第 2 章 3 1 ツールの種類と活用 プレゼンテーションとは , 商品や企画 , あるいは報告や考え方などを , 話し方によって 説明・説得していくわけであるが , その成果や評価がその後の仕事や自分を大きく変える ことになる。だからこそプレゼンテーションを少しでもインパクトのあるものにしなけれ ばならない。そこで強い印象を残し成果を出すために , さまざまな工夫が必要となってく d . 瞬時に多くの情報を伝えることができる 注意を集中させることができる b . 印象に強く残る ひと目見ただけでイメージがわく ツールを活用する利点は , 次の 4 点である。 この工夫に使うものの一つが , ツールである。 c . a . る。 に訴えるもの」は音響設備などと呼ばれ , 代表的なものがマイクである。 えるもの」をビジュアルツールと呼び , その代表的なものがパワーポイントである。「耳 ツールは , 一般的に「目に訴えるもの」と「耳に訴えるもの」に大別できる。「目に訴 ある。それを見つけ活用することで , プレゼンテーションの成果は大きく向上する。 は , 自分自身の技能をはじめ , 会場や人数 , 器具や制限時間など , 条件にあったツールで うえで , 自分にはどのツールが最適なのかを見つけることが重要である。最適のツールと ツールにはどのようなものがあり , それらがどのような特徴を持っているのかを理解した 必要がある。その準備として , ツールを用意することがある。プレゼンテーションで使う プレゼンテーションを成功させるためには , なによりもしつかりとした準備をしておく l. プレゼンテーションツールのいろいろ
第 1 章 プレゼンテーションとは 3 . プレゼンテーションへの準備 ( 1 ) プレゼンテーションの準備の進め方 2 1 いよいよプレゼンテーションを行うことになり , 日時と会場が決まり , その準備を進め ていくことになった。プレゼンテーションの成否は , この準備段階で決定するといえるほ ど重要なプロセスである。 はちぶ 「段取り八分」という言葉は , 仕事を進める上で , 事前の準備がいかに重要かを表して いる。プレゼンテーションも段取りをキッチリしておけば , 8 割は完了したも同然である。 プレゼンテーションの準備に何が必要なのか , 何からどのようにして進めていけばよい のか , 準備から本番終了までのプロセスを以下に示す。 ( 2 ) 準備のための注意点 ①目的を明確にする一何のためのプレゼンテーションかー プレゼンテーションの準備の最初にすべきことは , プラン ( 構成 ) の作成である。事前 準備の中でも「プレゼンテーションはプラン ( 構成 ) が命」といわれるほど , 重要である。 何のためにプレゼンテーションをするのか , このプレゼンテーションでは , 聞き手に何 を伝えたいのか , 聞き手にどうしてほしいのか , つまり , このプレゼンテーションの最終 的な目標を明確にして , プランを作成することである。 ②聞き手を分析する一誰に対するプレゼンテーションかー 次にこのプレゼンテーションは誰に対して行うのかを把握することである。 プレゼンテーションの準備は聞き手の人数や年齢層 , 性質によって異なる。たとえば , 同じ趣旨の内容を伝える場合でも , 小学生を対象にしたイベントと専門家を対象にしたア カデミック・プレゼンテーションでは , 伝える内容のレベル設定が違ってくる。 また , 話し手のプロフィールをどの程度事前に紹介しておくか , ということも聞き手を 分析して , その性質によって決定する。
3 2 基礎編 い ) ツールの選び方 いかにしてツールを有効に活用し , プレゼンテーションの成果に結びつけていくかは , 大きな課題である。では , 実際にはどのようなツールを選択するべきなのだろうか。 では , ツールを選択する基準を考えていきたい。 ます最初に考えるべきことは , 作成技術である。多くのツールのいすれも , 作成や機器 その他に , プレゼンテーションの目的 , 聞き手の人数や状況 , 地域性なども考えて , い の集中力や印象が散漫になる恐れがあるからである。 問である。そして 4 番目は , 多くのツールを同時に使わないことである。なぜなら聞き手 3 番目は , 作成に使える時間と費用の問題である。これは自分だけでは解決できない難 異なっている場合が多々ある。十分な事前準備とチェックが必要である。 とより , 照明・音響・スクリーンなど , イメージや効果が異なったり , 操作の手間ひまも ョンを行う場所での機器や設備が , 必ずしも一致してはいないからである。パソコンはも 2 番目に考えるべき点は , 設備である。自分の考えの中にある機器と , プレゼンテーシ プレゼンテーションの内容そのものに対して信頼を失ってしまう。 時間がかかったりミスがあったりしては , せつかくのプレゼンテーションが台なしになり , 使いこなす技術が追いつかない現実をしつかりと認識しておくべきである。作成や操作に 操作の技術がなければならない。しかも最近では , 機器の発達や変化のスピードが著しく , う。ヒューマンタッチのすごさである。 すると , 通常売上の平均 30 % アップになるとい 法としての効果が大きく , スーパーで試食販売を してもらい , 売上向上をはかる。商品プレゼン方 玉商品を一口大に切ったり , 軽く調理して試食を 試食販売は , 商品宣伝方法の一つ。その日の目 試食販売ってすごい ! column
