↓マ↓注意したあとは、笑顔で送り出す△△△△△ 叱った後は、「自由」と「責任」を与えてみます。部下に任せた仕事にはロ 出しせず、本人が自分に合ったやり方を考えるように仕向けます。「あれをや っておけ「もうミスはするな」と一方的に言うだけでは、注意された側は、 上司の都合を勝手に押しつけられた印象を持ってしまいます。つまり、人格を 尊重された気がまったくしなくなります。 「自由」と「責任ーを与えることは、相手を尊重していることを伝えることに ほかなりません。自由に考えてのびのびとやりなさい。そして成果や結果に責 任を持ちなさい、と指導していくのです。 ただし、過度に「お前に期待しているよ」と負荷をかけるのは、禁物です。 上司の期待は、部下にとってはプレッシャ 1 です。発憤して頑張るタイプもい れば、プレッシャーに押し潰されてしまうタイプもいます。 注意したあとは、笑顔で部下を送り出せばいいでしよう。次に注意点を改善 してくれば、ほめてあげるのも忘れないでください。 206
「テンパっている」ときに、自分と他人とは異なる脳を持っているということ をすっかり忘れて、相手や状況のほうが変わってほしい、理解してほしいと、 虫のいい考えをしてしまうのです。そして、なおさら「テンパって」しまう悪 循環に陥ってしまいます。 他人とはわかりあえない、自分の考えを変えるしかないなど、はじめからペ シミスティックに考えていれば、自分の脳と他人の脳との間の壁も、少しは低 くなるかもしれません。 松本先生は、「人と人とのコミュニケ 1 ションは、『わかりあえない』という ことがむしろ普通で、わかりあえることはきわめて稀だと考えるところから出 発すべきだろう」と、ペシミスティックなことを書かれています。 「テンパった」としても、自分が落ち着くしかないと、他人への期待値を下げ るあきらめも、感情コントロ 1 ルには必要な心構えかもしれません。 186
9 「仮説」を立てる力を養う・ 他人の「冷静なアタマ」で考えてみる 章 6 周囲をテンバらせない「コミュニケーション術」 第 1 他人と「わかりあえない」ことが普通と考える・ 2 「他人の悪口を言わない」と決意する 3 「上手なアイコンタクト」を心がける・ 4 周囲がテンハっているときこそ、落ち着くチャンス・ 5 テンハった相手とは、「目線の高さ」を同じにして話す 6 「テンバりやすい上司」対策・ 7 部下をテンハらせない「うまい注意の仕方」・
「頭が真っ白」は、 ワーキングメモリの問題です 緊張のあまり「テンパってしまった」という人に、もう少し詳しく状態を聞 くと、「頭が真っ白になった」という答えがしばしば返ってきます。「頭が真っ 白」をさらに翻訳すると、 「思考が完全に止まってしまった」 「うまくやらなくちゃと焦るばかりで、結局なにも決められない」 「どうしようか見当もっかず、『もうダメだ ! 』と大声で叫びたくなった」 といったところでしようか。共通しているのは、「合理的に考え、的確な判 断を下す」能力が、一時的に失われてしまっていることです。 では、どうして「頭が真っ白ーになってしまうのでしようか。一般的には、 過度な緊張によって、ノルアドレナリンやアドレナリンなどの神経伝達物質 が、脳に刺激を与えすぎてしまうからだと考えられます。
他人と「わかりあえない」ことが 普通と考える 「オレの言っていることが、なんであいつにはわからないんだろう」 「あいつの言っていることは、わたしにはさつばり理解できない」 と、お互いにギクシャクしてしまうことで、「テンパってしまった」経験も あるかもしれません。 人同士が理解し合うことは、不可能ではないかと思うくらい、難しいことで す。他人の価値観、考え方は、自分のものとは決定的に異なるのです。 「そんな当たり前のこと、言われなくてもわかってるよ」と思うかもしれませ んが、改めてこの事実を再確認しておくと、コミュニケーションの苦労が少し は軽くなるかもしれません。 ヒントが隠されています。なぜかという 人間の脳に、「わかりあえない と、人間の脳は非常に自己中心的な情報処理システムを取っているからです。 184
