102 法学セミナー 2016 / 05 / 8736 LAW CLASS が開始された後の結果発生に至る因果の流れに関す る錯誤の問題に過ぎない」と述べて殺人罪の成立を 認めており ( 仙台高判平 15 ・ 7 ・ 8 刑集 58 巻 3 号 225 頁 ) 、 最高裁決定も原判決の判断を是認していることか ら、最高裁決定も因果関係の錯誤について法定的符 合説の立場から故意を阻却しないという考え方に立 っていると思われる。 [ 3 ] 【問題 2 】の結論 以上より、【問題 2 】の乙の罪責は、準備的行為 ( 第 1 行為 ) から死亡結果が発生したと仮定した場合は 殺人罪、構成要件該当行為 ( 第 2 行為 ) から死亡結 果が発生したと仮定した場合も殺人罪となるので、 いずれにせよ殺人罪 ( 199 条 ) が成立する。 また、乙は、甲、丙両名との共謀に基づいて殺人 行為を行ったものであるから、結局、甲、乙および 丙の 3 名に殺人罪の共同正犯 ( 60 条・ 199 条 ) が成立 する。 * 準備的行為 ( 第 1 行為 ) から死亡結果が発生したと仮 定した場合、準備的行為には殺人罪が成立する。これに対 し、現実に行った第 2 行為は、死亡している被害者を海中 に転落させたことになるので、殺人罪の不能犯の問題とな る。この場合、不能犯にはならないという結論をとると、 第 2 行為は殺人未遂罪となる。また、第 2 行為は殺人の故 意で客観的には死体遺棄を実現したことになり ( 抽象的事 実の錯誤 ) 、殺人罪と死体遺棄罪の構成要件は重なり合わ ないので故意犯は成立せず ( 第 7 講 94 頁 ) 、不可罰となる。 もっとも、殺人未遂罪は第 1 行為の殺人罪に包括して評価 されるので、乙の最終的な罪責は殺人罪となる。なお、乙 が現実に行った第 1 行為と第 2 行為を 1 個の行為とみるこ とはできない。なぜなら、第 1 行為は生命侵害に向けられ た行為であるのに対して、第 2 行為は死亡した被害者を海 中に転落させる行為であり、客観的には生命侵害に向けら れた行為ではないので、両行為に客観的な関連性が認めら れないからである。 5 早すぎた構成要件の実現の射程範囲 最後に、クロロホルム最高裁決定の考え方は、ど のような事案にまで及ぶかを検討しておこう。 [ 1 ] 準備的行為の物理的危険性の有無 クロロホルム事件は、準備的行為 ( 第 1 行為 ) 自 体が ( クロロホルムが多量であったため ) 科学的にみ れば生命侵害の物理的危険性が高かったという事案 であるが、準備的行為自体に既遂結果発生の物理的 可能性が全くなくても実行の着手を認めることは可 能である。なぜなら、判例実務において、実行の着 手は、客観的事情のみならず主観的事情をも考慮し て判断されるべきものであるから、行為者の犯行計 画上の第 1 行為と第 2 行為が一体のものといえれ ば、そのような計画を考慮することによって実行の 着手を肯定することが可能となるからである。 例えば、被害者を確実に眠らせることはできるが 死亡させる可能性が全くない睡眠薬を用いた場合で あっても、計画上の第 2 行為との一体性が認められ る限り、準備的行為を開始した時点で殺人罪の実行 の着手を肯定することができる。 [ 2 ] 第 2 行為の実行の有無 クロロホルム事件は、計画上の第 2 行為 ( 構成要 件該当行為 ) も現実に実行した事案であるが、第 2 行為が行われなくてもクロロホルム事件最高裁決定 の考え方に従って事案を処理すればよい。なぜなら、 早すぎた構成要件の実現は、準備的行為から既遂結 果が発生した点にその本質があり、計画したすべて の行為をやり切ったかどうかは関係がないからであ る。 【問題 3 】衝突後刺殺計画事件 甲は、統合失調症の影響による妄想から 0 自 らが一方的に好意を寄せていた V を殺害し自ら も死のうと考えた。甲は、 V がソフトボールの 経験を有すると聞いていたことなどから、身の こなしが速い V の動きを止めるために自動車を 衝突させて転倒させ、その上で包丁で刺すとの 計画を立てた。ある日の午後 6 時 20 分頃甲 は路上を歩いていた V を認め、 V に低速の自動 車を衝突させて転倒させた上で所携の包丁でそ の身体を突き刺して殺害するとの意図の下に、 歩行中の V の右斜め後方から甲運転の自動車前 部を時速約 20km で衝突させた。しかし、甲の 思惑と異なってぐ V は転倒することはなく、ポ ンネットに跳ね上げられて、後頭部をフロント ガラスに打ちつけた上、甲車両が停止した後、 路上に落下した。 V はその衝撃によって、加療 約 50 日間を要する頭部挫傷、右肩挫傷、右下 腿挫傷の傷害を負った。甲は、意外にも A がポ ンネットに跳ね上げられて、路上に落下し、立 ち上がろうとするその顔を見て、急に V を殺す ことはできないとの考えを生じ、犯行の継続を 中止した。甲の罪責を論じなさい。
