4 一 - まじめな「愛されキャラ」を目指す 「テンパっている。ときには、自力ではど、つしよ、つもないこともあります。他 人から直接的なサポ 1 トがもらえれば理想的ですが、好意的な目で見守ってく れるだけでも、精神的な援護射撃になります。 周囲からの温かいまなざしを得るには、「愛されキャラ」になるように、努 力してみることをおすすめします。単にイケメンである、あるいは美人ならば 「愛されキャラ」になれるわけではありません。いくつか条件があります。 第一に、愛想を良くすることです。サービス業の人ならば訓練を受けている でしようが、そうでない人はいつのまにか仏頂面になっている、不機嫌そうな 表情をしていることもあるかもしれません。 子どもの笑顔のように「ニコツ。とできるようになれば、他人からも好かれ ることは間違いありません。あなたも、無表情の店員さんよりは、にこにこし 160
手なずけるかなど、あれこれ考える以前に心臓がドキドキしますね。そのとき のあなたの脳内は、ノルアドレナリンのはたらきが格段に活性化しているはす です。 ノルアドレナリンは、「怒りーや「恐怖ー「不安」「興奮ーの源です。特に、 ま 自らの危機に対する動物的な反応を取り仕切っていると言っていいでしよう。 したがって、試合で争うスポ 1 ツ選手にとっては、ノルアドレナリンは欠かて せない脳内物質です。競技スポーツだけではありません。仕事もある意味、戦 、競争です。適度なノルアドレナリンのはたらきは、脳に適度な緊張をもた無 台 を らし、作業効率をアップさせてくれます。 生 人 と ↓マ↓緊張が強すぎると、脳の「ワーキングメモリ」機能が低下△△△△△ る ン しかし、強い緊張が、たとえば何日間、何週間もずっと続いてしまったら、 どうなるでしようか。結果的に、「ワーキングメモリーという脳の高次機能 を、低下させてしまいます。 「ワーキングメモリーとは、学問的な定義としては「理解、学習など認知的課 第 1 章
です。計画的ではなく、衝動的であることが多いのですが、突発的・衝動的と いっても、なにかしらの伏線があることが多いもの。 会社で不愉快なことを引きすって、ヤケ酒を飲んだあとの帰り道で、ちょっ としたことで駅員さんや店員さんにキレてしまう事件も、あとを絶ちません。 暴力行為にまで至った人は、警察のお世話になります。事情聴取では、「どうま し してあんなこと言ってしまったんだろう」と、殊勝に反省する人が多いそうでて し す。 し 警察の厄介になってしまっては、自分が後悔するのはもちろんですが、家族無 台 や同僚にもたいへんな迷惑をかけてしまいます。キレそうなそのときに、「冷を 静な自分 , のコントロール指令を届けられれば、防げたはすの事件が実に多い と のではないでしようか る ン マ▽マ「良いテンバり」への変換方法を習得するのが近道△△△△△ コントロールを失ってしまう前に、なんとか手を打っておく必要がありま す。「テンパり」をたちどころに消してしまう技術がいちばん役に立つのでし 第 1 章
「頭が真っ白」は、 ワーキングメモリの問題です 緊張のあまり「テンパってしまった」という人に、もう少し詳しく状態を聞 くと、「頭が真っ白になった」という答えがしばしば返ってきます。「頭が真っ 白」をさらに翻訳すると、 「思考が完全に止まってしまった」 「うまくやらなくちゃと焦るばかりで、結局なにも決められない」 「どうしようか見当もっかず、『もうダメだ ! 』と大声で叫びたくなった」 といったところでしようか。共通しているのは、「合理的に考え、的確な判 断を下す」能力が、一時的に失われてしまっていることです。 では、どうして「頭が真っ白ーになってしまうのでしようか。一般的には、 過度な緊張によって、ノルアドレナリンやアドレナリンなどの神経伝達物質 が、脳に刺激を与えすぎてしまうからだと考えられます。
こうとする限りにおいては、時にはあってもいいでしよう。しかし、「建設的 批判」はあっても、「建設的悪口」は、ありえません。批判の対象も、人格な ど人間性に対してすべきではなく、あくまで問題を対象とすべきです。 グチも批判も、最後は後味よく締めくくることが重要だと思います。難しい ですが、明るく文句を一言うが、相手のこともおもんばかっている態度でしよう か。「終わりよければすべてよしーではないですが、最後の印象は脳に残りや すい傾向があります。シメが、肝心です。 言うまでもありませんが、ロで言わずにネットで中傷しまくる、これはいち ばんやってはいけない解消法です。後ろめたさから自己嫌悪が強まり、攻撃性 がますます高まります。なにより、アドレスなどが調べられれば、犯人を 特定するのは難しいことではありません。ネットで中傷するくらいならば、 い感じのグチり方を練習した方が、健康的に思えませんか ? 190
