ハイオフィードバッグ法のうち、自分の心身反応を音や光で認知しなくても、自分の身体に 起こる変化を心理的変化として認知して、パイオフィ ード・ハッグと同じ効果が得られる訓練法 があり、自己フィード・ハッグ法と呼ばれる。 ・ハイオフィードバッグ法、自己アイードバッグ法、自己暗示法の内容とその違いは、以下に 示すとおりである。 〇・ハイオフィード・ハッグ法 脳波、皮膚電気反射、心拍、筋電などを用いて、その反応変化を認知しながら訓練する 〇自己フィード・ハック法 座禅、ヨガ、特殊練習の瞑想、受動的注意集中 〇自己暗示法 基礎練習、特殊練習、イメージ練習、メンタル・リハ 〔パイオフィード・ハックはセルフコントロール、 ーサル
されてきたが、近年、また再評価されてきている。 第二の弛緩法はシュルツの自律訓練法に代表される弛緩訓練法である。この方法の理論的背 景は一種の自己暗示訓練である。そして、この自己暗示は、受動的注意集中訓練によって、重 感、温感、心拍・呼吸の調整を図り、心理的弛緩・安静を達成するところにある。 自律訓練法は、他者暗示法が他者の力をかりて、ある心身反応の変容をめざすのに対し、自 分のカで心理的状態の変容を達成しようとする。この意味では、自律訓練法は一種のセルフコ ントロール法とみることができよう。したがって、東洋的思想に基礎を置く禅の訓練ときわめ て類似している。 しかし、自律訓練法における自己暗示が、どのような機制で、身体的反応の変容ーーーたとえ ば、温感、心拍調整などーーをもたらし、さらに心理的状態の変化をもたらすかについては、 今日のところ、十分明らかにされていない。 法 筆者は弛緩訓練の第三の方法として、脱カ弛緩訓練法を考えだして、これをカウンセリング や恐怖症、強迫行為の治療に適用し、その有効性を明らかにしている。この方法は、治療の初弛 期に、一種の他者指示法で四肢、首、肩、背中の緊張を誘導し、ある時点で、瞬間的に脱力す自 ることによって、その弛緩状態をグライエントに体得、体感させる訓練法である。とくに緊張
ー弛緩の落差が大きいことは、筋緊張と弛緩の意識がない恐怖症、強迫行為をもっグライエン トには、その意識をもたらし、あるいは呼びもどす働きがある。 筋弛緩と心的弛緩の融合 ジェイコプソンの筋弛緩訓練法は、セルフコントロールの訓練法として、確かに自分で自分 を制御する方法であるが、かなり身体弛緩に重みがかかり、心理的弛緩の効果については、多 くの研究結果は疑問を呈している。逆に、シュルツの自律訓練法は、心理的弛緩のセルフコン トロールにやや偏りすぎているきらいがある ( なお、この自律訓練法の概略は前述の自己暗示訓練法 と同じものとみて差しつかえない ) 。 そこで、ジェイコプソンの筋弛緩法とシュルツの自律訓練法のそれぞれの短所・欠点を捨 て、長所を採用した方法はないものかと考え、模索し、長年の臨床的研究・実験を経て、筆者 が創り出したものが、自己弛緩訓練法である。 自己弛緩訓練法は、文字どおり自分で自分の心身反応を制御する技法であるが、自律訓練法 がそうであるように、最初からこの訓練法を使いこなすことは、ほとんど不可能である。そこ で、この訓練に習熟するために二つの方法がとられる。その一つは、最初、他者 ( 心理治療者
弛緩訓練①筋弛緩訓練 ②心的弛緩訓練 弛緩の誘導法①他者指示法 ②他者暗示法 ③自己指示法 ④自己暗示法 ド・ハッグ・法 ⑤フィー なお、筋弛緩訓練と心的弛緩訓練は厳密には分けることができない。むしろ、随意的制御と しての筋弛緩、およびその結果としての心的弛緩とに分け、制御過程の時間的経過現象と考え るべきである。 自己弛緩訓練の進め方 自己弛緩訓練は、、最終的には他人の手を借りずに自分だけで行なえるものだが、最初は「こ のような姿勢をとったほうがよい」「このような呼吸訓練をする」「このような身体緊張をす る」「こうして身体弛緩をする」という一種の他者指示のマニ = アルが必要である。このマ 170
筋弛緩法と自律訓練法 行動療法として用いられている弛緩法は、大別すると三つの技法に分けられる。 その一つは、ジェイコプソンの筋弛緩法である。この方法はもつばら随意的に四肢のある部 位に注意を向けながら、筋肉を緊張し、そのあと弛緩すると、やがて心理的弛緩を達成するこ とができると考える方法である。 すなわち、筋弛緩によって、大脳の興奮を下げ、その結果心理的安静が得られるという考え に立っている。訓練によって筋弛緩と心理的安静状態が直接結びつくとする点が一つの特徴で ある。また、骨格筋自身は随意的に制御されるので、心理的安静が人の意図によって得られる という利点もあって、ストレスの解消・不安・恐怖の軽減、内臓疾患、心臓・血管機能障害の 治療などにも有効な方法だと考えられてきた。 この筋弛緩法は、結果として心理的弛緩すなわち、心理的安定、沈静状態をもたらすため、 ウォルビが用いた不安・恐怖の減少訓練法 ( 脱感作法 ) の一つとしての拮抗制止法である。 しかし、この弛緩法はあまりにも筋弛緩訓練に依存するので、この訓練の結果、心理的弛緩 に適切に移行するかどうかの疑問と、適用症例の吟味が不十分であったため、しばらく見過ご
