ー実践編 関係やコミュニケーションを円滑にすることを主な目的としたプレゼンテーションは「好 感度獲得型」プレゼンテーションといえる。好感度獲得のプレゼンテーションを行う場面 は決して少なくない。そして , 多くの場合 , それは今後に続くコミュニケーションの大切 な上台となるのである。たった 1 分程度の自己紹介でも大切なプレゼンテーションの機会 だということを意識するようにしよう。 ( 3 ) 感じのいい自己紹介のヒント ・はじめに挨拶をする。 ( 例 : 「みなさん , こんにちは」と切り出して話し始める ) ・名前はフルネームを名乗る。 ( 意外に実践している人は少ない ) ・自分を印象づけるための「ひとこと」を工夫して用意しておく。 ・最後にもう一度 , 名前を名乗る。 ・結びの挨拶を述べる。 ( 例 : 「気軽に話しかけてください。よろしくお願いします」 ) 自己紹介や自己 P R をするときに自分自身の何を紹介するか , を考えるためには , ます は自分というものがわからなければならないだろう。そこで , まず最初に自分自身のこと をあらゆる角度から見つめる必要がある。 また , この自分自身を見つめることは , の確立へと続くプロセスの入口でもあることを理解しておこう。 自己分析・自己認知→自己受容→自己イメー ジできるように , カジュアルな場面とあらたまった場面で書き分けられるように を想定して , 同じような事柄でもどのように表現し伝えるか , そのことをイメー 言い換えれば , ネタの洗い出し作業をする表である。いろいろな場面や聞き手 次のシートを使って , 自己紹介や自己 P R の材料を集めてみよう。 ・「自分」のことを考えるセッション = 自己紹介ネタシート。 ン している。 記入の注意点 a . この表に記入するときは , 静かに心を落ち着けて取り組むようにする
先に自分の学問的見解を周知させる目的で「論証型」のプレゼンテーションを 行う。 次に具体的行動を促す目的で「説得型」のプレゼンテーションへと移行する。 例 : 工コロジー関連の学会発表や , 核兵器の脅威を検証したうえで , 具体的行 動を訴える平和学の学会発表などが挙げられる。 プレゼンテーション能力の必要性 学生のキャンパスライフに視線を向けてみても , 部活動での説明や発表 , ゼミや卒業研 事や講習会で説明することもプレゼンテーションである。 の機会は増えるばかりである。町内会の集まりで説明することも , 主婦を対象にした習い とであれば , 学校や地域社会 , 学術団体 , ボランティア組織などでもプレゼンテーション 活動」という捉え方をして , 人前で説明することがプレゼンテーションである , というこ 社会におけるさまざまな場面での「表現 前述したプレゼンテーションの定義のように いえるだろう。 ゼンテーションが行われている。ビジネスシーンはまさに , プレゼンテーションの連続と の新規事業や異業種への参入 , 新システムの導入 , 業務の改善提案など , さまざまなプレ とより , 社内でも企業環境を取り巻く社会情勢の変化を背景に , 企業活動の多角化として ビジネスの現場でのプレゼンテーションは , クライアントに対して提案をすることはも い ) 生活のあらゆるシーンにプレゼンテーション 自己 P R することは自分自身をプレゼンテーションすることであり , また , 就職活動や転職活動における面接で , 採用を勝ち取るために , 自身をアピールし , 究の発表など , プレゼンテーションの機会は多い。 第 1 章 内容を十分に理解させる。 2 . プレゼンテーションとは e . 論証型十説得型の複合・連動型 ンする場合がこれにあたる。 例 : 企業において , 重要なプロジェクトの内容や計画などをプレゼンテー 次に行動を促す目的で「説得型」のプレゼンテーションを行う。 ンヨ プレゼンテー ション
100 ー実践編 ・自分の「長所」を見出すセッション = 「印象」を考えるシート記入をふまえて あなたの友人は , あなたのことをどのように見たり , 思ったりしていたか , 次 一致しなかったことはありましたか。それはどのようなことでしたか。 ①友人があなたについて記入してくれたことと , 自分自身が思っていたことが一致 自分の「印象」を考えるシートの記入をふまえて の問いに対して , 枠内に文章で答えるかたちで整理してみよう。 友人も自分でも , したのはどのようなところでしたか。 と思っていた。 ② 自分では , と思っていたが と思われていたが 友人には , つ 他者にはそう思われていないみたいだ。 自分ではそう思っていなかった。
