8. 質点系の運動量と角運動量 は , 成分が が得られる . Xdt, ( 8.1 ー 3 ) を言葉で言 Zdt であるようなべクトルで , カ積とよばれる . い 表せば 152 質点のある時間内の運動量ベクトルの増し高は , 質点に働いて いる力のその時間内のカ積に等しい . 球をバットでたたくときのように , 質点に働く力が非常に短い時間 , 非常に 大きな力である場合これを撃力とよぶ . 撃力では , その作用している短い時 間内のおのおのの瞬間 , どのような力が働くかは複雑であって , これをしらべ るのはむずかしい問題であるが , 多くの場合 , そのような ことをしらべる必要はなく , ただ撃力が働いたための運動 の変化だけが問題となる . そのようなときに ( 8.1 ー 3 ) の 式が使われるのであって , 撃力の効果はお , つまりカ積に よって表される . 8.1 ー 1 図は撃力の働くときのカの成分 X と / との関係を示すもので , ー = 0 から一 = 「までの 途中大きな力が働くことを示す . 影をつけた部分の面積が カ積又に等しい . 8 . 1 ー 1 図撃力 [ 例 1 ] 質量襯の球が壁に直角に / の速さで飛んできて にの速さではねかえって飛び去った . 壁から球におよばした撃力のカ積はどれだけ になるか . [ 解 ] 衝突後はズ方向に , 衝突前は一 / の運動量を持つから , 運動量の 増加量は これだけのカ積の撃力が壁から球に働いたのである . に / のときには 2 / となる . この場合には , 球の運動 エネルギーが衝突によって変わらないので完全弾性衝 突とよぶ . [ 例 2 ] 上の問題で , 球の速度は一 / から , 非常に短 いが有限の時間かかって 0 となり , それからまた非常に短 8.1 ー 2 図壁と球の衝突
84 5. 力学的エネルギー面積の原理 となって , 道筋によって仕事がちがうことになる . このようなことを避けるた めには , 名軸を含む任意の平面をあらかじめきめておいて , 道筋がこの平面を つきぬけることができないようにしておけば p も一義的となって , これを位 置エネルギーとして使うことができる . 5.4 中心力 いままで , 運動方程式を解くという見かたから , 力学的エネルギー保存の法 則を説明して , 保存力という非常に一般的な力が働くときに使われる方法につ いて述べた . この節では , 保存カほど一般的な範囲を持つものではないが , 中 心力という種類のカでは力学的エネルギー保存の法則のほかに , もう 1 っすぐ に見出すことのできる積分法があることを述べよう . 1 つの質点 P ( 質量 ) に働く力の作用 線がいつも空間内の一定点 O ( 慣性系の 原点 ) を通るとき , この力を中心力とよ こでは , この中心力が O からの距 ぶ . 離の関数てある場合だけを考えよう . これを影 ) , で表し , / ( わ > 0 のときは斥 5.4 ー 1 図中心力 カ , / ( わ < 0 のときは引力を表すものと 約束する . 万有引力は中心力である . 引力と斥力とでは斥力のほうが符号を考 えるとき標準になるので , これからしばらく斥力の場合を標準として考えるこ とにしよう . まず位置エネルギーを求める . 力の成分は / ( 幻ユ であるから , 位置エネルギー U は öU öU から求められる . いま 0 öU
28 2. 運動の法則 のとき質点に働く力はつ屮あっーて一い - ーるという . 0 である . そのときは質点の加速度は 2.5 作用・反作用の法則 ( 運動の第 3 法則 ) 運動の第 3 法則を述べよう . これは , 質点の質量の定義 , この定義を下すこ とのできる経験法則 2.3 の最初に述べたことがら ) , それに第 2 法則を考え に入れて導くことができる . 2 つの質点 ( 質量 = 1 , 襯 2 ) が空間にあって , 互いに力をおよばすためど ちらも慣性系に対して加速度い 1 ス 2 ) を持っているものとしよう . そのとき は , 2.3 で述べたように山 , , は両質点を結ぶ方向にあて , しかも ( 2 ラ 2 ) が成り立つ . 第 2 の質点から第 1 の質点におよばす力を & 1 , 第 1 から第 2 におよばす力を 2 と書けば , 運動方程式は となる . ( 2.3 ー 2 ) によれば 12 2 ス 2 = お 12 21 ス 1 ス 2 が両質点を結ぶ直線の方向にあることとこの式とをまとめていえば , 2 つの質点の一方が他方に力をおよばしているときには , 必ず 後者も前者に力をおよばしており , それらの力は両質点を結ぶ直 線の方向に沿ってり向き作用しており ~ その大きさは等しい ということができる . 力が両質点を結ぶ直線の方向にあることには触れよい表 現もある . Newton の P 加ルでは触れていない . 後に示すように 8.4 参照 ) , 第点系の角運動量保存の法則には一これが必要であ - るのて , こでこの ことも含めて第 3 法則とした . これが運動の第 3 法則である . 一方の力を 作用 , 他方の力を反作用とよぶことがある . どちらを作用 , どちらを反作 用というかは立場によってちがうこともあるカ” , 手が壁を押し , 同時に壁が どちらでもよいときには , 作用 , 反作用のことばは使わないのがふつうである .
