063 今、なせロースクールで学ぶのか Extra Articles がら、公認会計士です。かなり珍しいケースかもし に、広い視野で今後の将来を考えていただけたらと れませんが、会計士もしながらバスケをする人もい 思います。 ます。弁護士という資格自体も非常に魅力的な資格 それでは、時間となりましたので、以上とさせて いただきます。本日はありがとうございました。 で、他にも何でもできるということも魅力かなと思 います。ですから、弁護士だから絶対に事務所に入 ( おじお・こうすけ、めんじよう・たつや、とつか・ ゆうすけ、しげまさ・たかし、ほり・かなえ ) らなければならないわけではないですし、企業に入 ることもできる、起業することもできるというよう ルへ ロクー ーーい 2016 行っ 法律家を目指しませんか ロみ ? レ ? てんなとらゑ ? - デ ・難しいイメージがあるけれど” どんな授業をしているの ? どれくらい勉強するの ? ・高いって聞くけれど・・ どれくらいお金がかかるの ? ・ロースクール出身の法律家ってどんな仕事をしているの ? 載判官を検察官ゞ、井護 声レみプし ・、仕事の魅力・大変さ、ホントのところを聞いてみよう。 載判官・検察官・弁護士と直接じっくり話せます。 あ各ロースクールのプースをのそいてみよう。 各ロ←スクールの学生・卒業生・教員と話せます。 全国各 開催予定 ! くご案内 > 「ロースクールへ行こう ! ! 2016 ☆列島縦断☆ロースクール説明会 & 懇談会」が、 2016 年 6 月 18 日 ( 土 ) 13 時 30 分から中央大学駿河台記念館で開催される東京会場を皮切りに全国各地で開催されます。詳細は法 科大学院協会ホームページ (http://lskyokai.jp) でご確認ください。 ・ 000 。 00 。 ~ , 第 2 部 主催 / 法科大学院協会共催 / 日本井護士連合会 ク京都会場 東京会場 ク北海道会場 大阪会場 ク広島会場 東北会場 ク名古屋会場 ク九州会場 etc. 予約は不要です。 当日は直接会場までお越しください ! ! 入場無料 ! 回・・法科大学院協会 http://lskyokai.jp/index.html
062 会社ならではのことだと思うのですが、就職した後 も含めて、人生何が起こるかわからないので、視野 を広くもつべきだと思います。 堀先ほどもありましたように、いま就職難だ就職 難だといわれていますが、私はいまの事務所の他に 1 つ内定をいただきまして、いまの事務所は地元と いうことで就職しました。みなさんの中に女性もた くさんいらっしゃいますが、特に女性は就職が困難 なんじゃないかと私は考えていたのですが、そんな ことは全然なくて、いまはむしろまだ女性の法曹人 口が少ないので、女性には却って有利な状況なので はないかと思います。社外取締役も女性へのニーズ がどんどん増えてきていますし、そういう意味でも 女性には有利な社会になっているのではないかと思 います。女性ですと、結婚もあるし、出産もあるし、 育児もあるしということで、いろいろなライフスタ イルがあると思いますが、資格をもっているという ことで、たとえばその事務所に合わなかったらまた 別の自分のライフスタイルに合った事務所を選択す ることもできますし、新卒採用よりも中途採用のほ うがすっと楽ということも聞きますので、そのあた りは全然心配しなくてよいだろうと思います。周り が男性なので、男性が却って優しくしてくれること もあるんじゃないかなと思います ( 笑 ) 。 小塩私は、大学の先輩の友人の弁護士の先生がい らっしやって、その先生もラグビーをされていて、 それこそ、ロースクールの志望理由書の書き方を教 えていただいたりしていました。その先生には、学 生時代頃からお食事に連れて行っていただいたり、 大変お世話になっていたのですが、その先生が今の 指導担当で、大変お世話になっております。ご迷惑 ばかりおかけしているということが現実ですが 。他にも、弊所の顧問の先生にも学生時代から 大変お世話になっており、さまざまな縁で入所させ ていただきました。ちなみに、その顧問の先生は、 当時、ロースクールの教授もしており、本当に偶然 ですが、私の入学試験の面接官でした。それでロー スクールも合格させていただいたわけです ( 笑 ) 。 