解剖 - みる会図書館


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1. 超バカの壁

たのです。私立大学ならば別に自由ですが、国立でこんなことをやれば、それこそ国立 の宗教行事そのものになるのです。 そこに墓地まで置いたらもっと大変です。天王寺にはきちんと解剖の遺体のお骨はと ってあるのです。というのもいかに引き取り先がない遺体であっても、いっ遺族が名乗 り出てくるかもしれない。だから納骨堂に全部きちっととってある。墓地というのはそ 、つい、つものです。 追悼式を教授が主宰してやれば、彼らが一種の神官か坊主のようなことを掛け持ちで やることになる。 もしも中立派がいうところの無宗教の墓地を作ったら、その管理もすべて国がやると いうことになる。当然、そこで働くのもすべて公務員になります。それは名前こそ「〇 抛〇教」となっていなくても、実際には国が新しく宗教を作ったのと同じことになります。 国それは政教分離に反する危険な行為ではないですか。管理するのが総務省だとしたら、 いわば総務省教みたいなものがそこで誕生するわけです。憲法ではそれを禁止している というのが私の憲法解釈です。

2. 超バカの壁

自分の判断でしたのですから遺族とトラブルになってぶん殴られても、だれにも文句 は = 一一口えません。結局、その田舎の親族がやってきたときには実際に殴られました。しか しそれで向こうを追い返すことができた。それでこちらも、そこまでやれば向こうは帰 るものなんだなとい、つことがわかった。 向こうも文句を言って気が済めばそれでよかったのです。そういう事実が残れば彼ら メンツ それでこっちが別 の面子は立つ。東大の医者を殴ってやったよ、と田舎で一一一一口えばいい。 に損するわけではありません。解剖はきちんと進むし、仕事のほうも順調にいくわけで す。丸く収まれば献体を了承してくれた遺族も助かる。 もちろん、抗議を受けているときにそんなことをいちいち考えて出ていったわけでは ありません。しかしこちらが本気でやれば、自然に一番いい解決の方向に動くのです。 抛本気でやるべきときに、逃げるのが一番駄目です。面倒なことにも直面するのです。 の 本 面倒から逃げない これは若い人にはなかなかピンと来ないかもしれません。要領よくしたほうがいいの 181

3. 超バカの壁

つほなのです。 仕事というのは、社会に空いた穴です。道に穴が空いていた。そのまま放っておくと みんなが転んで困るから、そこを埋めてみる。ともかく目の前の穴を埋める。それが仕 事というものであって、自分に合った穴が空いているはずだなんて、ふざけたことを考 えるんじゃない、と一一 = ロいたくなります。 仕事は自分に合っていなくて当たり前です。私は長年解剖をやっていました。その頃 の仕事には、死体を引き取り、研究室で解剖し、それをお骨にして遺族に返すまで全部 含まれています。それのどこが私に合った仕事なのでしようか。そんなことに合ってい る人間、生まれ付き解剖向きの人間なんているはずがありません。 そうではなくて、解剖という仕事が社会に必要である。ともかくそういう穴がある。 しんき 抛だからそれを埋めたということです。何でこんなしんどい、辛気臭いことをやらなきや 者いけないのかと思うこともあるけれど、それをやっていれば給料をもらえた。それは社 若 会が大学を通して給料を私にくれたわけです。 生きている患者さんを診なくていいというのも、解剖に向かった大きな理由です。一

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力とい、つことでした。 そのことをきっかけに私はその問題をきちんと考えはじめた。他人の意見も聞いたし、 法律の専門家がどう見ているかも勉強しました。結論としては解剖体慰霊祭というのは 特殊なものであって、今の方法を変える必要はないと考えました。 解剖体の慰霊 そもそも二百五十年前に山脇東洋が最初に死罪人の解剖をやったときに、既に自分の 菩提寺で慰霊祭をやっています。実はこれは当時としては完全な違法行為でした。なぜ ならば解剖されたのは皆、罪人だからです。当時の論理で言えば、死罪になった人とい うのはお上に刃向かった人です。だから、正式な埋葬も、葬式も本来は許されません。 江戸時代の中期に平賀源内が獄死した際、源内の弟子が、せめて着物を払い下げてく 国れとお願いしました。形見分けを望んだわけです。しかし、それすら許されませんでし た。一切何も分けてもらえなかった。それは源内がお上に逆らった罪人だからです。要 するにそんな死体は捨てておけ、というような扱いだったのです。 111

5. 超バカの壁

そんな時代に山脇東洋は解剖した遺体の慰霊をきちんとやっていた。だから、東京大 学でも明治時代に解剖を始めてからすぐに慰霊をやったのです。それ以来、谷中の天王 寺でずっとやってきた。こういう伝統があるのです。 国立宗教の誕生 死者に対して哀悼の意を捧げるという行為は否定できない。そのことはだれにでもわ かることだと思います。しかしそれを無宗教でやるという、その考え方にはまったく意 味がないと思います。そもそも慰霊というのは日本では宗教行事そのものです。仏教の ことを葬式宗教というのも、そのことを言っているわけです。無宗教で慰霊というのは 無理があります。 憲法に書いてある政教分離というのは、国が宗教に直接かかわらないということです。 解剖体の慰霊祭を無宗教でやるとしたらどういうことになるでしようか。東大にはまだ そんな施設はありませんから当然、新しく作ることになります。現に当時、新設の医大 は全部学内に納骨堂を置いていました。そこで教授が献花式と称して慰霊祭をやってい 112

