第 1 章 プレゼンテーションとは 2 3 ③場所や会場を確認する一どこでするプレゼンテーションかー プレゼンテーションを行う会場や場所は , 聞き手の分析とも関係する。会場や部屋の広 さ , 不特定多数の人が集まる場所なのか , または特定の人が聞き手として参加するのか , 舌し手はどのような所で話すのかを確認して , 話し方も工夫していかなければならない。 なお , 会場設営などの準備段階で , 設備や使用可能な視聴覚機器も決定するだろう。 ( 3 ) プレゼンテーションの 3P プレゼンテーションの 3 P とは , プレゼンテーションを行うときの三要素である。プレ ゼンテーションを行う上で , どの P も押さえておきたい要素である。 構成・内容 Plan 話し方 Presentation Skill 話し手の人柄 Personality 一三ロ ① PIan = 構成・内容 プレゼンテーションを行う上で最も重要な要素である。 i . 時間配分を考えて , 集めた資料の取捨選択をする プレゼンテーションの時間に合わせて話す項目や具体例などを選択する。 ⅱ . 原稿を作成する 舌す内容が決定したら , プレゼンテーションのための原稿やスピーチメモを作成する。 基本的な原稿の作成方法には次のようなものがある。 a . 三段構成・・・・・序論 ( 導入 ) ・本論 ( 展開 ) ・結論 ( むすび ) の三段で構成する 序論では話の目的や意図 , 話の全体像を示し , 本論では , 論証や 証明を , 結論では , まとめや考察を述べる話し方の方法。 四段構成・・・・・「起・承・転・結」を基本とする構成の方法 b . 三段構成の序論が「起」に , 本論が「承」に , 結論が「結」にそ れぞれ相当する。「転」は , 話の転換に当たる箇所で , 三段構成よ り複雑な構成となる。 説得力のある構成を考えるためには , 正しい結論を得るために工 一三ロ
第 3 章 ①イントネーション ( 抑揚 ) 話し方の基本 4 9 イントネーションは抑揚と言われるもので , 文末に表れる話し手の感情である。話し手 の驚きや喜び , 断定や疑問など , その時々の気持ちを文末に表現するものである。 ・次の文章を , イントネーションを変えて読んでみよう。 断定的な表現になる。 同じように文にも高低がある。例えば , 文末を上げれば ( プ ) 疑問形に , 下げれば ( 鳶 ) あめ ( 雨 ) とあめ ( 飴 ) のように単語はアクセントがかわると意味が変わってしまう。 A . 本をよく読む ( 疑問 ) どうしたの ( 尋ねる ) あ , 雨 ( 驚き ) ②プロミネンス ( 強調 ) A . A . B . 本をよく読む ( 断定 ) どうしたの ( 叱る ) あ , 雨 ( 落胆 ) B . B . プロミネンスは強調である。自分の気持ちや主張を伝えるとき , その言葉や話の部分を 強調してはっきりと伝える。強調する部分によって伝えたい内容が変わってくる。① ~ ④ の傍線部分を ( 大きく , ゆっくり , または低く , 強く ) 強調して言うと話し手の意図が伝 わる。 「私は①昨日②梅田へ③友人と④映画を見に行きました」 ① ② ③ ④ 一昨日や今日ではなく行ったのは昨日である 京都でもなく神戸でもなく行ったのは梅田である 家族とではなく友人と行ったのである ショッピングではなく映画を見に行ったのである
基礎編 5 2 ④ スピード ( 話す速さ ) 舌の速度は , 話す場面や相手によって変わる。若者同士であれば多少早ロでも理解でき るであろうが , 高齢者や子どもには比較的ゆっくり丁寧に話す方がよい。ただ早ロすぎて はついていけなくなり , 遅すぎると相手をイライラさせてしまう。また , 難しい内容や相 手を説得する場合などは特にゆっくりと , 漫才やスポーツ放送などを話すときは軽快にテ ンポよく話す方がそれらしく聞こえる。一般的には 1 分間に 300 ~ 350 字程度が聞きやす い速度といわれている。いすれにしても聞き手によく理解できるスピードで話すことが基 本である。 ⑤チェンジ・オプ・ペース ( 緩急自在 ) チェンジ・オプ・ペースは緩急自在である。