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検索対象: アジア小農業の再発見
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1. アジア小農業の再発見

日本では不要となった特殊法人を OQ< で生き長らえさせた、という例もある。農用地整備公団が それで、もともと農用地開発公団と称して日本国内での新規農地開拓を担うためにあった公団が使 命を終えた後、整備公団と改称して存続されていた。ところが、日本国内では新規事業も見込まれ ないため、公団法を改正して海外での事業展開も可能にした。税金で運営されている公団の海外で の事業展開に対しては、日本の産業界からの反発もあったため、農用地整備公団の事業参入 は「採算の見込みが立たない事業」へと限定していた。このような無理は長続きするはずもなく、 無駄に無駄を重ねた上で、今になってようやく農用地整備公団は廃止されようとしている。 つけは私たちにも と並んで日本政府がタンザニア政府に供与し続けている OQ< がある。債務救済無償資金 助協力と呼ばれる形態の OQ< で、タンザニア政府の債務返済を助けるために供与されている。債務 食救済とは言っても、現金がタンザニア政府に直接供与されるわけではない。と同様さまざま てな資機材がタンザニア政府に納入され、タンザニア政府はその資機材を自国で販売して債務返済に とあてる。と異なるのは資機材を農業関連に限っていないだけで、日本企業しか受注できない 点など手法はと同じである。債務救済といってもなお日本企業の受注を増やすという、どこ 章 までも日本企業に手厚いシステムになっている。 第 タンザニア政府は一九九六年までに累計で四〇三億円あまりの円借款を日本政府から供与されて

2. アジア小農業の再発見

いる。そのうち多くは一九八〇年から八二年にかけて供与されており、この三年間で二七八億 九三〇〇万円が日本政府からタンザニア政府へと貸し付けられている。十年据え置き、三十年返済 で年利一・五 % というソフト・ローンでこれらは貸し付けられているが、十年据え置かれている間 に円はどんどん高騰し、一方、タンザニアの通貨シリングはの構造調整計画 (T<Z„) による 政策介入もあってドルに対して大幅に切り下げられた。一九八六年にパリで開かれたタンザニア債 権国会議において、日本政府はタンザニア政府に対する日本の債務救済に応じることを決 め、一九八八年には債務を繰り延べし、一九八九年から債務救済無償資金協力を供与し始めた。そ の後、日本政府はタンザニア政府に対して、現在に至るまで毎年債務救済無償資金協力は供与し続 け、さらに一九九二年、九三年には二度の債務繰り延べを行なっている。 為替の大幅な変動という要因はあるにしろ、円借款はタンザニア政府に対して大きな債務として のしかかっている。キリマンジャロ州の水田開発も最大のものは円借款で行なわれ、当初の計画で は、生産されたコメを輸出して国家経済を潤し、借款も返済できるはずだった。 円借款プロジェクトを実施するか否かを判断するのは、プロジェクトの経済性と財務性である。 本来は、ここに社会環境影響評価が加わるべきだが、日本の OQ< プロジェクトの場合、おざなり にされている場合が多い。プロジェクトの財務性はプロジェクト単体の収支を問い、経済性の判断 は国家経済に対しての評価が行なわれる。評価はプロジェクトを受託した開発コンサルタントによっ て行なわれるが、最終的に円借款を供与すべきか否かは特殊法人・海外経済協力基金に

