リンカーンの 葬列車 はんにん こゝ 2 こ、」、つ。り小、つ アメリカ十六代大統領の、アプラハム・ リンカーンは、一八六五年 じゅうだん なんぼくせんそう の四月十四日、ピストルの銃弾にたおれた。南北戦争がおわってまも ばん ふじん ないころで、その晩、リンカーンは夫人といっしょに、ワシントンのフ げ・きじよ , っ オード劇場で、劇をみていたところだった。 よくあさ びよういん ーンカーンは、すぐに病院にはこはれたか、翌朝、息をひきとった。 なんぐん はいゅう 犯人は、南軍がまけたのをおもしろくなくおもっていた俳優だった。 そうそうれっしゃ やおいたようこ 八百板洋子 9 5
たしは、ドキッとして目がさめた 夫人は、それをきくと、なみだぐんだ。 ゅめ 「つかれているせいで、こんな夢をみたのだ。それだけのことだ。もう、 わすれよう」 丿ンカーンは、わらいながらそういって、夫人をなぐさめたのだが、 まさゆめ 正夢となってしまった。 あんさっ し十 ~ し 暗殺されたリンカーンの遺体は、とくべつの列車で、ワシントンから し しゅう ンカーンの死をおしんでかなしむ人びとが、 ィリノイ州にはこばれた。リ ぎようれつ えき れっしゃ それぞれの駅にたくさんやってきて、列車をとりかこむ行列ができた えき ていしゃ ぶん そうそうれっしゃ かくえき という。葬送列車は、各駅に八分すっ停車して、どの駅も、人びとのす ふじん ふじん れっしゃ 2 6
しゃ こえ すりなく声がひびいたそうだ。 それから数年たった四月の夜、ふしぎなことがおこった。ニューヨー ちゅうおうてつどうせんろ そうそうれっしゃ ク中央鉄道の線路に、どこからともなく、リ ンカーンの葬送列車があ えき れっしゃ なんぼくせんそう らわれ、駅のホームにすべりこんだのだ。そして、列車から、南北戦争 ぐんぶくみ のときの軍服を身にまとった兵士があらわれ、リンカーンのひつぎを列 車にはこびいれた。 すうねん よる れつ
ぶん 「それも八分。あの日、 リンカーン閣下が、わたしたちとのお別れのた ていしゃ じかん めに停車した八分と、びったりおなし時間しゃないか」 えき 駅にいた人びとは、ロぐちに、このふしぎなできごとをいいあった。 「こんなことって、あるのだろうか」と。 でも、この列車は、いまでも四月になると、すがたをあらわすことが いたし どれいかいほうしゃ あんさっ あるそうだ。偉大な、奴隷解放者であったリンカーンの暗殺は、おおく こえ の人にかなしまれ、リンカーンのすがたをみたという人びとの声は、さ とち まざまな土地でささやかれている。 れっしゃ ぶん かっか わか
こえ それをみていた人びとは、声をだすことも、身動きすることもできす、 こご、ばうっとたっているのかやっとだったという れっしゃ やがて、列車がひつぎをのせてホームをはなれ、それまでばうぜんと えきいん していた駅員たちも、はっと、われにかえった。 「いまのは、なんだろう」 だいと、つりよ、つ 「リンカーン大統領があらわれたー そうそうれっしゃ えき 気がつくと、駅の時計はとまっていて、葬送列車があらわれるまえと、 ぶん じこく えきいん どけい おなし時刻だった。あわてて、駅員がうで時計をみると、八分たってい 「列車がホームにいたあいだ、駅の時計は、とまったままだった」 れっしゃ えき みうご
れいかん ンカーンは、とても霊感がつよく、しはしば、こ 人びとの話では、リ じぶんあんさっ よげん れからおこることを予言していたそうだ。そして、じつは、自分が暗殺 ゅめ される夢もみていて、夫人にはなしていた。 それは、リ ンカーンがなくなる十日ほどまえのことだった。リンカ ふじん ンがかんがえごとをしているので、夫人が、 しんばい 「なにか、心配ごとでもあるのですか , ゅめ と、たすねると、その夢のことをはなしたそうだ。 「きみは、こんなことをしんしるだろうか ゅめ 夢の中で、たくさんの人びとかないていたのだよ。わたしはべッドか こえ らおりて、その声がどこからきこえてくるのか、さがした。すると、そ はなし ふじん
