思えません。運転を停止しただけでは意味がないからです。廃炉にして、燃料棒を取り出 して浜岡原発から搬出しなければ危険性が去らないことは、福島第一原発で、運転停止中 の四号機が爆発した事実が証明したではないですか。菅直人が原発事故というものをまだ 理解していないのであれば、大変なことです。 明石石原茂雄・御前崎市長は寝耳に水だったようで、交付金はどうなる、約束が違うと べ る え 怒りまくっていましたね。一方、差し止め訴訟の原告弁護団長、河合弘之弁護士は政府の 考 決定を「歴史的な大英断だ」と評価し、「毎日新聞」 ( 五月六日 ) の取材に「福島原発事故 が発生して、対応しきれない恐怖を味わったことが決断につながったのではないか。福島き る を制圧できていない今、仮に浜岡原発でも事故が発生したら、東京は挟み撃ちになる。そ 知 の恐ろしさを想定したのではないか」とコメントを寄せています。実は僕も「週刊朝日」 ち からコメントを求められ、「菅首相の停止要請は勇気ある英断だと思います。これまで指 章 導力を発揮して何かをやったことは、一度もなかったと思います。彼は首相になってはじ 第 めて、首相らしい仕事をしたのではないでしようか」とコメントしました。 いくら世論操作を試みようとしても、今や心ある国民の大多数が「東海大地震が怖い」
ネに対して、もっと心底から怒りの声を上げなければいけないと。 * 1 放射線生物学者としてチェルノブイリ事故の汚染除去作業を指揮し、同僚一三人がすべてガン で亡くなり、自らも甲状腺ガンを二度患ったナタリア・マンズロヴァ氏は、福島原発事故後の取材に こう答えている。 ( ダイヤモンドオンライン特別レポート h ( ( p ミ d 一 amond.j 望 a 三 cles 〒言 1970 一一〇 一一年四月二〇日 ) チェルノブイリ事故の死者は四〇〇〇人と報じられているが、実際には一〇〇万人が死亡してい るとの報告書も出ている。どちらが正しいのか。 「どちらが真実に近いかと問われれば一〇〇万人の方だろう。当時、ロシア、ウクライナ、ペラルー シ各共和国では医療制度はモスクワ政府の管理下にあった。多くの医師は、患者が放射能汚染が原因 と思われる癌などで亡くなったにもかかわらず、死亡診断書にそれを書かなかったことがわかってい る」 機 危 る あ 今 章 明石同感です。大地震によって生じる原発事故を「原発震災」と呼び、僕も広瀬さんも これまで原発がいかに危険かということをさんざん世の中に発信してきました。原発事故第 やトラブルが起こるたびに現地に取材に飛び、隠蔽され、闇に葬り去られようとする事実 がん
によくある無責任な誇大妄想記事」で「インチキ」らしく、「世界が培ってきた安全研究 の成果は、叙述的な作り話の存在を許さぬまでに整っている」のだそうです。彼の話は科 学者の弁と言うより、まるで精神論なのですね。 でも、フクシマ原発震災が発生した今、何が起こっているのでしようか。あの時僕が書 いた「作り話」は、時々刻々と、そして次々と現実の話へと変ってきているのです。いた ずらに事故を拡大させてばかりいる原因は、石川に代表される、とても科学者などと呼べ ない「原発安全神話」信奉者たちが、過酷事故に対して何の備えもしてこなかったからな のです。石川が揶揄した「科学的根拠の薄弱な記事」に、石川自身が無様なまでに敗北を 喫したわけですね。恥を知れ、と言っておきましよう。こうした事故が起こってしまえば、 石川のような御用学者など何の役にも立たない。実際、彼など何の役にも立っていないで はないですか。悔しければ、自慢の「世界が培ってきた安全研究の成果」とやらで、明日 にでも福島事故を収束させてみせるがいい 「原発震災」の事故災害シミュレーションは、京大原子炉実験所の助手だった瀬尾健 ( 故 人 ) 先生がつくった「原発事故災害予想プログラム」を使い、小出先生や神戸大の石橋克 115 第二章原発事故の責任者たちを糾弾する