6. 超バカの壁

した。駄目だという反対派もいた。中立派として国立墓地をつくれという少数派もいた。 千鳥ケ淵あたりに国立の無宗教の墓地をつくるということです。現在はこの意見が結構 多くなっているよ、つです。もっとも穏当な意見のようにも見えるからでしよう。 しかし無宗教の墓地という意見にはまったく賛成できません。すでにそういうことに ついては同じような問題を抱えて考えたことがありました。 それは解剖体の慰霊祭にまつわる問題です。東京大学医学部では毎年東京・谷中の天 王寺で慰霊祭をやっていました。そこに解剖体のための墓地もあります。解剖で扱った とむら 方のご遺体はそこで弔う。あるとき、それは憲法違反だと抗議する人が現れました。要 するに国立大学の医学部が宗教施設で追悼行事を行うのは政教分離に反するという人が いて、東大の医学部長あてにそういう投書が来たわけです。 医学部長は、やり方を変えたほうがいいのではないかと言ってきました。何でもよそ の国立大学では築地の本願寺で二段構えの行事を行っている。途中までは無宗教として やって、お経を読んでもらうために坊さんを呼ぶから、そこから先は仏教行事になると いうので、二段構えにしてやっていた。そういう方式を東大も考えてもいいのではない 1 ノ 0

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ば棒に当たるかもしれない。 はじめから自分の筋というものを決めてしまい、自分の好みにこだわって仕事を選ん でいたら、チャンスが減ってしまいます。そういう気楽さは場合によっては不まじめだ とか軽率だととられるかもしれません。しかしある程度軽く動けるくらいにならないと 人は使ってくれません。 私も若いときは頭でつかちでした。それが切りかわったのは、中年になってからです。 一番、役に立ったのは解剖でやっていた様々なことです。解剖そのものだけではなく、 ある程度の管理職的な仕事をしていた。それに育てられたと思います。うまくいこうが、 トラブルが起ころうが、自分で責任を持つ。それを続けていくと、ひとりでに大人にな ってくる。 死体の引き取りをしていた頃、私は助教授でした。当時の教授は「それは助教授の仕 事じゃないよ」と言っていました。たしかに他人に任せておけば、そのときは楽だった でしよう。でもそれでは自分のためにならないなと思ったのです。 だから「助教授の仕事じゃないよ」と言われても、うるさいとしか思っていませんで 186

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遺族に殴られたこと 死体の扱いというのは、結構面倒くさいものなのです。クレームをつけられてはいけ こじれたら大変なトラブルになる可能性があります。その結果、解剖ができなく なったこともあります。田舎から抗議に来て、兄弟が解剖されるなんて聞いていないと いう。東京にいる嫁と息子が勝手にやったことで、俺たちは知らないという抗議です。 もちろん法律上は相続と同じですから、嫁と息子に権利があるわけです。しかしそれ が通じない。田舎の親戚が集合して、全員がふろしき包みを手にして抗議しにくるわけ です。こういうことへの対応は面倒くさいから皆嫌がります。でも私は自分でやらなく てはいけないと思いました。 なぜなら死体は一番大切な商売相手です。その一番大事な相手について起こってくる 問題は全部自分で片づけていかなくては、仕事をやったことにならないじゃないかと考 えたのです。そういうところは人にやってもらって、自分がやりたいところだけ自分が やるというのは、これは自分のためにならない。 ノ 80

9. 超バカの壁

そういうさまざまな変化があるからこそ安定性をどうしてもつけなくてはいけなかった とも考えられます。複雑すぎる機械は壊れやすい。だから比較的シンプルな作りになっ ているのです。 動物も安定している 女性と同様、動物も頑固です。同じことしかしない。あいつらの習慣を変えさせるの は容易なことではありません。鹿児島で捨ててきた飼い大が北海道まで追っかけてきた という類の話はよく聞きます。忠実といえばそれまでですが、随分頑固なやつらだとも いえます。こいっと住むと決めたら絶対に追ってくるのですから。 世界で最初の公開の解剖がイタリアのパドバで行われました。このとき解剖された二 体の遺体はいずれも女性でした。その理由は「より動物に近いから」というものでした。 念のために申し上げておきますが、これを言ったのは私ではなく、あくまでも十四世紀 の学者ですからね。今そんなことを言ったら大変なことになるくらいはわかります。 別に動物に近いということは悪いことではありません。フェミニストの方は怒るでし 0

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男女の問題 なぜ女は強いのか男は極端政治家の夜動物も安定している 子供の問題 たたき込むことの大切さ 少子化はなぜ起こるのか「らしさ」が消えた 子供中心で考える大人の都合子供には手入れ「ああすればこうなる」 式とは子供と株は違、つ いじめは都市が作った大人のいじめ 戦争責任の問題 反日をどう考えるか 北京政府を相手にせず統一をすすめよ、つ憲法第 九条と後ろめたさ世論調査は怪しい被害者根性 靖国の問題 靖国参拝の何が悪いのか 私の抱えた靖国問題解剖体の慰霊国立宗教 の誕生すっきりしなくていい 中国、韓国は放っておく 708