どれいかいほう だいとうりよう れている話です。リンカーンが奴隷解放をおこなったすぐれた大統領だったから、 れっしゃえき ぶんかんえき こういう話もうまれたのでしようが、ひつぎをのせた列車が駅にあらわれて八分間駅 はなしきようみ の時計がとまるというと「ろか、この話の興味ぶかいところです。 ほ、つじ 「法事は、やりなおし」は、ひ孫にしかみえないひいじいちゃんの話です。ひいしい せんそう じだい てらおしよう くうしゅうや ちゃんは戦争の時代を生きぬいたお寺の和尚さんで、空襲で焼けだされた人びとの ほうじせき せんそうじだい めんどうをよくみた人だったのです。やりなおされた法事の席で、人びとは戦争時代 おもで の思い出をかたります。 「とうさんの足」はイタリアの民話です。イタリアでは子どもたちを「わっ ! 」とお どろかす話として、よくしられています。欲ばりむすめのおどろきあわてたすがたを おもいうかべてください ぼうれい 」し力し ゅうしよう 「じゃ、 ーイ」は、囲碁のしようすな子どもの亡霊が、大会で優勝する話です。 はなし さんれんせい 囲碁をしらなくても、この話のおもしろさはわかるとおもいますが、「三連星」とか、 「ばくの石を、すぐきってくる」とか、「うってがえし。とか、囲碁をしっている人が はなし はなし はなし みんわ はなし はなし 1 4 〇
さいきん にかんじる最近の日本では、過去の話とはかりはいっていられません。「ぜったいふ りむくな」はそういう話です。 -6 ゝ ) ゝ しんびてき 物ほうれい まよなか ほうもんしゃ 「真夜中の訪問者」では、〃カッラみが亡霊の媒介になります。神秘的にあっかわれ かみけ じよせいおも ることも多い女性の髪の毛ですが、女性の思いかこもり、そのカッラが、ときにはう ・ほ , つれい らみをはらそうとして、亡霊をよびよせることもあるのかもしれません。 じ」く おきなわせんじようか おきなわせんはなし 「こっちおいで」は沖縄戦の話です。一九四五年六月、沖縄は戦場と化し、地獄を 9 せいねんぼうれい け . い、け . ん じっさい 実際に経験したのです。そのなかで、故郷の戦死した青年の亡霊にみちびかれたおか はなし いのち げで、命びろいした男の話です。こういう話は、みなさんもきっとどこかできくこと かあるでしよ、つ。 ぼうれい ふうふ によう・は、つく。ひ 「女房の首」は先妻が死んでまもなく後妻をもらった夫婦のところへ、先妻の亡霊 くび がでる話です。死体の首をきると、首だけになってついてまわるという、うらみのふ ぼうれいばなし かい亡霊話です。 そうそうれっしゃ 「リンカーンの葬送列車」は、アメリカの人びとのあいだで、まことしやかにかたら はなし おおじよせい したい せんさい はなし はなし し かこはなし こきよ、っせんし ′」さい せんさい
ま斌 k ・ 人 3t2 の 0 こえちか の声は地下の、ある部屋からもれて へやちゅうおう くる声だった。部屋の中央には、 ころも したしあんち 衣をまとった遺体が安置され、みん なで死をかなしんでいたんだ。 わたしのやしきで、いったいだれ がなくなったのだろうと、わたしは ふしぎにおもってたすねた。する じよせい と、はげしくないている女性が、こ ういったんだ。 だいと、つりよ、つ 丿ンカーン大統領ですとね。わ こえ へや
ェ 16 臥、すすま十土愛 ・ぜったいふりむくな / 松谷みよ子 つめたーい前菜のもりあわせ。たべると、いっしゅん気がとおくなります。 ほうもんしゃ まよなか ・真夜中の訪間者 / 小沢清子・ 東南アジアで大ブーム、うらみの激辛めん。頭がしめつけられるおいしさです。 ・こっちおいで / 藤かおる 沖縄産の塩で上海ガニを料理しました。長生きできる味です。 にようばう くび ・女房の首 / 吉沢和夫・ 5 月の節句限定、麦とあすきの特製がゆ。亡霊もおもわす手をだすほど / そうそうれっしゃ ・リンカーンの葬送列車 / 八百板洋子 よみがえった 19 世紀の味、フライドチキンは 8 分間でたべきってください。 ほうし ・法事は、やりなおし / 宮川ひろ・ お寺の精進ランチは大人気 2 回っつけてたべてもあきません。 ・とうさんの足 / 剣持弘子・ イタリアの家庭料理、骨つき肉のポモドーロ煮。わっとおどろくスパイスがきいています。 じゃ、バーイ / 森下真理・ ひとロサイズの白と黒のごまだんご。なみだのみつをたつぶりかけて / ・おいで、おいで / 斎藤君子・ あつあっロシア風おかゆにタマゴ焼き。坂をころげおちるおいしさ / ばぐるま ・乳母車の怪 / 望月新三郎・ イラク風トマトとキノコのソテーは、赤ちゃんの悲鳴がきこえます。 ・ふたりのケイト 高津美保子・ アルプス地方特産のハープティー、目もくらむかおりに気をつけて / ばうれい , ・デザートアメリカ人の亡霊 / 望月正子・ ぞうっ / として、アメリカンティストのポップコーン。 ・ 20 ・ 27 ・イ 8 ・ 59 ・ 67 ・ 76 力、し、 ・川 3