ロースクールの受験時にはまったく想像できません でしたが、志望理由書を今の上司に指導していただ き、面接官は後に弊所の顧問になられる方にしてい ただいたということだったということです。なので、 私の場合、あまり参考にならないかもしれません ( 笑 ) 。ただ思うことは、人生どこでどうなるか本当 にわからないので、大学生の時から、ぜひ、弁護士 になるとか関係なく、その日々の出会いとかを大切 にすることが非常に重要ではないかと思います。就 職活動に活きるからとか、そのようなことはまった く気にすることなく、会いたい人がいれば会いに行 くというようなことでよいのではないかなと思いま す。 弁護士の仕事の魅力 小塩みなさんには検察官の仕事、裁判官の仕事が 大変魅力的に聞こえていると思いますので、弁護士 の仕事も魅力的だということを説明していただこう と思います。 毛受弁護士の仕事は、クライアントと裁判官、相 手方とを全部にらみながら主張を組み立てていかな くてはならず、そういったところが難しい反面、や りがいがある、そこらへんが魅力なんだと思います。 戸塚事件のことに悩んで眠れないという日もあり ますが、解決して依頼者に感謝されることには他に 代えがたい喜びがあります。自分で考えて自分の責 任で行動して、結果がダイレクトに返ってくるとい うところでは、やりがいもあるしワクワクするとい うことは多いです。あとは生活が結構自由になると いうのは楽しいです。 重政弁護士資格をとると、弁護士事務所や企業内 において弁護士として働くのみならず、私のように そもそも弁護士業務以外の分野でも、活躍できるフ ィールドがこれから広がっていくと、自分でそれを 切り開いていける魅力が弁護士資格を持っことには ついてくると、そういうことを知ってもらいたいと 思います。 堀やはり、組織というか法律事務所に属していて も、究極は、弁護士というのは個人事業主でとにか く自由だと思います。それによるやりがいも感じま すし、そういうところが魅力的だと思います。 小塩弁護士の魅力としては、さまざまな種類の業 務ができることや、興味ある仕事ができることが大 きいと思います。たとえば、バスケットボールの選 手会の会長で岡田さんという方からも様々なご助言 をいただいているのですが、その岡田さんは、現役 の日本のプロバスケットボールプレーヤーでありな
058 なせロースクレで学ぶのか ~ 手弁護士が語る法科大学院の魅力 弁護士 小塩康祐・毛受達哉・戸塚雄亮・重政孝・堀香苗 Extra rticles 法学セミナー 2016 / 05 / no. 736 ※本稿は、法科大学院協会主催「 2015 年今、なぜロース クールで学ぶのか☆列島縦断リレー☆法科大学院がわかる 会」 ( 2015 年 10 月 24 日・中央大学駿河台記念館 ) で行われ た座談会をもとに編集したものです。 小塩みなさんこんにちは。弁護士の小塩康祐と申 します。まずはじめに、登壇者それぞれから簡単に 自己紹介をして、その後、法科大学院の魅力につい て説明していきたいと思います。 私は、早稲田大学の政治経済学部経済学科を卒業 後、早稲田大学ロースクールの未修者コースを経て、 現在は TM I 総合法律事務所で弁護士として働いて います。主な業務としては、企業法務、訴訟、スポ ーツ関係の仕事をしております。 毛受弁護士の毛受達哉と申します。立教大学の法 学部政治学科を卒業して、 3 年ぐらい違う仕事をし ていましたが、 26 歳の時に中央大学ロースクールの 未修者コースに入り、現在は本間合同法律事務所に 勤務しています。業務としては、訴訟が多く、クラ イアントの種別でいうと企業が 7 割、個人が 3 割ほ どです。 戸塚弁護士の戸塚雄亮と申します。早稲田大学の 法学部を卒業後、早稲田大学ロースクールの未修者 コースに入り修了しました。現在は今村記念法律事 務所で勤務弁護士をしています。業務としては、 般民事、それから刑事、特殊なところとして外国人 の入管事件行政訴訟等をやっています。 重政弁護士の重政孝と申します。慶應義塾大学法 学部を卒業後、慶應義塾大学ロースクールを修了し まして、現在、 AOS リーガルテック株式会社とい う I T 企業で働いております。業務内容としまして は、後ほど詳しくご説明しますが、デジタルフォレ ンジックのコンサルティング業務を行っております。 堀弁護士の堀香苗と申します。私は、早稲田大学 法学部を卒業した後、慶應義塾大学一スクールの既 修者コースに通いました。