併合特許出願 前項では普通の特許出願をする場合の書類の作り方を説明したが、ここでは特殊な出願をする場 合の書類の作成方法について説明する。 特殊な特許出願には、追加特許出願、併合 ( 多項式 ) 特許出願、補正書を出してそれが却下され た場合に、その補正したものを別途新規に特許出願するものとか、分割特許出願や実用新案登録出 願を特許出願に変更するものなどいろいろ種類があるが、これら各種の出願については、本項以下 でそれそれ説明することにする。 併合 ( 多項式 ) 特許出願の意味 普通特許出願は、一つの発明ごとに一つの出願を行なうのであるが、これは原則であって、例外 として次のような関係にある発明については、これらの発明をまとめて一つの願書で出願すること ができる。 ①ある一つの発明 ( これを特定発明という ) があって、その発明を利用した別の発明で目的 が同じもの。
4 追加特許出願 追加特許出願の意味 追加特許出願と併合特許出願とは、考え方というか、その本質は同じものである。ある特定の発 明があって、その特定発明と一定の関連をもっている他の発明がある場合に、これらの相関連する 発明が特許出願のときに存在するときは、出願人の選択により前項の併合特許出願にしてもいい し、特定発明を原特許出願として出願し、他の発明をその原特許出願の追加特許の出願として出願 してもいいわけである。そして、関連発明を特定発明の特許出願後に発明したときは、もはや併合 特許出願の形式をとることができないので、そのときは関連発明を原特許出願の追加特許として出 願することになる。 要しかし、相互に一定の関係にある発明は、必ず一方を他方の追加として出願しなければならない 願というものではなく、追加特許出願としないで、普通の特許出願 ( 正式には独立の特許出願 ) とし 出 許て出願することも一向差しつかえないわけである。 では、なぜ追加特許出願制度があるかというと、それは特許権が発生してからの毎年納付する特 許料が普通より安いからである。
や漁業をも含めるものである。つまり、農機具などは工場などで生産され、かっ農林業に利用され る。また工場で生産された漁具や養漁装置も漁業に利用されるし、植物の裁培方法や養漁方法の発 明も農林水産に役立つからである。これに反し、人体に線を投射して病気を直す方法の発明や、 薬品を溶解した溶液に患部をひたして皮膚炎を治療する方法の発明などは、人体をその発明の成立 要件の中に加えるので、このような発明は工業として実施することはできないから、産業上利用不 能として特許されないわけである。 新規な発明であること その発明は、特許出願の時点において新規なものでなければならない。新規な発明とは次のよう なな発明をいう。 に 許 特許出願前、その発明が日本国内において公然と知られまたは公然と実施されていないこと 特 がである。 明 公然と実施されまたは公然と知られるということは、秘密を守る義務のない不特定多数の人が見 んようと思えば特別の許可を要しないで自由に見られる状態の中で、発明品が製造され発明方法が使 用され、販売されたり、または輸入や展示されたりすることである。したがって、日本国内で製造 されなくても、外国からその発明品が仮に一つでも日本へ公然と輸入されていれば、その発明は新
Ⅱ特許出願の要領 細書 ( 例 ) 明 1 . 発明の名称 〇〇の方法とその装置 2. 特許請求の範囲 ( 1 ) 〇〇の方法の発明 ( 特定発明 ) ② 0 〇の方法の実施に直接使用する xx の装置の発明 3. 発明の詳細な説明 方法と装置の発明を別々か , まとめて説明する。 4. 図面の簡単な説明 工程図と装置の図面の簡単な説明 特許出願人 ( 代理人 ) 氏名 ( 名称 ) 併合特許出願の明細書 併合特許出願の明細書と普通の特許出願のそ れとは本質は同じである。 〔説明〕 ①「特許請求の範囲」の欄には、①として特定 発明を最初に記載し、その関連発明を、③と連続 番号をつけて特定発明の次に記載していくこと。 ②「発明の詳細な説明。の欄には、特定発明と 関連発明の構成作用効果をまとめて説明するか、各 々別々に区分けして説明するかして、この複数の発 明内容をこの欄に開陳しておかなければならない。 ③その他の注意事項については、普通の特許出 願の明細書の作成方法の項を見ていただきたい ( 四 五ページ参照 ) 。 なお出願手数料自体は、発明が何個あっても二千 円である。ただし、出願審査の請求料が異なること を注意する必要がある。 次に、併合特許出願の明細書の例を示す。
