東電は電力会社として完全失格、公益事業者である電気事業者の資格を取り消すべきだ。 そのうえ、あろうことか計画停電によって首都圏を混乱させ、多くの企業と市民生活に 対して甚大な被害を与えたことは、許しがたい。加えてその後も、福島県にある三八〇万 ひろの キロワットの巨大な広野火力発電所の復旧のめどが立っているのに、それをひた隠しにし てきた。東電が電力の供給を復活できないなら、電力会社ではない。東京停電と社名を変 べ る え えるべきだ。 考 明石計画停電で真っ暗闇になり、信号機まで消えた街をクルマで走るのは、恐怖以外の 何ものでもありませんでした。実際、その間に事故が発生して人も死んでいますし。 べ る 国民に「原発がなければ停電する」という嘘を恐布心とともにすりこむために、故意に 知 火力発電所の復旧を遅らせたのだとすれば、原発の延命のために東電は殺人を犯したも同 然です。 章 広瀬マスコミも含め、夏場に向けての電力不足を煽るような一一一一口辞が世間に流布していま 第 したが、 これは発電技術の現状をまったく知らない素人集団によるデマなのです。報道に 携わる人たちがデータをきちんと調べていないからです。電力会社の言い分だけを聞いて、
脅しまで使って、連中は利権システムを死守しようとしている。実際、原発震災直後に、 政府は東電と組んで「電力が足りなくなる」と国民を脅して無意味で差別的な計画停電を 実施した。あとで詳しく述べますが、あれはあきらかに「原発が稼働しないと電気がなく なるぞ」と国民を脅して誘導するプロバガンダでした。海江田万里経産相が出て来て「こ まひ のままでは大停電が起こって、都市機能が麻痺する」と国民に節電を呼びかけたが、あん なことは大嘘です。原発以外の電気の供給をいかに増やすかが、国民を守る政治家として の海江田の本来の仕事であるのに、そんな能力もなく、東電のスポークスマンと化してい た。恥ずべきことです。 非難の矛先をそらすための計画停電と、「原発を停止したら、停電生活になるぞ」とい うネガテイプ・キャンペーンが見事功を奏して、事情を知らされない国民の半数近くがま だ「原発の現状維持は必要」とアンケートで答えている。 明石新聞が実施するそうしたアンケート調査にも、僕は疑問を感じるのです。 震災と原発事故の発生からほどなくして、読売、東京の二社が世論調査をしています。 基本的には菅内閣の支持率を調べる体裁を取りながら、ちゃっかり原発のことも訊ねてい 201 第三章私たちが知るべきこと、考えるべきこと
信じさせられてきたのか。これは、笑い話のような本当の話だが、わが国は、大量の発電 能力を持った天然ガス火力の発電所を抱えながら、その稼働率を五 5 六割に意図的におさ えてきたのです。天然ガス火力とは、最もクリーンで、すべての先進国で現在の発電のエ ース設備なのです。さらに石油火力もある。ところがこちらは驚いたことに、一 5 二割の 稼働率しかない。 これらの火力をフル稼働させれば、すべての原発を止めても、ピーク時 にまだ二割ぐらいの火力が余ってしまう。これに、ほとんど遊んでいる水力を加えれば、 とてつもない発電能力を持っていることになる。 明石そういう事実をほとんどの国民が知らないと思います。「停電になる」という脅し もありますが、東京を中心とした東電管轄地域の人々は、福島の原発は首都圏や関東で使 う電気をつくっていたのだからと、必死で節電に協力しています。 広瀬真相は、今回の大震災後に東電が計画停電を強行したのは、火力発電所も一時的に 被害を受けたからです。津波をかぶっただけでなく、輸送路が途絶えて発電用の燃料搬入 に支障が出たせいもあります。だから震災後すぐ「壊れた火力発電所を復旧させれば」何 も問題は起こらなかった。原発に比べたら火力発電所の復旧は容易ですからね。部品がこ 21 ろ第三章私たちが知るべきこと、考えるべきこと