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046 トスピーチの抑止に目的を限定した条例制定の桎梏とな るとはいえないであろう。もっとも、今後国の法令が整 備された場合は、条例との調整が必要となりうる。 21 ) 木村草太「公安条例の明確性一一徳島市公安条例事 件」長谷部恭男・石川健治・宍戸常寿編『憲法判例百選 I 〔第 6 版〕』 ( 有斐閣、 2013 年 ) 186 頁以下、 187 頁は、 「法律の趣旨・目的が不明確な場合には、その法律は、 合理的な条例を許容し、不合理な条例を排除する趣旨だ と解するのが合理的だろう」とする。 22 ) 大橋洋一「行政法 I 〔第 2 版〕』 ( 有斐閣、 2013 年 ) 307 頁以下。 23 ) 刑罰の方が威嚇・抑止効果が高い、手続に習熟して いない、発動の機会が増えると忙しくなるなどの地方公 共団体職員の意識があるともいわれる。北村喜宣『自治 力の発想パワーアップ分権時代の政策法務』 ( 信山社、 2001 年 ) 51 頁以下。 24 ) ヘイトスピーチの「歴史性」「非対称性」については、 本誌 726 号 ( 2015 年 ) の「特集ヘイトスピーチ / ヘイ トクライムーーー民族差別被害の防止と救済」所収の各論 考を参照。 25 ) 内田博文「刑事法および憲法と差別事件」法学セミ ナー 726 号 ( 2015 年 ) 44 頁以下、 47 頁。 26 ) 松本英昭「新版逐条地方自治法〔第 8 次改訂版〕』 ( 学陽書房、 2015 年 ) 502 頁。 27 ) 大橋洋一「現代行政の行為形式論』 ( 弘文堂、 1993 年 ) 369 頁。 28 ) とはいえ、全国的に様々なリソースの遍在が進行す るなかで、各地方公共団体が適切な人材や十分な予算を 確保できるかどうかも課題であろう。また、全国の市町 村に約 14 , 0 開人配置されている人権擁護委員との間の役 割の整理も必要となるだろう。 29 ) 師岡康子「ヘイトスピーチとは何か』 ( 岩波新書、 2013 年 ) 180 頁以下。 30 ) 東京弁護士会「地方公共団体に対して人種差別を目 的とする公共施設の利用許可申請に対する適切な措置を 講ずることを求める意見書」。 http: 〃 www.toben.or.jp/ message/ikensY0/post-412. html ( 最終アクセス 2016 年 3 月 22 日 ) 。 (1) 最判平成 7 ・ 3 ・ 7 ( 民集 49 巻 3 号 687 頁 ) 、最判平 成 8 ・ 3 ・ 15 ( 民集 50 巻 3 号 549 頁 ) 。 32 ) 大阪市人権施策推進審議会答申も、この点を危惧し て、「ヘイトスピーチが行われることが想定されること だけをもって、事前に公の施設の利用を拒否することは 極めて困難である」としている。また、座談会「表現の 自由」論究ジュリスト 14 号 ( 2015 年 ) 159 頁以下、 161 頁 〔曽我部真裕発言〕も参昭 33 ) 江橋崇「人権条例の広がった背景と、人権のまちづ くりとの結びつき」前掲注 2 ) 6 頁以下、 14 頁。もっと も、同稿は、地域の意向の積み上げがあったことも併せ て評価している。また、座談会「表現の自由」前掲注 32 ) 173 頁も参昭 34 ) 最近の例として、 2015 年 4 月施行の改正「地方教育 行政の組織及び運営に関する法律」により、教育長を首 長が議会同意を得て直接任命・罷免できるようになっ ( なかむら・ひでき ) 新・コンメンタ—J レ 新・コンメンタ•—J レ 憲法 木ド聟史・只野雅人 憲法とは 制定過程 CO NTENTS 木下智史・只野雅人 [ 編 ] 充実のコンメンタ—) レ。 丁寧に解説。学生から実務家まで活用できる、 関連法令、重要判例、学説を踏まえ、 日本国憲法の条文の趣旨を、 上諭 前文 第 1 章 第 2 章 第 3 章 第 4 章 第 5 章 第 6 章 第 7 章 第 8 章 第 9 章 天皇 戦争の放棄 国民の権利及び義務 国会 内閣 司法 財政 地方自治 改正 第 IO 章最高法規 第 1 1 章補則 ・本体 4500 円十税 / A5 判 / 5BN978-4-535-52147-6 [ 電子書籍 Kin 団 e 版もあります ] 〒 170-8474 東京都豊島区南大塚 3 ー 12 ー 4 TEL : 03-3987-8621 /FAX. 03-3987-8590 ( イ ) 日本言平目冊ネ土 こ注文は日本評論社サービスセンターへ TEL : 049-274-1780/FAX . 049-274-1788 http://www.nippyo ・ co ・ jp/