3. アジア小農業の再発見

取国政府から援助要請が来た時点で、すでに受注企業が決まっている。商社マンの腕はいかにして 要請を出させるかで、そのためには相応のリべートが介在する。リべートを捻出するために、受取 国の国内輸送費を水増しする。当事者による生々しい証言に唖然とした覚えがある。 輸出される不況業種 アフリカ大陸東部のタンザニアへは一九七八年以降毎年必ずが供与されている。多い年は 年間九億五〇〇〇万円、少ない年でも年間四億円で、一九九六年までの累計は一二八億四二〇〇万 円にものぼる。日本政府はタンザニア北部のキリマンジャロ州の農業開発〈の供与に熱心 で、一九七四年から専門家を派遣し、一九七九年には無償で農業開発センターを建設、一九八一年 からは有償で水田開発、一九八七年からは無償で水田開発と、一九八九年まで継続して様々な形態 助の OQ< を供与し続けている。これにが絡む。このように、技術協力、資金協力が複合的に 食実施される OQ< 供与の方式を日本政府は「アン。フレラ方式」と呼び、供与の効果的手法と てして自賛している。 し と多くの住民がコメを主食としていないタンザニア・キリマンジャロ州にどうしてこれほどまで積 極的に稲作を導入しようとしたのか。表向きの理由は換金作物としてコメを生産し、これを輸出し 嶂て外貨を稼ぎ、国家経済に寄与するためとされている。より効果を大きくするために、高収量品種 第 を導入し、大型機械、肥料、農薬を多投入して稲作を進める。しかしながら、農業機械、肥料、農

4. アジア小農業の再発見

薬ともに国内での生産がおぼっかない中での高収量稲作導入は、外貨獲得を目的としたコメを生産 するための資機材調達に、多額の外貨が必要になるという状況を生み出している。外貨保有高が限 られているタンザニア政府にとって、稲作推進のための農業資機材輸入は困難で、それを助けるた めに継続してが供与される。援助が援助を必要とする、援助漬けの構図ができあがってしまっ ている。 こういった状況を作る要因は、日本の産業界の事情によるところが大きい植民地時代からヨー ロッパとの結びつきが強いアフリカ諸国の農業開発に参入するには、ヨーロッパでノウハウの蓄積 が豊富な乾燥地畑作では太刀打ちできない。そのために日本でノウハウの蓄積の豊富な稲作をむり やり導入する。日本国内では、最大の公共事業であった小規模農地を統合し大規模に成形する構造 改善事業も終幕に向かい、農業土木事業関連のゼネコンやコンサルタントは新たな事業展開を求め られる。農業機械、肥料、農薬業界も日本国内の農業生産の減退に加え、減反政策もあって、国内 では需要の先細りが見えている。そのため、日本政府も関連業種の海外進出を積極的な OQ< 供与 で後押しする。こうして年間降雨量七〇〇ミリという少雨地帯に大規模水田開発事業が展開されて という日本独特の援助形態が生まれてきた動機自体が、日本の不況業種を救うためだった 、肥料業界ほどではなくとも、先々 というのは先に見たとおりである。ところが、それだけではなく 不況が見込まれる業種を海外移転させるのをで後押しするのである。もっと露骨な例では、

5. アジア小農業の再発見

よって判断される。は年間一兆円近い資金をわずか三〇〇名あまりのスタッフで動かして いる政府系金融機関である。金融機関である以上、返済の見込みがない貸し付けを行なうことなど 許されるものではない。しかし現実にはタンザニアだけではなく、円借款の返済が滞っている例が 余りにも多い は主に私たちの郵便貯金や年金などを原資とする財政投融資を財源に運営されている。 一方、債務救済無償資金協力は私たちの税金を原資とする一般会計から供与される。日本の債務救 済無償資金協力がそのまま円借款の債務返済に使われるという単純な構図ではないが、円借款の返 済が滞っているところに債務救済される傾向が強く、多くは円借款返済に使われていると推察され てん る。政府系金融機関が作った不良債権を一般会計から補填する。受取国政府を迂回するために、全 くわかりにくくなってしまっているが、住専の債務救済と変わりない手法が O Q < においては恒常 助的に行なわれている。 食不況業種の海外転移を助けるが、受取国の住民の意向をほとんど無視して行なわれている てことは一一一一口うまでもない。受取国政府の要請によって供与する要請主義という日本の OQ< の建て前 とのもと、受取国政府の要請があったからと、日本政府は受取国政府に責任を転嫁しがちだが、十分 不な社会環境影響評価も行なわれずに供与される OQ< は供与する側にこそ責任がある。受取国の地 嶂域社会に受け入れられず、もっと極端な場合、受取国の地域社会を崩壊させるような供与は、 援助がさらなる援助を必要とする援助の悪循環を生み出していく。その上、借款の焦げ付きを私た