明石結局アレヴァ社のやることは、フィルターなどを使っておざなりの " 放射能除去 , をした後、広瀬さんの一一 = ロうとおり「海水で薄めて」放流するための段取りをつけることく らいかもしれませんね。 子供たちが被曝している 明石そこで現時点ですごく気になるのは、福島原発から放出され続けている放射性物質 で、まだ把握されていない物質が多数あることです。放射性セシウムやヨウ素、プルトニ ウムまでは報道されるようになりましたが、被曝した人の骨にたまる、厄介な「ストロン チウム」の情報は、当初まったく公表されませんでした。 実は、僕が四月八日の「東京新聞」タ刊でストロンチウム測定値の公表を急ぐよう指摘 したところ、翌々日 ( 四月一〇日 ) の「朝日新聞」社説がこの主張に続き、その二日後に * 5 なって文部科学省が「実はストロンチウムが検出されていました」と公表しているのです。章 文科省は放射能大量放出直後の三月一六日から一七日にかけ、高濃度に汚染された浪江町第 と飯舘村で土壌を採取しています。二週間もあれば測定できるし、厚生労働省の「緊急時 今ここにある危機
かや のうち二〇〇〇万人を超える署名を集めるほどすさまじい勢いで広がったのです。ところ が、一九六〇年代に入って東海村一号機の運転が始まった途端、中曽根康弘をリーダーと する推進派に、その良心的な学者が全員パージされてしまった。すぐれた学者たちが、放 射能の危険性を研究していた「日本放射性同位元素協会」から排除されて、一兀東大総長の 茅誠司をリーダーとする「日本アイソトープ協会」という組織に改組された。 アイソトープ協会というのは、放射性物質の有効利用、放射線の有効利用を広める集団 の根城です。が原発推進のための集団であるのと同じように、日本では、このア イソトープ協会が実効的な裏の原発推進人脈を生み出す団体です。そして、ここの創設メ ンバーの子飼いだった二代目が、今テレビや新聞、雑誌に出てきているのです。福島原発 で汚染水に足をつけて被曝した作業者が運び込まれた、千葉県の放射線医学総合研究所も 彼らの根拠地ですが、ここには良心的な研究者もいて、一九七〇年代にはトリチウムの危 険性を発表してくれました。今回も、放射線医学総合研究所の元研究員、木村真三さんが、 強烈な放射線が飛び交う福島原発から半径一〇キロ圏にも突入して土壌や植物、水などの サンプルを採取し、京都大学、広島大学などの友人の研究者たちに送って放射能汚染の深 176
発による海洋汚染に詳しい東京海洋大学名誉教授の水口憲哉先生に電話で話を聞いたとこ ろ「地獄の釜の蓋が開いてしまった」と言っていました。ここから、食物連鎖による放射 能の濃縮が始まるからです。 茨城沖で獲れたコウナゴから放射性ョウ素が検出されたことを伝えた四月五日の「朝日 新聞」朝刊で、水口先生は「心配な人は食べない方がいいだろう」とコメントをされてい ました。ところが、東京最終版までには別の御用学者のコメントに差し替えられていた。 でも、その学者でさえ「魚は新鮮なものを食べることが多いので徹底した監視が必要だ」 と、大変厳しい見方をしていました。言葉だけでなく「徹底した監視」が実行されなけれ 機 危 る ば、何の意味もありませんけど。 あ 広瀬プルトニウムなどを大量に放流したイギリスのウインズケール再処理工場 ( 現・セ ラフィールド ) では、三〇年たっても、魚介類の汚染がおさまらないのです。それに、放今 みなまた 射能を取り込んだ魚は回遊するから、どこに泳いで行くか分らない。水俣病を取材した時章 第 に、「水俣でとれた魚は、地元では食べずに、高値で売れる関西方面に送った」と地元の 漁民が教えてくれました。日本政府も東電も、沖合の放射能汚染を測定もせず、国民をだ
