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検索対象: 今日もていねいに。 : 暮らしのなかの工夫と発見ノート
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1. 今日もていねいに。 : 暮らしのなかの工夫と発見ノート

僕が一人になれる時間をつくってくれているのは、会社の人たちであり家族です。 彼らの協力なしでは、決して一人にはなれません。 おたがいがおたがいの一人の時間を認め、一人での生産性を理解し、一緒の時間は しつかりとコミュニケーションをとる間柄。理解者であり協力者である関係。大切な 人たちとは、こんなっきあいをしたいと思うのです。 僕は一週間くらい旅に出て、誰とも連絡を取らず、すべてを遮断することがありま す。それは僕がわがままだからではなく、まわりのみんながそれを理解し、受け入れ てくれるからできることなのです。 結婚していようと、どこかに所属していようと、一人の時間を忘れてしまえば、何 かにすがることになります。依存して生きていけば、自分をなくしてしまいます。 ちょっとしたことでもいいのです。一人の時間をつくりましよう。その際には、相 手に対して「一人になっていいよ」と明一言することも大切です。 〇一人の時間があってこそ、人との時間が深く味わえます。 〇喫茶店でも公園でも、自分だけの一人になれる場所も見つけておくといいでしよう。

2. 今日もていねいに。 : 暮らしのなかの工夫と発見ノート

一人という贅沢 僕は基本的に午前中で仕事を終えようと努力します。実務や打ち合わせは朝からど んどんすませ、ランチはなるべく会社の人と一緒にとりますが、その後、家に帰るま での時間は毎日、原則として一人で過ごします。一人で会社の仕事をしているのです。 取材や撮影が入ることもあるため完璧には無理ですが、それでもできる限り一人の 時間を確保しています。一人になるとは、すべてを放り出して引きこもるのではなく、 自分に立ち返ること。 どんな人も、何かしらの役割の中で生きています。会社の中の自分、家庭の中の自 分、親である自分、子である自分。僕も編集長であり古書店の経営者であり父親でも あるのですが、誰のためにあるのでもない、素の自分に戻りたいときもあります。 裸んばうの、なんでもない自分になれるひとときがあれば、そこで自分を取り戻し、 一息つけます。そこから真剣に人とかかわり、精一杯、コミュニケーションにむを砕 く力が生まれると思うのです。一人の時間がなくては編集長にも父親にも、何者にも

3. 今日もていねいに。 : 暮らしのなかの工夫と発見ノート

人それぞれであり、その人をあらわすものだな、と感心します。 びつくりするような音を立てて改札に定期入れを叩きつけた人が、電車に乗り込ん だとたん、どさっと空いたシートに腰を降ろし、隣に座っていた人が振動にびつくり こんな光景も珍しくはありません。おしとやかそうな女性なの してちらりと見る 、がさつなしぐさだったりすると、見ていて悲しくなります。 マナーとは、世の中に対しての礼儀作法です。別に慇懃無礼にしろというわけでは ありませんが、心の中で隣の人に「ちょっと失礼」と手刀を切るくらいの気持ちで、 静かにシートに座る。このはうが、男性でも女性でも、はるかに美しいものです。 マナーやルールは人から与えられるものではなく、自分でつくるもの。たとえ電 車の中でガムを噛むことが禁じられていなくても、「人前でくちゃくちややるなんて、 大人として失礼だ」と控えるのが、自分を律するということです。 しぐさはまたマナーの問題を超え、その人の心模様を映し出します。無意識にがさ つにふるまうときは、誰でも疲れていたり、心が荒れていたりするものです。 ところで、どんなしぐさをしているかを観察する対象は、世の中の人ばかりではあ りません。僕はむしろ、自分自身をよく観察します。 106

4. 今日もていねいに。 : 暮らしのなかの工夫と発見ノート

暮らしの引き算 増やしたら、減らす。 ごくシンプルなこのやり方が、ていねいに生きる秘訣です。 新しいものを一つ手に入れたら、部屋の中にあるものを一つなくす。そうすると、 しつも余白がある暮らしとなります。 「ものを所有することや趣味をもっことに対しても、恋人に向き合うのと同じ態度が 必要だ」 こう言うと笑う人もいます。それでも、「新しく好きになった人ができたら、今っ きあっている人とは別れる」という真摯な気持ちを、日常の随所でもちたいのです。 何人もの恋人と薄いっきあいをするより、一人の人に気持ちを捧げたいという願いは、 人に対しても、ものや趣味に対してもまるで同じです。 なぜなら、数の限られた選ばれたものだけ持っていれば、一つ一つを宝物のように つくしむことができるのですから。

5. 今日もていねいに。 : 暮らしのなかの工夫と発見ノート

「こんにちは。今日は特別暑いから、あなたにコーラを買ってきたよ」 すると彼はとてもよろこび、何度もお礼を言いました。それからは毎朝、気持ちょ く「おはよう」と = = ロいかわせるようになったのです。 彼の心に届いたのはコーラではなく、歩み寄ろうという僕の気持ちだと思います。 その意味で、あいさっとは魔法の杖。それだけで人との関係が画期的に変わります。 もっとも、管理人とはにこやかにあいさつできる仲になりましたが、友だちになっ たわけではありません。誰とでも親友になるというのは、無理な話で当然でしよう。 それでも、僕の世界は大きく変わりました。あいさつだけで、たとえ最低ラインで も、気持ちょい人間関係をキープできるーー考えれば、すごいことだと思うのです。 「おはよう」ひとつで、人とのもやもやだって消えうせます。 とことん話すのは無理な相手でも、自分から「おはよう」と言ってみましよう。相 手ばかりか自分まで気分が変わり、朝がすてきになるはずです。 〇苦手な人こそ、自分から話しかけましよう。歩み寄ってくる人を拒む人はそういません。 〇一人きりでも「おはよう」と言葉にしましよう。その日一日が、びかびかになります。

