基礎編 第 1 部 基礎編では , プレゼンテーションを行うために必要な基本的な事柄を学ぶ。 プレゼンテーションの目的とその重要性 , どのようなツールを使うのか , どのような話し方が必要なのか , さらに , プレゼンテーションの構成の仕方 , 情報収集の方法や資料の扱い方などを取り上げている。 プレゼンテーション初心者の人は , ますこれらの基本についてよく学習してほしい。 プレゼンテーションにある程度慣れている人にとっては , 自分のプレゼンテーションを よりよいものにするために基礎を確認してみてほしい。
第 3 章話し方の基本 4 7 ( 2 ) 話し方のチェック 話し方の練習をするときには , 誰かに聞いてもらって , 癖や欠点 を指摘してもらうのが上達の近道 である。自分でしゃべっているだ けでは気付かないことも多い。評 価してもらう際には「話し方のチ ェックリスト」を使って確認する とよい。 例文「蜘蛛の糸」の文章をもう 一度声に出して読んでみよう。そ して家族や友人などに聞いてもら い , 率直に指摘してもらおう。 3 . 魅力的に話すということ 話すときの言葉は , 一瞬のうちに消えてしまう。プレゼンテーションは一瞬にどれだけ 強い印象を残せるか , 具体的なイメージを伝える事ができるかが大きなポイントになる。 話し方や発声で聞き手に対する印象も大きく変わる。魅力的に話すための基本的な技術を 身につけ , 聞き手に好印象を持ってもらえるような話し方をしよう。 ( 1 ) 話し方の技術 舌し方には五つの基本技術がある。 a . イントネーション d . スピード きのう病院へ 行くと・・ びよういん ? ひょういんヮ ロロ 000 二二ロ b . プロミネンス チェンジ・オプ・ペース e . 聞き手をひきつける話し方になる。 この五つの技術を応用することで , ポーズ c .
第 4 章内容の構成ー ス実務」の授業について , 2 番目に大好きなクラブ活動 , 最後にボランティア活動につい て話すこととする。 つぎの作業は , それぞれのキー・ポイントについて , どのような切り口で話すかを考え , 実例や根拠などをまじえ , 具体的に話していこう。例えば , キー・ポイント 1 : 「ビジネ ス実務」という科目については , ①なぜこの科目を受講したか , ②その科目でどのような ことを学んだか , ③この科目が将来どのようにかかわるかなど , ① ~ ③がサプ・ポイント (SP) となる。同様に , キー・ポイント 2 や 3 についてもそれぞれの切り口を考え , ① ~ ③程度のサプ・ポイントを挙げて詳しく話す。キー・ポイントやサプ・ポイントの数は与 えられた時間によって調整する必要がある。 序論では , 挨拶のあと , 聞き手の関心を促すために , テーマに関連した話をしたり , あ るいは , はじめに結論を話すと聞き手の関心が得やすいこともある。この場合結論として , 本論をまとめる過程で「ビジネス実務」の授業中での電話応対などのロールプレイング演 習 , クラブ活動でのイ中間とのやり取り , ボランティア活動での聴衆とのかかわりなどの経 験を通して , 人とコミュニケーションすることは仕事をする上での基本であり , どんな職 業に就いても大切であることに気がついた。そこで , この自己 PR に「人とのコミュニケ ーションは仕事の基本」というサプ・タイトルを付けた。これは , 学生生活で力を入れた ことを話すことで得た伝えたいメッセージであり , 結論にもつながる。 結論では , 本論で伝えた三つのキー・ポイントを要約し , 一番伝えたいメッセージを再 度強調する。 舌題選び 舌題の絞り込み 一三ロ - 三ロ 受講科目 0 人との コミュニケーションは 仕事の基本 クラブ活動