現在は、 R & G 横浜法律 事務所で勤務弁護士をしております。扱う分野は、 企業法務が中心ですけれども、やはり横浜という土 地柄、一般民事や家事なども幅広く扱っております。 ロースクールで学んだことが 弁護士の仕事でどう活きるのか 小塩それではつぎに、弁護士といっても本当に多 種多様で、事務所によって業務内容も異なりますし、 民事事件・刑事事件というように事件によっても内 容は大きく異なると思います。さまざまな業務があ りますが、ロースクールで学んだことが現在の業務 にどのように活かされているのかということを説明 していただきたいと思います。 毛受そうですね、実際に弁護士になりますと、法 律を学び直す時間はそれほどとれません。クライア ントから聞いた事実をどのように組み立てるかを考 える、そういった実務的なところに割く時間が大き いので、ロースクールで学んだ知識は業務をするう えで必要不可欠なものとなっています。例えば今、 私は倒産法分野の否認権訴訟 ( 注 : 管財人による不 公平な弁済を是正するための手続 ) をやっているの ですが、それはロースクールで学んだ倒産法の知識 を使ってできていますので、そういった面で役立っ ています。 戸塚ロースクールには、研究者教員と実務家教員 とがおられます。司法試験に直結する判例べースの 規範を前提とした事案の分析ですとか、事実の評価 の仕方、そういったものの手ほどきを上手くやって
LAW JOURNAL 口一ジャーナル えん罪救済センターの始動 001 JOURNAL ロー・ジャーナル 法学セミナー 2016 / 05 / no. 736 冤罪を訴える事件の調査や弁護の支援を無償で行 う「えん罪救済センター」 1 が、 2016 年 4 月から立 命館大学を拠点として活動を開始する。いわゆる「イ ノセンス・プロジェクト」の日本版であり、国内で は初の取り組みとなる。 1 イノセンス・プロシェクトとは 「イノセンス・プロジェクト」とは、冤罪被害者 の救済を行うための調査・弁護活動を無報酬で行う 団体のことである 2 。 1992 年、ニューヨークのカー ドーゾ・ロースクールに第 1 号のイノセンス・プロ ジェクトが誕生した 3 ) 。四半世紀を経て、現在では アメリカだけで 60 以上のプロジェクトが存在する。 各州に、少なくともひとつのプロジェクトがある。 第 1 号のイノセンス・プロジェクトは、 DNA 鑑 定を行うことで無実が明らかになる事件 ( 一部の性 犯罪や殺人罪などが典型的な事件 ) のみを受任してい る 4 。そうしたことから、 DNA 鑑定を活用すること によって冤罪支援活動を行っている団体のイメージ が強いようである。たしかに初期に立ち上がったプ ロジェクトはそうだったが、活動が円熟期を迎えた 現在、 DNA 鑑定では冤罪を晴らすことができない 事件に支援対象を広げているプロジェクトも多く存 在する。代表的な例は、放火事件である。事件直後 の火災調査によって放火であると判断され有罪を受 けたが、元の火災調査自体が科学的に見て誤ってい たという場合である。アメリカでは火災の原因を科 学的に分析するという取組みが進んできた。そのこ とによって、以前の火災調査が、実は非科学的に行 われていたことが明らかになった。このような新た な知見が、放火事件の冤罪救済活動に結びついてい る。 なお、全てのプロジェクトに共通するのが、原則 として、「無実」を主張する者の事件 ( 犯罪性・犯人 性を争う事件 ) のみを受任するという点である。 イノセンス・プロジェクトの活動形態として日本 日本版イノセンス・プロジェクトの可能性 甲南大学教授 笹倉香奈 で良く知られているのは、ロースクールをベースに したプロジェクトのモデルである。クリニック科目 ( 臨床教育科目 ) のひとっとしてロースクールの中に 実務家教員によって開講される。学生はその講義を 履修することで冤罪被害者の弁護活動に参加する。 実際の事件の弁護活動を実務家とともに行うこと は、学生にとってまたとない実践的教育の機会とな る。無償の弁護活動であるから、社会にも貢献でき る。このような形態のほかにも、公設弁護人事務所 やその他の一般の弁護士事務所の中に設置されてい るプロジェクトや、 NPO として活動するプロジェ クトも存在する。 なお、アメリカでは州ごとに大きく法制度が異な り、弁護士は自身が登録している州においてのみ弁 護活動を行うことができる。