028 れらの手続法上の課題は実体法上のそれと車の両輪 の関係にあり、両者が揃ってはじめて立法論として の意味を持っ 22 ) [ 2 ] 被害救済における刑事司法の限界 以上の課題をクリアし、一定のヘイトスピーチに 明確に限定した刑事規制が可能となったとしても、 おそらくその構成要件に該当しない「より巧妙な」 ヘイトスピーチが生み出されていくことが予想され る。逮捕・起訴されたとしても、法廷がむしろへイ トスピーチのフォーラムとなり被害当事者をさらに 傷つける場面も危惧される。有罪が確定しても、ヘ イトスピーチによって破壊された地域社会との関係 性が回復するわけではない ( 前回特集山本論文参昭 ) そもそも刑事規制で補足可能な害悪では汲み尽せな い被害があるのではないだろうか。 ヘイトスピーチに対して刑事規制の必要性が説か れるとき、そこに期待されている効果に注意を払う 必要がある。ヘイトスピーチが人々に及ほす被害は 多様であり、その救済方法も様々である。ともかく も当該行為をやめさせる、行為者の反省や謝罪を促 す、差別が許されないことを法的に宣言して社会一 般の意識改革を図る、ヘイトスピーチの背後にある 差別や偏見を生む社会制度を是正する、さらにはマ イノリティの人々が安心して生活できる共生社会を 積極的に創造していく等々、一定の行為を頭ごなし に押さえつける消極的な方向から、よりよい共生社 会の実現を模索していく積極的な方向まで、多様な 被害に対応する様々な課題がある。 多様な被害のうち、刑事司法では、過去に行われ た特定の行為のみを犯罪と認定し、救済とはその害 悪 ( 悪質性の高い一部の行為 ) の応急的な抑止を意味 するにすぎない。そこでの害悪は、被害当事者に降 りかかる被害の一部でしかなく、事件後も連綿と続 いている日常性の喪失といった継続的な被害につい ては、刑事司法以外での実効性ある取り組みおよび 救済法制の整備が不可欠である ( 前回特集冨増論文 および内田論文参照 ) 。法の宣言的効果についても、 それが必ずしも「刑」法によって行われる必要はな く、むしろ各種虐待防止法や障害者差別解消法に見 られるように、刑罰を想定しない禁止規定によるほ うが禁止対象を広く設定できるという利点があり、 さらには行政に各種施策を行わせる根拠規定として 用いることも可能である 23 ) おわりに 従来へイトスピーチ規制については、主として刑 事規制が念頭に置かれていた。暗黙の前提になって いたといってもよい。そのため、刑事規制で対応可 能な部分を広げる見解や、刑事規制で対応できない ものについては市民社会の自浄作用にゆだねるとい った両極の主張が闘わされてきたように思われる。 今後は、 悪質性の高い行為への刑事規制は必要 としても一 - ーそもそも刑事司法では救済不可能な被 害があり、それに対する現在の法的整備が刑事規制 以上に不十分であることに目を向ける必要がある。 さくそくてきり 刑事司法の枠内に被害救済を押し込める削足適履に ならぬよう、被害実態を出発点とし、ヘイトスピー チを狭義 / 広義などに類型化し 24 ) 、それぞれの行為 と求められる効果に対応した実効性ある新たな救済 制度の在り方を正面から検討すべきであろう 25 ) 1 ) ヘイトスピーチの定義は論者により様々である。本 稿ではさしあたり「人種、国籍等の一定の属性に基づく 人間または人間集団に対する表現による攻撃」と広く捉 えておく。 2 ) 名誉毀損行為については、それが①公共の利害に関 する事実に係り、②公益目的からなされ、③真実性の証 明がなされたときは罰しないとする特例があるが ( 230 条の 2 ) 、近時のヘイトスピーチがこれらの要件を全て 充足する場合は希有であろう。 3 ) 金尚均「判批」新・判例解説 Watch10 号 ( 2012 年 ) 141 頁。 4 ) 東京地判平成 17 ・ 7 ・ 1 ( 判例集未登載 ) 。事件の詳 細については、浦本誉至史「連続大量差別はがき事件」 ( 解放出版社、 2011 年 ) 参照 5 ) 十字架焼却およびそれを「真の脅迫」として位置づ けるプラック判決については、小谷順子「米国における 表現の自由とヘイトスピーチ規制」法政論叢 40 巻 2 号 ( 2004 年 ) 149 頁以下など参照。 6 ) 強要罪の脅迫が問題となった事案であるが、宛名の ない落とし手紙に拾い主への放火内容をしたため、特定 の店の店頭などに置いた行為につき脅迫を認めたものが ある ( 大判昭和 16 ・ 2 ・ 27 刑集 20 巻 6 頁 ) 。 7 ) なお、一部の住民に対し共同で絶交するいわゆる村 八分の通告は、名誉に対する脅迫罪に該当する。これに ついて大阪高判昭和 32 ・ 9 ・ 13 ( 高刑集 10 巻 7 号 602 頁 ) は、「その地域における多数者が結東して、これを通告 することは、それらの者をその集団社会における共同生 活圏内から除外して孤立させ、それらの者のその圏内に おいて享有する、他人と交際することについての自由と これに伴う名誉とを阻害することの害悪を告知すること