3 8 基礎 3 . ピジュアルツール 画像に負けない話し方が , 聞き手の目と心に響く話し方ができるかどうかという , プレゼ 本人に , それを使う技能と知識があるかどうかである。そのうえで , 大きく映し出される 場に , その設備があるかどうかが大きな条件となる。加えて , プレゼンテーションを行う もちろん , 短所もある。それは機材・設備の問題である。プレゼンテーションを行う会 まさにプレゼンテーションの強力な助つ人といえる。 に合わせてスクリーンに大きく映し出すことも , 音響などの他の機材との接続も可能で , 合わせて色や画像・ニュアンスなどを変えることも簡単にできる特性がある。また , 会場 保存機能があり , いつでも取り出して使用できるという便利さがある。そのうえ , 目的に パワーポイントの長所は , さまざまな色や画面作りができるということである。しかも て , 一般名称化している感がある。 の名前である。しかし現在では , プレゼンテーションに使うパソコン画像を指すものとし パワーポイントという言葉は , あくまでもマイクロソフト社のアプリケーションソフト い ) パワーポイント の効果を一層あげていきたい。 ビジュアルツールという。その特性を知り , 上手に活用することで , プレゼンテーション 見ることは理解に直結する強いアピールとなる。この「目で見る」さまざまなツールを , 「百聞は一見に如かず」ということわざにもあるように , 具体的・現実的なものを目で このパワーポイントを使う上で注意するべき点は , 次のとおりである。 ンテーターの技術とセンスが大きなカギとなる。 f . 万が一のトラブルを想定して , 準備をしておくこと e . 1 分間に 1 枚程度の画面とし , 速すぎる画面変換をしないこと d . 文字は少なく , 大きなものを用いること 聞き手 ( 見ている者 ) にわかりやすい , シンプルな画面作りを心がけること 口頭の説明と画面とのマッチングを考えること a . 構成をしつかりと固め , 全体を一つの流れとして考えること c . b .
5 プレゼンテーション演習 もく じ はじめに 3 第 1 部基礎編 第 1 章プレゼンテーションとは 1 . プレゼンテーションとは何か (I) コミュニケーションの基本 ( 2 ) プレゼンテーションの定義 ( 3 ) プレゼンテーションの種類 2 . プレゼンテーション能力の必要性 (l) 生活のあらゆるシーンにプレゼンテーション ( 2 ) 伝えるカ 3 . プレゼンテーションへの準備 ( I) プレゼンテーションの準備の進め方 ( 2 ) 準備のための注意点 ( 3 ) プレゼンテーションの 3P ( 4 ) 説得力のあるプレゼンテーションを目指して 第 2 章ツールの種類と活用 1 . プレゼンテーションツールのいろいろ (I) ツールの選び方 2 . 文書ツール (l) レジュメ ( 2 ) 図表・グラフ ( 中山 ) ー 13 1 ワ朝っ 0 -4 っ 0 4 LO 、 6 「 / 8 1 1 1 っ 0 。 6 1 1 1 1 1 1 1 ワ 0 ワ乙ワワ 0 ワ 0 一原っ 0 C'O っ 0 っ 0 水
Ⅱ 6 ① 実践編 5 . 成果発表の実践例 準備 べられるように , 発表原稿を準備し , 可能であれば教員にチェックしてもらうとよい。 時間をかけてじっくり練り上げるようにしたい。そして , 本番で必要なことをきちんと述 経過を知らない人がいることを念頭に置くことも求められる。したがって , 発表の構成は 以外の人も聞き手となる発表の場合は , 自分が発表する内容や , これまでの調査・研究の いる場合には司会者との打ち合わせも必要になってくるだろう。そして , ゼミのメンバー もちろんだが , 事前にリハーサルを行っておく必要もあるし , 大きな会場で他の発表者も ために , 準備も念入りに行わなければならない。レジュメや添付資料 , 提示資料の作成は である。卒業研究発表会のような形であれば , 大勢を前にしての発表となるだろう。その 成果発表は半期 , 年間 , 場合によっては 2 年間 ( 卒業論文など ) の調査・研究の集大成 ②ポイント 成果発表のプレゼンテーションでは , のことを心がけよう。 