第 4 章内容の構成ー で , 伝えたい内容を事実や , 数値 , 事例などをもとに筋道立てて具体的に話していく。結 論はまとめにあたる。話した内容を要約し , 序論で示した意義について , 最終的な結果を 提示する。 ( 1 ) 序論の役割 聞き手のいないプレゼンテーションはない。聞き手が聞いてくれて初めてプレゼンテー ションは成立する。序論の役割は , 聞き手に「よし , 聞いてみよう」という意欲を起こさ せるために , そのテーマとともに , これから話そうとする内容が聞き手にとっていかに大 切かを知らせ , 聞こうという意欲をもってもらい , 話の方向を指し示すことである。 序論で話すことは , まず , これから話す内容について聞き手に興味・関心を起こしても らうための背景情報を紹介する。つぎに , 何について話すのか ( テーマ ) , なぜこのテー マを取り上げたか ( 問題提起 , 理由づけ ) , 話の主旨 ( 目的とゴール , 項目の順序 ) とす すめていく。場合によっては , 最初に結論を簡潔に話すことによって , 聞き手の理解を促 すこともある。 ( 2 ) 本論の役割 本論の役割は , 序論で示した内容を具体的なデータや事例などを根拠にし , 筋道を立て て詳しく提示していくことである。ます , 話したいポイントとなる項目をキー・ポイント ( 大 項目 ) として示し , それを支えるサプ・ポイント ( 中項目 ) についてデータや事実 , 事例 など ( 小項目 ) を挙げて話す。その際 , 推論や俗説などは聞き手に誤解を与え , 誤った結 果に導く恐れがあるので , 提示する場合には注意しなければならない。そして , どの項目 から順番に話せば , 聞き手にわかりやすく理解されやすいかをしつかり吟味する必要があ る。また , 内容を詰め込みすぎて , 伝えたいポイントがすれないように気をつけなければ ならない。 舌す順番は , 伝えたい内容によってその重要度や時系列 ( 過去・現在・未来 ) , 因果関係 ( 原 因結果 ) などを考慮し並べる方法がある。 ( 3 ) 結論の役割 結論はプレゼンテーション全体の要約である。序論や本論で示した目的や意義 , 問題な 5 9 一三ロ
102 ー実践編 ( 3 ) 自己 PR の構成 自己 PR には三 0 の構成要素がある。三 0 の構成要素を下図のように三段構成にしてバ ランスよく組み立てて話すと , 自分のことが相手にスムーズに伝わる自己 PR になる。 ころ ■自己 p R の三つの構成要素と三段構成 「で , 結局何が言いたいの ? 」「話がわかりにくい」など と言われる人には , 結論がな い , もしくは伝わっていない ことが考えられる。 結論を説明する理由は説得 力を出すためにも , できれば 三つ挙げることが望まし い。ただし , 四つ以上になる と分かりにくくなるので , つ以内にまとめる。「結論は ~ です。理由は二つあります ・・・」と冒頭で数を予告するこ とができれば , 効果的である。 話が違った方向に行ってし まったり , 話が長い人は「詳 細」から話し始めている可能 性がある。結論を述べる場合 は最初と最後の 2 回言って , 「結論のサンドイッチ」をする と効果的である。 1 . 序論 「結論」を述べたり , 話の「導入」をすると 自分の一番のアピールポイント ( 学生時代に力を入れてきたこと , さまざまな経験 , 自分の性格など ) 2 . 展開・本論 結論を説明する「理由」や 序論を展開する「本論」の部分 1 . 序論の内容を証明する , 客観的根拠となる具体的なエピソード 経験から得た教訓や利益 , 自身の中に培われたこと 3 . 結論 ( まとめ ) 最後に「詳細」を述べたり , 序論・本論を受けて「結論」を述べると一 入社してからどう生かすか 経験から得た教訓や利益 , 培われたことを ,
第 1 章 プレゼンテーションとは 2 3 ③場所や会場を確認する一どこでするプレゼンテーションかー プレゼンテーションを行う会場や場所は , 聞き手の分析とも関係する。会場や部屋の広 さ , 不特定多数の人が集まる場所なのか , または特定の人が聞き手として参加するのか , 舌し手はどのような所で話すのかを確認して , 話し方も工夫していかなければならない。 なお , 会場設営などの準備段階で , 設備や使用可能な視聴覚機器も決定するだろう。 ( 3 ) プレゼンテーションの 3P プレゼンテーションの 3 P とは , プレゼンテーションを行うときの三要素である。プレ ゼンテーションを行う上で , どの P も押さえておきたい要素である。 構成・内容 Plan 話し方 Presentation Skill 話し手の人柄 Personality 一三ロ ① PIan = 構成・内容 プレゼンテーションを行う上で最も重要な要素である。 