7 9 、 9 、 0 1 っ 0 6 / 8 8 9 、 西 伊 第 5 章情報の収集と整理 1 . 情報収集の基本 (I) 情報収集の必要性 ( 2 ) 客観情報と主観情報 ( 3 ) 一次情報と二次情報 2 . インターネットによる情報収集 (I) インターネットによる検索・ ( 2 ) インターネット情報の種類と問題点 3 . インターネット以外の情報収集 (l) 文献 ( 活字メディア ) ②視聴覚資料 ( 3 ) インタビュー・アンケート調査など 4 . 収集した情報の整理と分類 (l) 資料の規格化 ( 標準化 ) ( 2 ) ファイリング ( 3 ) リストの作成 ( 4 ) ノートやカードの作成 第 6 章資料の作成と引用・要約のルール 1 . 資料の作成 (I) 資料の作成の基本 ②資料の種類と選択 ( 3 ) レジュメの作成 ( 4 ) 提示資料の作成 2 . 引用と要約 ( 1 ) 引用と要約とは ( 2 ) 引用と要約のルール 3 . 資料とプレゼンテーション (l) 資料とプレゼンテーションの 3 P ( 2 ) 資料の意義
4 3 第 3 章 話し方の基本 日常のコミュニケーションは , 口頭によるものが多く , その中身には言葉による言語コ ミュニケーションと言葉以外の非言語コミュニケーションがある。またそのほとんどが「話 す・聞く」の形で話し言葉を使っている。最近のプレゼンテーションは第 2 章で述べたと おり , 図表やグラフ , 写真や映像など , ビジュアル化された資料を , パソコンのプレゼン テーションソフトや OHC, ポードや配布資料などのツールを駆使して , 効果的に行われ ている。これらのツールを有効に利用することはもちろん重要であるが , やはりプレゼン テーションの中心となるのは「話し方」である。 ここでは , わかりやすく明瞭に話すための声の出し方の基本から , 話し手の意図を聞き 手に明確に届け , 聞き手を説得できるような話法まで , 人前で話すために必要なこと全般 を取り上げる。 I. 話すときの呼吸法 呼吸法には大きく分けて胸式呼吸と腹式呼吸がある。起きて活動しているときは主に胸 式呼吸をしているが , 横になったり , 眠っている時は腹式呼吸に変わる。 ①腹式呼吸の効果 胸式呼吸では , 音声がロや喉などに共鳴して発声するのに対して , 腹式呼吸は横隔膜と 腹筋を使うことで , より多くの息を肺に取り入れ , おなかやからだ全体を使って発声する ことができる。そのため , 腹式呼吸で発声すると , 声量が拡大し , 声のトーンが微妙に丸 くなって声の響きが増すといわれており , アナウンサーや声楽家なども活用している。つ まり , プレゼンテーションにとっても有利なことである。腹式呼吸は難しく考えがちだが 練習すれば誰でもできる。ます , 腹式呼吸の練習から始めてみよう。
ション f . 3 . ① 第 2 章アカデ、 長い説明が必要な質問には別途答えるようにする g . 残りの時間を忘れない ミック・プレゼンテー 1 0 9 ァーマ発表の実践例 準備 ゼミにおける調査・研究を行う上で , テーマの決定は非常に重要な意味を持つ。教員か ②ポイント わないだろう。 ごくわすかしか集まっていない段階なので , 発表には簡単なレジュメを用意する程度で構 ( あるいは導き出したいのか ) , 見通しを明らかにしておくとよい。この時点では , 資料も そこで仮説を立ててみることだ。調査・研究の結果 , どのような結論が導き出されるのか それらについて基本的な概念を辞典などを利用して把握することに努める。可能であれば , また , 事前調査として関連する資料をいくつか集め , その中からキーワードを拾い上げ , テーマが決まったら , できればそれに関する基本的な文献を 1 冊は精読しておきたい。 うな地道な作業が苦痛になってしまうだろう。 ョンがなければ , 早々に行き詰まってしまうだろうし , さまざまな資料に当たるというよ というのは論外だ。まず自分の問題意識があり , それを解決したいという強いモチベーシ べてみたいと思ったから」程度では先が思いやられる。ましてや , 「適当に決めた」など ら慎重に決めなければならない。テーマを決めた理由が「面白そうだと思ったから」「調 ら与えられる場合はさておき , 自分で自由に決める場合には問題意識と照らし合わせなが d . 調査・研究を進めていく上での仮説を明確にする テーマについて現時点で自分が考えていることを説明する テーマの概要を分かりやすく説明する なぜ , このテーマを選んだのかという理由をきちんと説明する ァーマ発表のプレゼンテーションでは , 以下のことを心がけよう。 c . b . a .