ァーマ発表 , 中間発表のポイントに加えて , 以下 a . 発表に用いる用語 ( 特に専門用語 ) は入念に吟味する b . 曖昧な表現は絶対に避ける 内容の節目を明確にする ( 構成を分かりやすくする ) d . 提示資料を効果的に利用する e . 結論が明確に伝わるように意識する f . 今後の研究課題を明らかにする c . らだ。 ートや論文をまとめる場合 , あるいは次の調査・研究に進んでいく場合に大いに役立つか コメントにはしつかり耳を傾け , 発表について自己点検をしてみよう。その作業が , レポ よるコメントが与えられることもある。質問にきちんと答えることはもちろんであるが , 質疑応答では , 内容に関する質問以外に , コメンテーター ( 教員である場合が多い ) に
第 4 章 h . 購入するための社内手続きが面倒 いまその品を購入するための資金がない 」 . 購入するための資金調達が難しい セールストーク 1 3 1 購入に結びつけるには , 上記の理由を一つひとつ打ち消していくセールストークが必要 躇する内容が何であるのかを会話の中から見抜いていくこともセールストークには必要で ちを理解し , 購入しやすい状況を提案できる応用力が必要となる。顧客の不安や懸念 , 躊 である。商品やサービスについての紹介だけでなく , 顧客の中にある購入を躊躇する気持 ある。なお , 購買心理については次節で述べる。 2 . セールストークの基本 ここでは , セールストークを成功させるために , ①用意すべきものと , ②顧客の購買心 ーズや気持ちを汲み , 購入に導くための知識である。 理について説明する。①は , 説明内容を考え資料を準備することである。②は , 顧客のニ く。いずれも上手にセールストークを行うためには身につけるべき知識と技術である。 の法則や購買心理過程の 8 段階について説明し , 具体的なセールストークの例も挙げてい 成功するセールストークでは , 六つの項目を挙げて説明する。購買心理では , AIDMA は顧客の気持ちを購入に導くようなプレゼンテーションが必要である。準備すべきものや セールストークの対象は購入を決意した顧客だけではない。そこで , ( 1 ) セールストークの準備 セールストークで ツールは概ね次のようなものである。 カタログ , パンフレット , 資料 c . 予想される質問に対する回答 購入のメリット・デメリット e . a . b . 商品情報の確認 f . 顧客情報の収集 d . 商品の見本 , 試供品など 資料等は対象に応じて内容や体裁に工夫が必要であり , そのために顧客情報が必要とな る。
4 0 ー基礎編 このツールは , 臨場感や現実感が出るという意味では最も優秀なツールといえる。動き やストーリーを十分に取り込んだり , タイムリーな話題のニュースや , その商品を実際に 使用している風景などを取り入れることで , リアルタイムな情報としてのプレゼンテーシ ョンとなる。また , この映像に専門的なナレーションをつけると , 現場でのプレゼンテー ションの必要がないほどのインパクトを生むツールである。 しかし一方で , 制作の手間と技術や , コスト面での問題とともに , プレゼンテーション を行う会場の設備の有無も関係し , いつでも・誰でもが活用可能というわけではない。 4 . その他のツール ( 1 ) ボード ポードには , パネル・白板・黒板などがある。このうち , パネルは , あらかじめ伝えた いことの要点を書いて貼っておき , 必要に応じてパネルの前で話しながら , その上に書き 加えたりするものである。テレビのニュース番組や通販の説明などで用いられている「フ リップ」といわれるものも , このパネルの一種である。大きさに限界はあるが , 丁寧に取 り扱うと繰り返し使用することができ , コストもかからない臨場感のあるツールである。 一方 , ホワイトボードなどの白板・黒板は , 話しながら自由に書いたり消したりできる , 教育現場でおなじみのツールである。これは事前に準備が不要で , だれでもが手軽に利用 できるツールである。ただし , 暗黙のうちに「見なさい・書きなさい」という雰囲気があ り , 目上の人へのプレゼンテーションでは避けた方がよい。 短所としては , 大きい会場では後方の人には見えにくいことと , 記録性や再現性がない ことが挙げられる。また , ポードに字などを書くときに , 体の向きに注意しないと聞き手 に背を向けることとなり , コミュニケーションが中断してしまうことも欠点である。 マーカーやチョークを十分に備えておくこと b . 体の向きに注意して , 話しながら書くこと a . 箇条書き的に , 短く , 大きく , 正確な字で書くこと ポードの作成上のポイントは , 次のとおりである。 c .
