , 一般向けの道路統計数値を提供する場合 もあり , 定期的に大量の計算業務を行うバッチ処理機能は必須である . 図 5.2 にシステムの概念構成を示す . グラフィック ディスプレイ 幅員証明 , プリンタ 調書等 タ ュ ビ集計・統計編集機能 ュ ンデータ入力・補正機能 0 道路台帳補正作業 ( 測量等 ) 問合せ応答機能 デ 地図 編 データベースデータベ ース 能 情報提供機能 補正データ 0 補正図面 0 数値地図 ディジタイザ 25 2 3 26 図 5.2 道路台帳管理システムの概念構成 ( 2 ) 告示管理システム 道路は , 法律上は起点から終点までの一本線 ( 路線と称する ) として管理さ れるが , 新設 , 改良 , 廃止等により大きな変化があると , その道路管理権 ( 権 原 ) を議会が議決により承認しなければならない . 議決がなされると , 道路管
7. 7.1 6.2.2 6.2.3 7.2 8.1 8.2 8 . 3 8.4 8 . 5 4 目次 意志決定支援地域情報システム・・ 消防地図情報システム・・ 道路地図データベースの利用事例 道路地図データベース・・ 7. 1 . 1 7.1.2 7.1.3 7.1.4 1 . 5 7.1.6 7 . 道路地図データベースの概要・・ 道路ネットワークデータ・・ 背景データ・・ 文字・記号データ・・ 付加情報・ 道路地図データベースの構造・・・ 道路地図データベースの利用事例・・ 7 ・ 2 ・ 1 7.2.2 7.2.3 7.2.4 自動重用のナビゲーションシステム・・ AMTICS ( 新自動車交通情報システム ) ・ RACS ( 路車間情報システム ) 将来展望と課題・・・ 8. 標準化の動向 標準化の利点・・・ 標準化の問題・・ 地理情報システムに関わる標準の種類・・ 日本におけるデータ仕様標準化の動向・・・ アメリカにおけるデータ仕様標準化の動向・・ 参考文献 索 引・ ・・・ 122 ・・・ 127 ・・・ 134 ・・・ 134 ・・・ 135 ・・・ 137 ・・・ 139 ・・・ 140 ・・・ 140 ・・・ 141 ・・・ 143 ・・・ 146 ・・・ 149 ・・・ 149 ・・・ 152 ・・・ 154 ・・・ 154 ・・・ 157 ・・・ 161 ・・・ 166 ・・・ 169
92 5 行政への利用事例 すでに膨大な量が役所の中に保管されており , 将来同一の場所で申請が出され たときは有力な根拠となりうるので , 体系的な保管と効率的な検索手段が求め られている . この要請に応えるには , すでに確定がなされた箇所を地図データ べース上に登録し , その箇所を指定することによって , 確定内容 , 測量成果 , 境界確定図等が検索されればよい . このような , すでに確定済みの箇所につい て情報を登録し , 必要に応じて迅速な検索を行うシステムを境界確定検索シス テムという . システムの機能は , 告示管理システムとほぼ同様であり , 該当箇 所の確認はグラフィックディスプレイ上で行い , 詳細な情報は , 連動する光 ディスクシステムから出力される . ( 4 ) 占用物件管理システム 占用物件とは , ガス管や電柱のように , 道路管理者以外の者が道路空間を利 用し , 設置 ( 占用 ) する物件を指す . 道路空間の中に人る屋外広告や商店街の アーケードなども含まれる . これらのものを道路に設置する場合は , 道路管理 者に占用許可申請を提出し , 審査を受け , 合格したものについて許可を受ける ことができる . 民間企業や , 個人が占用する場合は , 条例に基づき , 3 年程度 の期間を設け占用料を支払うことになる . 占用物件は , 上水道 , 下水道 , 電話 , 電力 , ガス , 地下鉄といった公益事業 者が占有する公益占用物件と , 個人および民間組織が私的な目的で占有する一 般占用物件に分類できる . ( i ) 公益占用物件管理 公益占用物件管理については , 昭和 60 年度に , 建設省 , 全国の政令指定都 市 , 公益事業者等が中心となり , ( 財 ) 道路管理センターを設立し , 公益占用に 関する“道路管理システム”を開発している . ( 財 ) 道路管理センターの主業務は , ・道路空間の利用の実態およびその適正に資する調査研究 ・道路占用物件の管理システム化 , 合理化および高度化に資する調査研究 ・道路管理システムの技術開発および標準化 ・道路占用物件の現状データの収集 , 分析 , 加工および選択