イントネーションやプロミネンス , ポーズ , スピードをその場の状況に合わせて自在におりまぜながら表現する , 総合した技術のこと である。例えば野球でピッチャーが , ストレート , カープ , スライダーなどの球種やポー ルの速度を相手のバッターに合わせて投げ分けるというようなイメージである。チェンジ・ オプ・ペースの技術が身につくと , メリハリのある生き生きとした話し方ができるように なる。 以上のような話し方の五つの基本技術を身につけ , 聞き手をひきつける話し方をするこ とでプレゼンテーションを成功へと導こう。 二二ロ 4 . バーバル表現とノンバーバル表現 プレゼンテーションを行うには , その目的に沿って言いたい事や考えていることを表現 していかなければならない。表現のための技術には , バーバルとノンバーバルがある。そ れぞれ言語と非言語と言い換えることができるが , 表現技術を磨くためにはその両方が大 切である。 会話や文字など言語によるコミュニケーションをバーバル・コミュニケーションといい , 話し手の表情や態度 , 服装や身だしなみ , そしてボディーランゲージとしてのジェスチャ ーや身振り手振り , 聞き手との視線のやりとりやアイコンタクトなどの非言語によるコミ ュニケーションをノンバーバル・コミュニケーションという。聞き手を納得させるにはこ のノンバーバル・コミュニケーションを効果的に活用して表現することが大切である。 二一口
基礎編 2 6 ③ 舌し手の人柄 Personality プレゼンテーション内容を聞き手に伝えるための究極の要因は , 話し手の人柄なのでは ないか。聞き手は話し手の人格的な信頼性を敏感に嗅ぎ分けている。話し手は , 誠実さ , 余裕 , 情熱など人間性を聞き手に感じさせる必要がある。 礼儀をわきまえた感じのよい態度 , 聞き手に不快さを感じさせないクセのないしぐさや 話し方など , 聞き手を納得させたり , 魅了するのも , 最後は話し手の人間性にかかってい るのである。 ( 4 ) 説得力のあるプレゼンテーションを目指して ①リハーサルの重要性 たとえば , 自己紹介や何かの説明や発表など , 人前で話をしたときのことを思い出して ほしい。このような経験はないだろうか , 多くのスピーカーがロにする感想である。 「緊張してアタマの中が真っ白になった」 「何を言っているのか , 自分でもわからなくなった」 「アガってしまい , 用意していたことの半分も話せなかった」 これらは , 緊張とアガリから起こることで , 事前に「リハーサル」をすることで , 上記 のような事態を緩和することは可能である。リハーサルをすることが , 気持ちを落ち着か せ , 本番の緊張を緩和し , よりよいプレゼンテーションができることにつながっていくの である。 まったくしたことがないことと , 1 回でもしたことがあることをイメージしてみると , 「まったくしたことがない」ことと「 1 回でもしたことがある」ことでは , 「まったく別の もの」だと感じるはずである。過去に経験したことは , そのまま知識となり , いわゆる経 験則として残っている。今からすることは , 以前にもしたことがあって , どのようなこと か予測ができる , と考えることができるから気持ちの余裕が違うはすである。「本番に強 い」人はいるが , その人は , 決して「ぶつつけ本番に強い」わけではない。本番を想定し て , 謙虚な気持ちを持ってリハーサルをするとよい。 ②アガリとうまく付き合う 前述したように , アガリを緩和するためには , リハーサルを何回か行うことは有効であ る。しかしそれでもアガってしまって・・・・・・とか , 緊張してしまって・・・・・・という感想はよく ニ = ロ
