白いうまはいさましくいななき、ひづめを うちならしました。 ゆき 「さあ、ぐずぐずしてはいけません。また雪 がふりださないうちに、ふたりとも、わたし こたろう たっ のせなかにおのりなさい。まえに龍の子太郎 は、ふたりなんてのれやしないとばかにした にん けど、もうだいじようぶ、りつばな一人まえ になりました。さあ、あの山のむこうがみず うみです。いきましよう、みずうみへ。」 ゆき ふたりをのせて、白いうまはかるがるととびたちました。そして、まっ白に雪をかぶつ たのこぎりのような山をふわりととびこすと、もうはるか下に、五色にかがやく、ひろび ろとしたみずうみが見えてきました。 しき 153
やまやま 山々ははげしくゆれうごき、み るみるあたりはくらくなったかとお もうと、たきのような雨が、ざあっ とふってきました。 「やれまあ、山へいったしゅうはどう したかよ。たつはただのからだでないに、 ぶじかよう。」 ばあさまはおろおろしながら、たったりす わったりしておりましたが、やがて、ひとと きあまりもふりつづいた大雨は、ふりだしたと きとおなじように、びたりとやみました。 .2 ゝを 26
42. い わいい小うま。」 ( ふたりが小うまをひいておもてにでる みち と、道はまだ上へつづいています。 「この上にあるのはなにかな。」 といいしい、のぼっていったふたりは、おもわず ごえ さけび声をあげました。 「まあ、なんてきれいなぬま ! 」 あお 岩のあいだに、きよらかにたたえられたぬまは、しいんと青 くすきとおり、きらきらとかがやいていました。そしてそこ せんきやく には先客がありました。さっきのじいさまがうでをくみ、じっ とぬまのおもてを見つめていたのです。じいさまはふたりを見 ると、はればれとほほえみました。 きんぎんたま 「金も銀も玉も、のう、とうといもんじゃが、わしらひやくしょ こ
「あや、きのうの夜はなしたように、おら、おかあさんをさがしにいかなくっちゃなん ね。だから、ひとりで村へかえっておくれ。」 たっ こたろう 「いいえ、龍の子太郎。このうまは一日に百里 ( 四百キロ ) はしるう まですもの、ふたりでこのうまにのって、おかあさんをさがし ましょ一つ。」 くろ 、 ~ 「なにい 0 ている 0 て、さ 0 き黒おにのところで、ぶるぶるふる おんな 、えてたのはだれだっけな。だめだめ、女や子どものいくところじゃ ないよ。だいいち、こんなちっこい小うまにふたりなんてのれやし ま、ト なあ、小うま。しつかりあやをおくりとどけておくれ。」 たっ 小うまは、ちっこい小うまとばかにされたので、ふくれてよこをむいていましたが、龍 こたろう の子太郎にやさしくはなづらをなでられると気をなおし、カッカッと足ぶみをしていなな きました。 こ よる むら こ こ 107
「あ、あらなんだ。」 人っ子ひとりいないとおもっていた、あれはてたこの山の、どこからきこえてくるの ごえ か : : : ふしぎなおはやしとうた声でした。 こえ 「おまつりかしら、でも、それにしては、なんてきみのわるい声かしら、まるで、じごく のそこからきこえてくるような : : : 。」 あやは、ぞくっと身ぶるいしました。 「んだ、まるで、地のそこへひきいれられそうな声だ、あや、いってみよう。」 「ええ、いってみましよう。」 ふたりは定りだしました。白いほね、はい色のほね、雨にさらされたされこうべのちら みち くろいわやま ばっている黒い岩山を、ぐるぐるまわりぬけ、きりたった岩のかべのほそい道をつたい、 こえ いっさんにくだっていくと、あやが、いきなり声をあげました。 ぎようれつ たにま 「あ、ごらんなさい。むこうの谷間を、あんな行列が : みちみ おおいわおおいわ ふたりは大岩と大岩のすきまによじのぼって、はるか下の道を見おろしました。白衣の こえ 5 8
