う考えましようと言っていると、設計できなくなっちゃうんですよ。つまり、何でもか んでも、これも可能性がある、これはちょっと可能性がある、そういうものを全部組み 合わせていったら、ものなんて絶対造れません。だからどっかで割り切るんです」 原告「制御棒二本の同時落下を想定していないというのも、割り切りなんですね」 班目「 ( 制御棒二本の同時落下が ) 起こるとはちょっと私には思えません。どういうふう る す 弾 なことを考えているんですか。それに似たような事象があったら教えてください」 原告「東海地震のときに、再循環系が複数同時に破断する、ほかの緊急炉心冷却系が同 者 時破断するとか、考えるべきでは ? 」 任 班目「地震が起こったときに破断することまで考える必要はないと思います」 の 故 事 発 原 どうだい、 この班目証言。今の福島の大惨事を招いた張本人が、こんな証言を残してい 章 る。 第 明石福島では、班目が「割り切る」と言った事故の可能性の大半が起こったのですよ。 通常の電源を失った上、津波をかぶって非常用ディーゼルまで使用不能になり、全電源喪
三月二六日に運転四〇年の寿命を迎えようとしていた福島第一原発一号機について「最長 六〇年の運転可能」という報告書を提出した、張本人が関村ですよ。ところがその福島第 一原発一号機でメルトダウン事故が起こると、 Z テレビにコメンテーターとして出ず つばりで「原子炉は冷やされている。冷静な対応を」などと見当違いの発言をくり返した。 ほかにも関村は、経産省管轄の原子炉安全小委員会 ( 通称・炉小委。原子力安全委員会委員長 る の班目春樹が、この炉小委の委員長も二〇一〇年六月まで兼任。委員メンバーは東大教授陣が多数け を占める ) の委員を務めるなど、原子力政策を率先して推進してきた人物だから原発に不を ち 利なことを一言うわけがない。 この炉小委が、公式資料として原子炉の安全設計について検 者 任 討課題を出しているけれど、そのほとんどの条項に「耐震設計を除く」と書いてあるので 責 の 故 すよ。耐震性を考慮しない案のどこが安全設計なのだ。 事 発 それにしても、関村の″解析能力〃しし こま呆れたね。三月一四日に >OX 燃料を使用した 原 章 三号機が水素爆発を起こし、建屋の鉄骨がグニャグニヤになるほど破壊されたというのに、 第 二七日には 翌日の Z 「ニュースウォッチ 9 」では「炉心溶融はありえない」と言い 冷却水漏れの可能性を聞かれて「その可能性はきわめて低い」と言い、高濃度の汚染水が
ら一〇〇年かかる可能性がある」という専門家の分析が載っています。原子炉が安定して おらず、さらに放射性物質が大量に放出される可能性が残っているので、そういう見方に なるそうです。またこの記事では「旧ソ連・チェルノブイリ原発では事故から約八〇年後 に当たる二〇六五年まで除染がおこなわれる予定」と書かれている。そんな長い時間を想 像できますか。福島で被曝した子供たちが大人になり、老人になってもなお放射能災害は 続くのですよ。現に、今年はチェルノブイリ原発事故から二五年だというのに、深刻な被 害が続いている。 東電は「六 5 九ヶ月で収束の見通しを立てる」という工程表を発表しましたが、今まで の泥縄式のやり方を見ていると、とてもスケジュール通りに収束できるとは思えない。能 まだらめ 天気な発言を繰り返していた班目春樹・原子力安全委員長は、高濃度の汚染水流出につい て記者から質問されて「どんな形で処理できるか知識を持ち合わせていない。保安院で指 導してまし、 。し」と言ってサジを投げたのですよ。今の日本に「無能」であることを罰する 法律がないのが悔しいです。