i . 時間配分を考えて , 集めた資料の取捨選択をする プレゼンテーションの時間に合わせて話す項目や具体例などを選択する。 ⅱ . 原稿を作成する 舌す内容が決定したら , プレゼンテーションのための原稿やスピーチメモを作成する。 基本的な原稿の作成方法には次のようなものがある。 a . 三段構成・・・・・序論 ( 導入 ) ・本論 ( 展開 ) ・結論 ( むすび ) の三段で構成する 序論では話の目的や意図 , 話の全体像を示し , 本論では , 論証や 証明を , 結論では , まとめや考察を述べる話し方の方法。 四段構成・・・・・「起・承・転・結」を基本とする構成の方法 b . 三段構成の序論が「起」に , 本論が「承」に , 結論が「結」にそ れぞれ相当する。「転」は , 話の転換に当たる箇所で , 三段構成よ り複雑な構成となる。 説得力のある構成を考えるためには , 正しい結論を得るために工 一三ロ
ー基礎編 5 8 宀 込みに移る。聞き手はどんなことにこだわりがあり , 何を知りたいのか , 自分は何を伝え たいのか , 何を説得したいのかなどを考えよう。たとえば , ペットとして大を飼いたい人 に向かって , 猫がどんなに賢く , 飼いやすいかなどをいくら一生懸命提案しても , 話は聞 いてもらえない。また , どの大にするかを決めたい人に対して , 大の品種や習性 , 特徴な 聞き手は理解しにくく , どの大にするか決め ど , 相手の聞きたい内容が不足していては , かねることになる。聞き手のニーズと自 伝えたいメッセージを明確にするための準備 分の伝える内容が一致し理解されること で聞き手に何らかの影響を与えることが ① 目的の明確化 できて , 初めてプレゼンテーションの目 ② 聞き手のニーズの分析 的を達成したといえる。 ③ 理解しやすい内容の構成 3 . 内容の構成 聞き手についての分析ができ , 何について話すかその目的が明確になれば , 次の段階は , それをどう話すか , つまり , 筋道を立ててわかりやすく理解してもらえるように , 話す内 容の構成を考えることである。この作業をすることによって , 限られた時間の中で , 話し 手にとっては自分の伝えたいことが整理でき , 聞き手には話された内容がわかりやすく , 全体像が把握しやすいというメリットがある。 全体の構成としては , 一般的に序論 (lntroduction) ・本論 (Body) ・結論 (Conclusion) の 3 部構成が基本である。 序論はプレゼンテーションの導入部である。これから何を伝えるのか , 伝える内容の背 景 , 意義 , ポイントなどを簡単に述べる。本論は , プレゼンテーションの中核をなすもの プレゼンテーションの構成 本論 ( 80 % ) 伝えたい内容を順番に その裏付けとともに話す 結論 ( 5 ~ 10 % ) 舌した内容を要約し , 結果を提示する 序論 ( 1 0 ~ 1 5 % ) 何を伝えるのか , その内容の背景 , 意義 , ポイントを話す 一三ロ 宀
第 6 章ディベ ート・ディスカッション・ ーティング 1 5 3 、ミ ( 2 ) ディベートのルールと方法 ①ディベートの基本的な条件 ディベートには , 設定された論題について , 肯定・否定いずれかの立場をとるディベー ター ( 討論者 ) が必要である。競技として実施する場合は , 2 人ないし 3 人が一組になっ て行うチームディベートが一般的である。 ディベーターに加えて , ディベートを実施するためには , 司会者・タイムキーパー・審 判員・聴衆の参加が必要である。 演壇を中心に , 聴衆から見て左側に肯定者側 , 右側に否定者側の座席とすることが一般 的である。立論のスピーチは , 肯定者側が最初にあり , 後で否定者側がスピーチを行う。 ディベートで , もっとも大切なことは公平性である。後でスピーチをする者ほど , それ までの議論をふまえて議論することができる。つまり , 最後に発言するものが有利になる ので , 立論では否定者側が , 反駁では肯定者側が最後にスピーチをすることにより , 両者 の平等性を保証する。また , ディベートでは , タイムキーパーの役割は重要で , 時間の配 分に公正さを失わないように注意しなければならない。 壇 演 司会 タイムキー ノヾ 審判員 じ、 ②ディベートの立論と反駁 ディベートは , 短時間で自説を主張しなければならない。できるかぎり単純な構成でス ピーチを行う。そのためには , 序論・本論・結論というシンプルな三段構成が望ましい。 序論・本論・結論は , 序論では , 肯定・否定についての自分の立場を明確に述べる。本