「原爆実験が盛んだった時代には、日本中どこでも今くらいの値はあたりまえに測定で きていた。それでも今は一〇〇〇分の一に減っている。官房長官も安全だと言っている。 過剰な反応はよくない」 ( 三月三〇日、テレビ朝日「ワイド ! スクランプル」 ) 「大気中一万倍程度の放射性物質くらいならば安全だ、気にすることはない」 ( 同 ) ・星正治 ( 広島大学原爆放射線医科学研究所教授 ) 「一分浴びただけなら放射線量は六〇分の一となるわけで、一瞬ならば、そうした健康 被害が出るわけではなく、また距離が離れると放射線量は減る」 ( 三月一五日、 E 産 経ニュース ) ろか 「浄水場で水を濾過する際、細菌やゴミと同時に放射性物質も取り除かれ、人体に心配 ないレベルになる。過剰な心配をする必要はない」 ( 三月一七日、産経新聞 ) ・前川和彦 ( 東京大学名誉教授。救急医学 ) 「一連の事故で放出されたのは、核分裂生成物質 ( 放射性物質 ) を含む気体で、核燃料 そのものが爆発したわけではない。 これらは風に乗って運ばれるが、遠方で観測されて もごく微量のため、健康に影響を与える可能性は低いと思われる。被ばく線量が一五〇 160
における食品の放射能測定マニュアル」に従えば、葉物野菜ならほんの一日か二日で測定 可能なのです。なぜ指摘されるまで隠すのか。それに、飯舘村が高濃度に汚染されている ことが明らかにされ、大々的に報道されたのは、この土壌採取後のことです。住民には内 緒で調べていたわけですね。文科省では飯舘村が危険なことをいち早く把握していたこと の証拠とも言えます。 このストロンチウムは、骨の中にあるカルシウムと置き換って体内に蓄積して、強い 放射線 ( べータ線 ) を長期間放出し続ける。半減期は二八年です。これが福島第一原発か ら今も海と大気に放出され続け、環境中に拡散しつつあると見てまず間違いないと思いま す。 * 5 文部科学省は四月一二日、福島県でサンプル調査をした結果、土壌と葉物野菜から放射性スト ロンチウムと同が検出されたと発表した。六月八日には、福島第一原発から六二キロ離れた福島 市や、南相馬市、田村市、一一本松市、浪江町、飯舘村、川俣町、川内村、葛尾村、広野町でもストロ ンチウムが検出されたことが明らかになる。最も多かったのは浪江町赤宇木で、土壌一キロあたりス
あぜん る深刻な放射能汚染被害です。その問題を話しましよう。僕が今回唖然としたのは、大気 中にかなり高い数値の放射線が検出され始めても、政府発表をはじめ学者たちのほとんど が、「ただちに健康に影響するレベルではない」と延々と言い続けたことです。揃いも揃 って「大丈夫」の連呼ですよ。 政府の広報係に過ぎない枝野官房長官は、人の話を受け売りするしかない原子力の素人 る す Ⅱ以降、「放射能安全論」を だからともかくとして、メディアや一般市民に対して、 3 ・ 糾 を 流布した学者たちの発一一 = 口をちょっと検証してみましよう。 ち 者 任 ■長瀧重信 ( 長崎大学名誉教授。元日本アイソトープ協会常務理事、元放射線影響研究所理事長、責 故 国際被ばく医療協会名誉会長 ) 事 「スリ ーマイルではこれまでに健康被害は報告されていない。チェルノブイリでも、事原 章 故直後の急性放射線障害を別にすれば、小児甲状腺がん以外の健康障害は認められてい 第 ません」 ( 三月三一日、毎日新聞 ) ・山下俊一 ( 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科長。日本甲状腺学会理事長。福島原発事故後、
放射線医学総合研究所 ( 放医研 ) “放射能安全論”の学者たち 放射線の有効利用 日本アイソトープ協会 内閣府 原子力安全・ 保安院 原子力 安全委員会 汚染水処理 クリアランス分科会 報告 etc. 京大原子炉実験所 東エ大原子炉工学研究所 東大工学部 原子力環境整備・資金管理センター 放射性廃棄物処分 (NUMO) 原子力発電環境整備機構 原子力 委員会
