デザイン - みる会図書館


検索対象: 贅沢入門
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1. 贅沢入門

むしろ、たとえどんなに索漠としていたとしても、自分の管理・調整のできる空間で、気 に入った、あるいは自曼できる椅子なり、机なりを、選んだ相手に提示すること、つまり は他者と外界の拒否としてこそ、デザイン家具のプームがあるのではないか : : A 」い、つの が、ゼミ生の女性の解釈です。 これは、なかなか、鋭い視点のよ、つに田 5 われました。 街なり、他者の視線への拒否と、デザイン家具の隆盛。 もちろん、この両者を結びつけてしまえば、とても貧相で形骸化をした、事情の説明な り、キャプションにすぎないでしよ、つ。 けれどもまた、一方で、若い人のなかの先鋭的な、つまりは意識もそこそこに高く、ス テレオタイプにはまらない部分が、自動車や洋服、カバンといったものよりも家具が面白 大金を投じてもいい対象だと思うという事態の本質には、「引きこもり的なニュア ンスが、文化や社会において徐々に優位を占めていく、優位とはいわないまでも、無視で きない加重となりつつあるということが考えられるのではないのでしようか デザイン家具の流行と、携帯端末の問題をつなげて考えると、今日の文化社会について

2. 贅沢入門

この心持ちを解消してくれたのは、大学のゼミナールの学生との会話でした。ある時 に、雑談をしていて、たまたま家具の流行ーーーゼミナ 1 ルのプレゼンテーションなどで も、デザイン家具とその周辺がテ 1 マになることが増えているのですーーに話が及んだ時 に、彼女がこの風潮が意味するのは、街よりも室内にたてこもり、都市空間ではなく自室 のなかこそを本質的な場所とする態度、つまりは縮めて云ってしまえば、引きこもり文化 の隆盛のきざしではないか、というのです。 たしかに、ファッションにしても、車にしても、戸外に、より広い空間に出ていくこと を前提としています。さらには、ファッションがより本質的ですが、自動車においてもま たその魅力の大きな部分をしめている、他者にたいする誇示、演出といったもの、つまり は自分が不特定多数の視線にさらされながら、ある一つの意味なり、価値なり、より微妙 なニュアンスを提出する、提示しようとするという意欲が、その過大とも思われる支出を 支えていたのでしよう けれども、どうもこのデザイン家具のプームは、こうした外に出ていこうとすること、 街で、不特定な空間で、自分を示そうという意欲に、ガッツに欠けているのではないか。 1 12

3. 贅沢入門

ば、といったデザイン家具の店に顔を出すといった実態を目にすると、若者文化 の変質というのだけではすまない、 もっと別の変化が訪れつつあるように思います。 無論、かってから、若い人たちのインテリア指向というのはありました。デパートや家 具店で、下宿の狭隘な空間を埋めるための棚などを月賦で買うという習慣自体は、戦後に なって大学の数が飛躍的に増え、都会の青年人口もまた飛躍的に増大して以来のことであ り、かなりの長い歴史と変遷をもっているものです。 その点からすれば、現在のデザイン・プ 1 ムといったものも、その長い変遷の一コマに すぎず、時代を追っての変遷の途上での、洗練の一形態にほかならない、と云えるかもし れません。 でも、どうなのでしよう。私はそういった一連の流れとは違った、あきらかな段差が、 現在のインテリアにたいする関心、というよりも執着の中にあるように田 5 われてならない のです。 もちろん、それは現象としての、若者たちが数万円からときに数十万円という大金を、 ただひとつの椅子やテープルに支払うというような最近の傾向についてなのですが、さら

4. 贅沢入門

落語の愉しみ z ゲージ 奥志賀スキーの贅沢 娘と観る映画 プルートレイン デザイン家具と若者文化

5. 贅沢入門

: これは無論、マニア、オタクの第一の属性ですが、それ以上に とに血道をあげること : 大事なのは、こうした性癖こそが、人間の、知的探究心の根本の部分の衝動であり、一般 的な評価や、世俗的な関心とは関係なく「わが道を行く」ための、モティベ 1 ションと構 えを、育てることになるからです また、もう一つの魅力として、電車や機関車の、モノとしての面白さ、デザインの美し さ、格好のよさがありますね。近年、国鉄が民営化されて以来、各社は、それぞれに 新しい車両の開発にしのぎを削っていて、新型を見ているだけでも十分に楽しいのです が、さらには、過去の車両もまた格別の魅力がある。私はかって 5 7 が好きだったの ですが、息子がが好きだなどと云うと、まあきわめて下らない水準ですが、「趣 味の遺伝」というものを考えてしまいます。 さらに、鉄道には蒐集、つまりコレクションの楽しみがあります。乗車券、特急券には じまり、時刻表や特別乗車券といったものから、鉄道模型やさまざまな鉄道グッズ、高じ てくれば、実物の車両のパーツや、制服といったものも、蒐集の対象になってくる 最終的には、情報やデザイン、そしてコレクションなどといった事物への興味を充実さ