第 4 章内容の構成ー ス実務」の授業について , 2 番目に大好きなクラブ活動 , 最後にボランティア活動につい て話すこととする。 つぎの作業は , それぞれのキー・ポイントについて , どのような切り口で話すかを考え , 実例や根拠などをまじえ , 具体的に話していこう。例えば , キー・ポイント 1 : 「ビジネ ス実務」という科目については , ①なぜこの科目を受講したか , ②その科目でどのような ことを学んだか , ③この科目が将来どのようにかかわるかなど , ① ~ ③がサプ・ポイント (SP) となる。同様に , キー・ポイント 2 や 3 についてもそれぞれの切り口を考え , ① ~ ③程度のサプ・ポイントを挙げて詳しく話す。キー・ポイントやサプ・ポイントの数は与 えられた時間によって調整する必要がある。 序論では , 挨拶のあと , 聞き手の関心を促すために , テーマに関連した話をしたり , あ るいは , はじめに結論を話すと聞き手の関心が得やすいこともある。この場合結論として , 本論をまとめる過程で「ビジネス実務」の授業中での電話応対などのロールプレイング演 習 , クラブ活動でのイ中間とのやり取り , ボランティア活動での聴衆とのかかわりなどの経 験を通して , 人とコミュニケーションすることは仕事をする上での基本であり , どんな職 業に就いても大切であることに気がついた。そこで , この自己 PR に「人とのコミュニケ ーションは仕事の基本」というサプ・タイトルを付けた。これは , 学生生活で力を入れた ことを話すことで得た伝えたいメッセージであり , 結論にもつながる。 結論では , 本論で伝えた三つのキー・ポイントを要約し , 一番伝えたいメッセージを再 度強調する。 舌題選び 舌題の絞り込み 一三ロ - 三ロ 受講科目 0 人との コミュニケーションは 仕事の基本 クラブ活動
ー基礎編 6 0 伝えたいことを強調 ( 4 ) つなぎの言葉 し , 再度確認する。 どを簡潔に整理し , 聞き手にどのような行動をしてもらいたいのか , ージの骨組みができる。この場合 , はじめに , ビジネスコースで開講されている「ビジネ ( キー・ポイント ) 。本論で話すキー・ポイントをしつかり押えておくと , 伝えたいメッセ 話したいことを「受講科目」 , 「クラブ活動」および「ボランティア活動」に決めたとする 学生生活で力を入れていることを中心に話すこととしよう。いくつか挙げたポイントから , はじめに , 話したいことをいくつか挙げてみる。ここでは , 将来の就職面接も考慮して , からはじめよう。 ます , あなた自身の何を話すのか ( 話題 ) を考え , 伝えたい内容のポイントを絞る作業 では , ゼミナールなどのクラスで自己 PR をする場合の構成について考えてみよう。 えられた時間を有効に活用できる。 割合で作成する。この作業によって , 再度 , 伝えたい内容 , わかりやすさを確認でき , 与 る。発表時間を考えながら , 序論で全体の 10 ~ 15 % , 本論で 80 % , 結論で 5 ~ 10 % の 伝えたい内容が決まれば , 話す順番に従って発表のための全体のアウトラインを作成す 4 . アウトラインの作成 伝えたい内容を漏らすことなく , 訴えたいことが明確になるというメリットがある。 らの言葉を用いることは , 話し手にとっても伝えたい内容を重複することなく整理でき , 聞いたことを頭の中で整理しやすくなる。つまり , 聞き手の理解を促すことになる。これ るというサインの言葉を用いる。それによって , 聞き手は話を聞く準備ができ , これまで 次のキー・ポイントに移る場合 , 次の話題へ移行する前に先の話題との関連や中締めをす 序論から本論 , そして結論に移る場合 , また , 本論の中でも最初のキー・ポイントから つの点について」「気をつけていただきたいことは」などがつなぎの言葉に当たる。 「はじめに」「つぎに」「話は変わりますが」「ここまでが〇〇についての話です」「以上 3 確にする。プレゼンテーションでそれらを表したい場合は , つなぎの言葉を用いるとよい。 どには段落の区切りをする。それによって , 文章の前後の関連や伝えたい内容を読者に明 文章では視点や観点あるいは話題を変える場合 , さらに , 特に何かを強調したい場合な