命より電気のほうが大事なのか 広瀬とにかく 3 ・Ⅱ以降、私はずっと腹が立ちつばなしです。地震と津波による全電源 喪失 ( ステーション・プラックアウト ) から、福島第一原発の事故はまったく収束の見込み が立たない。放射性物質の放出は止まらず、海水も空気も土もどんどん汚染されてゆく。 生態系の食物連鎖の中で放射性物質の体内濃縮が始まって、それが人々のロに入れば体内 ひばく 被曝が起こる。つまりガンの潜伏期間が始まったということです。枝野幸男官房長官もさ すがに「ただちに健康に問題はない」とは言わなくなってきたが、 これは明白な犯罪だ。 原子力安全・保安院の西山英彦審議官は相変らず、チェルノブイリ原発事故では二九人し か死んでいないなどというが、冗談じゃない。次の章で詳しく述べたいが、二〇年後に、 健康被害者は実に七〇〇万人に達していると報道されたのですよ。今回の放射能による甚 大な被害は、間違いなく人災です。 私はね、この本で日本人全体 , に問いかけたい。東電に放射能を止めてくれと訴えるだけ でいいのかと。危険性を無視して原子力発電所の建設と運転を続けてきたすべての電力会
まったく放射能被害がないかのような結果を報告して、チェルノブイリ原発事故を追跡し てきたフォトジャーナリストの広河隆一さんをはじめ、全世界からの怒りを買ったのです。 この手口が、現在もまったく同じ形で、推進派のロジックになっている。つまり「放射 能をこわがる精神的なストレスのほうが病気になる。安心して生活したほうが、健康にな ります」というおそるべき放射能無害論です。後任の放射線影響研究所理事長が、やはり ながたき 今福島県内の児童の二〇ミリシーベルト無害論にお墨付きを与えた長瀧重信 ( 長崎大学名 誉教授 ) だ。これら放影研人脈は、日本アイソトープ協会 ( 後述 ) と共に「被曝しても健 康にはなんら問題ない」と平気でしゃべりまくる人間たちです。私が許せないのは、こん な連中が、必ず広島、長崎を舞台に出世していることです。事情を知らない人に、広島と 長崎の学者なら被曝に関しての研究は信用できるだろう、と思い込ませるのだから悪質き わまりない。だから、すべての日本人は一刻も早く、現在の福島県内の被曝量がとてつも なく危険だということを知る必要があります。 明石限度を一気に二〇倍にした久住委員は、その重松逸造の弟子なのですね。 広瀬私がもっと無気味に思うのは、このようなおそろしい人物をトップに据える官僚た 1 ろ 6
主宰する「ルポルタージュ研究所」 ( 通称・ルポ研 ) のウエプサイトくらいのものでした。 一五日午前三時、それまで北や東に向かって吹いていた原発周辺の風が、南向きに変っ たのです。「放射能襲来」に気づいたのは、その日午前五時過ぎのことでした。茨城県環 境放射線監視センターによる県内の環境放射線測定値が急激に上昇していたからです。午 もみやま 前七時の時点では七九ナノグレイ / 時だった鉾田市樅山で、七時四〇分には五三四三ナノ グレイ / 時を計測しました。見えない放射能の″固まり〃が、微風に乗ってゆっくりと南 下し続けているのは明らかでした。 でも、政府やマスコミは沈黙し続けている。テレビもすっとつけつばなしにしていまし 機 たが、そんなことなどまったく言わないわけです。「」 ( 緊急時迅速放射能影響る あ 予測ネットワークシステム ) も、活用されている気配はまったく見られませんでした。 僕は二つの判断を迫られました。 今 章 ・ネット等を使い、広く告知するか ? 第 ・逃げるか ? 察知はしたものの、どんな種類の放射能 ( 放射性核種 ) がどれほどの量、飛んでくるか