応用刑法 I ー総論 097 なる。こうして、未遂犯の処罰根拠は法益侵害の具 体的危険性に求められるので、実行の着手時期も法 益侵害の具体的危険性が発生した時点と解すべきこ とになる ( 実質的客観説 ) 。法益侵害の具体的危険性 とは、既遂に至る客観的危険性を意味する。 判例も、強姦の意図で通行中の女性をダンプカー の運転席に引きずり込む暴行を加え、 5km 離れた地 点において運転席内で姦淫したという事案におい て、「被告人が同女をダンプカーの運転席に引きず り込もうとした段階において既に強姦に至る客観的 な危険性が明らかに認められるから、その時点にお いて強姦行為の着手があったと解するのが相当」で あると判示して、強姦罪の実行の着手を認めており、 既遂に至る客観的危険性に着目して実行の着手を判 断している ( 最決昭 45 ・ 7 ・ 28 刑集 24 巻 7 号 585 頁〔ダ ンプカー強姦事件〕 ) 。 《コラム》 判例学習の注意点 初学者の中には判例の「結論」だけを記憶し ようとする傾向がある。しかし、判例の結論は、 一定の「事案」を前提になされた判断であるこ とを忘れてはならない。ダンプカー強姦事件で は、犯人が複数であったこと、ダンプカーの運 転席が高い位置にあるため被害者が容易に脱出 することが困難であることなどの事情があった からこそ実行の着手が認められたのである。そ こで、判例は「強姦罪においては自動車内に引 : きずり込んだ時点で実行の着手がある」などと 一般化することは誤りである。強姦目的で自動三 : 車内に引きずりこもうとした事案でも実行の着 : 三手が否定された裁判例もある ( 大阪地判平 15 ・ 4 ・ 1 1 判タ 1 126 号 284 頁 ) 。ある判例を学習する際に は、どのような事実関係が前提とされているか をきちんと把握することが重要である。 もっとも、既遂に至る客観的危険性という実質的 観点からの判断のみによると、危険には相当の幅が あることから、判断者如何では処罰範囲が不当に拡 大するおそれもある。そこで、密接性の観点からす る形式的限定にも合理的な理由がある。そこで、判 例実務では、実行の着手の有無は密接性と危険性と いう双方を考慮し、ある行為が当該犯罪の構成要件 該当行為に密接な行為であり、かっ、その行為を開 始した時点で既に当該犯罪の既遂に至る客観的な危 険性があると評価できるときに実行の着手を認めて いる。 [ 2 ] 実行の着手の判断資料 実行の着手の有無を判断する際の判断資料の範囲 については、客観的事情に限定する見解 ( 客観説 ) 、 客観的事情に加え行為者の故意のみを判断資料とす る見解 ( 故意限定説 ) 、客観的事情に加え犯行計画を も判断資料とする見解 ( 計画説 ) が対立している。 この点、判例実務は、伝統的に、客観的事情のみ ならず主観的事情をも考慮するという立場をとって いる。このうち、下級審裁判例の中には計画説を採 用したものも少なくないが ( 例えば、名古屋地判昭 44 ・ 6 ・ 25 判時 589 号 95 頁など ) 、従来、最高裁判例で は計画説を正面から採用するものはなかった。とこ ろが、クロロホルム事件最高裁決定は、計画的 ( 段 階的 ) 犯行の事案にあっては、実行の着手の判断資 料として犯人の計画をも考慮すべきことを最高裁と してはじめて明確に示したものとして注目される。 判例が、実行の着手の有無の判断にあたって行為 の客観面のみならず行為者の主観的事情を考慮する のは、主観面により行為の危険性が異なるからであ る。ある行為のもつ危険性は、行為者がその行為の 次にどのような行為に出ようと考えているか ( 行為 意思 ) を考慮しなければ適切に評価することはでき ない。例えば、 X が拳銃の引き金に指をかけて銃ロ を A に向ける行為であっても、それが脅すつもりか 殺害するつもりかで人の生命に対する危険性は全く 異なるといえる。 また、行為者の計画内容如何によって行為のもっ 危険性が異なることもある。特に、計画的犯行にお いては、構成要件該当行為に至る前の段階で、構成 要件該当行為を確実かっ容易に行うための準備的行 為が行われることが多く、行為者の計画を考慮しな ければ、その準備的行為の危険性を適切に評価する ことはできない。複数の行為を行うという内容の犯 行計画は、複数の行為意思の組み合わせであるから、 行為意思が危険性の判断資料に入るのであるなら ば、このような犯行計画も当然判断資料に加えられ てしかるべきであろう。 計画説に対しては、犯行計画を考慮することによ り実行の着手時期が不当に早くなり妥当でないとい