追加特許出願が特許になるためには ①発明の条件Ⅱ追加特許出願が特許されるためには、その発明が基本発明または原発明と次の 関係にあることである ( ただし、そのうちの一つに該当すればいい ) 。それは併合特許の場合と要 件は全く同じであるが、違うところは、その特定発明が必ず特許されていることである。原発明が 特許権として存在しないかぎり追加特許ー ま存在しない。そこで併合特許の場合の「特定発明」のか わりに「その特許発明」という表現をとっている。「特許発明ーとは特許されている発明のことを のその追加発明の構成の中に、その特許発明の構成要件の全部または主要部を含んでいて、 追加発明とその特許発明とが同一の目的を達成するものであること。 ( 例 ) 化合物 < の製法特許発明をある物質を利用して反応を促進させ、を量産できるように した追加発明。 扇風機の特許発明に自動首振り装置を付加した追加発明。 @ その特許発明が物の特許発明である場合、その追加発明がその物を生産する方法の発明ま たはその物を生産する機械、器具、装置、その他の物の発明であること。 その特許発明が、方法の特許発明である場合において、その追加発明がその方法の特許発 明の実施に直接使用する機械、器具、装置、その他の物の発明であること。 0
びに法人にあっては代表者の氏名 ついて同一の願書で特許出願をするときは、第二項 二提出の年月日 第四号の特許請求の範囲は、発明ごとに区分して記 三発明の名称 載しなければならない。 四発明者の氏名及び住所又は居所 ( 共同出願 ) 2 願書には、次に掲げる事項を記載した明細書及び第三十七条特許を受ける権利が共有に係るときは、 必要な図面を添附しなければならない。 各共有者は、他の共有者と共同でなければ、特許出 一発明の名称 願をすることができない。 一一図面の簡単な説明 ( 一発明一出願 ) 三発明の詳細な説明 第三十八条特許出願は、発明ごとにしなければなら 四特許請求の範囲 ない。ただし、二以上の発明であっても、特許請求 3 追加の特許を受けようとするときは、追加の特許の範囲に記載される一の発明 ( 以下「特定発明」と を受けようとする発明についての追加の関係を明細 いう。 ) に対し次に掲げる関係を有する発明につ、 書に記載しなければならない。 ては、特定発明と同一の願書で特許出願をすること 4 第二項第三号の発明の詳細な説明には、その発明 ができる。 の属する技術の分野における通常の知識を有する者一その特定発明の構成に欠くことができない事項 : 容易にその実施をすることができる程度に、その の全部又は主要部をその構成に欠くことができな 発明の目的、構成及び効果を記載しなければならな い事項の主要部としている発明であって、その特 定発明と同一の目的を達成するもの 5 第二項第四号の特許請求の範囲には、発明の詳細二その特定発明が物の発明である場合において、 な説明に記載した発明の構成に欠くことができない その物を生産する方法の発明又はその物を生産す 事項のみを記載しなければならない。 る機械、器具、装置その他の物の発明 6 第三十八条ただし書の規定により二以上の発明に 三その特定発明が方法の発明である場合におい
