経済政策 - みる会図書館


検索対象: アメリカは日本経済の復活を知っている
241件見つかりました。

1. アメリカは日本経済の復活を知っている

「経済書は岩波新書を一冊読んだだけ」の経済財政相 「円高対応緊急パッケージ」は、世界に通ずる経済学の基本を踏みにじるものだった。誰が踏 みにじっていたのかといえば、対策を起草する彳であり、それを統轄する大臣であり、政党 の首脳だ。また、政府・日銀の主張をそのまま報道するマスメディア、充分な批判を述べな い・・学者、エ・コ・・ / ・ミ、スドも、同罪であな、。 残念なことに、二〇一一年九月二日に発足した野田内閣の布陣では、「円高対応緊急パッケ ージーのような不条理な経済政策を引っ込め、円高そのものをタ 1 ゲットにした金融政策に転 の換することは絶望的だった。 日本からの報道や友人からの情報をもとに野田内閣の性質を一言で評せば、まさに不適材・ 尸の、適格内閣だっオ。 昨今の日本にとって喫緊の課題は、円高とデフレを克服し、東日本大震災という国難を乗り 銀越えること。そのためには、経済に明るく、日銀や財務省のいいなりにならない内閣をつくら なければならない ところが野田内閣は、首相からして完全に財務省の操り人形と化していた。蚯訂・百柧気箜 ーの出身。 ( 政府の無駄を省くことにより ) ( 税ロ家論 T ・を昌・えだ箜を之明氏が・ら畆發、 きっきん

2. アメリカは日本経済の復活を知っている

経団連や同友会はなぜ黙っているのか 円高で苦しんでいる企業、またその結果の株安で苦しんでいる証券会社などは、なぜま本 済団体連合会や経済同友会などを通じて政府に注文をつけなかったのだろうか 一つには、政権が自民党から民主党に替わったため、どうやって財界の意向を政策に反映さ せたらいいかか分からなかったのかもしれない。それがいいことかどうかはともかく、自民党 政権時代、経団連や同友会の意見は、ある程度のバランスをもってスムーズに政治に反映され た。だが民主党政権では、どうやって良いか分からなかった。あるいは経済界に、「国民経済 のことを考えよう」という気風が薄れてきたのかもしれない。しかし端的にいって、財界も不 勉強かっ無知だったということに尽きる。 高橋洋一氏はこう語る。 「私の印象としては、現在の経営トップは、ある年代以上の方々なんですよね。その人たちの 体験というのは、基本的には、一九九〇年よりも前の世界なんです」 「一九九〇年より前の世界」→ , とは、亦動相場制が完璧ではオく金利の自由化が行われていな い時イのことた。当時の経済政策としては、財政政策しかなかった。そのために、財政しか頭 にないのたとい、つ また一九九〇年代以降は、有効なマクロ経済政策がほとんどとられていない。だから、金融 12 2

