では次にリスト作成の基本となる評価項目を列挙します。本章では財産 の評価に必要だと思われる項目および評価方法をそれぞれ細かく扱ってい ふかん きます ( 詳細は参照頁に記載 ) 。下表はその全体を俯瞰するものです。 【相続財産算出のための評価項目と評価方法】 平価項目 ( 財産の種類 ) 平価方法 参照頁 自用地 路線価方式か倍率方式でおよそ地価の 80 % 44 ~ 49 土地 貸宅地 自用地としての評価額一借地権の評価 50 , 51 自用地の評価から一定の金額を引いたもの 貸家建付地 52 , 53 自用家屋 固定資産税評価額、時価の約 50 ~ 60 % 54 , 55 家屋 貸家 固定資産税評価額一借家権評価額、自用家屋の約 70 % 56 , 57 預貯金 ( 預金残高 ) 死亡日の元本十解約利子の手取額 公開株 取引相場価格で死亡日の終値、死亡日の月中、その前月、 58 , 59 前々月の日々の終値の月平均額のうちで一番低い価格 株式 未公開株 類似業種比準価額方式 純資産価額方式 配当還元価額方式 死亡退職金 ( 500 万円 x 法定相続人の数だけ控除される ) 生命保険 公社債 発行価額十既経過利子 ゴルフ会員権 通常価額のおよそ 70 % 書画・骨とう品 売買価額および精通者意見価額 * 家庭用財産・その他については P74 を参照。 上記の合計額が総相続財産 ・・① 債務・・・借入金や税金の未払いなど 上記の合計額が債務合計額 ・・② 総相続税課税価格 = ①ー② Section 2 一三ロ 一 6 -6 -6 87 70 , 71 72 , 73 72 葬式費用その他 47
相続財産の 7 割が土地に関するも のだから、土地の評価は相続税計算 の最重要ポイントになります ! 0 Section 2 参とめ・土地の値段のつけ方 実勢価格 ( 取引価格 ) 不動産の売り手と買い手の公正な市場 で取り引きされる時価。 公示価格 国土庁の土地鑑定委員会が地価公示法 に基づいて官報に公示したもの。 ほぼ同額 相続税評価額 国税庁が相続税や地価税評価の目的で、 土地の面する道路に付した地価。評価 方法に路線価方式と倍率方式がある。 固定資産税評価額 公示価格の約 8 割 公示価格の約 7 割 市町村が固定資産税の課税のために評 価した額。 43
④贈与したときの時価で再計算するので、相続時と贈与時の時価の差額 が節税のポイントになります。 ・配偶者への居住用財産を贈与する方法 ( → p 1 22 ) 婚姻期間が 20 年以上の配偶者に居住用財産を贈与する場合は、 2000 万円 までは無税で移転できます。配偶者間に移転が限定されることが弱点とも いえるでしよう。 参とめ本文で挙げたように大きく分けると贈与方法は 3 つあ るのですが、難しいのは、 110 万円の基礎控除と相続時 精算課税制度が選択制という点です。相続時精算課税制度を一度選択 すると再び 110 万円の基礎控除の方法は選択できないことになってい ます。そのため 2 つの方法の特徴をよく理解する必要があります。 前者は相続税と贈与税の税率の差を利用して相続税の節税をしま す。生前贈与を長期間行える場合には効果が大きいといえます。 後者は贈与時と相続時の評価額の差額を利用して計算します。贈与 時の時価が相続時より低ければ節税できますが、逆に贈与時が相続時 より評価額が高くなると増税になってしまいます。確実に評価額を下 げてから贈与する必要があります。 たとえば下記の場合はどちらの方法を選択するべきでしようか ? 1 現金の贈与で 1 0 年間毎年 500 万円を相続人に移転する場合 ( 相 続時の税率が 40 % 程度と予想され場合 ) この場合は 110 万円の基礎控除を選択することになります。 10 年間 に支払う必要のある贈与税の合計と 10 年間贈与をすることによって減 る相続税を比較してみましよう。 2 将来、株価の上がる自社株を贈与する場合 ( 所有株式数 500 株 ※単価が 20 万円で相続時は 40 万円に上がる予想 ) 相続時精算課税制度を使い、 500 株すべてを贈与します。 ( 40 万円一 20 万円 ) X500 株 = 1 億 この場合、 1 億円評価額が下がる計算になります。相続時精算課税 制度を利用し相続税の評価額の引き下げを図ります。 Section 4 115