そのような理由から、 「イノセンス・プロジェクト」という同じ名前がつ いていても、一つひとつのプロジェクトはそれぞれ 独立した団体であり、個別に活動を行っている。 2 イノセンス・フロシェクトの影響 アメリカでは、 DNA 鑑定によって冤罪を晴らさ れた事件は 337 件に上る ( 2016 年 3 月 25 日現在 ) 。 のうち 20 件は、死刑判決を言い渡されていた事件だ った。これらの事件の多くにイノセンス・プロジ ェクトが関わった。膨大な数の冤罪事件は、社会を 大きく揺るがせた。 1990 年代までのアメリカでは、 冤罪事件があるとの認識が一般的ではなかったので ある。このような状況の下、プロジェクトが DNA 鑑定を用いたことは、画期的だった。 DNA 鑑定は、 科学的に「完全な無実」を立証することのできる証 拠だからである。全く無実であることが明らかであ る人々が有罪を言い渡され、時には死刑を言い渡さ れていたという事実は、人々に衝撃を与えた。「無 実の人を処罰してはいけない」という命題には、ど のような立場の者も疑問を差し挟むことができな い。さらに、これらの事件を分析することによって、
201 [ 目 Contents 05 法学セミナー ( 4 ) 日本評論社 2016 年 5 月 1 日発行毎月 1 回 1 日発行通巻 736 号 19 聞 ( 昭和 31 ) 年 4 月 12 日第 3 種郵便認可 VOL61-05 特集 ] ヘイピー ヘイトクライムⅡ 理論と政策の架橋 ヘイトスピーチ規制消極説の再検討・ 現在の刑事司法とヘイトスピーチ ヘイトスヒーチに対する民事救済と憲法 ヘイトクライム規制の憲法上の争点・ 地方公共団体による ヘイトスヒーチへの取組みと課題 [ 座談会 ] 理論と政策の架橋に向けて 奈須祐治 櫻庭総 梶原健佑 ・桧垣伸次 ・中村英樹 ・梶原健佑・櫻庭総・中村英樹・奈須祐治・桧垣伸次 別企画 ] 今、なぜ ロースクールで 学ぶのか [ 座談会 ] 若手弁護士が語る法科大学院の魅力 ・・小塩康祐・毛受達哉・戸塚雄亮・重政孝・堀香苗 018 024 030 036 041 047 058
059 今、なぜロースクールで学ぶのか 下さる実務家教員の先生がロースクールでは人気が あったように思います。たしかに、試験対策とか実 務の基礎というところでそういった要素はありま す。ただ、今感じるのは、ロースクールの学生とい う勉強に集中できるときに、学者の先生から基礎理 論とか問題提起、それから最新の学説状況といった ものを深く掘り下げて学べたということは、実は実 毛 ! 務に出てから役に立っていると感じます。私の業務 のなかでは、行政の分野で特にそれを感じることが ありまして、行政訴訟で、理論面から判例を乗り越 者の方がいらっしやった場面を設定されていたりし える立論をしたりとか、あるいは法制上の問題を提 ており、そういう設例を多く解いたことは、今の実 起して立法に影響を与えようというときに、ロース 務でも役立っているといえます。 クールで学んだ基礎理論とか法の観念といったもの 小塩私は法学部出身ではないですが、おそらく法 の裏付けは非常に重要になると感じています。 学部の授業では、基本書を用いて、法の基礎を学ぶ 重政ロースクールに入りますと、未修者コースで ことが多いと思います。もしかすると、法学部の授 すと、 1 年目に法律の基礎理論を勉強したうえで、 業の内容が、実務に出てそのまま活きることはそれ 2 年目からは既修者コースと合流して主に問題演習 ほど多くないのかもしれません。もちろん、基礎的 が中心の講義となってきます。問題演習のなかにも、 な内容は非常に重要であることは間違いありませ 司法試験に直結する民事系、刑事系、あるいは公法 ん。学生のみなさんからすると、弁護士であれば何 系の講義というものがありますが、その他に、慶應 でも知っていると思われるかもしれませんが、まっ のロースクールではテーマ演習といいまして、直接 たくそんなことはありません。勉強したことがない 試験には関係ないのですが、実務に入って役に立つ 法律もたくさんありますし、見たこともない条例も と思われる各自が興味をもった内容について深く掘 多くあります。分からないことと出会った場合は、 り下げて勉強していこうという演習がありました。 その都度調べます。