応用刑法 I ー総論 095 早すぎた構成要件の実現という問題について、最 高裁判所としてはじめて判断を示したのがクロロホ ルム事件最高裁決定 ( 最決平 16 ・ 3 ・ 22 刑集 58 巻 3 号 187 頁 ) である。そこで、同判例をきちんと分析 して判例の考え方を正しく把握しておくことが極め て重要である。 【間題 2 】は、クロロホルム事件の事案を簡略化 したものである。早すぎた構成要件の実現の事例は、 実行の着手、因果関係、故意、因果関係の錯誤など の論点が複雑に絡み合っているため学習者にとって は難解であり、判例の考え方を正しく理解すること は必ずしも容易ではない。そこで、以下、この判例 に焦点を当て、早すぎた構成要件の実現の事例解決 の思考手順を丁寧にフォローすることにしよう。 丙は、夫 V を事故死にみせかけて殺害し生命 保険金を詐取しようと考え、甲に殺害の実行を 依頼し、甲は報酬欲しさからこれを引き受けた。 甲は、実行担当者乙と次のような犯行計画を立 てた。すなわち、乙の運転する自動車を V の運 転する自動車に衝突させ、示談交渉を装って V を乙の自動車に誘い込み、クロロホルムで V を 失神させた上で、 A 港まで運び、自動車ごと V を海中に転落させて溺死させるというものであ った。ある日、乙は、甲の指示に基づき上記計 画を実行に移し、乙車を V 車に追突させた上、 示談交渉を装って V を乙車の助手席に誘い入れ た。同日午後 9 時 30 分頃、乙は多量のクロロ ホルムを染み込ませてあるタオルを V の背後か らその鼻ロ部に押し当て、クロロホルムの吸引 を続けさせて V を昏倒させた ( 以下、この行為 を「第 1 行為」という ) 。その後、乙は、 V を約 2km 離れた A 港まで運んだが、甲を呼び寄せた 上で V を海中に転落させることとし、甲に電話 をかけてその旨伝えた。同日午後 1 1 時 30 分頃、 甲が到着したので、乙は、ぐったりとして動か ない V をあらかじめ A 港にまで運んでおいた V 車の運転席に運び入れた上、同車を岸壁から海 中に転落させて沈めた ( 以下、この行為を「第 2 行為」という ) 。 V は死亡したが、その死因は 溺水に基づく窒息であるか、そうでなければ、 クロロホルム摂取に基づく呼吸停止、心停止、 【間題 2 】クロロホルム事件 窒息、。ーショックまたは肺機能不全であるが、い ずれであるかは特定できなかった。 V は、第 2 行為の前の時点で、第 1 行為により死亡してい た可能性があった。なお、甲、乙は、第 1 行為 自体によって V が死亡する可能性を認識してい なかった。甲、乙および丙の罪責を論じなさい@ すなわち、「もし第 1 行為から死亡結果が発生し かない。 る。このような場合は「場合分け」をして考えるし 基づく窒息死であるか不明であったという点であ または肺機能不全であるか、第 2 行為による溺水に ム摂取に基づく呼吸停止、心停止、窒息、ショック 問題は、 V の死因が、第 1 行為によるクロロホル 討しなければならない。 実に実行した 2 つの行為は、原則どおり、別々に検 る場合の「例外的」処理にすぎない。そこで乙が現 の行為とみるのは、その必要性と合理性が認められ 別々に検討するのが「原則」である。両行為を 1 個 そもそも、 2 つの行為が存在する以上それらは 行為といえるか自体が自明ではないからである。 といえなければならないが、両行為とも殺人の実行 というためには、いずれの行為も殺人罪の実行行為 とはできない。なぜなら、両行為を 1 個の実行行為 行った第 2 行為を当然のように 1 個の行為とみるこ しかし、乙が現実に行った第 1 行為と乙が現実に ものであるという誤解が生じやすい。 為 ) を 1 個の行為とみて殺人罪の成立を肯定したと ルム吸引行為 ) と現実に行った第 2 行為 ( 海中転落行 ら、判例は、乙が現実に行った第 1 行為 ( クロロホ て、その目的を遂げた」という判示がある。そこか と海中に転落させるという一連の殺人行為に着手し ロホルムを吸引させて V を失神させた上で自動車ご ところで、平成 16 年決定の中に、被告人は「クロ るか否かが問題となる。 199 条 ) が成立する。そこで、乙に殺人罪が成立す は共謀が認められるので殺人罪の共同正犯 ( 60 条・ 定する判例・通説の立場からは ) 、甲、乙および丙に に殺人罪 ( 199 条 ) が成立すれば、 ( 共謀共同正犯を肯 なっているが、 V 殺害の実行犯は乙であるから、乙 【間題 2 】では、甲、乙および丙の罪責が問題と 2 死因が特定できない事案の処理方法