3. アメリカは日本経済の復活を知っている

アメリカは日本経済の 復活を知っている 復ア アリ 9 7 8 4 0 6 2 1 8 1 5 1 8 1 9 2 0 0 9 5 0 1 6 0 0 9 旧 BN978-4-06-218151-8 い本 C0095 ¥ 1600E ( 0 ) る経 講談社 定価 . 本体 1600 円 ( 税別 ) イエール大学名誉教授 浜田宏一 序章教え子、日銀総裁への公開書簡 第一章経済学ニ〇〇年の常識を無視する国 第ニ章日銀と財務省のための経済政策 第三章天才経済学者たちか語る日本経済 第四章それでも経済学は日本を救う 第五章ニ〇一ニ年ニ月一四日の衝撃 第六章増税前に絶対必要な政策 第七章「官報複合倥の罠 終章日本はいますぐ復活する 浜田宏一はまだ・こういち 亠 : 一九三六年、東京都に生まれるイエール大学名誉 教授東京大学名誉教授経済学博士。国際金融 に対するゲーム理論の応用で世界的な業績をあげ る日本のバブル崩壊後の経済停滞については金 融政策の失策がその大きな要因と主張、日本銀行 の金融政策を批判する一九五四年、東京大学法学 部に入学し、一九五七年、司法試験第ニ次試験合格一九五八年、東京大学経済学部に 入学一九六五年、経済学博士取得 ( イエール大学 ) 。一九六九年、東京大学経済学部助教 授一九八一年、東京大学経済学部教授一九八六年、イエール大学経済学部教授ニ〇 0 一 年からは、内閣府経済社会総合研究所長を務める。法と経済学会の初代会長 著書には、『経済成長と国際資本移動ーー資本自由化の経済学』 ( 東洋経済新報社 ) 、 モダン・エコノミックス ( 朽 ) 国際金融』 ( 岩波書店 ) 、『エール大学の書斎からーー経済学 者の日米体験比較』 ( 出版 ) などがあるまた共著には、『金融政策と銀行行動 伝説の教授に学べー本当の経済学がわかる本』 ( 以上、東洋経済新報社 ) などがある 浜田宏一 イエール大学名誉教授談 冓火火土 一三ロ = = ロネ

4. アメリカは日本経済の復活を知っている

その堺屋氏は通商産業省の出身で、『油断 ! 』 ( 日本経済新聞社 ) をはじめとする多くのベス トセラーで知られる。金融論が専門ではないが、経済企画庁長官時代は、金融政策の大事な節 目のときに日本銀行の無謀な緊縮政策に反対して、日本経済のデフレ、円高に歯止めをかけよ うと努ガし、ている。当然、日銀総裁候補の一人である。 実際に経済社会総合研究所所長に赴任したのは二〇〇一年の初めであった。そのとき、担当 ーもり・よしろ、つ ぬかがふくしろう 大臣は額賀輻志郎大臣だった。一月の松の内の顔合わせで、森喜朗首相に、「あなたの大学は エールというのですか、イエールというのですか」とたすねられたのはほほえましかった。本 書に書いたようなことを額賀大臣にもして、金融政策の重要性を訴えたこともある。大臣はし つかりと聞いてくれたが、こういう意見を返されてもいる。 策 政 「浜田さん、学者としては『それが正しい』で良いが、政治家は、そしてあなたのような政策 要アドバイサーは、それがどうしたら実現できるかを考えなくては 必 対厳しくもありがたい助言であった。 あそうたろう その後すぐに、担当が麻生太郎大臣に代わった。麻生大臣は、ご自身が経営者でもあったた 税め、またプレインに金融ではなく財政による景気振興を勧める人がいたらしく、「君のいうこ 也面、歯切れのよい江戸 とは聞かなくても、私は経済が分かっている」という風情であった。イ 章 っ子風で、人懐っこい好感の持てる人柄であった。 第 ところが、また数カ月すると、今度は森内閣が小泉純一郎内閣に代わって、担当大臣は竹中 ふせい 209

5. アメリカは日本経済の復活を知っている

これになぜ驚いたかというと、まったく円高対策になっていないからである。 円高の原因や、それに対応する政策手段について、大臣はもとより官僚も、国際金融論の初 歩的な知識すら持っていないに違いないと感じられた。 さらに数日後、日本の友人から知らされた新内閣の顔ぶれにはもっと驚いた。そのパッケー ジをつくった大臣、すなわち野田佳彦氏が、こともあろうに首相となり、後任の財務大臣に しろうとーーー、あ。 - ずみじゅん - 国は、経歴から見て財政とは無縁な素人、安住淳氏が就任したからだ。 す 「いままでと同じく、今後も財務官僚の案をオウム返しに述べますーと宣言したようなもので 視 無ある。長年にわたる誤った金融・財政政策によって冷え込んだ日本経済を再建するために、こ 識の内閣がいかに「不適材不適所」であるかはいうまでもない 常 の ここでは野田氏や安住氏にも理解してもらえるよう、円高問題の基本を説明しよう。そうす 年 〇れば、「円高対応緊急パッケ 1 ジ」がどうして円高対策にならなかったかを理解していただけ 一一ると田 5 、つ。 済 そもそも為替レートとは、一国の通貨 ( たとえば円 ) と他国の通貨 ( たとえば米ドル ) との 経 交換比率である。もし、財の市場を考えて、リンゴがミカンに対して割高になるとしたら、そ 章 一れはリンゴの供給が少ないからか、リンゴの需要が増えたからである。通貨市場でも同様で、 たとえば円高が生ずるのは、円資産に対する需要が供給を上回っ・ているからた。 4