その際の調べ方とか、だいたい 私は、ウィーン売買条約に関する判決や仲裁判断を このような感じだろうなと予想ができることが、い 読むテーマ演習をとっておりまして、これは、ウイ まみなさんが勉強していることで一番重要になるこ ーン売買条約という国際条約に関する英文の判例や とではないかと思います。法学部やロースクールで、 仲裁判断例のデータベースから自分で選択した判決 司法試験と関係のない授業を疎かにすることなく、 や仲裁判断を日本語に翻訳した上で、それを週 1 回 しつかりと勉強することも、必ず仕事に活きてくる 集まって発表するというものでした。実務に就いて と思います。幅広い能力を身につける、考え方の素 しばらく私はインハウス業務をやっていたのですけ 地をつけるということが一番重要ではないかなと私 れども、その際に、英文の契約書や利用規約を翻訳 は思います。 してそれを日本語に直して日本語の業務に馴染ませ 幅広い弁護士の仕事の世界 るという仕事がありまして、この演習で英語の法律 や契約関係独特の言い回しに馴染んだことが役に立 ちました。 小塩それでは、実際に、どのような業務をしてる 堀実務上の相談事というのは、混沌としていて何 かというところを、もう少し掘り下げて説明してい が法的に問題なのかということがわからないのです きましよう。 毛受私の事務所では、訴訟が多いので、少なくと けど、ロースクールの勉強はソクラテス・メソッド といって双方向の授業が行われるので、問題の抽出、 も 2 日に 1 回くらいは裁判所に行って裁判をしま す。実際の裁判では、すぐに証人尋問をするわけで 何が法的な問題なのかということを重視した授業が はなく、お互いの弁護士が、主張を記載した書面を なされていました。また、設例についても先生方が 事前に裁判所に出して進めていくということになり とても工夫されていて、会話形式であったり、相談 Extra Articles ( 阜物当大学程よ
126 I 新時代の「情報法」、 B こに現る ! R A R 1 本書のタイトル、執筆者 3 名の名前、装丁そして 目次に目を通したとき、本書は「情報法」科目の決定 版の基本書になるであろうという「予感」があった。 本書を通読した今、その「予感」は「確信めいたもの」 へ変貌を遂げている。 私がロースクール生であった約 1 0 年前と異なり、今 では『情報法』や『インターネット法』の名を冠する 優れた概説書は他にもいくつかあるが、そうした洪水 のような出版状況の中で、本書が「オンリーワン」で ある理由とは何であろうか。本書「はしがき」では① 実務家を交えない大学研究者 3 名の共著であること、 ② 3 名という少人数の共著であるため叙述の統一性が ーキテクチャによる規制」、政府規制と自主規制の混 合による「共同規制」、情報媒介者を国家の代理人と して捉える「代理人による検閲」、民の手による「自 主規制」などの概念が積極的に提唱・活用されるよう になってきている。本書はこれらの各規制方式を巧み に統合すると共に、情報の発信者・受領者・媒介者と いうレイヤー別の区分を構想してレイヤーに応じた分 野横断的な規律を試みようとしており、まさに情報法 の新時代を感じさせる。 3 この特徴は、本書が取り扱っている法分野にも影 響しているように思われる。例えば、第 1 章・第 2 章 の情報法総論部分を執筆された曽我部真裕教授の執筆 部分以外でも、経済法・競争法の専門家である林秀弥 教授執筆部分の第 4 章「情報基盤をめぐる競争と規制」 確保されていること、③ 基礎的な内容のみならず 新しい論点までカバーす る工夫をしていること、 の 3 点の特徴が挙げられ ている。しかし、本書を 「オンリーワン」たらし めているのは、このよう な形式的な理由ではな 2 本書の最大の特徴 は、プラットフォーム事 業者等の情報媒介者の存 在を顕在化させ、法的規 R E V I E 情報法概説 W 『情報法概説』 曽我部真裕・林秀弥・栗田昌裕 = 著 弘文堂 / 2016 年 1 月 /A 5 判 / 本体 3300 円十税 ではプラットフォームの 視点から競争法が整理さ れている。著作権法の専 門家である栗田昌裕准教 授執筆部分の第 1 0 章「著 作権侵害」でも、凝縮さ れた著作権法の解説に加 えて、いわゆる書籍の「自 炊」問題や侵害主体の拡 張法理であるカラオケ法 理等の媒介者の役割が特 に問題になる点について 囲み解説で強調されてい る。