の場合、暖房装置からストーブ、コンロなどまでいろいろのものを含んだような書き方をすると、 たとえある特定の具体的な暖房装置が、明細書の「発明の詳細な説明ーの項に記述してあっても、 「特許請求の範囲 , に記載されたものからはどこに発明があるのか不明な場合がある。この場合、 このような記述ではまだ発明が完成したとはいいがたいので、これでは特許できないとして、出願 が拒絶されることがあるから注意を要する。 その他の条件 その他特許出願が特許されるための条件として、その出願が真の発明者またはその正当な承 継人によりなされていることが必要である。共同発明なのに、一人だけの名義で出願することはで るきないし、いろいろの発明をまとめて一つの出願にしても、普通は特許されない。 ②今回の特許法改正によって、特許要件の一つに加えられたものに「先願の範囲の拡大」とい うのがある。先願の範囲の拡大の意味については前に説明した通りである ( 一六ページ参照 ) が、 要するに、明細書および図面の記載事項全体で先後願の判断がなされるので、この点十分留意する ん必要がある。
カカ たる続 れな手 方 さにの 正許での 調 改特領ま用 はが要許利 法明の特の侵 許発願ら法の案 特な出か許権権新公 ぜん許願特許許用許 など特出新特特実特 新特許法の実務解説市橋 新特許法の 実説ー 日本経冫 注意する点 聞社 明 村 岡 好 隆 著 日本経済 新聞社 Y800 3050 ー 8034 ー 5825
に従属的に加工した者、つまりほう助行為をなした者もしくは支持行為をなした者は、従犯者とし て罰せられる。ただし、その罰は減軽される。 刑事責任追及の具体的措置 特許権侵害の罪は告訴をまって論ずる ( 特許法第百九十六条第三項 ) とある。殺人や強盗のよう に、きわめて強烈な反社会的行為については、被害者などの申し出 ( 告訴 ) をまたず、国家の力を もって、すみやかにその責任を追及しなければならないが、特許権侵害は特許権者の経済的収益の 減少または名誉棄損という形で特許権者を圧迫することになるので、特許権侵害の罪は、特許権者 またはその法定代理人自らの訴をまって ( 告訴をまって ) 、はじめて国家の関係機関が侵害者の責 任追及の活動をなすことにしている。これを親告罪という。 ①告訴Ⅱ告訴は、原則として特許権者またはその法定代理人が、できることなら侵害者の住 所または居所あるいは侵害の行なわれた地の検察官または司法警察員に対し、書面または口頭です る ( 刑事訴訟法第二百四十一条 ) 。 もっとも、口頭でいいとあるが、特許権侵害は特殊な事案であるから、できるだけ書面の方がい い。その書面には、特許番号、発明の名称、侵害者の氏名 ( 名称 ) および住所、いつごろからどの 地域で、どのような状態で侵害を行なっているかの事実などを詳細に記述した方がいい。また、当 該特許権の存在と、自分がまさにその特許権者である旨を証明できる特許原簿の謄本 ( 特許庁で交 198
医薬も国民生活上非常に大切なものなので前の理由と同じく公益を優先させる意味で特許しな い。ただその製造方法は改良発明を促す意味で特許される。しかし、製造方法はなんでもよいとい うのではなく、二つ以上の医薬を混合して一つの医薬を製造するような方法が無数に案出されうる 調合方法の発明は特許されない。もしこのような調合法に特許を与えると、医療界は大きな制約を 受けて、活発な医療行為ができなくなるからである。 したがって、医薬が特許されるためには、原則として二つ以上の物質が化学反応を起こして一つ の薬を作り出す方法でないといけない。もっとも、なかには化学反応を伴わないものもある ( たと えば漢方薬 ) が、そういう場合は、単なる混合ではなく、その処理方法 ( 乾燥したり、むしたり、 つぶしたりなどする ) に新しい特徴があれば、これを特許出願の対象にすることは可能である。 化学方法により製造される物質の発明 化学反応を起こして合成される物質の発明は特許の対象にならない。これは、物質そのものに特 発許を与えると、別の方法で安く同じものができる改良発明があとでなされた場合に、できた結果物 んが同じということでその安い方法が実施できなくなるし、またこの物質そのものの特許権を特に外 国人にとられたとき、国家経済上好ましくないからである。しかし、現在日本の化学水準も相当高 度化しているので、日本も将来は化学物質そのものにも特許を認めようということで検討が始めら