第 5 章企画・提案のためのプレゼンテーション一 相手は何を望んでいるのか , あるいは , どのような考え方を持っているのかを押さえて おく必要がある。また , 何が問題か , 何を目指すのか , 企画・提案を実現するにあたって 何が必要なのか , 質的・量的にどのような効果が得られるのかなど , 「 what 」に対して考 慮する項目は多い。 ⅲ . When いっするのか , いつまでにするのか , 時間や期日に関する配分を明確にする。 ⅳ . Where どこでするのか , どこで発生しているのかなど , 場所を明確にする。 v . Why この企画・提案の目的は何か , なぜ必要かなどを明確に説明する。 ⅵ . HOW どのような経緯でそうなったのか , どのような手順でするのか , 何がどれだけ必要なの かなど , how to や howmany, how much に関する内容が提示されていることを確認する。 企画・提案で大切なことは , 聞き手がその必要性を感じ , 納得して受け入れてくれるこ とである。したがって , 企画・提案するものは何なのか , どのような効果が得られるのか を理解してもらえるよう , 現状分析や問題点の情報収集 , 説明する順序 , 表現方法などを 吟味する必要がある。 3 . 企画・提案の構成 企画・提案する場合の構成は , 基本的に序論・本論・結論の 3 部構成で考える。 序論はとても重要である。最初の部分で , 聞き手が興味を抱き , その気になるか , いわ ゆる「つかみ」の役割を果たしているからである。何のためにどんな企画・提案をするの か , その目的 , 問題となっている背景 , さらに聞き手にとってのメリットなどをコンパク トにまとめ , これから話すことのアウトラインを提示する。 本論では , アウトラインにしたがって企画・提案する内容を具体的に提示する。問題と なっている現状分析や課題を示し , そこから何を目指すのか , 実現するためのシステムや 機能の概要 , 実現するとどうなるのか , どのような効果が得られるのか , 活動の手順 , ス ケジュール , 必要なもの ( 人・金 ) などを数値 , 事例 , 競合他社の動向などを示しながら まとめる。 結論の部分は , 企画・提案したことを再度強調し , 熱意を持ってアピールすることによ 14 5
146 ー実践編 り信頼を得る。 企画・提案の構成 挨拶 , 企画・提案機会への謝辞 序論 企画・提案の目的やテーマ 企画・提案内容の背景 企画・提案内容の現状分析 , 問題点 , 理由 目指すものは何か ( ねらい ) 本論 実現するためのシステム , 実現したときのイメー ン 期待される効果 , 将来的展望 実現に必要なもの , 手順 , 期間 強調点のアピール・メリットの確認 結論 刃い 一三ル 確 の 用 謝辞 では , 次の文の内容を整理し , 企画・提案のアウトラインを具体的に考えてみよう。 あなたが勤務する大学では , 少子化に伴い , 年々入学する学生数が減少している。 昨年のオープンキャンパスでも , 一昨年の来学者数に比べ 20 % の減少である。そこで ,
第 1 章プレゼンテーションとは一 夫されてきた論理的思考法を知っておくとよい。代表的なものが えんえき きのう 演繹法と帰納法である。 2 5 一般的な前提から論理的推論を行い結論を導き出す方法 代表的なものに , 「大前提→小前提→結論」という三段論法がある。 d . 帰納法・・・・・個別の事象に共通する要素を抜き出し , そこから一般的結論を得る 方法 経験則から推論し結論を得る方法をイメージするとよい。 c . 演繹法・ また , 機器を用いて示す資料の確認 , 機器の操作についても本番を想定して練習してお 内容・分量などを調整し , 強調すべき点や熟語の読みを確認しておく。 して原稿やスピーチメモを読んでみることは必要である。 本番では資料や原稿を棒読みすることは論外であるが , 事前に時間を計りながら声を出 ⅲ . 原稿の推敲とリハーサル すいこう 「以上で終わります」「ご静聴ありがとうございました」など。 「みなさん , こんにちは」「〇〇と申します」 話の最初と最後に挨拶をすることも忘れてはならない。 は , 三段構成を基本とすることをすすめたい。 一般的にスピーチでは , 構成はできるだけシンプルなものがよい。 3 分程度の短いもの 果的である。 最初に結論を述べることや , 最後に結論を繰り返すこともわかりやすさにつながって効 成で話すのがよいか」を優先的に考えるべきなので , 必ずしも法則にとらわれる必要はな ションでは , 「聞き手にわかりやすく , 話し手の意図を十分に伝えるには , どのような構 構成の方法は , 文章を書く場合とほば同じであると考えてよい。ただし , プレゼンテー きたい。 ② Presentation Skill きか」を考えることである。 話し方 声の大きさは適切か , ペース , スピード , ポーズ ( 間 ) が考慮されているか。用語は平 易で簡潔かなどに留意する。すべては「聞き手にわかりやすく伝えるためには , どうすべ