一方で、従来、情報 律の可能性を探っている点に求められるのではなかろ うか。プラットフォームとは、インターネット上のポ ータルサイト、 SNS 、電子掲示板、動画共有サイト、 検索サービス等の民間事業者が運営するものを指す。 インターネットは国境がないという越境性や中央管理 組織をもたないという分散性を有しており、国家単位 の法的規制が機能しにくくなっている。このようなコ ントロール・ポイントとして国家の希薄化・消失とい う現代の情報化社会の課題を前にして、国家に代わり 存在感を示す民間の情報媒介者をいかに法的に捕捉し ていくか、ということが情報法の大きな関心事になっ ている。近年では、主に若手情報法学者を中心として、 国家による法的・直接的規制に並置・代替される規制 方式ーーー具体的には物理的な環境操作を通じた「ア 法の枠内で取り上げられることの多かったマスメディ アの報道・取材の自由等や公文書管理法・情報公開法 といった行政情報法については、民間の情報媒介者の 問題ではないためか、その扱いは小さい。 4 最後に、本書のもうーっの大きな特徴として、情 報法分野における最新事例が豊富に取り上げられてい ることも挙げられる。扱っている法律自体も改正速度 の速いものばかりであり、既に行政機関個人情報保護 法の大幅改正も控えている状況である。第 2 版、第 3 版へのアップデートに伴う執筆者らの辛苦 ( あるいは 喜び ? ) が直ちに想起されるが、やはり時宜に応じた 改訂が期待される。 おおしまよしのり 峅護士大島義則 ]
厳学者の本棚 ] 『「空気」の研究』のすすめ 山本七平『「空気」の研究』 [ ロー・ジャーカ切 えん罪救済センターの始動 日本版イノセンス・プロジェクトの可能性 産経新聞社前ソウル支局長無罪判決 ーー刑事実体法・刑事手続法の観点から [ ロー・アングレ ] わたしの仕事、法つながり [ ひろがる法律専門家の仕事編 ] 13 あるシンクタンクのお仕事ーーそして情報法の世界への道案内 恋の法廷式 2 彼女はセックスフレンドでした [ ロー・クラス ] 公共空間を考える一一技術者として法を語る 2 辺野古基地建設問題と法律事項・地方特別法住民投票 米軍基地という公共空間を憲法 92 条・ 95 条から考える プラスアルフアについて考える基本民法 14 抵当権と時効・その 2 ーーもう一歩先の類型的考察 債権法講義 [ 各論 2 序説 ( 2 ) ーー -- 債権各論の対象と具体的契約類型 株式会社法の基礎 10 取締役の報酬等ーー確定額の金銭報酬を中心に 捜査法の思考プロセス ( 基礎編 ) 刑事訴訟法の思考プロセス 2 肝心な価値は目に見えないーー電子マネーをめぐる諸問題 財産犯バトルロイヤル 17 早すぎた構成要件の実現 応用刑法 I ー総論 8 ・桑原俊 北尾トロ ・・木村草太 ・武川幸嗣 河上正ニ ・久保田安彦 ・大塚裕史 ・内田幸隆 ・斎藤司 角紀代恵 笹倉香奈 安部祥太 008 065 088 094 104 扉 001 004 010 072 078 1 1 0 [ 最新判例演習室 ] 憲法 / 麻生多聞 118 行政法 / 山下竜ー 119 民法 / 松尾弘 120 商法 / 土岐孝宏 121 民事訴訟法 / 上田竹志 122 刑法 / 本田稔 123 刑事訴訟法 / 髙倉新喜 124 労働法 / 根本到 125 ライプラリ—] ブック・レビュー 曽我部真裕・林秀弥・栗田昌裕 = 著 『情報法概説』 大島義則 126 新刊ガイド 127 [ ロー・フォーラム ] 裁判と争点 014 立法の話題 015 [ コラム ] 司法書士の生活と意見 057 判事補メモ 074 弁護士事件ファイル 117
法学セニナ 確実に法学セミナーをお読みいただくために 定期購読をご利用下さい 法学セミナー 法学入門 2 0 1 6 を法のを物 ~ 可・第、、 ~ ・・ - 旧電」と「非日電」の民議 都紹 ) を界をのぞいてみよチーー、 これからまを - するみなさん ~ - 第 、一法学部生、法科大学院生 必読の情報・学習雑誌 ! 毎日ニュースや新聞をにぎわす様々な事 象は、その多くが法律の問題に関連して いま魂法律を学ぶ方々に、学習に役立つ 情報や教材をお届けするとともに、社会 をみつめる様々な視点やヒントを提供す る雑誌、それが「法学セミナー」で魂 くお申し込み方法〉 ■お近くの書店・大学生協書籍部にお申し込み下 さい。