6. アメリカは日本経済の復活を知っている

は、日銀の金融政策、その無策ぶりが、円高を招いて日本の生産を激減させたことを示すグラ フ。アメリカの有名経済学者に見せると、ひと目で私の意図が分かってもらえる重要なものだ った。ノードハウス教授も、ショルゲンソン教授も、かって共和党の大統領諮問委員長だった フェルドスタイン教授も、このグラフを見ただけで私の質問の本質を理解してくれた。 経済紙には三つのグラフのうち、なんとか二つは頼み込んで掲載してもらったのだが、今度 はまた別の問題が持ち上がった。 本書にも書いた、「震災からの復興を目指す時期に増税するのは、病気の子どもに荷物を持 たせ、病気が治ったら荷物を下ろしていいというようなものーという表現が、紙面から消えて しまったのだ。二度目の記事では掲載されたが、「やはり新聞は日銀の味方なのかーと勘ぐら ずにはいられなかった。 また、新聞社系の某総合誌は、「政府の円高総合対策はまったく対策になっておらす、国民 の税金を使って日本空洞化を助けるものだ」と書いところ、その意図をよく理解してくれた。 野田内閣を批判するキャッチフレ 1 ズを、いくつか教えてくれたほどだ。 しかし、「新聞や雑誌の売れ行きが落ちているのも政府のデフレ政策によるものなのに、ど うして各紙とも日銀のデフレ政策を擁護するのだろう」という言葉は、最後の校正ゲラまで残 っていたが、 発行された誌面からは消えていた。 もちろんこれらは、担当編集者だけの責任ではなく、デスクや編集長の意向もあるのだろう 238

7. アメリカは日本経済の復活を知っている

高橋洋一氏は、プリンストン大学留学中に何度もそう聞かされたという。「プアには貧し いというだけでなく、下手だという意味も込められている。 とりわけ非難の声が多かったのは、二〇〇〇年八月のゼロ金利政策の解除だ。ポール・クル ーグマン教授にいたっては、ヨーロッパから高橋氏に「これは失敗する」と、わざわざメール してきたとい、つ 日銀のデフレ対策は、世界の心ある経済学者の笑いものになってしまったということ 日銀がマネ 1 を増やしてデフレを解消し、緩やかなインフレ状態にもっていかない限り、日 衝本経済は復活しない。それをすることなくゼロ金利を解除してはいけない。それが、海外の学 日者たちの統一した意見だったのである。その見方が正しかったことは、その後の日本経済が証 明してしまった。 月 日銀が適切な金融政策を行っていれば、おそらく二パ 1 セント程度の緩やかなインフレにな 年 っていただろう。そうしてデフレを脱却していれば、実質成長率も二パーセント上乗せされて 〇 財政再建に大きく貢献していたはずで いた。そのことによる税収増は、なんと三一兆円 ある。 章 五 しかし、日銀には極端なまでにインフレを嫌、つ、いや恐れるがある : 第 171