るのですね。「読売新聞」 ( 四月三日 ) では、国内の原発に関しては「現状維持」が四六 % で最多だった、とある。「東京新聞」 ( 三月一九日 ) も、東京都内の有権者を対象にした緊 急世論調査の結果を報じていますが、「国内にある原発は今後、どうすべきだと思うか」 との爿、に、「運転しながら安全対策を強化していく」が五六・二 % と半数を超えていま す。それができないから大事故が起こったというのに、です。「いったん止め、対応を検 討する」は二五・二 % 、「やめて、別の発電方法をとる」は一四・一 % でした。 この「新聞世論調査」記事から伝わってくるメッセージは「事故が起こっても原発は必 要」という以外の何ものでもありません。事故が収束もしていないうちからこんなアンケ ししったい何の意味があるというのでしよう。 ートを取ることこ、、 広瀬さんの言うとおり、「計画停電」という脅しが効いている最中だから、こうした結 果になったのです。つまり、アンケートを投げかける段階で「世論」にはバイアスがかか っていた。しかも、事故発生からまだ一ヶ月程度の段階では、冷静な判断を下すために重 要な材料となる「東電とその原発事故がもたらした被害の全貌」に関する情報が全然出揃 っていない。 このアンケートを取った時点では、福島の土壌や海や地下水からストロンチ 202
明石東電は、民放の主要なニュース番組の時間帯をスポンサーとして押さえています。 したがって、東電批判はもちろん、原発批判はタブーなのですよ。東電の広告宣伝費は年 間で約三〇〇億円と言われていて、そのはかに、ほば同額の「拡販費」というのがあると 聞きます。これらのカネが、安全・安心のクリーンキャンペーンやら、政財界、マスコミ 記者や幹部の接待、原子力分野のロビー活動に使われ放題なのですね。 興味深いのは、阪神淡路の震災とか、柏崎刈羽原発の事故とか、電力会社にとって不都 合な事件や事故が起こると、その直後から、「安全です」というクリーンキャンペーンが 集中的におこなわれる。大量の宣伝費を一気に注ぎ込むのでしよう。それが結構あからさ まなのですよ。まあ、さすがに福島の事故ではそれは無理でしようが、あのわざとらしい 「お詫び広告」を見るたびに腹が立ちます。あの広告にも何億もかけているのだから。一一 = ロ うまでもなく、東電の宣伝費はわれわれの電気料金から出ているのですよ。 * 2 恩田勝亘『東京電力・帝国の暗黒』 ( 七つ森書館 ) 126
せと言っている。こうした非常識が、国民の憤激を買っているというのに。 さらに、「東電をつぶしたら株主の資産が減ってしまう」、「原子力損害賠償法には『損 害が異常に巨大な天災地変によって生じたときはこの限りではない』という免責条項もあ る」と、賠償逃れまでヌケヌケとしゃべっている。この男は死ぬまで目が覚めない奴だ。 さらに「低線量の放射線はむしろ体にいい」とは、さすが東電顧問だ。 明石ならば、原発におけるそれまでの「放射線管理」はいったい何だったのでしようね。 「五重の壁」うんぬんのを自ら否定しています。ネットでは「 < 級戦犯だ」と叩かれ ているみたいですが、そんな批判は屁とも思わないでしようけど。「東電をつぶしたら株 主の資産が減る」とも言っていますが、東京電力の株主たちが四〇〇人くらい、東北電力 の株主たちが二〇〇人くらい結束して「原発をやめよう」と株主総会で提案しました。も う時代は変りつつあるのです。ほかの株主からもそうした提案が各電力会社に対してされ るのではないですか。それに、「異常に巨大な天災地変」による事故だから損害賠償は免 責だという言い訳も通りません。加納は曲解しているようですが、今回の事故は明らかな 「人災」なのです。きっちり責任を取ってもらいましよう。政府と東電で責任を押し付け 208
合って、醜い賠償責任逃れをやっている場合ではありません。 広瀬私は東京電力の株が紙切れ同然になることを願っています。東電の原発推進政策を 変えさせるために、私自身も東電株を持っているからそう一言うのですよ。 世論操作を見ていると、これからも原発を維持しようとする連中の動きが露骨だね。誰 もが鋭く監視しなければならないのは、東電が政府と結託して、福島の事故を「安定し た」、「もう放射能は大丈夫」と、あたかも事故を収束させたかのような雰囲気にし、国民え にニュースを忘却させることだ。あんな根拠のないカラエ程表を国民に示して、六 5 九ケ 月で事故処理を収めますなどという気休めを国民が信用できるはずがない。清水社長が福 る 島の避難民に土下座しても、まったく謝罪になっていない。 知 ち 明石そもそも僕は土下座したくらいで許しはしませんけどね。それに、最近は不祥事の たびに土下座が乱発されすぎで、軽くなった気がしていますし。彼らはテレビカメラがい 章 るところでしか土下座をしませんし、単なるマスコミ向けのパフォーマンスだと見ていま 第 す。