2016 05-06 憲法 I ー基本権 A5 判予価 2200 円十税 978-4-535-52179-7 ( 4 月中旬刊 ) うらたいちろう ( 明治大学教授 ) 浦田一郎 / 著 ーー憲法的、批判的分析 集団的自衛権限定容認論 A5 判本体 3200 円十税 978-4-535-52060-8 ( 4 月中旬刊 ) ・ししどじようじ ( 東大 ) わたなべやすゆき ( 一橋大 ) ・くどうたつろう ( 中央大 ) ・まつもとかずひこ ( 阪大 ) 渡辺康行・工藤達朗・松本和彦・宍戸常寿 / 著 新刊案内 代の基本となるべき 1 冊。 体系書。判例とその理論を重視した、新しい時 「三段階審査」を基軸とする、初めての本格的な 認論について、憲法学から批判的に検討する。 議論での中心を占めた集団的自衛権の限定容 2015 年 9 月に成立したいわゆる安保関連法の 公立図書館の無料原則と公貸権制度 正規雇用間題などを中心に検討する。 方箋を提案すべきかを説く。労働時間法制、非 雇用の危機に対して、労働法学がどのような処 よび英米との比較法的な視点から緻密に検証。 る善管注意義務と忠実義務を、新旧の信託法お 信託制度における受託者の二大義務ともいえ たり、集大成を世に問う。 て、最新の論文を収録。研究者生活の節目にあ 著者の主要研究テーマであるドイツ法につい 利自由の視点から精緻に考察する。 作者の権利との調整の問題を、国民の知る権 公立図書館の利用の無料原則と図書資料の著 ※表示価格は本体価格です。別途消費税がかかリます。 A5 判予価 3800 円十税 978-4-535-52191-9 ( 5 月中旬刊 ) わだはじめ ( 名古屋大学大学院法学研究科教授 ) 和田肇 / 著 雇用の危機に抗して 労働法の復権 A5 判予価 6200 円十税 978-4-535-52152-0 ( 5 月中旬刊 ) はしたにそういち ( 大阪経済大学経営学部准教授 ) 橋谷聡ー / 著 受託者の善管注意義務・忠実義務の再構成 A5 判予価 9500 円十税 978-4-535-52177-3 ( 5 月中旬刊 ) ひろわたりせいご ( 専修大学法学部教授、東京大学名誉教授 ) 広渡清吾 / 著 ーーー歴史・現状・比較 ドイツ法研究 A5 判予価 5700 円十税 978-4-535-52146-9 ( 5 月中旬刊 ) いながきゅきこ ( 国際私法学会会員・著作権法学会会員 ) 稲垣行子 / 著
030 ヘイトスヒーチに対する 民事救済と憲法 特集 ヘイトスヒーチ ヘイトクライムⅡ - ーーー理論と政策の架橋 九州大学准教授 梶原健佑 京都朝鮮第一初級学校事件 者の刑事責任や行政による対応の可能性が第一義的 ヘイトスピーチの法的分析としては一般に、加害 小さくない。 法の評価が示され、賠償が認められたことの意味は ヘイトスピーチとされる発言に対して裁判所から違 算定に影響を及ほしているに過ぎない。さりとて、 あることは行為の悪質性を導く要素として賠償額の 名の下に不法行為が認定され、発言が人種差別的で 立を導いているのではなく、名誉毀損と業務妨害の は、ヘイトスピーチであることが即、不法行為の成 る目下のリーディングケースである。しかし判決で これがヘイトスピーチの法的責任 ( 民事 ) に関す 件」という ) 1 ) 。 棄却したため原告の勝訴が確定した ( 以下、「京都事 命じる判決を下し、大阪高裁・最高裁ともに上訴を 法行為の成立を認めて、被告に 1200 万円余の賠償を 起。 2013 年には京都地裁が名誉毀損と業務妨害の不 民族教育実施権が侵害されたなどとして訴訟を提 名誉および信用が毀損され、教育業務が妨害され、 学校を運営する学校法人・京都朝鮮学園は、自らの 模様が撮影されたビデオはネット上で公開された。 鮮半島に帰れ一」などの発言が繰り返され、活動の 鮮人を保健所で処分しろ」「ゴキプリ、ウジ虫、朝 立しません」「不逞な朝鮮人を日本から叩き出せ」「朝 がするもんなんですよ。人間と朝鮮人では約東は成 はありません」、 (b) 「約束というのはね、人間同士 は北朝鮮のスパイ養成機関」「朝鮮学校は、学校で そこでは、 (a) 「この学校の土地も不法占拠」「こ の前で在特会等による 3 回の示威活動が行われた。 2009 年から翌年にかけて、京都朝鮮第一初級学校 法学セミナー 2016 / 05 / no. 736 料 150 万円を認めた判決もある 4 。名誉毀損を根拠 博物館を運営する法人の名誉を毀損したとして慰謝 と演説をし、動画をネット上で公開した行為につき、 くんですよ。おまえら人間なのかほんとうに」など は穢多しかいない」「非人とは、人間じゃないと書 の幹部が水平社博物館前で「穢多博物館」「こここ 原告への名誉毀損が認められた。