6. 今日もていねいに。 : 暮らしのなかの工夫と発見ノート

この事実を、いさぎよく認めねばならないと思うのです。 人でしかできない。 だから僕は、孤独であることを基本条件として受け入れています。 孤独を誤魔化すために意味もなく人と会ったり、仲間と騒いだりはしません。その ふん、一人で考えたり、独学をして、なんとか望むような方向に歩いていきたいと願っ ています。 もちろん、一人でいることが心地よい僕にとっても、孤独はいつも味方ではありま せん。寂しい、怖い、心細いといった恐布心に囚われることもしばしばです。 とくに仕事は、孤独との戦いのようなもの。一対一〇〇で世界と対峙する覚悟がな ければ、思ったようなものは作り上げられません。 たとえ、たった一人で批判や反対意見を浴びるとしても、ひるまずに受け止めなけ ればいけない場面もあります。みんなの気持ちを慮って意見を聞き、和気あいあいと 話し合って良い企画が形になるなど、現実にはありえない話です。 だから僕は、「一人でがんばらなければいけないとは、なんて自分は不幸だろう」 などと悲劇の主人公みたいに思ったりしないのです。人は孤独であらねばならないと 承知し、そのうえでどう孤独と向き合うかを考えたいのです。 第 4 章おだやかな晩ごはん 1 2 5

7. 今日もていねいに。 : 暮らしのなかの工夫と発見ノート

はないでしようか。 今日、出会う人すべてが、自分に何かを教えてくれる先生だと思えば、相手のファッ ションや見てくれ、性格の良し悪しすら気にならなくなります。やさしい人から学べ ることもあれば、意地悪な人から学べることもあるのですから。 この考え方を試し続けていると、自然に「ありがとう」という感謝の気持ちが生ま れます。人に生かされて生きているという真実を、忘れずにいられます。 〇街中でふとコミュニケーションをとった人を、先生だと考えてみましよう。 〇気持ちのいい体験から学べることもあれば、嫌な体験から学べることもあります。

8. 今日もていねいに。 : 暮らしのなかの工夫と発見ノート

凛とした誠実 一瞬で終わる関係なら、あえて素通りする。これは人と関わる際の僕のルールです。 たとえば業のもとには、 いろいろな人がたずねてきます。 「イラストを描いているんですが、アドバイスをください 「駆け出しのカメラマンですが、私の作品についてご意見をうかかいたい」 僕の答えはいつも决まっています。 「アドバイスはしないし、意見も一言えません。作品を見て、あなたという人がいると 知ることしかできませんよー なんと冷たい対応だろうと思うかもしれませんが、これが僕なりの誠実さです。 仕事についてでも、恋愛や人間関係の問題についてでも、人に相談されたことに対 してアドバイスをするときには、その人の面倒を一生みる覚悟がいると思います。 もし僕が「あなたの作ロ叩は、こんなエ , 天をしたらいいんじゃないですか ? 」などと アドバイスをしたら、たとえ軽い気持ちだろうと、一生その人とっきあわなければな

9. 今日もていねいに。 : 暮らしのなかの工夫と発見ノート

「おはよう」の効用 出勤時間やごみを出す朝、特定の誰かと顔を合わせる時間帯がつらいという人がい ます。それは苦手な人と顔を合わせる時間だからではありませんか。 あなたにも、そんな人がいませんか ? たとえば駅の改札で顔を合わせて、会社ま でのわずか数分を一緒に歩くのが気まずい相手。お昼時や買い物に出かけるとき、微 妙に時間をずらしたくなる相手。 苦手な気持ちというのは不思議なもので、黙っていても相手に伝染します。 「もしかして、この人は自分が嫌いなんじゃないかな ? 、とあなたが思っているとし たら、相手もそう思っているもの。おたがい苦手オーラをかもしだすようになれば、 もっと気まずくなります。改札ロでその人を見かけたとたん、自動販売機に駆け寄っ て一緒にならないようにするなんて、くたびれるうえに、かなしい / / ト細工です。 苦手な人にこそ、こちらから近づいていきましよう。嫌われているだろうな、と思 、つ相 - キ . にこそ、しかけましよ、つ。

10. 今日もていねいに。 : 暮らしのなかの工夫と発見ノート

与えるスケール 人生で何をしたかは、どんな仕事をして、どんなものをつくったかでは决まりませ ん。大切なのは、どれだけ人に与えたかということ。 与えるといっても、ものではないと思います。生きていくための知恵、心やすらぐ 方法、新しいものの見方、こういったことをたくさん見つけ、たくさんの人に分け与 えることができたら、自分もしあわせになれると思うのです。 四十代という自分の年齢を考えると、人生のちょうど真ん中です。 真ん中まで生きてきた人間には経験があり、それを人に与えることができます。寿 命までまだ半分しか過ぎていないのであれば、蓄えてきたものを壊し、ゼロからもっ とすてきで新しいものを見つける勇気もあります。 だからまず、僕はかかわる人すべてに、何かしら与えたいと思います。自分一人で 引き出しにしまいこむことなく、惜しみなく与えようと决めています。それが僕の年 齢の、社会人としての責任だと考えているのです。