9.5 撃力が働く場合 子とみなす . そのときは 0 のまわりの慣性モーメントは / = M( / 十の 2 十一 M 〃 2 197 であるから , 周期は ( / + の 2 + ーな 2 Tp = 2 4 《 / の条件でこの式を展開すれば となる . 10 〃 3 Tp = 2 25 / 3 TI, Ts, Tp をくらべると , TI と Ts とは ( ツ 1)2 の程度のちがいがあるが , となる . TI と Tp は ( 〃 / げの項まで一致し , ( 1)3 の項になってはじめてずれてくることが わかる . 十・ 9.5 撃力が働く場合 質点に撃力が働くときのことは . 1 で説明したが , 平面運動を行う剛体に 撃力 0 働く場合を考えよう . 剛体 0 : 働く撃力を X , , Yt とし , 同時 0 = 働 0 、て 0 、 る重力のような撃力でない力を X 々 , Y 々 0 とする . 剛体の平面運動の方程式は , 重心の速度を uG,VG として , uc, = 2 十 2 X ん 0 M dVG = 2 十 2 0 M = ( v. ー必 ' (t) 十 2 ( れ ' 丘 0 ー ' X ん 0 ) ( 9.5 ー 3 ) こで , 筋 ' , 必 ' ; れ ' , ・は重心を座標原点とするときの着力点の座標である . 撃力の作用する非常に短い時間を「とし , この間に uG, , のが 1 GI , の 1 から 4G2 G2 , の 2 に変化するものとする . ( 9.5 ー 1 ) , ( 9.5 ー 2 ) , ( 9.5 ー 3 ) を / について 0 から「まで積分する . ( 9.5 ー 1 ) の左辺は 添字 p は physical pendulum の p. ( 9.5 ー 1 ) ( 9.5 ー 2 ) (G)
78 5. 力学的エネルギー面積の原理 2 襯レ 2 1 は他の物体から質点に作用する力であるが , 質点からこの他の物体に作 用する力をお ' とすれば , 運動の第 3 法則によって ー襯 / 2 2 1 であるから つぎに位置エネルギーについて考えよう . 質点に働くカ X, Y, / が保存カ で , その代り接触面に熱が現われているのである . 現を使うことがある . このようなときには力学的エネルギーは減少するだけ なときにも運動している物体は摩擦力に抗して仕事を行うというあいまいな表 いる物体だけでこれが負の仕事をされているだけの話になる . しかしこのよう に仕事がなされるということはできない . このとき仕事をされるのは運動して する他の物体 ( 床とか地面とか ) は動かないことが多いがこのときは床や地面 物体の運動をさまたげる力が摩擦力のときには , 考えている物体に力を作用 るまでに外の物体に ( 1 / 2 ) / 2 だけの仕事をすることができる . 質量の物体が速さ / で運動しているときには , それが止ま 体の受ける仕事である . それゆえつぎのようにいうことができる . と書くことができる . 右辺は考えている質点に働いてその運動をとめる他の物 のときには öU öU öU であるような U 仕 , 必名 ) が存在するから , ル = U(PI)— U(P2) る . 質点に働く保存力が仕事を行っただけ位置エネルギーが減少す エネルギーの減少量であるから となることは ( 5.1 ー 10 ) で示した . 右辺は質点が PI から P2 にゆく間の位置
72 5. 力学的エネルギー面積の原理 U には力を導くという点からいって不定な付加定数があることになる . それ で , あとで例に示すように , 適当な点を選んでそこで U が 0 になるように定 数が選ばれる . 力が ( 5.1 ー 8 ) によって位置の 1 価関数 U から求められるも の , いいかえれば , ( 5.1 ー 7 ) のルが質点の径路にはよらないものを保存カ とよぶ . 質点の受ける力が保存力であるとき , その空間を保存カ場とよぶ . そうすると 質点が保存カ場で運動するときには , その運動エネルギーと位 置エネルギーの和 , すなわち , 力学的エネルギーは保存される ということになる . これを力学的エネルギー保存の法則とよぶ . 