第 1 章 ( フリーワード ) ・ ( ( フリーワード ) ・ ( 自己紹介と自己 P R 1 0 1 ・自己 PR を考えるセッション = 自己 PR を 20 字程度の文章にしてみよう。 や自分の人柄 ( こういう人物 ) を伝える 20 字程度の一文を書いてみよう。 これまでのセッションでやってきたことを生かして , 自分のセールスポイント 自分のセールスポイントは 自分の「印象」を考えるシートの記入をふまえて 何かタイトルを決めて , 下のフリーワード欄に伝えたいことを文章にして書いて 20 字なら意外と簡単に書けるものです。他にも伝えたいことはありませんか。 自分の人柄 ( 自分自身の人物像 ) は みよう。
9 8 ー実践編 「あなたの自己 PR をしてください」という投げかけ方をされるとは限らない。「〇分であ なたの自己紹介をしてください」 ( 自己紹介イコール自己 PR ではないが , 簡単な自己紹 介ではなく , 自己 PR の要素も盛り込んで答えてもいいかは , いわゆる場の空気を読んで 対応してほしい ) , 「あなたの長所はどんなところですか」「学生生活で力を入れたことに ついて話してください」など , 質問のかたちは変化するが , このような質問の投げかけに 対しては , 自己 PR をすればいいと解釈してよさそうである。 就職活動は , モノを売り込むときと同じように 「自分」という商品の特徴とその商品 を買うことで得られるメリットについて自己 PR というかたちでプレゼンテーションを行 い , 相手に買ってもらう = 採用してもらうための活動という捉え方ができる。 自己 PR でも , 「商品の特徴 = 自分のこれまでの成果 = 自分にできること」と「商品を 買うメリット = 入社後 , あなたがどのような成果をあげられるか」という 2 点がポイント になる。かといって , 優等生を目指した自己 PR では本当のあなたの魅力は伝わらない。 自己 PR を聞く人 ( 読む人 ) も完璧な優等生を求めているわけではない。 あなたの魅力を余すところなく伝えられるように , 自己 PR はあらかじめ考えて準備し ておこう。 ( 2 ) 自分の強みをまとめる いざ自己 PR をまとめようとすると , 自分には PR できるようなところが一つもないの ではないか , この程度のことで長所と言っていいのかと発想がどんどんマイナスの方向へ 向いていくことがある。 このようなマイナスの発想を回避するためには , 自己 PR をまとめる前段階で , 自己分 析をしつかりとしておく必要がある。自己分析とは , 現在までの自分自身の歩みをたどり , 自分のこれまでの人生の棚卸しをするようなことである。自己分析をすることで , なんと なくでも「自分はどんな人間でどんな特徴があり , 将来はどんな人生を歩んでいきたいか」 という自分自身の考え方が見えてくるのである。 自己 PR には , こう話さないと ( 書かないと ) いけないといった決まりはないが , 話せば ( 書けば ) 魅力的になるといった表現のしかたはある。 今までの人生を振り返り , 最も自分の PR したいことを発表するのがいいが , ( 大学生 の場合は ) 高校の出来事を自己 PR に使うことは好ましくない。高校時代のことを自己 PR にしてしまうと「大学に入ってからは何にもしてこなかったの ? 」と思われてしまう からである。高校から継続していることを自己 PR にするのはかまわない。