の原因さえ知らすに、病に苦しむのだろうと思って。 明石「安全」だけを連呼する原発産業の御用学者たちの話を紹介するばかりが、報道機 関の仕事ではないはすなのですが : 今や「被曝量管理」が必要なのは、福島第一原発で事故収束作業に当たる人々ばかりで はないのです。東電や保安院の記者発表ばかりに頼っている報道機関はこのことにまだ気 づいていないようですが、日本はこの冷酷な現実と率直に向き合う必要がある。 すなわち、広範な国土が放射能で汚染されてしまったという現実を踏まえれば、今すぐ にでも取り掛かるべきことは、原発の半径三〇キロ圏内や飯舘村など高濃度の汚染地帯か 機 らの避難民や子供を中心に、福島県民一人ひとりの被曝量を評価し、将来にわたっての健る あ とい , っことです。 康管理をおこなわなければならない 彼らは、広島や長崎で被爆した被災者と同様の「ヒバクシャ」なんですね。将来ガンな 今 章 どを発病したとしても、現状のままでは福島原発事故による被曝との因果関係を何ら証明 第 できなくなる恐れがある。今後の健康管理対策として、被曝した避難民や子供一人ひとり に対し、ホールボディカウンターを使って体内に吸飲した放射能量とその種類の評価、そ
「電気料金」で負担してはどうかと。 税金で賠償費用や事故費用を賄った場合は、東電の責任がウャムヤにされます。一方、 世界一高い電気料金がこの事故によってさらに高くなれば、嫌でも東電の責任や原発のコ ストに世間の関心が向く。コストの面、すなわち経済原則の面からも脱原発を進めていく ということですね。この機会に「原発と御用学者たちのおかげで電気料金が上がったの べ だ」と国民が知ることの意味は、決して小さくないと思うのです。そうした " ショック療え 法。を経た上であれば、広瀬さんのいう「独占利権」の問題にも必然的に国民の批判の眼 が向くようになる。 べ る 僕たちが声を大にして批判しても、増税や電気料金の値上げが強行されるかもしれませ 知 ち ん。たとえそうなったとしても、ズルをしてきた連中がまかり間違っても生き残る道がな いよう、完全に息の根を止めるための知恵を編み出したいと思っています。 章 それを踏まえて今、僕が気になっているのは、被災地である東北選出の政治家たちの動 第 向なのですね。家族を亡くした国会議員が被災地救援で奮闘していることは知っています。 でも、いわゆる「大物政治家」の姿がなかなか見えてこないわけです。民主党で一一一一口えば、
もともとは自民党で原発政策を推進し、福島や青森に核施設を建ててきた小沢一郎 ( 岩手 わたなべこうぞう 四区 ) 、渡部恒三 ( 福島四区 ) といった人たちです。彼らが原発推進に協力してきたことで 一銭の利得も得ていないとは言わせません。 小沢一郎が、自民党幹事長時代に剛腕を振るわなければ、六ヶ所村の核燃サイクル基地 は建ちませんでした。核燃基地建設の是非が最大の争点となり、事実上の「天下分け目の 戦い」となった一九九一年の青森県知事選の時、小沢が青森に乗り込み、敗色濃厚だった 核燃推進派の現職知事陣営にテコ入れをし、すさまじいまでの締め付けをしたことで形勢 を逆転させた。僕はこのことを決して忘れません。 渡部恒三もまた、自民党時代に原発を福島に担ぎこんだ張本人です。一九八〇年四月八 日の衆院商工委員会で質問に立った渡部は、「政府は、原子力は安全であるということを 国民にもっと知っていただかなくちゃならない」と冒頭で語った後、こう発言している。 「原子力発電所の事故で死んだ人は地球にいないのです。ところが自動車事故でどのくら い死んでいますか。人の命に危険なものは絶対やっちゃいかんという原則になれば自動車 も飛行機も直ちに生産を中止しろということになる」 198
合って、醜い賠償責任逃れをやっている場合ではありません。 広瀬私は東京電力の株が紙切れ同然になることを願っています。東電の原発推進政策を 変えさせるために、私自身も東電株を持っているからそう一言うのですよ。 世論操作を見ていると、これからも原発を維持しようとする連中の動きが露骨だね。誰 もが鋭く監視しなければならないのは、東電が政府と結託して、福島の事故を「安定し た」、「もう放射能は大丈夫」と、あたかも事故を収束させたかのような雰囲気にし、国民え にニュースを忘却させることだ。あんな根拠のないカラエ程表を国民に示して、六 5 九ケ 月で事故処理を収めますなどという気休めを国民が信用できるはずがない。清水社長が福 る 島の避難民に土下座しても、まったく謝罪になっていない。 知 ち 明石そもそも僕は土下座したくらいで許しはしませんけどね。それに、最近は不祥事の たびに土下座が乱発されすぎで、軽くなった気がしていますし。彼らはテレビカメラがい 章 るところでしか土下座をしませんし、単なるマスコミ向けのパフォーマンスだと見ていま 第 す。