質点に摩擦力が働いたり , 空気の抵抗が働いたりするときにはこの法則は成 り立たない . そのことは ( 5.1 ー 7 ) で PI, P2 を指定しておいても , 道筋を長く したり , 速度の方向を逆向きに変えるとルの値がそのたびにちがうことから わかる . 質点が保存カ場内で滑らかな静止した束縛を受けるときには , この束縛する もの ( 滑らかな斜面 , 滑らかな針金など ) から質点におよばす束縛力について ( 5.1 ー 7 ) の計算を行うと , 束縛力の方向と質点の進む方向はいつも垂直であ るから Xdx 十 Ydy 十 / = 0 である . したがって , 束縛力に対する積分は 0 となる . それゆえ , 力学的エネ ルギー保存の法則はつぎのように拡張することができる . 質点が保存カ場で滑らかな静止した束縛を受けながら運動する とき , その力学的エネルギーは保存される . 以上学んだことをいくつかの例についてしらべてみよう . 鉛直線に沿っての 落体の運動では , 軸の方向だけを考えればよい . U は高さだけの関数と なるから , ( 5.1 ー 8 ) によって dU つまり dU mg から求められる . これから
26 2. 運動の法則 となる . ( 2.4 ー 1 ) , ( 2.4 ー 2 ) を質点の運動 方程式とよぶ . ( 2.4 ー 1 ) を言葉でいえば , 質点に力が働くときには , 質 点は慣性系に対して , 力の方向 に , これに比例し質量に反比例 する加速度を持つ ということができる . これを運動の第 2 法則とよぶ . 力学の問題では , カ ( X , Y, / ) が質点の位置の関数として与えられ , ( 2. 4 ー 2 ) の微分方程式を解いて , 位置仕 , 必の を時刻ーの関数として求めるものが多い . 運動の第 2 法則は直接実験から導き出した 法則というよりも , 力と加速度の関係を取り (d) きめた , つまり定義を導入した形になってい 2.4 ー 1 図質点に働くカ る . このようにしてきめた力を扱いながら , 惑星の運動のようなものを論じることにな る . 万有引力のような距離の 2 乗に反比例する力も自然界に現われるのであ る . しかも万有弖 -. I 力の - 法胆ドよって , 惑星の運動や人工衛星の運動を計算する と実測ときわめてよく一致する結果が得られる . これが運動の第 2 法則の正し いことの験証と考えてよい . 力の単位は ( 2.4 ー 1 ) または ( 2.4 ー 2 ) によってきまる . CGS 制では = 1 g, ス = 1 cm s-2 をとってそのときのカの大きさを 1 ダイン (dyne, 記号 dyn) カ ( 2.4 ー 2 ) 張られた糸 カ (c) カ 面からの 抗力
11.1 ダランべールの原理 251 有効力 慣性抵抗 加えられたカ 束縛カ 束縛力の符号 慣性抵抗 を変えたもの 加えられたカ 束縛カ 加えられたカ (b) 11.1 ー 4 図ダランべールの原理 で 3.1 ー 2 図に示す滑らかな斜面上の運動である . 斜面に沿って下向きの加速 度をスとする . 11.1 ー 3 図に加えられたカお ( 下方に襯の , 斜面からの束縛 カ (S), 有効力 ( 襯ス , 亠斜面に沿って gsin 日となる ) , 慣性抵抗 ( ース ) を示す . 11.1 ー 4 図は 11.1 ー 3 図の解釈の方法 3 種類を示す . 図 ( a ) : 加えられたカ凡束縛カ S, 慣性抵抗ースはつりあいにあ る力の系となっている ( ( 凡 S, ース ) は閉じた三角形をつくる ). 図 ( b ) : 加えられたカ凡束縛カ S, 慣性抵抗ー襯スはつりあいにあ る力の系となっている ( ( a ) の解釈とほば同じ ). 図 ( c ) : 加えられたカおは有効力スと束縛力の符号を変えた一 S とに分解される . この解釈はあまり使わないほうがよい . それで質点 P に , 束縛条件に合うように斜面に沿っての仮想変位を考え れば 斜面からの束縛カ S はに直角であるから S ・ = 0 したがって