の会見の責任を追及しようとしたジャーナリストの上杉隆さんは、レギュラーで出演して いた番組から降ろされてしまった。何ておそろしい国に生きているのだろうと思いました。 事故のあと、彼が東電記者会見で「ヨウ素、セシウム、プルトニウムなどの放射性物質が すでに出ているはすだ」と追及すると、大手メディアの報道記者に「黙れ、同じ質問ばか りするな」と妨害されたのですよ。ウソの報告に何の疑問もはさまず、東京電力に飼われ ているプレスの態度は、日本の報道に対する信頼性を完全に失墜させましたね。全世界が、 あき これが日本のジャーナリズムかと、呆れかえっています。しかもフリーのジャーナリスト や海外のメディアは、当初、官邸の会見場から締め出されていた。その原因がどこにある 機 危 る かといえば、一部の記者たちは、ちょうど事故が起こった時に東電の接待旅行で中国へ行 あ っていた。そして、その接待リストを電力会社が握っているので、もし東電を批判すれば リストが流出して、この記者たちの名前が世間に漏れてしまう。だから何も一言えない恥す今 章 かしい状況だったというのです。なんという世界だ。 明石基本的に、日本のマスコミ報道の現場において、原発政策に異を唱える主張を紹介第 したり、反原発運動を肯定的に取り上げたりすることは長年、タブーだったのです。ただ
トロンチウムが一五〇〇べクレル、同が二五〇べクレル。続いて多かったのは飯舘村八木沢で、 ストロンチウムが一一〇〇ペクレル、同囲が一二〇ペクレル。 また東京電力は六月一二日、福島第一原発の周辺の海や、地下水の流入する「サブドレン」からス トロンチウムを検出したと発表した。三号機取水口付近の海からは濃度限度 ( 三〇ペクレル / リット ル ) の二四三倍に当たる七三〇〇べクレル / リットルものストロンチウム囲を検出。二号機の「サプ ドレン」からは六三〇〇ペクレル / リットルのストロンチウム囲が検出された。 広瀬だいたい東電は最初の、最大量の放出の時から、放射性物質の分析なんて一度もま ともに報告してこなかった。やっていたのはガンマ線だけ。東電はプルトニウムの分析器 すら持っていなかったと言われたが、実はそれも嘘で、プルトニウムが出ているのに隠し ていた。コバルトも出ている。テルルも出ている。そんな連中を日本人は信じるのか。 明石東電広報の話では、福島第一にはプルトニウムを測れる分析器がないため、土壌の サンプルをわざわざ日本原子力研究開発機構まで送って調べてもらったというのです。 広瀬プルトニウムの O X 燃料を使ってプルサーマルを導入した連中が、「プルトニウ ムの分析器を持っていませんでした」とは、よく言ったものだ。 55 第一章今ここにある危機
そうした策動に国家戦略室が関与していた。となれば、その国家戦略室の「政策参与」で ある小宮山がこの動きに無関係であるわけもない。 また、東大大学院工学系研究科には東電から一〇年間で五億円が流れ込んでいた、と 「週刊現代」 ( 四月一六日号 ) が報じていましたが、なにせ、前東大総長が東電の監査役な のだから驚くには当たらない。二〇一一年三月現在の「東京大学寄付講座・寄付研究部門 る す 弾 設置調 ( 部局別 ) 」によると、東電は工学系研究科に対して重点的にカネ ( 寄付 ) をばらま を いていますね。要するに、私たちが支払う電気料金で、この原子力マフィアの教授たちの ち 者 研究費を賄っているってことですよ。呆れるほどズルい連中です。 任 広瀬まったくその通り。われわれが払っている日本の電気料金は世界一高いからね。東責 故 京電力の取締役の平均報酬が約三七〇〇万円というのは、そのためだ。独占企業のやりた 事 発 原 い放題でカネを取られて、政官の接待といかがわしい学者の原発研究費につぎ込まれちゃ 章 国民はたまらないはずなのに、その国民が怒らないのはどういうわけかね。 第 ただ、京大原子炉実験所には、数少ないけれど良心的な学者がいます。小林圭二さん、 小出裕章さん、今中哲二さんたちは、原子力シンジケートから外れて原発の危険性をずつ