べられるようになったのは、生前親しくしていただいた二大グルメ、梅原龍三郎 画伯と谷崎潤一郎先生のおかげである。 鯛のおっくり、ばたん鰤、と、日本料理びいきの谷崎先生は、「中国料理って おっしゃ のは、ど、つもゴミ溜めみたいですなアと仰言り、キャビア、フォアグラには目 がなく、フカのヒレの煮込みをこよなく愛した梅原画伯は、「日本料理は、ひた すら風を喰っているようなものだな」と仰言って、頑として御自分の嗜好を押し う通されたが、 両先生の間をピンポン玉のように往復して御馳走になっていた私た ちは、超一流のゴミ溜めも風も充分に堪能させていただいてシアワセだった。 前にも書いたよ、つに、私にはスキ、キライかないから何でもありかたくいただ く、が、実をいえば、その何でものどこかに少々注文がつく。魚なら砂ずりと呼 ばれるおなかの部分。牛なら絶対に舌か尻尾。とりなら皮かキモ。豚なら豚足。 羊なら骨つきシャンク。と、あまりお上品とはいえない好みで、せつかくの梅原、 1 谷崎、両先生の優雅にして高度な食味教育の、かげも形も残っていない。夫は、