参とめ・純資産価額の算出法 総資産額 平価差益に対する 負債 ( 相続税評価額 ) 合計額去人税相当額 1 株当たりの 純資産額 発行株式数ー自己株式数 Section 2 平価差益に対する法人税相当額の求め方 負債 合計額 ※評価基本通達 186 ー 2 による ※一定の要件を満たした中小同族法人の株式については、発行済株式の 2 / 3 以下 等を限度として、課税価格の 1 0 % が減額される。 ・資産として評価するもの ・借地権 ( 相続税評価額に借地権割合をかける ) ・生命保険金請求額 ・特許権、意匠権など ・資産として評価しなくていいもの ・仮払金 ( 旅費の未精算分など ) ・前払費用 ・繰延資産 純資産価額方式とは、すなわち 会社が持っている資産を時価に直 す評価の仕方です。 一三ロ 相続税評価額に よる総資産額 負債 合計額 帳簿価額による 総資産額 x 40% 0
Section2 財産の評価の仕方 Key CO 〃 c ー 公社債は、①利付公社債、②割引公社債、③転換社債、の 3 つに 分けて評価します。 金融商品として投資対象になる公社債とは、一般企業や国、地方自治体 15 公社債の評価額 格が発行価格より低いときは、市場価格での評価が認められます。 また、公社債が上場されているなど、市場流通性がある場合で、市場価 額が取引金額とほば同じと考えてもさしたる差はないでしよう。 上記が正式な評価ですが、大まかに見る場合には、どの公社債も額面金 価格を基に評価します。 価格方法となり、株価が転換価格を超えるときは、転換社債の市場 【評価の仕方】会社の株価が転換価格以下のときは利付公社債と同じ ある期間が経過すると、その発行会社の株式に転換できる社債です。 ③転換社債 ます。 還差益 ( 実質的な利息 ) を加えて、いずれか低いほうを評価額にし 【評価の仕方】発行価格あるいは市場価格に、相続日までの既経過償 発行されます。 定期的な利払いはありませんが、その分、券面額より割引いた価格で ②割引公社債 本、または市場価格に足して、どちらか低いほうを評価額にします。 【評価の仕方】前回の利払い日から相続日までの利息を、公社債の元 息が支払われます。 券面にクーポン ( 利札 ) がついている公社債です。普通、年 2 回の利 ①利付公社債 に評価します。 いいます。公社債は利付公社債、割引公社債、転換社債に分けて次のよう などが、一般投資家から資金調達をするために発行する有価証券のことを
参とめ ・家屋の評価 家屋を評価する場合、固定資産税評 価額には、付属設備 ( エレベータ・ 電気・ガスなど ) も含まれます。 Section 2 0 平価方法 区分 固定資産税評価額 建物 建築費用額の課税時の現価 ><0.7 建築中の場合 課税時の再建築価額一経過年数に応じた減価の額 門、塀など 課税時の再調達価額 xo. 7 庭園設備 ( 庭木、庭石など ) - 三 。・一一・固定資産税評価額の管轄は税務署ではない 固定資産税の評価証明書を税務署にもらいにいっても入手する ことはできません。注意してください。 固定資産税の管轄は市町村になっており、評価証明書は、それ ぞれの市町村の固定資産税課で発行されます。 55
Section4 相続税対策の基本 ゴルフ会員権を贈与する Key CO 〃 c ー 13 ゴルフ会員権は、不動産についで大きな財産となっています。 のゴルフ会員権も、相続税対策に利用できます。 ゴルフ会員権を、負担付き贈与することによって、相続税を節税するこ とができます。 負担付き贈与とは、不動産などの財産を銀行口一ンなどの負債といっし ょに贈与することなどをいいます。たとえば、時価 1 億 2000 万円で、相続税 評価額が 7000 万円のマンションを買ったとします。このとき、自己資金で 5000 万円、銀行口一ン 7000 万円で購入したとします。そして、このマンシ ョンを自分の子供に銀行口一ン 7000 万円の負担で贈与したとするとーー かっては、不動産を負担付き贈与したときの贈与財産の評価額は、相続 税評価額でしたので、マンションの相続税評価額 7000 万円から銀行口一ン 7000 万円をマイナスした残りはゼロですから、贈与税もゼロでした。 しかし、この方法で親から子供に財産を移して、相続税対策をするケー スが増えたため、不動産を負担付き贈与したときの評価額は、相続税評価 額ではなく時価になりました。 ここで述べたケースでは、時価 1 億 2000 万円から銀行口一ン そのため、 7000 万円を引いた残り 5000 万円分が贈与税評価額となり、これに相当する 贈与税を支払わなければならなくなったのです。 しかし、不動産以外の財産では、負担付き贈与をすることによってかっ て不動産で行えたような節税が可能なのです。こうした場合、時価と相続 税評価額の差が大きいものほど節税効果は大きく、それに当てはまるのが ゴルフ会員権なのです。ゴルフ会員権は時価の 70 % で評価されます。 時価 1 億円のゴルフ会員権を 3000 万円の自己資金と 7000 万円の借入金で買 ったとします。ゴルフ会員権の相続税評価額は 1 億円 X70 % = 7000 万円です。 相続税評価額 7000 万円のゴルフ会員権を 7000 万円のローン付で贈与したと しても、贈与税は課税されないのです。 ノ 40