6 6 基礎編 第 5 章 情報の収集と整理 1. 情報収集の基本 ( 1 ) 情報収集の必要性 あることがらや用語について , 相手に説明する場合を想定してみよう。ます , その事柄 や用語について自分自身がしつかり理解していなければならないし , 相手から質問があっ た際には十分な対応ができなければならない。また , 自分のプランを相手に説明 ( 説得 ) しようとする場合には , 「独りよがり」や「思い込み」ではないことをデータ等によって きちんと示さなければならない。プランの独自性を際立たせるためには , 関連事項につい て十分な検討がなされていなければならないだろう。 いすれの場合にも , 適切 , 広範 , かっ正確な情報収集が必要となる。また , 当たり前の ように使っている「情報」という言葉は , 広辞苑 ( 第五版 ) によると「①あることがらに ついてのしらせ , ②判断を下したり行動を起したりするために必要な , 種々の媒体を介し ての知識」となっている。つまり , プレゼンテーション以前の段階においても , さまざま な企画・立案をするにあたって , そのアイディアの源となる知識は , 日頃の情報収集によ って蓄えられたものにほかならない。 ( 2 ) 客観情報と主観情報 客観情報は , その情報に間違いがない限り , 誰が扱っても同じ内容になる情報である。 各種スポーツの記録とか , 国政調査のデータ , 科学実験で得られたデータなどが典型的な ものだが , このほかに , この世の中に実際に起こった事実を知らせるニュースも客観情報 ということができる。さらに , 客観情報から必然的に導き出すことができる結論もまた , 客観情報である。例えば , 国政調査のデータから「日本では高齢化が進んでいる」という
第 1 章プレゼンテーションとは一 耳にする。では反対にアガらない人 , 緊張しない人がいるのだろうか。ほとんどの人が人 2 9 ようだが , 前でスピ 現代人は常にアガリ , 緊張するような状況にさらされているのではないだろう ーチをしたり , 何かをするときにアガってしまうのではないだろうか。大げさな ことがないことをするとき」や「大切な場面で何かをするとき」「苦手なことをするとき」 緊張する状況はいくっかある。「たくさんの人の前で何かをするとき」「今まで経験した などである。 column 自分自身が感じる緊張の原因は , 以下にあげる三つの中のどのタイプか , てみよう。 ・準備不足 考え スピーチの内容を詰め切れていない , 声に出して練習できていない , 自分 ・・・などの準備不足から来る不安 のスピーチの所要時間が把握できていない・ が原因。 ・プレッシャー過敏 自分はうまく話せるだろうか , 自分のネタは笑ってもらえるだろうか・ など , 意識か聞き手に向いていなくて , 自分に向いてしまっていることから 来るプレッシャー ・異空間アガリ 演壇に立った瞬間 , 大勢の目線に圧倒されてしまった , 面接室に入ったと ・・・など , 初めての場 たん , 見るからに社長らしき人が 3 人もすわっていた・ 所で初めての人と会う高揚感がコントロールできず , アガリに発展してしま うケース。 大きく三つのタイプに分けてあるが , 原因はどれかーっだけに該当するという ことではなくて , いくつかが複合している場合もある。 自分の緊張は何が原因かを把握することで , なるべくその要因を排除するよう にもっていこう。
第 2 章 3 1 ツールの種類と活用 プレゼンテーションとは , 商品や企画 , あるいは報告や考え方などを , 話し方によって 説明・説得していくわけであるが , その成果や評価がその後の仕事や自分を大きく変える ことになる。だからこそプレゼンテーションを少しでもインパクトのあるものにしなけれ ばならない。そこで強い印象を残し成果を出すために , さまざまな工夫が必要となってく d . 瞬時に多くの情報を伝えることができる 注意を集中させることができる b . 印象に強く残る ひと目見ただけでイメージがわく ツールを活用する利点は , 次の 4 点である。 この工夫に使うものの一つが , ツールである。 c . a . る。 に訴えるもの」は音響設備などと呼ばれ , 代表的なものがマイクである。 えるもの」をビジュアルツールと呼び , その代表的なものがパワーポイントである。「耳 ツールは , 一般的に「目に訴えるもの」と「耳に訴えるもの」に大別できる。「目に訴 ある。それを見つけ活用することで , プレゼンテーションの成果は大きく向上する。 は , 自分自身の技能をはじめ , 会場や人数 , 器具や制限時間など , 条件にあったツールで うえで , 自分にはどのツールが最適なのかを見つけることが重要である。最適のツールと ツールにはどのようなものがあり , それらがどのような特徴を持っているのかを理解した 必要がある。その準備として , ツールを用意することがある。プレゼンテーションで使う プレゼンテーションを成功させるためには , なによりもしつかりとした準備をしておく l. プレゼンテーションツールのいろいろ