6. 贅沢入門

落語の愉しみ Z ゲ 1 ジ 奥志賀スキ 1 の贅沢 娘と観る映画 プル 1 トレイン デザイン家具と若者文化 012 011 94 68 76 101 108

7. 贅沢入門

ティ、宀具と ~ 者文化 【 O 何年くらい前からでしようか。学生諸君をはじめとする周囲の若い人たちに、一番好き な雑誌というような話題をふって、『』をはじめとするインテリア 雑誌、デザイン雑誌が筆頭にあげられるようになってきました。 今では、もう少し高い年齢層に向けて作られた雑誌 ( たとえば『』など ) にお いても、「インテリアとして映える家電製品」などといった類の特集が組まれるような有 様ですから、いちかいに若い人たちだけの現象とはいえないのかもしれません。でも、自 分たちの世代的な体験から照らしても、二十代前後の若者がイ 1 ムズの展覧会に押し寄せ るだけでなく、実際に手の届く範囲で購入をして自室に置いたり、あるいは暇さえあれ 108

8. 贅沢入門

彼らか、現在のユース・カルチャ 1 だけでなく、社会の性格を代表しているように思う のは、私の早計でしようか それは、無論スタイルやデザインへの感覚の鋭敏さが、そこまで洗練されてしまった、 よくも悪くも洗練されきってしまった、日本の文化の、それは平安時代から何度も繰り返 し現れてきたような、きわめて審美的な生活への志向が、また再び現れている、と考えら れるかもしれません あるいはまた、かっての四畳半よりはかなり改善されたとはいえ、ワンル 1 ムにユニッ ト・バスという、それ自体としてはやはり狭隘であり、ときには貧相ですらある空間にそ 。いまだまったく変わることのない、日本人の消費活 のように高価な家具を据えることこ、 動の歪みや均衡感覚のおかしさを指摘することができるかもしれません。あるいはまた、 何だかんだといっても、若者たちがそのような多額のお金を、家具といった非生産的なも のに支出できるという状況に、日本の豊かさや余裕を見ることができるかもしれません。 けれども、やはり、そういった事象では説明できない本質的な変化が、そこにある気が するのですが、どうしても整理できずにもどかしい気持ちでいました。

9. 贅沢入門

には、こうした消費の形態、つまりはインテリアにどれだけのお金をかけるかという判断 の下にある、何というのでしよう、いわば優先順位の変化についてなのです。 どうも、私の見るところでは、もちろんすべてではないけれども、若い人たちの間で は、生活のなかでの家具の優先順位が高まっているように思われてならないのです。優先 順位というのは、つまり、衣服とか、自動車とか、あるいはや書籍といった、若い人 の支出の対象ですが、その順位のなかで、家具の占める位置がかなり上昇している、非常 に上位にきているように田 5 われるのです 、最新のファ といっても、今でもそういう人たちはたくさんいますが かっては ッションや自動車に、分不相応な支出をする若者たちがたくさんいました。それは、その 時代、時代で、若者たちの強い渇望と憧れの対象であり、同時に時代の方向性なり自己認 識を示していたもののように思えます。そのような渇望の対象、つまりは分不相応な借財 を負ってでも購入したいという情熱を若い世代の間で燃えたたせているのが、現在では、 高価な家具なのではないか、と思われるのです。 一脚の、美しくデザインされた椅子のために、十数万を平気で払う若者たち。 1 10

10. 贅沢入門

初出年月日 ( 特に表記のないものはすべて 2 1 年 ) 寿司と天ぶらと日本橋・・ 京都の食・ フランス料理の再興・・ ワインの愉しみ・入門・・ 私にとってのイタリア料理・ 中華料理の話・・ 落語の愉しみ・・ N ゲージ・・ 奥志賀スキーの贅沢・・ 娘と観る映画・ プルートレイン・ デザイン家具と若者文化・ 散歩で発想・ 漢籍の素養・ 大学を考える・ パソコンの自由と憂鬱・・ 「地ひらく」・ 現代恋愛考・ ナポリが日本に問うこと・ 京都の街、二一世紀への宿題・・ 地方都市 & 高知・・ ホテルと日本式の「埋没」・ 香港の斜陽と魅力・ カーナピのあるヴァケーション・・ なせ私たちは奈良に行かないのか・ ・・・ ( 7 月 13 日 ) ・ ( 4 月 27 日 ) ・・・ ( 3 月 30 日 ) ・・ ( 6 月 1 日 ) ・・・ ( 11 月 2 日 ) ・・ ( 11 月 16 日 ) ・・ ( 2 月 16 日 ) ・・・ ( 3 月 2 日 ) ・・・ ( 4 月 13 日 ) ・・・ ( 7 月 27 日 ) ・・・ ( 8 月 10 日 ) ・・・ ( 9 月 7 日 ) ・・・ ( 5 月 22 日 ) ・・・ ( 6 月 15 日 ) ・・・ ( 2000 年 12 月 15 日 ) ・・・ ( 6 月 29 日 ) ・・・ ( 9 月 21 日 ) ・・・ ( 10 月 5 日 ) ・・・ ( 2000 年 11 月 17 日 ) ・・・ ( 2000 年 12 月 29 日 ) ・・・ ( 1 月 19 日 ) ・・・ ( 2 月 2 日 ) ・・・ ( 3 月 16 日 ) ・・・ ( 8 月 24 日 ) ・・ ( 10 月 19 日 )