0 2 土地の評価はどうやるか ? 土地はその種類によって評価が違ってきます。評価の方法も実勢 価格、公示価格、相続税評価額などいろいろあります。 土地の価格の評価には下の① ~ ④のようなものがあります。 同じ土地でも評価法によって時価に格差があり、また土地がどのように 利用されているかによ ①実勢価格 ( 売買されるときの時価 ) っても評価額は違って ②公示価格 きます。 ③相続税評価額 ①の実勢価格と②の ④固定資産税評価額 公示価格はほば同額で す。③の相続税評価額は公示価格の 80 % とされており、これを算出するの ろせんか に路線価方式い P44 ~ 47 ) や倍率方式 ( → P48 , 49 ) などの計算方法を用 います。④の固定資産税評価額は公示価格の 70 % ほどです。 それではなぜ相続税を算出する土地の価格は実勢価格 ( 時価 ) より低く 抑えられているのかというと、③や④の価格は「売却すれば、最低でいく らなら売れるのか」という評価をするからです。相続税を支払うために土 地を売却するとき、安く買い叩かれて実勢価格より低い価格で手放すケー スがあるからです。 それでもバブル期の土地高騰で相続税評価額も固定資産税評価額も引き 上げられました。ところがその後の不況で土地の取り引きは低迷し、本来 は相続税評価額よりも高いはずの実勢価格が、相続税評価額を下回る例が 増えています。これを「逆転現象」といいますが、明らかに実勢価格が、 相続税評価額や固定資産税評価額を下回っている場合は、実勢価格で申告 することも認められるようになりました。 相続のとき、相続税評価額と実勢価格が逆転していたら、税務署に申し 出ます。その際、不動産鑑定士などの専門家に評価してもらえば、より確 実に言い分が通る可能性もあります。ただし鑑定料が 50 万円以上もかかる ので、それだけの価値があるかどうかを検討した上で、依頼しましよう。 42 Key CO 〃 c ー
相続税対策の基本 アバート・マンションを建てる 7 Key CO 〃 c 孕ー Section4 ノ 28 きくなります。 いマンションやアパートの敷地を特例として選択すると評価減の金額が大 アパートやマンションを多数所有している人は、 1 m 当たりの単価が高 当し、敷地のうち 200m2 までは 50 % の減額が特例として適用されます。 更地にアパートやマンションを建てると、「小規模宅地 ( ー P134 ) 」に該 かりでなく、すべての点において損得を検討する必要があります。 分したいと思っても制限があることを忘れないでください。相続税対策ば います。また、アパートやマンションを建てた場合、その土地や建物を処 ないというのでは家賃収入が見込めず、借金の返済に支障をきたしてしま アパート・マンションを建てたのはいいが、立地条件が悪く、入居者がい いのは、長い目で見て本当にメリットがあるかどうか、ということです。 借金をしてアパート・マンションを建てる際、気をつけなければならな 。 -- ー・アバート・マンションを建てて本当にトクか ? 等の減少、後者は債務控除の対象になります。 金から調達しても借入をしても効果は同様のものとなります。前者は預金 額を下げられるのです。また、アパート・マンションの建築費用を自己資 れます。このように、アパート・マンションも地主の所有のままで、評価 割くらいになります。しかも、その評価額から借家権の評価部分が控除さ この場合アパートやマンションの建物の固定資産税評価額は時価の 5 ~ 6 ← P52 ) 」になるからです。 だけでなく、相続税対策にもなります。それはまず土地が「貸家建付地 を建てるのもひとつの手です。家賃収入が入り、固定資産税の節税になる 所有している土地が空地のままになっていたら、アパートかマンション て経営すれば大きなメリットがあります。 空地をそのまま放置しておくのではなく、そこにアバートを建て
とめ ・贈与財産はこうして評価される 普通の 贈与 負担付き 贈与 すべての財産が相続税評価額で行われる 不動産・・・通常の取引価格 ( 時価 ) で評価 不動産以外の財産・・・相続税評価額で行われる 時価と相続税評価額の差が大き いものに対して、負担付き贈与を すると効果を発揮するのです ! ・負担付き贈与で節税できる仕組み ゴルフ会員権 1 億円で購入 Section 4 相続税評価額 7000 万円 借入金 7000 万円 7000 万円の ローン付きで贈与 贈与分 7000 万円と借入金 7000 万円分で合計ゼロ 贈与税 0 円 子供 ノ 4 ノ