どがあって、分析作業員がプルトニウムを吸い込むという事件が起こった時、石川迪夫が、 業界紙「エネルギーレビュ ー」二〇〇七年二月号にこう書いている。 放射能が存在する以上、管理区域で働く人は、放射線を浴びたり汚染される可能性を持 つ。この被曝や汚染の可能性を極力少なくするのが原子力安全の要諦だが、機械は故障 し人はミスを犯すもの。管理区域で働く以上、少量の汚染や被曝は避けられない。それ を例えれば、お百姓をすれば泥が付くのと同じと。 呆れた人間だ。プルトニウムを吸い込んだ事件を「お百姓をすれば泥が付くのと同じ」 と言い切るとは。泥とプルトニウムの違いも分らないのか。さすがにマスコミもその発一言 を批判したけれど、それに対して石川は「一大吠えれば万犬騒ぐ」と開き直り、「泥が食 べ物を作るようにプルトニウムは電気を作る、いずれもエネルギーを作る大切なもの」と 書き連ねている。騒ぐマスコミも青森県民も犬扱いだ。お前こそ、原子力マフィアに飼わ れた役立たずの番犬ではないか。 118
ていました。と、当たり前のことのように言い出す報道機関も現れています。つまり、記 者は取材しているのに、紙面や番組で取り上げないのです。現場で取材する記者たちは、 これまでのものとは明らかに異なる「二一世紀の反原発気運」の高まりを肌で感じている のに、紙面や番組をつくる決定権を持ったデスクや幹部たちがそのことを無視し続けてき た。事実さえ無視しようというのですから、報道を弾圧したり検閲したりする国のことを 笑えません。 このように、大事故が起ころうと「反原発」は基本的にタブーのままです。変る可能性 がゼロとは言いませんが。 機 広瀬そうなると、最終的に事故がどうなるかまったく分らないまま、危険性をずっと隠る あ しているので、もっと重大な事実を隠している可能性がある。分っていても、出さない。 明石三月一二日から一五日の間に福島第一原発で起こったことを報じた朝日、毎日、読 今 売、河北新報の各新聞記事などをもとに、事故を時系列に整理してみると、こうなります。章 こういう記録は、普通の人がうつかり忘れがちですが、よく読んでみると大切なことに気第 がつくので、ここに再録しておきたいのです。
いていますが、石油生成の根源岩である頁岩や硬い岩盤の中にあるシェールオイルは、世 界中どこにでも存在する可能性がある。しかもその資源量は莫大なもので、二〇一一年現 在アメリカで開発が進められているバッケン・シェール油田の期待資源量は、単一の鉱区 だけで三〇〇〇億バレルで、世界一を誇るサウジアラビアの原油埋蔵量一一六四六億バレル をしのぐというのです。さらに今後の技術革新と地質調査次第では、在来型の石油埋蔵量 の数十倍の非在来型石油が発見される可能性もあるという。四二年の数十倍というのだか ら、これも一〇〇〇年以上はたつぶりある。 明石原子力業界に対して、ガス業界が逆襲を始めたという感じですね。 広瀬そう。「ガスエネルギー新聞」では「原子力の時代は終った」と、私が思っている ことをはっきり書いてくれています。今は原発事故が起こって世の中が混乱しているので、 ガス業界はあまり刺激的なことは言いませんが、賢いからちゃんと時代の行方を見抜いて いますし、ガス大国のロシアも大喜びしています。 明石代替エネルギーの確保がしつかりできるのであれば、これでエネルギー問題にもケ リが付くわけで、原子力はもう御用済みですね。 2 第三章私たちが知るべきこと、考えるべきこと
ら、日本政府がこれら企業に発電を指令すれば、一夜にして問題が解決します。私が総理 大臣であれば、ただちにその政策を実行します。そして、危うい既存の電力会社に電力を 依存する社会から日本を解放します。 もう一つ、福島原発事故で明白になったことは、一ヶ所に発電能力を集中すれば、予期 せぬ天災などによる危機的事態で、日本全体の経済が麻痺させられる、という危険性です。 そのことは被災地に限らず、日本国民が骨身にしみて分ったでしよう。したがって、電力 会社に電力を独占させず、これら大企業群に発電を実施させれば、日本全土に、自然と小 型の分散電源が生まれます。 明石原子力推進派は今まで、原子力が「安定供給の確保」「経済的効率性」「環境適合 けんでん 性」のすべてを満たすエネルギーの「優等生」だとして喧伝してきました。ところが福島 の事故でそのすべてが幻想であり、嘘つばちであったことが判明しましたね。原発がなく ても「安定供給」は可能なことが明らかとなり、「環境」は放射能で汚染され、経済的効 率性にいたっては、事故の賠償や後始末で、天文学的な数字の損失が予想されます。これ で、原発が優等生どころか、最悪の劣等生だったということが証明されれば、原子力推進 226