102 ー実践編 ( 3 ) 自己 PR の構成 自己 PR には三 0 の構成要素がある。三 0 の構成要素を下図のように三段構成にしてバ ランスよく組み立てて話すと , 自分のことが相手にスムーズに伝わる自己 PR になる。 ころ ■自己 p R の三つの構成要素と三段構成 「で , 結局何が言いたいの ? 」「話がわかりにくい」など と言われる人には , 結論がな い , もしくは伝わっていない ことが考えられる。 結論を説明する理由は説得 力を出すためにも , できれば 三つ挙げることが望まし い。ただし , 四つ以上になる と分かりにくくなるので , つ以内にまとめる。「結論は ~ です。理由は二つあります ・・・」と冒頭で数を予告するこ とができれば , 効果的である。 話が違った方向に行ってし まったり , 話が長い人は「詳 細」から話し始めている可能 性がある。結論を述べる場合 は最初と最後の 2 回言って , 「結論のサンドイッチ」をする と効果的である。 1 . 序論 「結論」を述べたり , 話の「導入」をすると 自分の一番のアピールポイント ( 学生時代に力を入れてきたこと , さまざまな経験 , 自分の性格など ) 2 . 展開・本論 結論を説明する「理由」や 序論を展開する「本論」の部分 1 . 序論の内容を証明する , 客観的根拠となる具体的なエピソード 経験から得た教訓や利益 , 自身の中に培われたこと 3 . 結論 ( まとめ ) 最後に「詳細」を述べたり , 序論・本論を受けて「結論」を述べると一 入社してからどう生かすか 経験から得た教訓や利益 , 培われたことを ,
第 2 章 ろいろなツールの中から最適なものを選択するべきである。 ツールの種類と活用 3 3 そして , ツールを作ることに膨大な時間と労力を費やし , そこでカ尽きて , 肝心のプレ ゼンテーションのときに自分の能力を発揮できないという事態に陥らないことである。 ツールはあくまでもプレゼンテーションの効果をあげるための補助的役割であることを 忘れてはならない。なによりも自分の言葉で確信をもって話し , 伝えるべき情報を吟味し , 聞いてもらおうという熱意をもって伝えてこそ , ツールの効果が生きてくるのである。 2 . 文書ツール 文書ツールとは , 一般的に配付資料といわれるものである。このツールは , 誰でもが容 易に作成でき , コストもかからない。しかも記録として残るという利点があり , 最も多く 活用されているツールである。なによりも , このツールは会場での設備が不要で , 聞き手 の人数を制限する必要がないというメリットが大きく , 手軽に活用される理由でもある。 い ) レジュメ 要約・概要と訳される , 最も一般的なツールである。これはプレゼンテーションのスタ ート時に配付されることが多い。聞き手にとっては常に自分の手もとにあり , 何度でも確 認できるという安心感が得られるツールである。 一方で , 聞き手は自分の好き勝手なタイミングで資料に目と注意を向け , プレゼンテー ションそのものに耳や目を傾けないことと , 参加者数分を事前に準備しなければならす , 手間と費用がかかることが欠点である。 一般的にレジュメは , 統一した用紙にプレゼンテーションの概要と , データなどの詳し い資料をまとめて作成する。内容としては , 話し手が伝えたいこと・表現したいことを , 筋道を立ててわかりやすく文書化したものである。つまり , 収集した情報を分析し , 結論 を明確化して , 時間の流れに沿って , 話し手自身が伝えやすく , 聞き手が理解しやすいレ ベルで , ストーリー性をもたせて構成した文書資料といえる。特に聞き手があとで上司や 他の人に説明するような場合に , 利用価値の高いツールである。 ただし , 配付するタイミングや , どこまでの内容を書くのかがポイントである。あまり 詳しく書きすぎると , 肝心のプレゼンテーションの必要性がなくなるとともに , 評価を下 げる一因ともなる。また , メモ書きができるスペースを作ることも必要なことである。