8. アメリカは日本経済の復活を知っている

学の講義を補講にまでして帰国するのは時間の無駄かもしれないーと、日本に着いたらトンボ かって教わったジェームズ・トービン、フ 返りでアメリカに引き返そうかとも考えた。だが、 ランコ・モディリア 1 ニ ( ともにノーベル経済学賞受賞者 ) といった先生たちの顔を思い浮か べると、そうもいっていられないと感じたのである こうした私の師たちは、若い学者が、いわゆる実物的景気循環論にかぶれ、自分たちの考え 方を古いというようになっても、自分が正しいと思ったことを一生懸命に訴え続けた。自分が 一生かけて獲得した知恵と学問に対して、真面目で真剣だったといえるだろう。それこそが学 す者の役割なのだ。 そしてリ 1 マン・ショックを経たあと、現実を説明できず政策の役に立たない流行理論 ( た 識とえば実物的景気循環論 ) に、なぜこれら先生方が批判的であったかが納得できるのである。 常 のトービンは、金融緩和が実体経済には効かないという同理論の非現実性を、一四行詩 ( ソネッ 〇ト ) までつくって風刺している のだよしひこ 以下で紹介する政策も菅内閣時代のものだが、当時の財務の責任者は野田佳彦氏。つまり後 済の総理大臣である。野田内閣でも、やはりまったく経済の論理に反する政策が続けられた。 日本政府の空洞化促進政策 二〇一一年、夏休みから研究室に戻ってみると、その日イエ 1 ル大学で二五年の永年勤続を

9. アメリカは日本経済の復活を知っている

政策が効くということが経営トップにも理解できない。 「要するに、固定相場制の時代の頭だけで、政治家もマスコミも経営者も考えていると、私は 思いますね こう高橋氏は続けるが、残念なことに、学者やエコノミストも、マクロ経済における貨幣の 役割を理解していない。 為替介入で生じる財務省の利権とは 済 経 日本銀行の世論操作がうまくいっているのだろうか、学者の方々も、日銀の責任を追及しな 本 日 い人か多い。 る 語 AJ い、つ一」 だが、その結論は、「物価が金融政策に即に反応するから実物経済か動かない 、刀 ち とになる。アメリカで博士号を取って帰ってきた実物経済の分析ではすぐれた論文を書く学者 者ですら、「貨幣は生産や雇用や過剰設備には効かないーと主張する。それでも、あなた方の論 学 済文が前提とするように物価には効くはずだが、とたすねると、「だから私は将来、超インフレ 才になるのを心配しています」と、まったく論拠のない日銀の言い訳と同じことをいう。国際的 にも有望だと思われる学者がこういう状態なのは末恐ろしい。 章 現在のようなデフレの状態から物価が上昇する段階に達するためには、どこかで物価が安定 第 する状態を経由しなければならない。「マ 1 シャルの」で知られるアルフレッド・マーシャ 123

10. アメリカは日本経済の復活を知っている

た」と驚いていた 一方の民主党は、失業や不況を和らげるために金融政策を活用しようとしている。しかしど ちらも、経済学の原則である「貨幣刺激が物価や為替に効くーという経済の大本を理解したう えで、が金融緩和を行うべきかどうかを論じているのだ。 ところが、日本の「朝日新聞」「読売新聞」「日本経済新聞」といった主要紙は、ギリシャ危 機などを前面に出すが、為替の重要な決定要因である各国の金融政策は書こうとしない ュ 1 ロの危機は、たしかに為替に影響する。だが、日本だけではどうすることもできない ところが日本国内の金融政策は、日銀がその気になれば ( バレンタインデ 1 の政策変更で見た とおり ) 、その日のうちに効くのだ。 アメリカと日本の記者や論説委員たちの経済原則理解の水準には、月とスッホンの差がある のた 若者にインセンティブを与えなかった結果 過去の日本経済、特にそのの経緯を見れば、成長の花形だった日本経済がおかしくな っていることは間違いないと諸外国は見ている。金融政策が必要なことは、彼らにとっては常 識だ。日銀が金融政策に対してこんなにも及び腰だなどとは、海外からすると信じらないこ とだろ、つ。 128