8.6 質点系のエネルギー ( 8.6 ー 2 ) 163 化や , 角運動量の変化を考えた場合のように , 内力が消えてしまうとは限らな 力もあれば内力もあるが , 一般にどちらも仕事を行うのであって , 運動量の変 とは . 1 の ( 5.1 ー 6 ) で学んだ . 質点系内の 1 つの質点に働く力としては外 各質点の運動エネルギーの変化はこれに働いている力の行う仕事に等しいこ ーんキ i ( 2 ) T2 ー TI = 外力の行った仕事 + 内力の行った仕事 い . 質点系の運動エネルギーが TI から T2 に変わったとすれば 上に述べたように カ縛条 ムには 0 となる . つぎにこれをあげよう . ( a ) 2 つの質点間の距離が変わらないように束縛されているとき , 互いに 作用しあうカの行う仕事 質点を PI, P2 としその距離 PIP2 が変わらないように束縛されているとす る . PI から P2, P2 から PI におよば & 1 ・ 1 十 2 ・ r2 仕事は が 2 だけ動く間にこれらのカの行う す力を 2 & 1 とする . PI が rl , P2 = 2 ・ ( 2 ー 1 ) = お 12 ・ ( r2 2 ・ r12 rl ) ( 第 3 法則を使って ) O (a) 8.6 ー 1 図第 3 法則と仕事 r12 の大きさが一定であるときには 8.6 ー 1 図 ( b ) の示すように r12 は r12 に ことなく運動するとき , 糸の張力の行う仕事 (b) 2 つの質点が滑らかな釘や輪にかけた糸で結ばれていて , 糸がたるむ はない . ら , 剛体が運動してもその内力によって運動エネルギーが変化するということ たとえば , 剛体ではこれをつくっている各質点間の距離が変わることがないか 直角である . したがって , 2 ・ r12 = 0 でお 12 と & 1 の行う仕事は 0 となる .
230 10. 仮想変位の原理 これから加えられたカ , または既知力と名づけよう . 束縛力は , この加 えられたカと束縛条件とからつりあいの式を通してはじめてきまるもので , 通 常未知量である . / 番目の質点に加えられた力を Fz(xt, Y. , 乙 ) とし , 束縛カ を & ( S れ , S , S 幻 ) とする . Xz 十 Sxt = 0 , である . つりあっているのであるから明らかに 十 Syz = 0 , 乙十 Szt = 0 ( 10.2 ー 1 ) いま , つりあい位置から各質点について束縛条件を破らない範囲の小さな変 位 , すなわち仮想変位を考え , これを , , 6 必 , . としよう . 石 , 6 必 , . は体系の構造上許される変位をとるのであり , またどのような変位が可能かと いうことが体系の力学的構造の表現でもあるのであるが , いまこれらの仮想変 位に対して , それと力とのスカラー乗積 , すなわち仕事の形の式をつくってみ る . そのときの加えられたカと束縛力との行う仕事は Ⅲ = { ( X , 十 S , , ) . 十 ( Y , + S ⅵ ) 6 必十 ( 乙十 S ) 6 る } ( 10.2 ー 2 ) 質点系の力学のところで述べたように , 質点の移動に対して束縛力が仕事を しないことがよくある . そのときは , ( 10.2 ー 2 ) の束縛力に関する項は消えて ( X 浴 %. 十 Y 浴必十乙 . ) = 0 ( 10.2 ー 3 ) となる . すなわち , 質点系について考える任意の仮想変位 , , 6 必 , 6 に対 して加えられたカの行う仕事は 0 である . このときの仕事 ' を仮想 仕事とよぶ . 逆に任意の仮想変位に対して , 束縛力が仕事をしないような体系の場合 ( 10.2 ー 3 ) が成り立っときには , その質点系はつりあっていることを証明でき る . なぜならば , もしつりあわないとすると , 各質点は実際に動きだすはずで あるが , / 番目の質点の加速度をイ 2 石 / 市 2 , 2 必 / 襯 2 , イ 2 / 2 * とすれば = Xt 十 Sxt, = 十 Syt = 乙十 Szt ( 10.2 ー 4 ) いま , 実際に動きだすときの時間的経過を考えているのであるから " でなく " 心を使う .