4 3 第 3 章 話し方の基本 日常のコミュニケーションは , 口頭によるものが多く , その中身には言葉による言語コ ミュニケーションと言葉以外の非言語コミュニケーションがある。またそのほとんどが「話 す・聞く」の形で話し言葉を使っている。最近のプレゼンテーションは第 2 章で述べたと おり , 図表やグラフ , 写真や映像など , ビジュアル化された資料を , パソコンのプレゼン テーションソフトや OHC, ポードや配布資料などのツールを駆使して , 効果的に行われ ている。これらのツールを有効に利用することはもちろん重要であるが , やはりプレゼン テーションの中心となるのは「話し方」である。 ここでは , わかりやすく明瞭に話すための声の出し方の基本から , 話し手の意図を聞き 手に明確に届け , 聞き手を説得できるような話法まで , 人前で話すために必要なこと全般 を取り上げる。 I. 話すときの呼吸法 呼吸法には大きく分けて胸式呼吸と腹式呼吸がある。起きて活動しているときは主に胸 式呼吸をしているが , 横になったり , 眠っている時は腹式呼吸に変わる。 ①腹式呼吸の効果 胸式呼吸では , 音声がロや喉などに共鳴して発声するのに対して , 腹式呼吸は横隔膜と 腹筋を使うことで , より多くの息を肺に取り入れ , おなかやからだ全体を使って発声する ことができる。そのため , 腹式呼吸で発声すると , 声量が拡大し , 声のトーンが微妙に丸 くなって声の響きが増すといわれており , アナウンサーや声楽家なども活用している。つ まり , プレゼンテーションにとっても有利なことである。腹式呼吸は難しく考えがちだが 練習すれば誰でもできる。ます , 腹式呼吸の練習から始めてみよう。
第 1 章プレゼンテーションとは一 たとえば , 同じ社内の日本人同士の人間関係に目を向けてみると , 管理職と新入社員が それぞれに , 「あの新人にはこちらの言っていることが理解できていない , 能力的に大丈 夫なのか」「上司の言うことは , なにが言いたいのかわからない」と双方が感じているの かも知れない。 ますは , 話し手は聞き手に伝わる話の構成を意識すること , 特にビジネス上での話し方 は , 聞き手の立場に立った話し方でなくてはならない。 ②プレゼンテーションには総合力が必要「読む・書く力と聞く・話す力」 長らく日本の教育では , いわゆる読み・書き・そろばん ( 計算 ) といわれるように , イ ンブット中心の教育を続けてきた。おかげで日本語の読み書きだけにとどまらず , 英語の 読み書きもできたり , 暮らしの中での計算や暗算もある程度はできる。 ところが , 人の話を「この人は何が言いたいのだろう」と注意して話を聞く , つまり「傾 聴する」といったことや , 人前でわかりやすく話すことのように , アウトブットする訓練 の機会はほとんど無かった。 現代社会に暮らす私たちは , 生活のあらゆるシーンでプレゼンテーションの機会に遭遇 プレゼンテーションには総合力が必要 目的設定力 内容構成カ 内容 Content 情報収集カ 資料デサインカ 視聴覚機器操作カ 表現力 ( 言語・非 = = ロ語 ) 聞き手察知・対応力 環境整備カ プレゼンテーション 能力 資料 Design 伝達 DeIivery
第 3 章話し方の基本 4 7 ( 2 ) 話し方のチェック 話し方の練習をするときには , 誰かに聞いてもらって , 癖や欠点 を指摘してもらうのが上達の近道 である。自分でしゃべっているだ けでは気付かないことも多い。評 価してもらう際には「話し方のチ ェックリスト」を使って確認する とよい。 例文「蜘蛛の糸」の文章をもう 一度声に出して読んでみよう。そ して家族や友人などに聞いてもら い , 率直に指摘してもらおう。 3 . 魅力的に話すということ 話すときの言葉は , 一瞬のうちに消えてしまう。プレゼンテーションは一瞬にどれだけ 強い印象を残せるか , 具体的なイメージを伝える事ができるかが大きなポイントになる。 話し方や発声で聞き手に対する印象も大きく変わる。魅力的に話すための基本的な技術を 身につけ , 聞き手に好印象を持ってもらえるような話し方をしよう。 ( 1 ) 話し方の技術 舌し方には五つの基本技術がある。 a . イントネーション d . スピード きのう病院へ 行くと・・ びよういん ? ひょういんヮ ロロ 000 二二ロ b . プロミネンス チェンジ・オプ・ペース e . 聞き手をひきつける話し方になる。 この五つの技術を応用することで , ポーズ c .