「原爆実験が盛んだった時代には、日本中どこでも今くらいの値はあたりまえに測定で きていた。それでも今は一〇〇〇分の一に減っている。官房長官も安全だと言っている。 過剰な反応はよくない」 ( 三月三〇日、テレビ朝日「ワイド ! スクランプル」 ) 「大気中一万倍程度の放射性物質くらいならば安全だ、気にすることはない」 ( 同 ) ・星正治 ( 広島大学原爆放射線医科学研究所教授 ) 「一分浴びただけなら放射線量は六〇分の一となるわけで、一瞬ならば、そうした健康 被害が出るわけではなく、また距離が離れると放射線量は減る」 ( 三月一五日、 E 産 経ニュース ) ろか 「浄水場で水を濾過する際、細菌やゴミと同時に放射性物質も取り除かれ、人体に心配 ないレベルになる。過剰な心配をする必要はない」 ( 三月一七日、産経新聞 ) ・前川和彦 ( 東京大学名誉教授。救急医学 ) 「一連の事故で放出されたのは、核分裂生成物質 ( 放射性物質 ) を含む気体で、核燃料 そのものが爆発したわけではない。 これらは風に乗って運ばれるが、遠方で観測されて もごく微量のため、健康に影響を与える可能性は低いと思われる。被ばく線量が一五〇 160
確認されたことを知ると「高濃度の汚染水は、ウェットべントで大気中に出た放射性物質 が水し、 こ溶け込んだ可能性がある」と、デタラメばかりしゃべっていた。その直後ですよ。 燃料棒の溶融と、それによる高濃度汚染水が判明したのは。 岡本孝司 ( 東京大学大学院教授。東大工学部原子力工学科卒業 ) も頻繁に Z に出ていま したが、「今回、原発は十分に働いた。というのは自動停止したからだ。それ以後の不具 合は想定外の津波のせいだから仕方がない」と、よくまあ、あれだけ無責任なことを言っ とうなったか。二ヶ月後の五月一二日になって たものだ。岡本たちの楽観論は、結果、、、 「一号機の原子炉の水位計が正しい値を示していなかった」、つまり水がほとんどないと東 電が発表して、日本中が大騒ぎしている。当たり前だ。私は前の章でも述べたように「計 つでも次の末期的な大爆発は起こり得る」と言っ 器類の数字はほとんど信用できない。い てきたし、たった今もそう確信している。ところが、こういう岡本のような素人の大学教 授が原子力工学の専門家だと称して、エンジニアであればすぐに気づく常識さえ持たずに、 偉そうに解説している。自分の説明がことごとく間違っていたのに、よくテレビに出て恥 ずかしくないものだ。
場が私はものすごくこわい。日本に核兵器の技術がないということは、裏を返せば、臨界 事故を起こす可能性がすごく高いということになる。一九九九年の事故の時、日本 人が最近になって臨界の研究をしているのを知ってゾッとしました。基本的な学問がない のですよ。したがって、事故が起こると、専門家が計算さえできない。それが、福島原発 事故でテレビに出てきた自称 " 専門家 , のコメンテーターたちの無能さで証明された。ま ともな事故解説さえできない。地上波テレビ局から招かれなかった田中三彦さんや、東芝 の格納容器設計者だった後藤政志さんたちが、最も正確に事故の解析をして、危険性を教 えてくれるのが、日本の実情だ。 機 危 る 明石日本はロポット開発が盛んな国なのに、原発事故でまともに働く口ポットは一台も あ なかった。人間が近づけないこんな非常時こそのロポットでしよう。東電は他で準備をし ていたと言っていますが、実際に使えるものは何も出てこなかった。今、事故現場で活躍今 中のものはすべて外国製です。なぜか ? 電力会社が必要ないとしてきたからなのです。 つまり、日本の電力会社は、見たくない現実からどれだけ目をそらしてきたかということ です。結局、被曝覚悟の決死隊に事故処理を頼んでいるのですからね。 * 6 * 7 87 第一章