基礎編 6 2 アウトライン・シート ~ 人とのコミュニケーションは仕事の基本 ~ ーマ : 自己 PR ァ ⅱ刪 あいさつ タイトルに関連したこと : キー・ポイント : 1 . 受講科目 2 . 情熱を注いでいること 3 . 私の社会貢献 ⅱ刪 キー・ポイント 1 : 受講科目 ( ビジネス実務 ) S P ①受講理由→講義だけでなく実技演習することで意欲がわく S P ②学んだこと 「知っている」だけではだめ。「できる」ことが大切→実例 S P ③将来とのかかわり →将来の仕事でもコミュニケーションカを生かす キー・ポイント 2 : クラブ活動 ( 弦楽四重奏部 ) S P ①担当楽器 →バイオリン→子供のころから練習 , どこでも演奏可能 S P ②練習方法→クラブの仲間で互いに注意しあう→実例 S P ③楽しいところ →みんなの息があっていい音が出たとき快感にかわる キー・ポイント 3 : ボランティア活動 ( 社会貢献 ) S P ①子供病院での演奏した体験 →入院している子供たちが知っている曲を演奏してあげると喜ぶ S P ②気をつけていること →雰囲気を楽しくするためのおしゃべり→事例 S P ③これからの活動 本論の要約 : 授業やクラブ活動 , ボランティアを通してコミュニケー ションの大切さを実感 強調点 : 人とのコミュニケーションは仕事の基本であり , どんな 仕事でも通用する 質 疑 : 謝 辞 : 一三ロ
1 3 2 実践編 ( 2 ) 成功するセールストーク 準備が整ったらいよいよセールストークの実践である。 セールストークを成功させるための六つの基本 a . 笑顔と誠意ある誠実な態度・・・・・・人間関係の基本は笑顔であり , 用される態度が必要である b . 服装・身だしなみ・・・・・・顧客に対する配慮の表れである c . 挨拶とお辞儀・・・・・・顧客を認識していることの表明である さらに顧客から信 d . 相手の立場の理解とほめ言葉・・・・・・顧客が心を開いてこちらの言うことを受けいれ てもらうためには必須のかかわり方である e . 正確で豊富な商品知識と商品の提示・・・・・・売りたいものは商品であるから , それら に対する知識や実物を見せることは重要である f . 視覚への訴求・・・・・・同じことでも言葉だけでの説明と , 図やグラフなどがあるのと では説得力や訴求力が大きく異なる。百聞は一見に如かすである 顧客満足の何割かはそれを売り込んだ本人に対する満足度でもある。そのためセールス トークを行うその人自身も重要な要素になる。服装や言葉遣い・表情など表面にあらわれ るものだけではなく , その人の内面から醸し出される人間性が問われる。あなたに対して 顧客が信頼感・愛情・尊敬を抱くことでビジネスが成功することを忘れないでほしい。 C 0 ー u m n 1980 年代に , アメリカの 3M 社という世界的企業で , 顧客の購買心理を研究し , 営業が説明しやすく顧客が理解しやすいように開発した技法に , FABE 技法があ る。 FABE 技法とは , 商品の特徴 (Feature), 商品の利点 (Advantage), 利益 (Benefit), 証拠 (Evidence) の四つの分野に分けて説明しながら , 顧客に商ロ ロロロ 情報を提供していくという手法である。