また、小社ホームページ、電話、 FAX で直接 小社にお申し込みいたたくことも可能で魂 ■ノヾックナンヾーおよび他書籍のご購読も同様に、 書店・大学生協書籍部にお申し込みいただくか、 小社ホームページ、電話、 F 猷でご注文下さい。 ・直接お申し込みの場合、購読ご希望の号から 順次、郵送いたします ( 送料小社負担 ) 。後日お 送りする振替用紙にてご入金下さい。また「お ためし半年購読」をご希望の方は、ホームペー ジ注文フォームの備考欄に「おためし希望」と記 入するなどしてご意向をお知らせ下さい。 日本評論社 HP 法学セミナー 潮流を読み世界を知る道標 ①特集 法のトピックを端的に紹介 ②ロー・ジャーナル 知的好奇心と学修の橋渡し 3 ロー - アングル つのエレメント④ロー 法解釈論を磨き上げる ・クラス 裁判や立法の今をつかむ 6 ロー・フォーラム ー 2016 年 バックナンバー 本体価格 6 月号 ( 5 月 12 日発売 ) ジェンダー法学入門 2016 月号 法学入門 2016 第 400 円 現代社会においてジェンダーの視点から捉えるべき法的な問題について、 憲法、民法 ( 財産法 ) 、同 ( 家族法 ) 、刑法、刑事政策、労働法、国際法 ( 国際人権 法 ) の 7 分野の論者が検討する、ジェンダー入門兼法学入門。 2016 3 月号 最高裁判決 2015 7 月号 ( 6 月 11 日発売 ) 憲法の論点 2016 弁護士が語る 昨今、わたしたちの社会では様々な憲法に関わる問題が議論されている。夏 の参院選も控え憲法論が広く論しられるであろう 6 月に読んで考えたい憲 2016 2 月号 公共空間を考える 法がテーマの論考を集め、憲法研究者が憲法学の観点から論じる。 技術者として法を語る 8 月号 ( 7 月 12 日発売 ) 2016 民法 ( 債権法 ) の新たな地平 1 月号 死刑の論点 現行民法から改正民法へと、民法学の主要テーマの「考え方」がどのよう に変わろうとしているのかを、内容の連続と転換とを意識しつつ初学者向 2015 けに解説。民法の各領域がどのような考え方を背景にして規定され、解釈 12 月号遣労働ネ土会 1330 円 されているのかを知ることで、民法学の面白さが実感できる。 ☆便利な専用パインダー「日本評論社雑誌総合ファイル本体 98 円十税」もこ利用下さい。お近くの書店または直接小社サービスセンターへこ注文下さい。 〒 354-8790 埼玉県入間郡三芳町北永井宮本 879-7 TEL : 049-274-1780 / FAX : 049-274-1788 日本評論社サービスセンター 定期購読のおすすめ 2016 / 04 、特第 . 毎月 12 日発売標準本体価格 1 ′ 400 円 ( 税込 : 1 , 512 円 ) おためし半年購読料 年間予約購読料 18 ′ 1 円 ( 税込 ) 072 円 ( 税込 ) 400 円 第 400 円 400 円
プラスアルフアにつし、て考える基本民法 077 18 ) 前掲・昭和 36 年判決。 15 頁、阿部裕介「判批」民法判例百選 I 〔第 7 版〕 191 頁。 19 ) 執行官の現況調査 ( 民執 57 条 ) を通して抵当権者の 25 ) 古積「判批」ジュリ平成 23 年度重判 ( 2012 年 ) 71 頁、 主観的事情を執行手続に反映させることができなけれ 石田剛「判批」リマークス 44 号 21 頁、金子敬明「抵当権 ば、買受人が予期せぬ損失を被る。そのため、例えば抵 と時効」千葉大学法学論集 27 巻 3 号 ( 2013 年 ) 54 頁以下、 当権設定登記後の賃借権は、抵当権者の事前の同意があ など。 れば実行後も存続し得るが、かかる同意につき登記を要 26 ) 石田・前掲注 25 ) 21 頁は、用益物権とは区別すべき する ( 387 条 1 項 ) 。また、法定地上権の成否についても、 旨を説く。 執行手続の円滑と安定を図るため、後順位抵当権者が不 27 ) 平成 23 年判決の原審がこの観点を指摘する。 在でかっ抵当権者自身が買受人となった場合を除き、抵 28 ) ところで、抵当権の負担を前提とする占有か否かが、 当権者の主観的な担保評価のみによってこれを決すべき 時効の要件において「所有の意思」の有無または善意悪 ではないと解されている ( 道垣内弘人「担保物権法〔第 意のいずれのレベルに相当するのかについては、必すし 3 版〕』〔有斐閣、 2008 年〕、高橋眞「担保物権法』〔成文 も明らかではない。