このほか、在特会 させることをいい、京都事件でも ( a ) の諸発言による 周知のように名誉毀損とは他人の社会的評価を低下 筆頭に挙げられるのは、やはり名誉毀損であろう 3 ヘイトスピーチによって成立する不法行為として 名誉毀損 る点は留意されてよいように思われる 2 ることなく被害者が裁判所の法的判断を直接求めう を付随的に期待できる点、公権力の判断を介在させ 予想される。しかし、損害賠償には行為抑止の効果 も金銭賠償を望んでいるわけではない、との反応が ろに対しては、ヘイトスピーチ被害者たちは必ずし 柄にも検討を及ほしてゆく。なお、本稿の狙うとこ 抵触せぬよう、意を用いておかなければならない事 認定、賠償の命令が、憲法による表現の自由保障と らに絞り込む。そのさい、裁判所による不法行為の を検討するのが常識的であろうから、検討対象をさ 格的利益を害することを理由とした不法行為の成立 行われる特殊な事案でない限りは、人格権ないし人 トスピーチが業務妨害などを同時に惹起する態様で 合わせ、現行法での対応可能性を探る。また、ヘイ 稿はヘイトスピーチと不法行為法との関係に照準を れら課題は本特集の別の論攷に委ねることとし、本 に考究されるべき課題と考えられているところ、
[ 特集員へイトスピーチ / ヘイトクライムⅡ ーー理論と政策の架橋 023 39 ) 駒村・前掲注 16 ) 71 ー 72 頁参照。 40 ) 曽我部・前掲注 1 ) 155 頁は規制対象をさらに限定し て、マイノリティ集住地域におけるもののみに絞り込も うとする。本稿で十分な検討ができないへイトスピーチ の保護法益の問題については、櫻庭総「名誉に対する罪 によるヘイト・スピーチ規制の可能性一一一ヘイト・スピ ーチの構造性を問うべき次元」金・前掲注 2 ) 所収参照。 なお、不快原理によるヘイトスピーチ制約の可能性を探 る試みとして、梶原健佑「ヘイトスピーチ・害悪・不快 原理」松井茂記・長谷部恭男・渡辺康行編「阪本昌成先 生古稀記念論文集自由の法理」 ( 成文堂、 2015 年 ) 735 頁参照 41 ) 曽我部・同上 153 頁参照。先行業績は枚挙に暇がない が、たとえば THE PRICE WE PAY: THE CASE AGAINST RACIST SPEECH, HATE PROPAGANDA, AND P()RNOGRAPHY (Laura Lederer & Richard Delgado eds. , 1995 ) 所収論 文や、 Journal of Social lssues の 58 巻 2 号 ( 2 開 2 ) 掲載 の各論文等参照。なお、萎縮効果も抽象的に主張するの ではなく、経験的に実証されなければならない。同上 156 頁参照。 42 ) 内野正幸の差別的表現規制立法の私案は「ことさら に侮辱する意図を」伴うことを要件としていた。内野・ 前掲注 1 ) 171 ー 172 頁参昭 43 ) See Frederick Schauer, U 〃 co ゆ / 切 g お / 勧 , 92 COLUM. L. REV. 1321 , 1322 , 1355 ( 1992 ) 44 ) 小谷・前掲注 2 ) 100 、 102 頁参照。 45 ) 日本は国際人権規約 ( B 規約 ) 20 条 2 項に留保や解 釈宣言を付していない。また、日本は人種差別撤廃条約 4 条 ( a ) ・ ( b ) を留保しているが、あくまでも「日本国憲法 の下における集会、結社及び表現の自由その他の権利の 保障と抵触しない」限りで、同条の義務を履行できない としているにすぎない。 46 ) 毛利透「ヘイトスピーチの法的規制について一一ァ メリカ・ドイツの比較法的考察」法学論叢 176 巻 2 ・ 3 号 ( 2014 年 ) 235 頁参昭 47 ) 木下・前掲注 (1) 127 頁、および市川・前掲注 11) 130 頁参昭 ( なす・ゆうじ ) 2015 年 7 月号 ( 726 号 ) [ 特集 ] ヘイトスピーチ / ヘイトクライム ーー民族差別被害の防止と救済 く目次 > I ヘイトスピーチ / ヘイトクライム被害の歴 史性と非対称性 1 レイシズムの歴史性と制度性・・・板垣竜太 2 ヘイトスピーチ被害の非対称性 ・・鄭暎惠 Ⅱ李信恵さんのこと。裁判のこと。 ・・・上瀧浩子 Ⅲ京都朝鮮学校襲撃事件ー一心に傷、差別の 罪、その回復の歩み・・・朴貞任 Ⅳヘイトスピーチとヘイトクライムの法的議 論・・・金尚均 V 加害行為だけでなく、具体的被害実態に目 を向けるべき・・・冨増四季 Ⅵ Ⅶ Ⅷ Ⅸ 刑事法および憲法と差別事件・・・内田博文 ヘイトスピーチ / ヘイトクライムと修復 1 ヘイトクライムへの修復的アプローチを 考える・・・中村一成 2 裁判において問われなかった二つのポイ ント - ー - 地域社会と支援組織・・・山本崇記 包括的な人種差別撤廃制度の必要性 ・・・師岡康子 人権教育の現状と改善のための視点 ・・・吉田俊弘