第 1 章 プレゼンテーションとは 2 3 ③場所や会場を確認する一どこでするプレゼンテーションかー プレゼンテーションを行う会場や場所は , 聞き手の分析とも関係する。会場や部屋の広 さ , 不特定多数の人が集まる場所なのか , または特定の人が聞き手として参加するのか , 舌し手はどのような所で話すのかを確認して , 話し方も工夫していかなければならない。 なお , 会場設営などの準備段階で , 設備や使用可能な視聴覚機器も決定するだろう。 ( 3 ) プレゼンテーションの 3P プレゼンテーションの 3 P とは , プレゼンテーションを行うときの三要素である。プレ ゼンテーションを行う上で , どの P も押さえておきたい要素である。 構成・内容 Plan 話し方 Presentation Skill 話し手の人柄 Personality 一三ロ ① PIan = 構成・内容 プレゼンテーションを行う上で最も重要な要素である。 i . 時間配分を考えて , 集めた資料の取捨選択をする プレゼンテーションの時間に合わせて話す項目や具体例などを選択する。 ⅱ . 原稿を作成する 舌す内容が決定したら , プレゼンテーションのための原稿やスピーチメモを作成する。 基本的な原稿の作成方法には次のようなものがある。 a . 三段構成・・・・・序論 ( 導入 ) ・本論 ( 展開 ) ・結論 ( むすび ) の三段で構成する 序論では話の目的や意図 , 話の全体像を示し , 本論では , 論証や 証明を , 結論では , まとめや考察を述べる話し方の方法。 四段構成・・・・・「起・承・転・結」を基本とする構成の方法 b . 三段構成の序論が「起」に , 本論が「承」に , 結論が「結」にそ れぞれ相当する。「転」は , 話の転換に当たる箇所で , 三段構成よ り複雑な構成となる。 説得力のある構成を考えるためには , 正しい結論を得るために工 一三ロ
112 ー実践編 ができました。 以上です。ありがとうございました。 ( 出典 : 福永弘之監修『キャンパスライフとプレゼンテーション」樹村房 , 2002 ) ・発表例に当てはめる形で , 自分の研究テーマについて 3 分間の発表原稿 , よび資料を作成し , 実際に発表をしてみよう。 お 4 . 中間発表の実践例 準備 ① a . 調査・研究の全体像が聞き手に分かるようにする 中間発表のプレゼンテーションでは , 特に以下のことを心がけよう。 ②ホイント バイスが受けやすい。 とめる方法もあるが , 別途 , 資料や文献のリストも作成しておくと , 特に教員からのアド であるが , 発表に必要と思われる提示資料も準備しておくべきだろう。レジュメとしてま 見えるように行う。また , 収集した資料などを元に , レジュメを用意することはもちろん 成しておかなければならない。発表は , 仮アウトラインに基づいて調査・研究の全体像が ば揃えておく必要がある。論文やレポートにまとめる場合であれば , 仮アウトラインを完 まず , その段階で収集を予定していた資料 , 引用・参照しようとした文献についてはほ をする場合とが考えられるが , ここでは前者を対象とする。 う。中間発表は , 全体的な中間発表をする場合と , 特定の章などについて結論含みの発表 ずだ。場合によっては論文やレポートの章立てを終え , 実際に執筆に入っていることだろ この段階では , 資料収集や調査 ( フィールドワーク等を含む ) もある程度進んでいるは