「そうか、じいさまとふたりか、おとう さんもおかあさんもいないんか、なら、 おらとおんなじだ : : : 。」 たっこたろう この日から、龍の子太郎とあ やはすっかりなかがよく なって、まいにち山へよ , りあっては、ふえをふ いたり、けものたち ~ ・・ . 斌第 . とすもうをとった りしてあそぶように なりました。 ほんとうに、けものた
ら、おどる。」 ごえ たっ こたろう 龍の子太郎は、うれしさに手をたたき、足ぶみし、どら声をはりあげておどりました。 でんでらでんのでんでらでん いわ でんでらでんのでつかいおにの岩は かぜ 二百十日のそれ風よけだ うたって、おどって、ふえをふいて、くたびれたふたりが、はあはあいいながら足をな おと かぜ げだしたときでした。はるかとおくから、風にのって、ふえやたいこの音、そして、ふし ごえ ぎなうた声が、かすかにひびいてきました。 ごえ ふしぎなうた声 とおか 8
いわ そうれ、どうじゃ ! 」 「そうれ、この岩をぐるうっと、ぐるうっとまわって : ごえ たっ こたろう みるみるひらけた山の下のけしきに、龍の子太郎とあやは、おもわずさけび声をあげま した。 ふたりの足もとには、はるかむこうにかすんでいる山すそまで、見わたすかぎりの田ん ひか ぼが、あおあおとつづいていました。そのあいだには、おびのようにくねくねと川が光っ てながれ、あちらにひとかたまり、こちらにひとかたまり、まめつぶほどにも家がならん でいます。 「まんず、なんたらひろい土地だ : : : 。」 たっ こたろう けわしい山の中にそだって、生まれてはじめてこんなひろい土地を見る龍の子太郎とあ やは、ただそれだけしかいうことができませんでした : 大きなむすびが八十八 とち とち み み 8
「なに、どっちでもたいしたちがいはないだ。お、 ' らの家へきてはたらいてくろ。」 「そういうばあさまは、どこのお人だね。なんで そんなにさわいでるんだ。」 「なんでさわいでるって、まあ、見てくろよ、こ くさ の田んぼを。草ぼうぼうでねえかよ。 ちょうじゃ おらの家はな、にわとり長者といってな、このあたりきっての大長者さまだに。だも げなんげじよ の、ついこのあいだまでは、下男下女あわせて三百六十五人もおったでよう。そうして朝 から晩まで、とっととっとと、はたらいていたもんだが、なんとしたもんだべ、ひとりに げ、ふたりにげ、いまじやひとりもいなくなってしまっただに。おかげでこのとおり、田 くさ んぼって田んぼには草がぼうぼうで、田うえもできね。あいなあ。」 こえ ばあさまはそこで、声をあげてなきだしました。 「あいなあ、まるで金をすてるようなもんだぞい。おら、まいにちないているでよう。こ ばん かね にん おおちょうじゃ あさ 113
ぎようれつ ふしぎな行列が、しずしずと、むこうの谷間をまわり、くろがね山へむ か 0 てのぼ 0 てくるのです。そのすがたは、まだありほどにも小さく見耋幸 しらと 0 えましたが、白木のこしをかつぎ、ふえやたいこをならしながら、ひく こえ ぎようれつ い声でうたをうたい、まるで、じごくからさまよいでた行列のように、 のろのろとあるいてくるのでした。 たっ こたろう 龍の子太郎とあやは、だまってかおを見あわせましたが、また手をつ - , いわやま ぎようれつ ないで、けわしい岩山をとびこえ、すべりおり、行列のほうへ走ってい気 , きました。 ぎようれつ ふたりのすがたを見ると、行列はびったりたちどまりましたが、見る しらき まに、わあっと白木のこしをほうりなげ、くもの子をちらすように、 げだしてしまいました。 「おうい、おらたちはあやしいもんじゃないぞう、どうしたんだあ。」し一丘」一 ~ 第 ( 、」 たにま を " ・ゞにノ