法学の世界にようこそ ! 学習基本図書のご案内 憲法学教室 [ 第 3 版 ] 憲法 [ 第 5 版 ] 憲法 浦部法穂 / 著 辻村みよ子 / 著 人権を基底に据えた明快な記述で憲法を読み解 客観的な学説紹介、詳細な判例解説で、学生が く体系書として支持された全訂第 2 版を最新の 安心して学べると定評のある教科書が、新判例 イ 立法、判例にも言及して 1 0 年ぶりに大改訂。 と従来の判例解説部分も強化して、改訂。 ■ A5 判 3 , 900 円 ■ A5 判 3 , 800 円 ~ 圭法 憲法講義 憲法 I ー基本権 渡辺康行・工藤達朗 本秀紀 / 著 " 講義 大隊内物を 松本和彦・宍戸常寿 / 著 本強を 「三段階審査」を基軸とする、初めての本格的な 条文・解釈・判例・学説を効率よく解説し、憲法 体系書。判例とその理論を重視した、新しい時 状況を客観的に捉え、歴史をふまえ現実に立ち 代の基本となるべき 1 冊。 向かうツールとしての憲法理論を追求する意欲 的な教科書。 ・ A5 判予価 3 , 200 円 ■ A5 判 3 , 800 円 新・判例ハンドブック 判例ナビゲーション 憲法 憲法 高橋和之 / 編 憲冫去 榎透・永山茂樹・三宅裕一郎 / 著 民法総則 河上正二・中舎寛樹 / 著 行政法 行政法 物権法 高橋滋・石井昇 / 編 松岡久和・山野目章夫 / 著 親族・相続 労働労働法 二宮周平・潮見佳男 / 編著 道幸哲也・小宮文人・本久洋一 / 編 商法総則・商行為法・手形法鳥山恭一・高田晴仁 / 編著 近時の重要な判例につき、コン / ヾクトな評釈と判例の傾 会社法 鳥山恭一・高田晴仁 / 編著 向、重要論点を確認する判例学習書。 コンパクトながら充実の解説。・各四六判物権法 : 1 , 300 円 / ほか : 1 , 400 円 ・各 A5 判 / 憲法 1 , 900 円 / 行政法 1 , 800 円 / 労働法 2 , 000 円 ~ 、憲法論点教室 憲法訴訟の現代的 一憲洸 一転回一 曽我部真裕・赤坂幸一 憲法的論証を求めて 新井誠・尾形健 / 編 三△占 WC 慣 駒村圭吾 / 著 シリース ⅱ冊′い、 「普段抱きがちだが教科書等に手掛かりがない疑 法学セミナーの好評連載がついに単行本化。憲法 宀「」 教洋 問」「答案でありがちな誤り」を解消する画期的な における論証のあり方を、平易に、そして深く説 く。法科大学院生はもちろん、学部生も必読。 学習参考書。憲法の学習をワンランク上のス テージに導く。 ■ A5 判 2200 円 ■ A5 判 3 , 000 円 憲法解釈論の応用と ダイアローグ行政法 【第 2 版】 憲法 行政法 展開 [ 第 2 版 ] 大貫裕之 / 著 解駅論の 大質裕之 - ・ 法セミ 応用と展開 積 WC 積 WC 5 宍戸常寿 / 著 シリース 宍戸常寿 学習者の誤解を芯からほぐし、憲法解釈論の深 「行政法事案解析の作法」の著者が行政法の基礎 い理解を得られる待望の書。人権、統治の各分 を説くダイアローグスタイルの解説書。入門か 野を網羅、総合演習で実践力を獲得する。 ら基礎、発展、復習まで、読み手の需要に応じて ■ A5 判 2 , 700 円 姿を変える一冊。 ■ A5 判 3 , 200 円 行政法解釈の基礎 本 基本行政法 [ 第 2 版 ] 中原茂樹 / 著 予政法 橋本博之 / 著 初学者がつますきやすい基本知識から、個別法 と事案への当てはめまで、法の全体像とともに 行政法解釈の基礎 確実に理解できる。設例・解説とも判例を重視。 「 5 つの思考方法」で個別行政法の解釈を学ぶ。 ーー「仕組みく 中原茂樹 2014 年の行審法・行手法改正を盛り込んだう 司法試験過去問を素材に、好評の「事例研究行政 解釈方法入門 え、さらに使いやすくして早くも改訂。 法』とコラホ。受験生・公務員に必す役に立つ一 , 、みー”引 - い丁物第 - ジ第ンア , プ 冊。筆者の教育成果を集大成。■ A5 判 2 , 700 円 ■ A5 判 3 , 400 円 ■表示価格は本体価格です。別途消費税がかかります。 新学期におくる法律学習基本図書 辻村みよ子 涌部憲法学待望の最新版 最所の法・倒 . 憲法払況まてを射程にすえ、 久物思慧 ! にかれた 憲法理論を結災させた珠トの体系書 NO image 4 月中旬刊 法セミ C 面朝は朝し ~ 入門から進化また習まて、 表み手の要に応してを変える一物 ! 行政法事第解折の物第の・による ま学セミナーの人気達載をを行本化 ! 法セミ シリース なえ第な第第を第三版行 圧第的支持を得た初版から 3 年 . 待望の改訂版 第 2 版 こを