コントロールと呼んでいる。一種の心理的自己治療法である。 セルフコントロール法の特徴を要約すると、次のようなことがあげられる。 1 、自分の意志で行なう 2 、その意志の実現を図る 3 、訓練のための準備をする 4 、自分の意図で心身反応を行なう 5 、弛緩状態・安静状態になる 現在、心理治療の実践で用いられているセルフコントロールの主な方法は、さんの行なっ た自己暗示法のほかに、・、 / イオフィード・ハック法や自己弛緩法などがある。 セルフコントロールの目標 セルフコントロールが目ざす健康法には二つの種類がある。 一つは消極的な方法で、きわめてさし迫った対応策を必要とする場合である。 たとえば、無気力になって勉強や仕事が手につかず、不安や恐怖に脅え、職場での適応がす つかりだめになって、なんとかこの事態から逃れられないものかと、ただそれだけを考えこん 19 心の悩みとセルフコントロール
自己暗示法を含めセルフコントロールの訓練法は、 co さんのような対人関係問題の障害の克 服に用いられるだけではない。心の悩みからくる消化器官障害、循環器官障害、偏頭痛、不安 や恐怖症状、劣等感や自信の喪失、意欲の減退など、もろもろの心理的障害の除去に役立っ方 法であ第 1 しかし、自分から離れた対象に自分の力を及ばそうとする念力や念写は、本書で扱う対象に ならない。セルフコントロール法は、自分の意志によって自分の心身に影響を及ばすという点 で、念力とはまったく違っている。こうしようという信念を、自分の身体反応、心身状態を媒 介にして現実化するのがセルフコントロール法で、観念の遊びではない。 さんの症状の治療には自己暗示法が適していたようだ。しかし、 co さんと似た症状でも、 自己暗示法ではない、い口ま . 理汁療カ有効な場合が多いことも、いろいろな臨床心理学的研究から確 かめられてい . 1 心の悩みや心理的障害の治療に、薬物治療を中心とする医療がどうも効果が少ないと思われ るときに、さんが試みた自己暗示法のように、自分の意志・意図である種の訓練・練習をし てみると、うそのように悩みがふっ切れ、不安や恐怖が除去されることがある。こうした自分 の意図・意志の下にある種の訓練を行なって、心理的障害を除去・軽減する心理治療をセルフ
実践で用いている三種の技法、すなわち、自己暗示訓練法、パイオフィードバ , ク訓練法、自 己弛緩訓練法について以下に述べよう。
い心身のさまざまな反応が、ある訓練や手続きによって、制御され 中 ク 集 ッ ることが可能になるのだろうか。 己 本書で主に記述するセルフコントロールの方法は、自己暗示法、 的 容動 イ 受 ハイオフィード・ハッグ法、自己弛緩法だが、これらの方法は、いず フ ジ 己理 れも、自分のカである身体反応を行ない、そこで、自己暗示を行な 情 メク 法う、イメージを想い浮かべる、瞑想にふける、注意集中をする、な ィックルヒル どによって直接の効果を期待する。 ロ 想ド・ ロ己 ン ただ、この方法のうち、自己暗示法は、自分の心理状態、身体状 眠フィコ習 フ態の変化が、外からの情報によって認知される手続きはない。つま 催オフの学 己イ己体察 セり、自己の心身の状態はいっさい、眼や耳などを通して知ることは 自バ自身観 できない。 法ド法去去 では、もし心身の状態を感覚情報で知り得たならば、もともと自 イク ン 暗フ弛 分の意志で変化させることができない自律反応 ( 血圧の上昇・下降、 己 イ 種 自 自モ 不安状態の安静化、心拍を遅くするなど ) をも、自分の意志で制御する っ 0 4 ・ ことができるだろうか。これが可能である理論については、「パイ 81 セルフコントロールとは
ウォルピは筋弛緩、摂取の他に、会話や性行動などもあげている。しかし、行動療法の立場か らもっとも有効なものとして、ジェイコプソンの筋弛緩反応の簡便法が用いられている。 弛緩訓練には筋弛緩と心理的弛緩の二種の訓練法がある。この二つの方法は、必ずしも明確 に分けられるものではないし、また直接対応しているとは限らない。 ジェイコプソンの漸進的弛緩法に対応する方法として、これも前述したシュルツの自律訓練 法、つまり自己暗示訓練法があげられる。この自律訓練法の標準練習は四肢の重感、温感、心 拍調整、呼吸調整などを含んでいるが、これらはすべて筋弛緩訓練のある過程、あるいはその 結果と考えることができる。むしろ、筋弛緩をともなわない自己暗示、受動的注意集中のみの 自律訓練では、その効果が十分期待できない。それゆえ、随意的に行なわれる筋弛緩を媒体に することによって、心理的弛緩や平静が得られると考えることができる。 ここで重要なことは、筋弛緩が意図的、随意的に制御されなければならないということであ法 る。 弛 次にウォルビの拮抗制止に関連させて、いくつかの問題が出てくる。それは弛緩訓練のみに よって、一般的、漠然とした不安が軽減されるかどうか、特定の対象に結合した恐怖反応の解自 消の機制は、漠然とした不安の解消機制と同じかどうかという問題である。