あるいは徹底的に放置してしまうなど、加害者となってしまうのです。 疲れ果てた帰りの電車の中でギャ 1 ギャ 1 泣いている子どもがいても、イヤ な顔は見せないようにしましよう。なかなかコミュニケーションの難しいお年 寄りに接しなければならないときも、辛抱強く話し合いましよ、つ。 子どもやお年寄りは、わたしたちが「テンバっている」姿に、より敏感で す。特に子どもは、言葉よりも表情や話しぶりで、好意的なのか敵意を持って いるのかの判断を下しています。 自分が「テンパらす」に温和に接していれば、相手もなついてくる可能性が 高くなります。子どもやお年寄りと接する機会は、自分を精神的に成長させる チャンスだと思いましよ、つ。 哲学者のフリードリッヒ・ニーチェは、「子供は無邪気そのものであり、忘 却であるーと記しています。余計な分別のない「無邪気」な子どもにとって、 大人が「テンパる」のは、むしろ「たいへんだねえ」と同情されるべき状態な のかもしれませんね。 1 76
ホリックで仕事に忙しい、まじめな人がなりやすいと言われています。こうい ったまじめな人は、普段は誠実で温厚でも、寝不足のせいで「テンパってく るー危険性が、ズボラな人より逆に高いのかもしれません。 ものごとを客観的に見る、ストレスを減らすというのは、なんとも抽象的な 助言で実践しにくいのは確かです。しかし、睡眠をきちんととるという目標 は、非常に具体的です。医者の指示と思えば、指示を守る動機付けも強まるの 習 ではないでしようか 活 ストレスで、睡眠不足や不眠で困っている人が多いのもわかりますが、充実性 した睡眠をとる工夫は、忘れないようにしたいものです。ただし、日中の活動め にも影響が出るような睡眠の問題が半月以上続くようならば、心療内科や精神 ら 科など専門家に相談しましよう。 ン 第 4 章 147
3 一 - 「想定外」を引き受ける 自分の予想や予測とまったく違った結果に直面すると、人は「こんなはすでる 育 はなかった ! 」と「テンパって」しまいます。今の日本は東日本大震災によっ て国家的に「テンパっている」とも言えますが、それも地震の規模が「想定 っ を 外ーだったからにほかなりません。 自分なりの「想定」を持っことは、悪くありません。そもそも見込みや予想格 がないと、仕事の段取りが組めません。しかし、「テンパらない人格ーになる な ら ためには、「想定外」の事態に対応する柔軟性も持っておく必要があります。 いちばん日常的な「想定外」は、移動時間です。電車にしても自動車にして尹 も、人身事故や渋滞など、想定外の遅れはありうるものです。 公共交通機関の遅れで「テンパって」しまい、駅員さんを怒鳴っている人を しくら交通会社が注意して たまに見かけます。しかし、不可抗力的な事故は、、 第 5 章 157
題の遂行中に、情報を一時的に保ち操作するためのシステムーです。なにかを やりながら情報を保つ、ものごとの段取りをつける、電話番号などちょっとし た数字や計算問題を頭の中に残しておくなど、いわゆる「仕事脳」にいちばん 近い概念です。 ワーキングメモリは、ノルアドレナリンに大きく影響されます。ノルアドレ ナリンは、本能的、動物的と書きましたが、「注意ー「意識」といった生体防御 に欠かせない機能にも、深く関係しているのです。 適度なノルアドレナリンは、ワーキングメモリのはたらきを高めます。しか し度が過ぎたノルアドレナリンの過剰な緊張は、逆にワーキングメモリの機能 を落としてしまいます 想像してみれば、緊張や不安でイライラ、キョロキョロがあまりにひどいよ うでは、パフォーマンスは下がってしまいます。大失敗の可能性だって、なく はありません。 ルーキーの野球選手で、勝負所で手痛いホ 1 ムランを浴びてしまった選手の インタビューを聞いたことがあります。不思議なことに、「頭が真っ白になっ
すべてのことには、必ずリスクを伴います。医療行為においても、投薬から 簡単な検査、複雑な大手術まで、わずかなパーセンテージでも副作用や有害事 象は起こり、つるのです。 現代日本は、「ゼロリスク探求症候群」による集団的な「テンパりーが、見 られるような印象があります。学問的に根拠のない憶測や不安に基づく行動 が、人間をいかに不幸に陥れるかは、歴史に学ぶ必要があります。 わたしは月 1 回、ハンセン病療養所において診療援助を長い間行っています カハンセン病の人々は「他人に感染する」という誤ったリスク認識のもと に、国策により長期強制隔離を強いられました。 「ゼロリスク探求症候群」は、個人レベルでも十分ありえます。「 100 % 安 全じゃないといやだ」と頑なに考えていては、リスクに直面したときに「テン パる」のは確実です。 池田教授は、「肝心なのは、 いかに偏らない見方でリスク判断ができるかど うかです」と述べています。ある程度のリスクは計算に入れて、客観的にその リスクを評価することが、「ゼロリスク・テンパりにならない考え方です。 1 72