前者に比肩するものとすれば、他人 堂、 2g7 年〕 162 頁、安永正昭『講義物権・担保物権法〔第 の所有に属することを前提とする占有 ( 他主占有 ) に準 2 版〕』〔有斐閣、 2014 年〕 310 頁、田高寛貴「法定地上権」 じて、抵当権設定登記後の第三取得者保護の否定に連な 法教 418 号〔 2015 年〕 69 頁以下、など ) 。 るが、抵当権につき悪意で占有を開始すれば債務者また 20 ) 安永・前掲 153 頁。 は設定者による占有に準じて扱ってよいかについては、 (1) G も丙地を農地として使用しており、客観的外形的 なお検討を要しよう。もっとも、第三取得者については、 にみて H への譲渡前後において占有状況に変化がない場 同人の側において被担保債権の状況を継続的に把握する 合などは、認識困難といえようか。 よう努めるとともに、必要に応じて抵当権消滅請求を行 22 ) 平成 24 年判決は特段の事情を留保するものの、占有 うなど、所有権喪失のリスクを管理すべき立場にあると 者がその占有開始時に存在していなかった抵当権を後か もいえるため、時効によって保護するにしても、時効期 ら容認するとは考え難い ( 松岡久和「判批」民法判例百 間あるいは起算点において調整を図るなどの要件調整が 選 I 〔第 7 版〕 189 頁、角・前掲書 382 頁、など ) 。 されてもよいように思われる。 23 ) 最判昭和 43 ・ 10 ・ 8 民集 22 巻 10 号 2145 頁、最判昭和 29 ) 抵当権における諸問題全体を通してこの観点の重要 52 ・ 9 ・ 29 裁判集民 121 号 301 頁、など。 性を説く最近の文献として、水津太郎「抵当権と利用権 24 ) 秋山靖浩「判批」現代民事判例研究会『民事判例Ⅲ 抵当法のあり方を考える」法教 426 号 ( 2016 年 ) 82 ー 2011 前記』 ( 日本評論社、 2011 年 ) 48 頁、大久保邦彦「判 頁以下。 ( むかわ・こうじ ) 批」判例セレクト 2011 〔 I 〕別冊法教 377 号 ( 2011 年 ) 可第補メ - モ 要件事実論について ロースクール・新司法修習制度が始まってから、要件 思われるが、実務的視点として重要であるにれは、主 事実論に関する書籍が数多く出版されるようになった。 張・立証責任の分配が基本的には問題とならない刑事訴 従前から、要件事実論は実務家の共通言語といわれてい 訟においても同様だと思われる ) 。訴訟には様々な事実 たところであるが、学生も要件事実論の勉強を求められ が現れるが、例えば、「原告は、被告に金員を貸し付けた」 ているのが現状である。しかし、何のために勉強してい ( 主要事実 ) 、「被告は、金遣いが荒くなった」 ( 主要事実 るのかよく分からない方も多いのではないだろうか。 を推認させる間接事実 ) 、「金銭消費貸借証書には被告の 要件事実論の定義も人によってまちまちであるが、 実印が押されている」 ( 証拠である金銭消費貸借証書の こでは差し当たり、訴訟物の存否を判断するために必要 証拠力に関わる補助事実 ) のように、同じく重要な事実 最小限の事実を把握する思考方法としておく。ーロに要 といっても、重要さの意味合いは異なる。主要事実→間 件事実論といっても、そこには多様な作業が含まれてい 接事実→補助事実と構造的に事案を分析し、「何が重要 るが、中でも、①主張・立証責任の分配、②主要事実と か、なぜ重要か」をシンプルに説明することは、実体法 間接事実 ( 及び補助事実 ) の区別が重要だと思われる。 の解釈論と事実認定論について一定の訓練を経なければ ①の作業は、弁論主義が妥当し、かっ限られた証拠の できないものであり、まさに法律実務家としてのアイデ 中で結論を出さなければならない民事訴訟においては、 ンティティであるといえる。 避けて通れないものである。これについては、民法 ( そ このように、要件事実論は、事案の核心に迫り、結論 の他の実体法 ) の解釈論であるというのが通説的な考え を出すための方法論である。要件事実論が好きな人も嫌 方 ( 法律要件分類説 ) である。 いな人も、基本を大切にして、それぞれに勉強を進めて ②の作業は、①に比べると意識されることが少ないと いただければと思う。