の会見の責任を追及しようとしたジャーナリストの上杉隆さんは、レギュラーで出演して いた番組から降ろされてしまった。何ておそろしい国に生きているのだろうと思いました。 事故のあと、彼が東電記者会見で「ヨウ素、セシウム、プルトニウムなどの放射性物質が すでに出ているはすだ」と追及すると、大手メディアの報道記者に「黙れ、同じ質問ばか りするな」と妨害されたのですよ。ウソの報告に何の疑問もはさまず、東京電力に飼われ ているプレスの態度は、日本の報道に対する信頼性を完全に失墜させましたね。全世界が、 あき これが日本のジャーナリズムかと、呆れかえっています。しかもフリーのジャーナリスト や海外のメディアは、当初、官邸の会見場から締め出されていた。その原因がどこにある 機 危 る かといえば、一部の記者たちは、ちょうど事故が起こった時に東電の接待旅行で中国へ行 あ っていた。そして、その接待リストを電力会社が握っているので、もし東電を批判すれば リストが流出して、この記者たちの名前が世間に漏れてしまう。だから何も一言えない恥す今 章 かしい状況だったというのです。なんという世界だ。 明石基本的に、日本のマスコミ報道の現場において、原発政策に異を唱える主張を紹介第 したり、反原発運動を肯定的に取り上げたりすることは長年、タブーだったのです。ただ
原子力シンジケートの末路を示している。 明石あらゆる産業、学界を配下において、国へも利益供与しながら原発政策を進めてき たのですね。そういう背景から原子力マフィアは生まれたわけだ。 でも、今の官公庁の組織を見ると、原子力マフィアの相関関係がよく分りませんね。通 る 産省から経産省、科学技術庁から文科省と名前が変ったことも、中身が分りにくくなった す 弾 原因だと思いますけど。そもそも、どこがチェック機関で監督機関なのかさえ判然としな を ち 者 広瀬官公庁には、原発の規制組織は一切ないですよ。根っこは推進派ばかりだからね。 任 責 もともと独立していた科学技術庁が文部科学省に入ってから、私たちにとってはプラック の 故 事 ポックスになってしまった。前の科学技術庁の時代には敵の姿がハッキリしていたのが、 発 原 どこでどう動いているのか分らなくなってしまったのです。 さらにその再編時代の二〇〇五年に、原研 ( 日本原子力研究所 ) と動燃 ( 動力炉・核燃料開 第 発事業団。のちに核燃料サイクル開発機構に改組 ) が一緒になって日本原子力研究開発機構 ( 原研機構 ) に統合されたので、もうわけが分らない。要は、左翼と右翼がくつついたわけ。
「放射能安全論」の源流 広瀬さきほども言ったように、原爆を落とされた広島や長崎の学者を引っ張り出して安 全論を語らせれば国民が信用するだろうと、原発推進の国策として昔からやってきた手口 が出てきて、じつに無気味ですね。重松は、 ( 成人細胞白血病 ) の原因ウイルスの る す 弾 母子感染について、一九九〇年度に「全国一律の検査や対策は必要ない」との報告書をま を とめた旧厚生省研究班の班長、元日本公衆衛生学会理事長でもある。 ち 明石この重松は、それこそありとあらゆる場面で登場してくる「御用学者」の見本か手 任 本みたいな人物ですね。まるで便利屋のようです。僕が「週刊プレイボーイ」で連載した の 故 敦賀湾周辺の「悪性リンバ腫多発」報道の際も、″あの記事はいかがなものか〃と疑問視 事 発 原 する内容の原発安全記事に登場していました。 章 広瀬歴史的なことを一一 = ロえば、世界各地で大気中の核実験がおこなわれた一九四〇年代、 第 一九五〇年代の日本の放射線科学者は、良心的で、世界最高でした。その人たちが核実験 反対運動を起こして、一九五四年一二月半ばまでに、当時の日本の人口八八〇〇万人余り