第 1 章 プレゼンテーションとは 2 3 ③場所や会場を確認する一どこでするプレゼンテーションかー プレゼンテーションを行う会場や場所は , 聞き手の分析とも関係する。会場や部屋の広 さ , 不特定多数の人が集まる場所なのか , または特定の人が聞き手として参加するのか , 舌し手はどのような所で話すのかを確認して , 話し方も工夫していかなければならない。 なお , 会場設営などの準備段階で , 設備や使用可能な視聴覚機器も決定するだろう。 ( 3 ) プレゼンテーションの 3P プレゼンテーションの 3 P とは , プレゼンテーションを行うときの三要素である。プレ ゼンテーションを行う上で , どの P も押さえておきたい要素である。 構成・内容 Plan 話し方 Presentation Skill 話し手の人柄 Personality 一三ロ ① PIan = 構成・内容 プレゼンテーションを行う上で最も重要な要素である。 i . 時間配分を考えて , 集めた資料の取捨選択をする プレゼンテーションの時間に合わせて話す項目や具体例などを選択する。 ⅱ . 原稿を作成する 舌す内容が決定したら , プレゼンテーションのための原稿やスピーチメモを作成する。 基本的な原稿の作成方法には次のようなものがある。 a . 三段構成・・・・・序論 ( 導入 ) ・本論 ( 展開 ) ・結論 ( むすび ) の三段で構成する 序論では話の目的や意図 , 話の全体像を示し , 本論では , 論証や 証明を , 結論では , まとめや考察を述べる話し方の方法。 四段構成・・・・・「起・承・転・結」を基本とする構成の方法 b . 三段構成の序論が「起」に , 本論が「承」に , 結論が「結」にそ れぞれ相当する。「転」は , 話の転換に当たる箇所で , 三段構成よ り複雑な構成となる。 説得力のある構成を考えるためには , 正しい結論を得るために工 一三ロ
3 はじめに 「これからのオフィスワーカーに求められる最も基本的で重要な能力は , プレゼンテー ション能力である」ということが , 今では当たり前のように言われています。また , 大学 や短大・専門学校でも , 特にプレゼンテーションに関連する授業でなくても , さまざまな 場面で個々の , あるいはグループのプレゼンテーション能力を試される機会が増えている のではないでしようか。 全国大学実務教育協会においては , プレゼンテーション能力養成の重要性に鑑み , プレ ゼンテーション教育のカリキュラムを作成し , 所定の単位を取得した学生に対して「プレ ゼンテーション実務士」の資格を授与しています。 本書は , このようなプレゼンテーション能力の養成・向上のための教材として , 先に上 梓された『プレゼンテーション演習 I ーキャンパスライフとプレゼンテーション一』およ び , 『プレゼンテーション演習Ⅱーオフィスライフとプレゼンテーション一』をふまえて 執筆・編集されたものです。プレゼンテーション能力を学生から社会人まで , あらゆる人々 が必要とする普遍的な能力と捉え , 基本的な知識からさまざまな場面における応用に至る まで , 段階的に学べるように構成されています。 本書で学ぶ方々の達成段階や必要性 , 関心によって , 学ぶ部分は自由に選択できるよう になっています。 「基礎編」では , 各執筆者がそれぞれの経験を踏まえながら , プレゼンテーションに必 要な知識・スキルを厳選して解説しています。 「実践編」では , 具体的な事例にもとづき , 想定されるあらゆるプレゼンテーションの 場面に応用ができるように工夫を凝らしています。 本書が , プレゼンテーション能力を身につけようとする方々にとって良き入門書となり , これからのプレゼンテーション教育に少しでも貢献できれば , 執筆者一同の喜びとすると ころであります。 本書をまとめるにあたり , 東日本大震災後という大変な状況の中 , 東奔西走していただ き , 的確なご助言を賜りました樹村房大塚栄一社長に , 心から感謝とお礼を申し上げます。 執筆者一同 平成 23 年 5 月吉日