ポジトロンを人間に応用した実験です。結果として、衝動性の強い人ほ ど、中脳のド ーパミン受容体 ( 詳しくは / ) が少なく、線条体でのド ーパミン放出が多かったのです。ド 1 パミン又容体か少ないとい、つことは、ド はた、らき一にノい ーパミンのはたらきすぎを抑えるネガテイプコントロールが、 ことが考えられます。 日本では考えづらいのですが、実験には覚醒剤であるアンフエタミンも使わ れました。衝動性の強い人は、違法ドラッグに手を出しやすいとも考察してい ます。 ーパミンの複雑なメカニズムがあるのです。 衝動性のウラには、脳のド 逆に、自分の衝動性コントロ 1 ルは大丈夫だと油断している人にも、警告を 与えておきます。それだけ毎日我慢を重ねている証拠でもあるわけです。特に こういう人は、衝動性を助長する睡眠不足とお酒は要注意です。睡眠不足とア かくらん ルコールは、脳のド ーパミン系を攪乱させ、衝動性の嵐を巻き起こすことにな らないとも限らないのです。
たと、「どう接しようか」と悩むこと自体が、ストレスにほかならないのです。 表面上は問題がなさそ、つでも、「テンパっているーのがあまりにあからさま だと、周囲に間接的な損害を与えている可能性があるのです。 法 ーフェクトな人格ではありません。余裕がなくて しかし、人間は全員がパ 省 「テンパって」しまうのは、お互い様と考えましよう。その意味では、平素かブ ら感謝の気持ちをもって臨むことが大切でしよう。周囲の理解とサポートがあテ ポ ってこその、社会というものです。 る 平素から「感謝の貯金」をしておきましよう。貯金の場合は利子にこだわり き 長 たくなりますが、感謝の貯金に、利子Ⅱ見返りを求めるのは感心できません。 コッコッ貯金をしていけば、いざ「テンパって」しまったときに、感謝の貯金も っ が効いてくるのではないでしようか ン 第 7 章 223
話には、違和感を覚える人が多いでしよう。 相手の目を凝視しすぎると、攻撃的な印象を与えてしまう可能性もあるので す。アイコンタクトも会話と同じで、キャッチボールです。攻めばかりではな 術 ン 守りの時間も取りましよう。 自分が話しているときは、基本は相手の目を見ながら話しつつも、適度に視、一 線を外すタイミングを取ります。そして相手の話を聞くときは、相手の目を見ニ ュ ます。 コ 「テンバっている」ときは、相手の目を見すぎているか、視線を外しすぎてい るか、どちらかに偏っていることが考えられます。上手なアイコンタクトを心 きよそ ら がけて、周囲が「テンパる」のを少しでも食い止めましよう。落ち着いた挙措 ン は周囲の信頼も得られるようになり、自分が「テンパらなくなる足がかりに を もなります。 第 6 章 193
↓↓マ脳にマスクをして、「テンバり」の感染を防止する△△△△△ いくら感情コントロールの前頭葉が頑張っても、他人の「テンパりーが度を 越してくれば、「いい加減にしろよ」というイライラも生じてきます。脳の中 のモノマネ細胞も、陰に力を発揮しているのかもしれません。 ミラーニューロンの立場から考えれば、対策は風邪やインフルエンザと同じ です。感染源には近づかないことです。距離を取って、近寄らないように工夫 するのみです。 ただし、風邪のときのようにマスクは使えません。仕方がないので、自分で 視野のマスクをかけてしまいましよう。どうしても「テンパっている人ーと接 触しなければならないようならば、相手の顔の表情は見ないで、眉間か鼻の頭 でも見るようにしましよう。顔全体が鏡に映るより、鼻の頭の毛穴でも映って いた方が、モノマネ細胞の干渉を抑えられるかもしれません。視野のマスクと いうより、脳にかけるマスクといったほうがいいかもしれませんね。
1 一 - テンバる経験も貴重な財産 第 6 章「他人と『わかりあえない』ことが普通と考える」で、脳の情報処理 システムは一人一人異なっていると書きました。人間の脳は、経験や学習を通 して、情報処理システムが作られていきます。生まれてからまったく同じ環境 の中で、同じ経験をしてきたような人間は、二人といないはずです。 生まれてからさまざまなことを体験していく中で、いわゆる人格や価値観な どが形成されていきます。そして、自分の脳が持っているシステム通りに情報 が処理できないときに、「怒りー「悲しみー「焦りーといったネガテイプな感情 が湧き起こります。余裕がなくなってしまう「テンパる」も、同じメカニズム です。 しかし、情報処理の失敗経験やネガテイプな感情によって、脳の情報処理シ ステムがアップデ 1 トされ、人格的な成長につながるのです。「テンパったー 208