5 0 ー基礎編 ください」 「営業会議は , 午後 2 時から 3 階の会議室で行われます。遅れないよう出席して ・次の文を① ~ ④のそれぞれの部分がきちんと伝わるように話してみよう。 ④ ③ ② ① 行われるのは , 企画会議ではなく営業会議である 午後 1 時の予定が午後 2 時からに変更になった 1 階の会議室ではなく 3 階の会議室である 応接室ではなく会議室で行われる ③ポーズ ( 間 ) 間には以下のような種類がある。 る。間はまさしく「魔」である。 くなる。間が空きすぎると聞き手はいらだちを覚え , 間がないと意味が通じないこともあ ポーズは話し方の要 ( かなめ ) である。間のとり方を間違うと , 一瞬にして話がおかし a . b . c . d . e . 無意識にとる間 一息の長さの間のことをいい , 息継ぎの間である。 言葉の切れ目の間 言葉の意味をはっきりさせるための間で , 句読点の間でもある。 聞き手に理解してもらうための間 話を止めて聞き手を見ながら理解していると感じたら次へ進む。聞き手の反応を 確かめるための間でもある。 考える心理的な間 話し手が一瞬止まって考えたり判断したりするための間である。 強調したり , 注意を引くための間 大事な言葉や印象付けたい箇所の前後に間を取り , その言葉を強調するための間 である。
6 っ 0 LC L.O 「 / 「 / ワ〕っ 0 -4 LC っ 0 4 -4 4 4 4 井 4 4 4 4 4 4 【 0 0 【 0 一 0 ビジュアルツール 3 . (l) パワーポイント ( 2 ) OHP ・ OHC ( 3 ) DVD 4 . その他のツール ( 1 ) ポード ( 2 ) ポスター ( 3 ) マイク ( 4 ) BGM 第 3 章話し方の基本 1 . 話すときの呼吸法 2 . 聞き取りやすい話し方 ( I) はっきり発音するために ( 2 ) 話し方のチェック 3 . 魅力的に話すということ (l) 話し方の技術 4 . バーバル表現とノンバーバル表現 (l) バーバル表現の三つのテクニック ( 2 ) ノンバーバルの重要性 ( 3 ) ボデイランゲージを効果的に用いる ( 4 ) アイコンタクトに気を配る 第 4 章内容の構成 1 . 目的の明確化 2 . 伝えたいメッセージの明確化 3 . 内容の構成 (l) 序論の役割 ( 2 ) 本論の役割 ( 3 ) 結論の役割 ( 4 ) つなぎの言葉 4 . アウトラインの作成 一口田 立ロ一 .0 【 .0 尸 0 0 L-O 【 0 、 6 57
2 0 ー基礎編 するようになってしまった。特にビジネスパーソンの場合 , 社内外において人前で話すこ とや人の話を傾聴することは避けて通れなくなっている。プレゼンテーション能力は当然 に求められる , ビジネススキルとして定着しているのである。 C 0 ー u m n 仕事上の話し方 , 職場でのコミュニケーションについて , アンケート調査をし た結果の中に興味深い内容があるので紹介する。自由記入欄に , 話し方の悩みや 知りたいことについて , 赤裸々に本音が書かれていたのである。次のコメントを 参照してほしい。 ・苦手意識がある人とどう話したらいいか ・相手が自分のことをどう思っているのか気になる ・話しているうちに何を話したかったのか分からなくなる 話しやすいと思われる人になりたい ・人前で緊張せずにうまく話したい ・誤解されていないか不安だ ・間のつなぎ方が分からない ・とっさにどう切り返したらいいのか・・ 「仕事上の話し方 , 職場でのコミュニケーションについてアンケート」 ヤフー・リサーチ : 全国の 2 0 歳 ~ 3 0 歳代のビジネスパーソン 5 0 0 人を対象 上記のコメントにあるような , 現代社会におけるビジネスパーソンが抱えるコ ミュニケーションで気にしていることや悩みについて , その解決法や答えを学校 では教わった記憶はない。 言い換えると , これらは状況判断力 , 情報解釈カ , 自己表現力に関する悩みや 疑問 , 自信のなさの表出であり , すべてコミュニケーション能力に関する事柄で ある。 ( 出典 : 日経ビジネスアソシェ特別編集「実践仕事ができる人の話し方」日経 BP 社 , 2006 )